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【閑古鳥雑貨店のプク】あのミッションは不可能?──トムではない猫とイーサンではない店主の秋支度


秋の気配が漂いはじめた雑貨店に、思いがけず届いた"あのブルーレイ"。
店主と猫の“任務”の行方は…? 家事の工夫と小さな物語。



扇風機を片付けた。

まだ昼間はちょっと暑いけれど、
風のにおいが、ほら、「秋ですよ」って言ってる。

金木犀の香りも、どこかからふわり。
こんな日は、なんとなく何かを終わらせたくなる。



出しっぱなしにしておくと、いつまでも夏が終わらない気がするので、
私はこの時期になると、ある任務をそっと執り行う。

それは、「扇風機しまいの儀」。

 

まずカバーを外して羽根をぬぐって、
コードを束ねる前に、本体の裏に重曹スプレーをシュッ。

静電気でついた細かなほこりもこれでスッキリ。
来年の自分が気持ちよく使えるように、
大きめの風呂敷でふんわり包んで物置へ。

 

うちのちいさな「家事の工夫」のひとつです。
誰に見せるでもないけど、なんだかスッとする。

 

レジの横では、プクが香箱を組んでじっとしている。
今日も特にやる気はなさそうだ。

でも、その場所にいてくれるだけで、
なんだか安心するのだから不思議だ。



店内は相変わらず静かで、
風の音も、お客さんの気配も、今日はまだ。

ひと息ついて、麦茶でも…と思っていたところで、
カラン、とドアベルが鳴った。

「こんにちは。あ、扇風機、もうしまったんですね」

やわらかな声に顔を上げると、
映画好きの主婦、戸田さんが紙袋を手に立っていた。

 

「これ、観ました? すごく面白くて」

そう言って差し出されたのは、
ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング


楽天ブックス


「家族で何度も観たので、もう満足しました。
よかったら、ここに置いてあげてください」

そう言って、ふふっと笑う戸田さん。

 

私はといえば、何も返せないまま
「ありがとうございます」とだけ小さくお辞儀して、
その紙袋を両手で受け取った。

 

トム・クルーズがうちの店にやってくる日が来るとは。
いや、正確には“来てない”んだけど。

ちょっとした驚きと、やさしさの余韻だけが、
ぽつりと店内に残った。

 

プクはというと、ブルーレイの角をくんくん嗅いで、
一度だけ「にゃ」と言った。

たぶん「それ、爆発するやつでしょ」って言ってる。

 

夜、静かな部屋で、ひとりで観る映画も悪くない。
ポップコーンはないけど、おせんべいならある。
紅茶も淹れようかな。温かいやつ。



売り上げは、まあ、今日もなかったけど。

映画をもらって、プクに「にゃ」と返事されて、
扇風機をしまって、コードもちゃんと巻いて、
……任務は、完了でいいんじゃないかと思う。


それに、来年の私にとって、あの扇風機の仕舞い方が
今年いちばんの家事の工夫だったら、それはそれでちょっと寂しいけど。

Mission:売れないまま、終了。

でもまあ、プクがそばにいてくれるうちは、
その任務、続行でもいいかもしれない。



最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
プクがくしゃみをしたら、冬支度を始めることにしています。



本日いただいたもの

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』
ブルーレイ+DVDセット

・吹替・字幕・特典映像つき
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