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ベトナム食文化🇻🇳お茶編 ẨmThựcViệtPedia

日越食文化協会(JVGA)のベトナム食文化「アムトゥックベトペディア〜お茶編」です。

■ ベトナム食文化 🇻🇳 ẨmThựcViệtPedia

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🧑‍🔬ベトナムのお茶

ベトナムは世界有数の茶の生産国であり、人々の日常は常にお茶と共にあります。一口に「お茶」と言ってもその種類は多岐にわたりますが、世界的なお茶の基準である「六大茶類(発酵度合いによる分類)」に、ベトナム独自の文化である「着香茶(花茶)」を加えた「7分類」で整理すると、その奥深い世界が非常にクリアに見えてきます。まずは今後の連載の基本となる、ベトナム茶のカテゴリーマップを把握しておきましょう。

■ ベトナム茶の基本「7分類」(六大茶類+花茶)

  1. 【🟢緑茶】不発酵茶(Trà Xanh / Lục trà): 摘み取ってすぐに加熱し、酸化酵素の働きを止める製法。ベトナムで最も消費量が多く、「お茶」と言えばまずこれを指します。

  2. 【⚪️白茶】弱発酵茶(Trà Bạc / Trà Trắng): 新芽のみを使い、ほとんど手を加えず乾燥させた希少なお茶。北部山岳地帯の「シャンティ(Shan Tuyết)」などが有名です。

  3. 【🟡黄茶】微発酵茶(Trà Vàng): 伝統的な「悶黄(もんおう)」工程を経るものは極めて稀。ベトナムでは単に抽出した水色が黄色い緑茶を指すことも多いです。

  4. 【🔵青茶】半発酵茶(Trà Ô Long / 烏龍茶): 酵素を少し働かせたところで加熱して発酵を止める製法。主に南部の高原地帯ダラットなどで、台湾の製法を導入して作られています。

  5. 【🔴紅茶】全発酵茶(Hồng trà / Trà Đen): 茶葉を完全に(100%近く)発酵させたもの。ベトナムでは主にミルクティー(Trà sữa)のベースや、輸出用として生産されます。

  6. 【⚫️黒茶】後発酵茶(Trà Phổ Nhĩ / プーアル茶): 微生物によって長期間熟成させるお茶。北部の古樹から作られます。

  7. 【🌼再加工茶】着香茶・花茶(Trà ướp hoa): 出来上がったお茶(主に緑茶)に花の香りを吸着させたもの。代表的なハス茶(Trà Sen)やジャスミン茶(Trà Lài)などがあり、儀式やお土産用の特別なカテゴリーとして重要な位置を占めます。

  8. 番外編【🌿茶外茶】(Trà thảo mộc / ハーブティー)」:上記の7分類のほかにも、アーティチョーク茶などの茶葉を使わない「茶外茶(Trà thảo mộc / ハーブティー)」もベトナムでは広く親しまれています。


🌿チャーアティゾー(Trà Atisô)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】フランスの食文化とベトナムの気候が育んだ「肝臓の特効薬」。高原のハーブティー「チャーアティゾー(アーティチョーク茶)」

前回の「チャークンディン(宮廷茶)」に続き、今回も茶葉を使用しない「⑧【🌿茶外茶】」のカテゴリーから、ベトナムの国民的健康茶をご紹介します。

Trà Atisô

それが、西洋野菜であるアーティチョーク(チョウセンアザミ)を使った「チャー・アティゾー(Trà Atisô)」です。スーパーマーケットのお茶コーナーでも必ず広大な面積を占めており、ベトナム土産の定番としても世界中で人気を集めています。

■ 語源とカテゴリー:フランス語からそのまま定着した名前

名前の由来は、ベトナムの歴史を色濃く反映しています。

  • Trà(チャー): お茶

  • Atisô(アティゾー): アーティチョーク(フランス語の「Artichaut」に由来)

カテゴリーとしては、植物の根や茎、花を煮出したり抽出したりして飲む「茶外茶(ハーブティー)」に属します。

■ 誕生の背景:フランス人が持ち込んだ「避暑地の恵み」

地中海沿岸を原産とするアーティチョークは、20世紀初頭のフランス植民地時代にベトナムへ持ち込まれました。しかし、熱帯の気候ではうまく育ちません。そこで目をつけられたのが、フランス人たちの避暑地として開発された中南部高原地帯の「ダラット(Đà Lạt)」や、北部の山岳地帯「サパ(Sa Pa)」でした。

標高が高く冷涼な気候が栽培にぴったりと合い、現在ではダラットを代表する特産品となっています。ヨーロッパでは主に花の蕾(つぼみ)の部分だけを高級野菜として食べますが、ベトナムでは花だけでなく、葉、茎、根に至るまで植物のすべてを乾燥させ、無駄なくお茶として活用する独自の文化が発展しました。

■ 味わいと飲用文化:甘く香ばしい、優しい風味

「西洋の野菜のお茶」と聞くと青臭い味を想像するかもしれませんが、チャーアティゾーの味わいは非常に親しみやすいのが特徴です。

ほんのりと麦茶やほうじ茶に似た「焙煎された香ばしさ」があり、飲んだ後にはサツマイモやトウモロコシのような「自然で優しい甘み」が口の中に広がります。

ティーバッグタイプのものが広く普及しており、家庭やオフィスで温かいまま飲むのはもちろん、冷蔵庫で冷やして麦茶代わりにゴクゴクと飲むのも一般的です。南部ホーチミンの食堂では、無料の「チャーダー(冷茶)」として、緑茶ではなくこのアティゾー茶が出されることもよくあります。

■ 健康効果:「お酒を飲む人」と「美肌を目指す人」の強い味方

ベトナム人が日常的にチャーアティゾーを飲む最大の理由は、その優れた健康・美容効果にあります。

  • 肝機能の改善と二日酔い予防: アーティチョークに含まれる「シナリン」という成分が、胆汁の分泌を促し肝臓の働きを強力にサポートします。お酒をよく飲むベトナムの男性たちにとって、二日酔い防止や肝臓のデトックスのための必須アイテムです。

  • 強力なデトックス・美肌効果(清熱): 東洋医学の「thanh nhiệt(清熱=体内の余分な熱を冷ます)」効果が高く、ニキビや肌荒れを防ぐ「美肌のお茶」として女性たちからも絶大な支持を得ています。

  • コレステロール値の低下・便秘解消: 食物繊維やミネラルが豊富で、血液をサラサラに保ち、腸内環境を整える効果も期待されています。

■ 終わりに:東西の文化が融合した「日常の特効薬」

フランスから伝わった西洋の野菜を、ベトナム人が東洋医学の「清熱解毒」の思想と結びつけ、毎日飲める美味しいお茶へと進化させた「チャーアティゾー」。

ノンカフェインなので、寝る前のリラックスタイムにも最適です。日々の疲れや、飲み会続きで肝臓の重さを感じた時は、ぜひこのダラットの自然が育んだ優しい甘さに癒されてみてください。


🍃チャーヴォイ(Trà Vối)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】北部農村の原風景とともにある「おばあちゃんのお茶」。素朴で心温まる日常茶「チャーヴォイ」

Trà Vối

ベトナム茶の「⑦【🌼再加工茶】」や、様々なお茶の樹以外の植物を煮出す「⑧【🌿茶外茶】」。これまでご紹介してきた数あるハーブティーの中でも、ベトナム北部出身の人々に「一番懐かしい、ふるさとのお茶は?」と尋ねると、真っ先に名前が挙がるのがこの「チャーヴォイ(Trà Vối)」です。

華やかさや高級感とは無縁ですが、ベトナムの農村の暮らしと人々の温かい人情がたっぷりと溶け込んだ、愛すべき一杯をご紹介します。

■ 語源とカテゴリー:「ヴォイの木」の葉と蕾(つぼみ)

名前の由来は、使われている植物の名前そのままです。

  • Trà(チャー): お茶

  • Vối(ヴォイ): ヴォイの木(フトモモ科の常緑高木)

お茶の樹の葉は使わないため、カテゴリーとしては「茶外茶(ハーブティー)」になります。チャー・ヴォイには主に2つの部位が使われます。 1つは葉っぱを煮出す「ラーヴォイ(Lá vối)」。そしてもう1つは、まだ開く前の小さな蕾(つぼみ)を乾燥させて煮出す「ヌヴォイ(Nụ vối)」です。蕾を使ったヌ・ヴォイの方が、より香りが高く上品だとされています。

■ 誕生の背景:ガジュマルの木陰と、土瓶の記憶

チャーヴォイは、ベトナム北部(Bắc Bộ)の農村地帯の歴史とともに歩んできました。

かつての農村では、各家庭の庭に必ずと言っていいほどヴォイの木が植えられていました。おばあちゃんが摘んできたヴォイの葉や蕾を、大きな素焼きの土瓶(Ấm đất)に入れてグツグツと煮出し、麦わらを編んだ保温カゴ(Giành tích)に入れて畑へ持っていく。そして、村の入り口にある大きなガジュマルの木陰で、農作業の合間に近所の人々と一緒に喉を潤す……。

これが、多くのベトナム人にとっての「チャーヴォイの原風景」です。今でもハノイなどの路上の茶屋(クアン・チャーダー)で、緑茶ではなくこのヴォイ茶を出してくれるお店も少なくありません。

■ 味わいと飲用文化:ホッとする「木の香り」と優しい甘み

緑茶のような鋭い渋みや、ジャスミン茶のような華やかな香りはありません。チャーヴォイの味わいは、まさに「素朴」の一言です。

口に含むと、少し枯れ木や漢方のような大地を感じる香りが鼻に抜け、麦茶やほうじ茶にも似た親しみやすい風味が広がります。そして、飲んだ後には「ハウンゴット(Hậu ngọt=喉の奥から戻ってくる甘い余韻)」が優しく口の中を満たします。

夏場は氷を入れてゴクゴクと飲み、冬は熱いものを少しずつすする。胃への刺激が少ないため、一年中、水代わりに飲める日常の水分補給として完璧な存在です。

■ 健康効果:脂っこい食事の強い味方と、高い殺菌力

「安くて素朴なお茶」と侮るなかれ。チャーヴォイは、古くから民間療法で重宝されてきた素晴らしい薬効を持っています。

  • 胃腸を整え、消化を助ける: 豚肉の脂身など、こってりとした食事の後に飲むと、胃もたれを防ぎ消化を助けてくれます。「お腹の調子が悪い時はヴォイ茶を飲め」というのは、ベトナムの伝統的なおばあちゃんの知恵です。

  • 高い抗菌作用・抗炎症作用: ヴォイの葉や蕾には天然の抗菌成分が含まれています。かつては、皮膚の炎症やあせもを治すために、濃く煮出したヴォイ茶を水に混ぜて沐浴することもあったほどです。

  • 血糖値のコントロールと痛風予防: 近年では、ヴォイの蕾(ヌヴォイ)を定期的に飲むことが、血糖値の急激な上昇を抑え、痛風の予防にも効果があるとして、健康志向の都市部の人々の間でも再び注目を集めています。

■ 終わりに:一杯のお茶に宿る「クエ・フオン(故郷)」

現代のベトナムでは、タピオカミルクティーや洗練されたカフェチェーンが街に溢れています。しかし、実家に帰省した時や、ふと立ち寄った路上の茶屋で土瓶から注がれるチャーヴォイを飲むと、誰もが心の底からホッと息をつきます。

それは、このお茶の中にベトナムの人々が大切にする「Quê hương(クエフオン=故郷)」の情景と、家族の温かさがそのまま息づいているからです。ハノイなど北部を訪れた際は、ぜひこの素朴で優しい「おばあちゃんのお茶」を探してみてください。


⛰️チャーウーロン(Trà Ô Long)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】台湾の技術とダラットの自然が奇跡の融合!甘く華やかに香る「チャーウーロン(烏龍茶)」

Trà Ô Long

ベトナム茶の「7分類」解説において、緑茶と紅茶の中間に位置する「④【🔵青茶】半発酵茶」としてご紹介したのが、今回取り上げる「チャーウーロン(Trà Ô Long)」です。

烏龍茶といえば中国や台湾が本場というイメージが強いかもしれませんが、実は現在のベトナムは、世界中の茶業者が注目する「高品質な烏龍茶の一大産地」へと急成長を遂げています。

■ 語源とカテゴリー:丸く揉み込まれた「黒い龍」

名前の由来は、漢字の響きがそのままベトナム語に定着したものです。

  • Trà(チャー): お茶

  • Ô Long(ウーロン): 烏龍(ウーロン)

製法としては、茶葉を発酵途中で加熱し、酸化酵素の働きを止める「半発酵茶」です。ベトナムの烏龍茶の多くは、台湾式の製法に倣い、茶葉をコロコロとした小さな球状に固く揉み込んでいるのが見た目の特徴です。お湯を注ぐと、この小さな粒がゆっくりとほどけ、一枚の大きな茶葉へと開いていきます。

■ 誕生の背景:高原の街・ダラットが魅せた「完璧なテロワール」

ベトナムにおける烏龍茶栽培の中心地は、中南部のラムドン省(Lâm Đồng)、特に避暑地として有名な「ダラット(Đà Lạt)」や「バオロク(Bảo Lộc)」といった標高1,000mを超える高原地帯です。

1980年代後半から90年代にかけて、この地の「一年中涼しく、霧深い気候」と「肥沃な赤土」が、高級烏龍茶の産地である台湾の高山地帯の環境と驚くほど似ていることに台湾の農業専門家たちが着目しました。そこへ台湾から優れた品種(金萱:Kim Tuyênなど)と高度な製茶技術が持ち込まれ、あっという間に世界レベルの烏龍茶が生産されるようになったのです。

現在では、台湾や日本への輸出だけでなく、ベトナム国内の高級茶として確固たる地位を築いています。

■ 味わいと飲用文化:蘭の花やミルクを思わせる「高貴な香り」

チャーウーロンの最大の魅力は、なんといってもその「香り」です。

タイグエン茶(緑茶)のようなガツンとした渋みはなく、蘭の花のような華やかな香りや、品種によってはミルクやバニラを思わせる甘くクリーミーな香り(ミルキーウーロン)が漂います。苦味が少ないため、非常に飲みやすく、お茶の甘い余韻が長く口の中に残ります。

伝統的な茶器でじっくり何煎も味わうスタイルはもちろんですが、近年ベトナムの若者の間では、この烏龍茶の華やかな香りを活かした「チャースアウーロン(Trà sữa Ô Long = ウーロンミルクティー)」が大流行しています。深く焙煎した烏龍茶にチーズクリームを乗せたものなど、モダンなカフェメニューのベースとしても欠かせない存在です。

■ 健康効果:食事の脂を流す「ダイエットの味方」

烏龍茶は、半発酵という独自の製法によって生まれる特有の成分により、優れた健康・美容効果を発揮します。

  • 脂肪の吸収を抑える(ダイエット効果): 烏龍茶特有の成分「ウーロン茶重合ポリフェノール」が、食事に含まれる脂肪の吸収を抑え、体外への排出を促す働きがあります。脂っこい料理を食べた後に飲むと、口の中だけでなく胃腸もスッキリとさせてくれます。

  • 代謝アップとアンチエイジング: 豊富に含まれるカテキンやポリフェノールが活性酸素を除去し、肌の老化を防ぎます。

  • リラックスと集中力: 華やかな香りの成分が自律神経に働きかけ、心身をリラックスさせつつ、適度なカフェインが穏やかな集中力をもたらします。

■ 終わりに:進化し続けるベトナム茶の「新しい誇り」

北部の伝統的な古樹茶やタイグエン茶がベトナムの「歴史とルーツ」だとするならば、中南部で育つチャーウーロンは、外からの優れた技術を柔軟に取り入れ、自国の豊かなテロワール(風土)で昇華させたベトナムの「新しい誇り」と言えます。

渋い緑茶が少し苦手という方でも、このダラット産烏龍茶のまろやかな甘みと華やかな香りにはきっと魅了されるはずです。美しい高原の霧が生み出した奇跡の味わいを、ぜひ楽しんでみてください。


🌾チャーガオルック / チャーガオルット(Trà Gạo Lức / Gạo Lứt)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】米の国の恵みを丸ごと飲む!香ばしさと優しい甘さが心を満たす、現代ベトナムの美容茶「チャーガオルック(玄米茶)」

Trà Gạo Lức

緑茶や烏龍茶などの「茶葉」のお茶、そして花やハーブを使った「⑧【🌿茶外茶】」をご紹介してきました。今回登場するのは、ベトナム人の主食である「お米(穀物)」を焙煎して作るお茶、「チャーガオルック(Trà Gạo Lức)」です。

日本にも緑茶と玄米をブレンドした「玄米茶」がありますが、ベトナムのガオルック茶は少しスタイルが異なります。現代のベトナムで、特に女性たちから「究極の美容・ダイエット茶」として熱烈な支持を集めているその魅力に迫ります。

■ 語源とカテゴリー:精米しない「栄養の宝庫」

名前の由来は、使われている穀物の名前そのままです。お茶の樹の葉を使わないため「茶外茶」に分類されます。

  • Trà(チャー): お茶

  • Gạo Lức / Gạo Lứt(ガオ・ルック / ガオ・ルット): 玄米

地域や発音のなまりによって「ルック(Lức)」と書かれたり「ルット(Lứt)」と書かれたりしますが、どちらも精米する前の「玄米」を指します。ビタミンやミネラル、食物繊維がたっぷりと残った糠(ぬか)の層ごと、じっくりと焙煎して作られます。

■ 誕生の背景:「食養生(マクロビ)」ブームと、進化するブレンド

ベトナムでは古くから穀物を炒ってお茶にする文化がありましたが、近年のチャーガオルックの大流行の背景には「Thực dưỡng(トゥックズオン=食養生、マクロビオティック)」という健康志向の高まりがあります。

日本の玄米茶が「緑茶+炒り玄米」であるのに対し、ベトナムのチャーガオルックは「玄米100%」、あるいは他の健康素材とブレンドするのが主流です。 特に人気なのが、緑色の芯を持つ黒豆と合わせた「チャー・ガオルック・ダウデン(Trà gạo lứt đậu đen)」や、東洋のバニラと呼ばれるパンダンリーフ(Lá dứa)の香りを加えたものです。これらはオフィスワーカーの女性たちがマイボトルに入れ、水代わりに一日中飲む「デトックスウォーター」として完全に定着しています。

■ 味わいと飲用文化:ホッと安らぐ「おこげ」のような香ばしさ

熱湯を注ぐと、まるでお米を炊き上げた時のおこげのような、あるいは香ばしいおかきのような、深く豊かな香りが立ち上ります。

茶葉を使っていないため渋みや苦味は一切なく、穀物由来の「とろりとした自然な甘み」がじんわりと体に染み渡ります。完全にノンカフェインであるため、胃に優しく、就寝前でも安心して飲むことができます。 夏はたっぷりの氷を入れて麦茶感覚でゴクゴクと、冬は温かいものをゆっくりとすする。どんな食事にも邪魔にならない万能な味わいです。

■ 健康効果:ダイエットと美肌、そして「産後ママの味方」

穀物の栄養を煮出して丸ごと摂取できるため、体に嬉しい効果が満載です。

  • ダイエットと血糖値のコントロール: 玄米の豊富な食物繊維とビタミンB群が代謝をアップさせ、糖の吸収を穏やかにします。無理なく続けられるダイエット茶として大人気です。

  • 血液サラサラとデトックス: 黒豆などとブレンドされたものは、利尿作用や血流改善効果が高く、体のむくみを取り、肌荒れを防ぐデトックス効果が抜群です。

  • 産後の体力回復・母乳育児のサポート(Lợi sữa): ベトナムで「ガオルック茶」といえば、産後の女性に欠かせない飲み物として有名です。栄養価が高く体を温めるため、母乳の出を良くする(Lợi sữa=ロイスア)効果があるとして、出産祝いなどでもよく贈られます。

■ 終わりに:米の国・ベトナムの優しい知恵

広大なメコンデルタや紅河デルタの豊かな土壌で育ったお米。それを主食として食べるだけでなく、焙煎して最後の一滴まで栄養をいただくチャーガオルックには、米の国・ベトナムの自然への感謝と生活の知恵が詰まっています。

刺激の強いコーヒーや渋いお茶に少し胃が疲れてしまった時は、カフェインゼロの優しい穀物の甘さに、心と体を委ねてみてはいかがでしょうか。


🌼チャークック(Trà Cúc)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】目と肝臓を癒す黄金の滴。港町ハイフォンが誇る絶妙なブレンド芸術「チャークック(菊花茶)」

Trà Cúc

これまでご紹介してきた「茶外茶(茶葉を使わないハーブティー)」や「花茶」の中でも、見た目の華やかさと薬効の高さで群を抜いているのが、今回ご紹介する「チャークック(Trà Cúc)」です。

ベトナム全土のカフェや伝統茶館で愛飲されていますが、ある特定の地域においては「コーヒーよりも飲まれている」と言われるほど、独自の進化を遂げています。

■ 語源とカテゴリー:秋を告げる「高貴な花」

名前の由来は非常にシンプルです。

  • Trà(チャー): お茶

  • Cúc(クック): 菊(主に小さな黄色い菊「Hoàng cúc(黄菊)」や、白い菊「Bạch cúc(白菊)」)

茶葉を使わず乾燥させた菊の花にお湯を注ぐため、純粋なものは「茶外茶」に分類されますが、緑茶や紅茶をベースに菊の花をブレンドしたものは「着香茶・花茶」のカテゴリーに入ります。

■ 誕生の背景:港町ハイフォンの「ソウルドリンク」

菊茶自体は中国などをルーツに広く東アジアで飲まれていますが、ベトナム独自の文化として絶対に外せないのが「ハイフォン式・菊花茶(Trà cúc Hải Phòng)」です。

首都ハノイの東に位置するベトナム第3の都市・港町のハイフォン。この街の若者や大人たちが路上カフェでこぞって飲んでいるのが、独自にブレンドされたチャー・クックです。 ハイフォン式のチャークックは、上質な菊の花に、甘草(カンゾウ=Cam thảo)の根、そして第1回コラムでも登場した小さな柑橘「クアット(キンカン)」の生絞り果汁を黄金比でブレンドして作られます。港町の荒々しく活気ある気風の中で、疲れた体を癒すためにこの複雑でパンチの効いた味わいが定着したと言われています。

■ 味わいと飲用文化:苦味、甘み、酸味の「完璧な三重奏」

一般的な純粋な菊茶は、お湯を注ぐと淡い黄色に染まり、カモミールのような優しく少しほろ苦い「草花の香り」が楽しめます。

一方、ハイフォン式のチャークックは、まさに味覚のエンターテインメントです。 口に含むと、まずはクアット(キンカン)の弾けるような**「酸味」、次に菊の花が持つ大人の「ほろ苦さ」、そして最後に甘草と氷砂糖が織りなす奥深い「甘み」が喉を潤します。氷をたっぷり入れて冷たくして(Trà cúc đá)飲むのが若者の定番スタイルで、ヒマワリの種をかじりながら、友人たちと夜遅くまでおしゃべりを楽しむお供として欠かせません。

■ 健康効果:「現代人の疲れ目」と「ストレス」の特効薬

古くから東洋医学で「上薬(副作用がなく長期間飲める薬)」とされてきた菊の花。現代人にとって嬉しい効能がたっぷりと詰まっています。

  • 眼精疲労の回復(明目): 菊茶の最も代表的な効能が「目」へのアプローチです。パソコンやスマートフォンで酷使した目の充血を和らげ、視界をクリアにする働き(明目作用)があるとされています。

  • 肝機能の改善とデトックス(清熱解毒): 体にこもった余分な熱を冷まし、肝臓の働きを助けます。ストレスでイライラしている時や、頭に血が上っているような時に飲むと、スッと気分を落ち着かせてくれます。

  • 風邪の引き始め・喉の痛みに: 抗菌・抗炎症作用があるため、少し熱っぽい時や喉にイガイガを感じた時に、温かいチャークックを飲むのがベトナムの伝統的な養生法です。

■ 終わりに:優雅さとストリート感が同居する花茶

お茶の器の中でパッと花開く黄色い菊を眺めるのは、それだけで心が洗われるような優雅な時間です。しかし同時に、路上のプラスチック椅子に座り、酸っぱくて甘いブレンド菊茶をワイワイと飲むのもまた、ベトナムのリアルな姿です。

静かなリラックスタイムには純粋なチャークックを、そして活気あふれるベトナムのストリートの風を感じたい時は、ぜひキンカンと甘草を入れた「ハイフォン式」を試してみてください。その絶妙な味わいの虜になるはずです。


👑チャークンディン(Trà Cung Đình)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】皇帝の健康と長寿を支えた「茶外茶」の最高峰。古都フエの薬膳ハーブティー「チャークンディン(宮廷茶)」

Trà Cung Đình

茶葉の発酵度合いによる「7分類」や、日常的な飲み方である「チャーダー」をご紹介してきました。しかし、ベトナムの茶文化には、一般的なお茶の樹の葉を一切使わず、植物の根や花、果実をブレンドした「茶外茶(Trà thảo mộc / ハーブティー)」というもう一つの巨大なカテゴリーが存在します。

今回はその中から、ベトナム最後の王朝であるグエン(阮)朝の都、中部の古都フエ(Huế)で生まれ、歴代の皇帝たちが愛飲した極上の一杯「チャークンディン(Trà Cung Đình)」をご紹介します。

■ 語源とカテゴリー:その名の通り「宮廷のお茶」

名前の由来は、歴史的な背景そのものを表しています。

  • Trà(チャー): お茶

  • Cung Đình(クンディン): 宮廷

直訳して「宮廷茶」。前述の通り、一般的な緑茶や紅茶の茶葉は使わず、東洋医学(漢方・薬膳)の思想に基づいて作られた「ブレンドハーブティー」に分類されます。

■ 誕生の背景:皇帝のストレスを癒す「門外不出の秘薬」

19世紀から20世紀半ばまで続いたグエン朝時代。広大な国土を治める皇帝たちは、常に激務と多大なストレスに晒されていました。

そこで、宮廷の専属医(太医院)たちが、皇帝の健康維持、疲労回復、そして安眠のために、陰陽五行のバランスを計算し尽くして調合したのがチャー・クンディンです。当時は門外不出のレシピであり、王族しか口にすることが許されない非常に高貴な飲み物でした。現在ではそのレシピが一般にも公開され、フエを代表する特産品・お土産としてベトナム全土で愛されています。

■ 味わいと成分:16〜30種類もの生薬が織りなす「黄金の甘み」

チャークンディンには、決まった1つの植物が使われるわけではありません。アーティチョーク、菊の花、甘草(カンゾウ)、クコの実、ナツメ、ハスの芯(ティムセン)、朝鮮人参など、実に16種類から、多いものでは30種類以上もの生薬やハーブがブレンドされています。

これだけ多くの漢方素材が入っていると「苦くて薬臭いのでは?」と思うかもしれませんが、驚くほど飲みやすいのが特徴です。ステビア(甘い葉)や甘草、ナツメ由来の「自然で上品な甘み」があり、後味はスッキリとしています。お湯を注ぐと黄金色に輝き、花や果実の複雑で甘雅な香りが立ち上ります。

■ 健康効果:飲むエステ、そして「安眠の薬」

皇帝の健康を守るために作られたお茶だけに、その効能は多岐にわたります。

  • 不眠の解消と深いリラックス: ブレンドされている「ハスの芯(ティムセン)」などの働きにより、自律神経を整え、深い眠りへと導く効果が期待できます。ノンカフェイン(茶葉不使用の場合)なので夜寝る前にも最適です。

  • 肝機能のサポートとデトックス(清熱解毒): アーティチョークや菊の花が、体内の余分な熱や毒素を排出し、肝臓の働きを助けます。お酒をよく飲む方にもおすすめです。

  • 美肌とアンチエイジング: クコの実やナツメなど、ビタミンや抗酸化物質を豊富に含む生薬がたっぷりと使われているため、女性には「飲むエステ」としても人気を集めています。

■ 終わりに:古都の優雅な時間に思いを馳せて

現代のフエを訪れると、ゆったりと流れるフォン川(香江)のほとりや、古い伝統建築のカフェで、このチャークンディンを味わうことができます。

慌ただしい現代社会において、時にはカフェインをお休みし、自然の甘みと香りに身を委ねてみるのも良いものです。たくさんのハーブが器の中で花開く様子を眺めながら、かつての皇帝たちが愛した優雅な癒しの時間を、ぜひご自宅でも体験してみてください。


🥒チャーコークア / ムオップダン(Trà Khổ Qua / Mướp Đắng)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】「苦難は過ぎ去る」。縁起の良い名前と、体に染み渡る究極のデトックス茶「チャーコークア(ゴーヤ茶)」

Trà Khổ Qua

ベトナムの市場に行くと、ゴツゴツとした緑色の野菜が山積みにされています。日本でも沖縄料理などでお馴染みの「ゴーヤ(苦瓜)」です。

ベトナムではこのゴーヤを、スープや炒め物として食べるだけでなく、薄くスライスして天日干しにし、日常的な健康茶として愛飲する文化が深く根付いています。今回は、良薬口に苦しを体現するベトナムのデトックス茶、「チャー・コークア(Trà Khổ Qua)」をご紹介します。

■ 語源とカテゴリー:南北で変わる呼び名と「縁起の良い言葉遊び」

このお茶も、ジャスミン茶(ニャイ / ライ)と同様に、北部と南部で呼び名が変わります。お茶の樹を使わないため「⑧【🌿茶外茶】」に分類されます。

  • Trà(チャー): お茶

  • Mướp Đắng(ムオップダン): ゴーヤ(主に北部での呼び名。「苦い瓜」の意)

  • Khổ Qua(コークア): ゴーヤ(主に南部での呼び名)

ここで特筆すべきは、南部の「Khổ Qua(漢字で書くと『苦瓜』)」という言葉です。ベトナム語で「Khổ」は「苦難・苦しみ」、「Qua」は「過ぎ去る・越える」という発音と同じになります。 つまり、「Khổ Qua=苦難は過ぎ去る」という非常に縁起の良い言葉遊びになっており、南部ベトナムではお正月(テト)に必ずゴーヤの肉詰めスープを食べて、旧年の苦労を洗い流すという美しい風習があります。

■ 誕生の背景:お母さんの手作りから広まった「家庭の知恵」

チャーコークアは、元々は各家庭で手作りされる「お母さんの味」でした。

旬の時期に安く大量に手に入ったゴーヤを薄く輪切りにし、ベトナムの強烈な太陽の下でカラカラになるまで天日干しにします。それをフライパンで香ばしく乾煎り(Sao vàng)すれば、一年中保存できる万能薬の完成です。 現在ではスーパーや薬局でティーバッグタイプのものが広く市販されていますが、今でも「健康のために」と自家製のゴーヤ茶を作り置きしている家庭は少なくありません。

■ 味わいと飲用文化:強烈な苦味の先にある「究極の甘い余韻」

ゴーヤのお茶と聞くと「苦くて飲めないのでは?」と身構えるかもしれませんが、天日干しと焙煎の工程を経ているため、生で食べるよりも角が取れた味わいになっています。

とはいえ、口に含んだ瞬間のファーストインパクトは、やはり突き抜けるような「苦味(Đắng)」です。しかし、麦茶のような香ばしさと共にその苦味を飲み込むと、不思議なことに、喉の奥からじわじわと「強い甘み(Hậu ngọt=ハウンゴット)」が湧き上がってきます。 この「苦味の後の甘み」こそがベトナム人が愛してやまない感覚であり、熱いままゆっくりとすするだけでなく、夏場は氷を入れて冷やし、日常の水分補給としてゴクゴクと飲むことも多いです。

■ 健康効果:飲むインスリンと呼ばれる「天然の特効薬」

チャーコークアは、ベトナムの数ある健康茶の中でも、特に「生活習慣病の予防」として絶大な信頼を集めています。

  • 血糖値のコントロール(糖尿病予防): ゴーヤに含まれる植物インスリン(ポリペプチド-P)やチャランチンといった成分が、血糖値を下げる働きをサポートします。甘いベトナムコーヒーや炭水化物の多い食事の後に最適です。

  • 強力なデトックス(清熱解毒)と美肌: 体内の余分な熱を冷まし、肝臓の解毒作用を助けます。ベトナムの若者の間では「ニキビや肌荒れがひどい時はゴーヤ茶を飲め」と言われるほど、内側からのスキンケアとして定着しています。

  • 脂肪燃焼とダイエット: 共役リノール酸という成分が脂肪の燃焼を助け、むくみを解消する働きがあるため、ダイエット中のお茶としても人気です。

■ 終わりに:「苦味」を愛でるベトナムの人生哲学

「苦難は過ぎ去る(Khổ Qua)」という名前の通り、最初に感じる強い苦味を受け入れた後には、必ず心地よい甘さがやってくる。チャーコークアの味わいは、まるでベトナムの人々が持つ前向きでたくましい人生哲学そのものです。

甘いお茶や香りの良いお茶に少し飽きた時は、ぜひこの「究極のデトックス茶」に挑戦してみてください。そのシャキッとする苦味と後から来る優しい甘さが、疲れた体と心を力強くリセットしてくれるはずです。


🌿チャーサムズア(Trà Sâm Dứa)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】ダナンのおもてなしの代名詞!「東洋のバニラ」が甘く香る魅惑のブレンド茶「チャーサムズア」

Trà Sâm Dứa

ベトナム中部の美しいビーチリゾート、ダナン(Đà Nẵng)。この街の食堂やシーフードレストランに入ると、サービスの冷たいお茶(チャーダー)として、他地域では味わえない「信じられないほど甘く良い香りのお茶」が出てきて驚く旅行者が後を絶ちません。

そのお茶の正体こそが、ダナンをはじめとする中部地方の特産品「チャー・サムズア(Trà Sâm Dứa)」です。一度飲めば忘れられない、ベトナム中部の「ソウルドリンク」をご紹介します。

■ 語源とカテゴリー:パイナップルではなく「パンダンリーフ」

このお茶の名前には、旅行者がよく勘違いしてしまう面白い秘密があります。

  • Trà(チャー): お茶

  • Sâm(サム): 朝鮮人参、あるいは体に良い薬草(漢方)の総称

  • Dứa(ズア): パンダンリーフ(ニオイタコノキの葉)

ベトナム語で「Dứa(ズア)」というと果物のパイナップルを想像するかもしれませんが、南部や中部では「Lá dứa(ラーズア=パンダンリーフ)」という植物の葉を指します。 チャーサムズアは、上質な緑茶(または烏龍茶)をベースに、このパンダンリーフや数種類のハーブ(ジャスミンや甘草など)をブレンドした「再加工茶(着香茶)」と「茶外茶」のハイブリッドのような存在です。

■ 誕生の背景:「東洋のバニラ」が織りなす魔法

パンダンリーフ(Lá dứa)は「東洋のバニラ」とも呼ばれ、東南アジアのスイーツや料理の香り付けに欠かせないハーブです。お米と一緒に炊いて香りをつけたり、チェー(ベトナムぜんざい)に入れたりと、ベトナム人にとって非常に馴染み深い植物です。

この甘く香ばしいパンダンリーフの香りを、スッキリとした緑茶にまとわせたのがチャーサムズアです。一年中暑い中部の気候において、緑茶の渋みを和らげ、よりゴクゴクと飲みやすく、かつ「おもてなしの心」を感じさせる特別なお茶としてダナンで大流行し、特産品として定着しました。

■ 味わいと飲用文化:バニラとココナッツのような「甘い錯覚」

チャーサムズアの最大の特徴は、その圧倒的な「香り」にあります。

グラスを口に近づけた瞬間、バニラやココナッツ、あるいは焼き立てのクッキーのような、うっとりするほど甘く香ばしい香りが漂います。しかし、実際に口に含んでみると、お茶自体には砂糖が入っていないため、緑茶のキリッとした爽快感が広がります。「香りは甘いのに、味はスッキリしている」という、心地よい錯覚に陥るのがこのお茶の魔法です。

ダナンの人々と同じように、たっぷりの氷を入れてキンキンに冷やした「チャーダー」のスタイルで飲むのが一番美味しい味わい方です。

■ 健康効果:南国の太陽から体を守る「飲むクーラー」

名前に「Sâm(体に良い薬草)」とついている通り、ただ美味しいだけでなく、暑い地域ならではの優れた効能を持っています。

  • 強力なクールダウン効果(清熱解毒): 緑茶とパンダンリーフの組み合わせは、体内にこもった熱をスッと冷ましてくれます。日差しをたっぷり浴びたビーチの後に最適な「飲むクーラー」です。

  • 胃腸の保護と消化促進: パンダンリーフには胃腸の働きを助ける効果があります。ダナン名物のシーフードや、少し辛めのスパイシーな中部料理をたくさん食べた後でも、このお茶を飲めば胃もたれを防いでくれます。

  • リラックスとストレス緩和: パンダンリーフの甘い香りには自律神経を整えるアロマ効果があり、不安を和らげ、心を穏やかにリフレッシュさせてくれます。

■ 終わりに:ダナンの思い出を呼び起こす香り

ベトナム中部の美しい海、親切な人々、そして美味しい料理。それらの記憶はすべて、このチャーサムズアの甘い香りとともに旅行者の心に刻まれます。

ダナンのお土産屋さんやスーパーマーケットには必ず置いてある定番の特産品ですので、もし訪れた際はぜひ手に入れてみてください。ご自宅で冷たいチャーサムズアを淹れれば、いつでもダナンの爽やかな海風を感じることができるはずです。


日越食文化協会(JVGA)の「アムトゥックベトペディア〜お茶編」、第15回は、その優雅な名前と「衝撃的なローカルネーム」のギャップ、そして強烈な薬効で知られるハーブティー「チャー・ジエップハチャウ(葉下珠茶)」をお届けします。

ベトナムのお酒好きの男性陣から「肝臓の守り神」として絶大な信頼を集める、究極の「苦口良薬」です。


🌿チャーサン / チェーサン(Trà Xanh / Chè Xanh)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】茶葉を摘んで、そのまま鍋へ!究極のフレッシュさと農村の原風景を味わう「チャーサン(生緑茶)」

Trà Xanh

これまで、乾燥・焙煎などの加工を経た「不発酵茶(緑茶)」としてタイグエン茶やチャーマンをご紹介してきました。しかし、ベトナムの市場や田舎の農村で単に「緑茶」と言った場合、それは綺麗にパッケージされた茶葉ではなく、枝つきのバサバサとした「生の茶葉(Lá trà tươi)」を指すことが多くあります。

今回は、摘みたての新鮮な茶葉を加工せずにそのまま煮出して飲む、ベトナムの最も原始的でピュアな日常茶「チャーサン(Trà Xanh)」をご紹介します。

■ 語源とカテゴリー:北部と南部での呼び名、そして「生の葉」

名前の由来は極めてシンプルですが、地域によって呼び方が異なります。カテゴリーとしては、もちろん第1分類の「不発酵茶」の原点です。

  • Trà Xanh(チャーサン): 主に南部での呼び名(Trà=お茶、Xanh=緑)

  • Chè Xanh(チェーサン): 主に北部での呼び名(Chè=お茶、Xanh=緑)

ベトナム北部では、伝統的にお茶全般や、特にこの生の茶葉から作るお茶のことを「Chè(チェー)」と呼びます(※甘いデザートのチェーと同じスペル・発音ですが、文脈で区別します)。市場に行くと、野菜の隣でこの「チェーサン」の枝葉が山積みになって売られています。

■ 誕生の背景:加工ゼロ!農村の庭先から生まれる究極のフレッシュネス

チャーサンは、茶葉を「揉む」「乾燥させる」「焙煎する」といった製茶のプロセスを一切経ていません。

かつてのベトナムの農村では、各家庭の庭や村の共有地に茶の木が植えられていました。朝、そこから新鮮な枝葉をブチッと手でちぎり、井戸水でバシャバシャと洗い、少し手で揉んで香りを出しながら、大きな鍋や土瓶(Ấm đất)に放り込んでグツグツと煮出します。 これが、ベトナムの農民たちが昔から農作業の合間に飲んできた、最も身近でエネルギーに満ちた水分補給の姿なのです。

■ 味わいと飲用文化:大地を感じる「青々とした渋み」

加工された高級緑茶のような、繊細な旨みや透き通るような香りとは対極にあります。

チャーサンを煮出すと、濁りのある黄色がかった緑色になります。口に含むと、生の葉っぱ特有の青々とした「草の香り」と、野性味あふれる「強い渋み(Chát)」がガツンと押し寄せてきます。しかし、その渋みの後には、自然そのものの力強い甘みが喉の奥に残ります。 家庭によっては、煮出す際に生姜のスライス(Gừng)を数枚入れることもあります。これにより青臭さが和らぎ、体がポカポカと温まる素晴らしいアクセントになります。

■ 健康効果:加工されていないからこその「最強の抗酸化パワー」

熱処理や酸化のプロセスを一切受けていない生の茶葉には、植物のエネルギーがそのまま閉じ込められています。

  • 究極のアンチエイジング(カテキンの宝庫): 緑茶の渋み成分であり、強力な抗酸化作用を持つ「カテキン(EGCG)」。生の茶葉を煮出すチャーサンは、このカテキンを最もダイレクトかつ大量に摂取できる方法の一つです。

  • 強力な抗菌作用とオーラルケア: 生の茶葉の煮出し汁は非常に殺菌力が高く、食後の虫歯予防や口臭ケアに絶大な効果を発揮します。

  • 体を冷ます「清熱作用」: 東洋医学では、新鮮な茶葉には体にこもった熱を排出する強い「清熱解毒」の作用があるとされており、ベトナムの厳しい夏を乗り切るための天然のクーラーとして機能します。

■ 終わりに:ベトナムの生命力を丸ごといただく一杯

洗練された茶器で淹れる高級茶も素晴らしいですが、大きな土鍋でワイルドに煮出されたチャーサンには、ベトナムの豊かな大地と、農村の人々のたくましい生命力がそのまま溶け込んでいます。

ローカルな食堂や、田舎の親戚の家を訪れた際、もしこの青々とした香りのするお茶が出てきたら大正解です。ベトナムの原風景を味わうつもりで、その力強い渋みを楽しんでみてください。


🌿チャージエップハチャウ / チョーデ(Trà Diệp Hạ Châu / Chó Đẻ)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】優雅な名前と衝撃のローカルネーム!お酒好きの肝臓を強力に守る究極のデトックス茶「チャージエップハチャウ(コミカンソウ茶)」

Trà Diệp Hạ Châu

これまで、ゴーヤやトウモロコシのひげなど、身近な食材を使った「茶外茶(ハーブティー)」をご紹介してきましたが、ベトナムの薬膳茶の世界には、さらにディープで強烈な存在が控えています。

今回は、道端の雑草として見過ごされがちでありながら、実はベトナム民間療法において「肝臓の特効薬」として不動の地位を築いているお茶、「チャー・ジエップハチャウ(Trà Diệp Hạ Châu)」をご紹介します。

■ 語源とカテゴリー:優雅な漢名と、衝撃的な「犬の草」

このお茶に使われる植物(日本では『コミカンソウ』の仲間)には、全く異なる2つの呼び名があります。当然、茶葉は使わないため「茶外茶」に分類されます。

  • Diệp Hạ Châu(ジエップハチャウ): 漢字で書くと「葉下珠(ようかじゅ)」。葉っぱの裏側に、真珠(珠)のような小さな丸い実がズラリと一列に並んでつく美しい姿から名付けられた、非常に優雅な東洋医学の正式名称です。

  • Cây Chó Đẻ(ケイチョーデ): 一方で、ベトナムの農村や日常会話で使われるローカルネームは「犬(Chó)が産む(Đẻ)草」。直訳すると「犬のお産草」という衝撃的な名前です。これは昔から、母犬が出産を終えた後に、自らの傷を癒やし血を止めるために本能的にこの草を探して食べるという農村の風景から名付けられました。

パッケージには美しい響きの「Diệp Hạ Châu」と書かれていますが、地元の人に「ああ、チョーデのお茶ね!」と言われても驚かないでください。そこには動物の知恵から薬効を学んだ、人々のたくましい歴史があります。

■ 誕生の背景:路傍の雑草から「お酒好きの救世主」へ

ジエップハチャウは、ベトナム全土の道端や空き地に自生している非常に生命力の強い植物です。かつては田舎でケガをした時や、お腹の調子が悪い時に摘んで煮出す「家庭の民間薬」でした。

しかし、現代のベトナムは世界でも有数の「ビール消費国」です。連日の飲み会(Nhậu=ニャウ)で肝臓を酷使する人々が増える中、この植物が持つ驚異的な肝機能回復効果が科学的にも注目され始めました。現在では、薬局やスーパーでティーバッグや顆粒タイプの「肝臓保護ティー」として大々的に商品化され、健康を気遣う大人たちのマストアイテムへと大出世を遂げたのです。

■ 味わいと飲用文化:ゴーヤに匹敵する「良薬口に苦し」

動物が本能で食べるほどの薬草ですから、その味わいは決して「甘くて美味しい」ものではありません。

単体で煮出したお茶は、ゴーヤ茶(チャーコークア)に匹敵する、あるいはそれ以上の強烈な「苦味」と「えぐみ」があります。まさに「良薬口に苦し」を体現した味です。 しかし、市販されているお茶の多くは、この苦味を和らげるために甘草(カンゾウ=Cam thảo)ステビア(甘い葉=Cỏ ngọt)といった天然の甘み成分を持つハーブがブレンドされています。そのため、飲んだ瞬間は苦くても、すぐに喉の奥からホッとするような甘い余韻(Hậu ngọt)が戻ってくる、ベトナム人が大好きな「苦甘い」絶妙なバランスに仕上がっています。

■ 健康効果:肝臓と腎臓を洗い流す「天然のフィルター」

チャージエップハチャウは、特定の症状に対して明確な目的を持って飲まれることが多い、非常に薬効の高いお茶です。

  • 最強の肝臓デトックス(解毒作用): 肝臓の細胞を保護し、酵素の働きを助ける成分が豊富に含まれています。お酒の飲み過ぎによる肝臓の疲労回復や、二日酔いの改善、さらには肝炎などの予防サポートとして、ベトナムの医師からも勧められるほどです。

  • 結石を砕く「ストーン・ブレイカー」: 南米などでもこの植物は「Chanca Piedra(結石砕き)」と呼ばれ、腎臓結石や胆石を溶かし、体外への排出を促す効果があることで世界的に知られています。

  • 清熱作用による肌荒れ改善: 体内にこもった毒素や熱を排出するため、しつこいニキビや吹き出物、アトピーなどの皮膚トラブルに悩む若者たちも、このお茶で内側からの体質改善を図ります。

■ 終わりに:自然の処方箋に感謝する一杯

「犬のお産草」という名前の由来を知ると、足元の雑草にも素晴らしい命の力が宿っていることに気付かされます。

連日のお付き合いやストレスで「最近ちょっと体が重いな」「肝臓が疲れているな」と感じた時は、ベトナムの大地が用意してくれたこの天然の処方箋を試してみてください。そのガツンとくる苦味が、あなたの体をシャキッと力強くリセットしてくれるはずです。


🌳チャーシャントゥイエット / コートゥー(Trà Shan Tuyết / Cổ Thụ)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】雲海にそびえる樹齢数百年の神秘。大自然と少数民族が守り継ぐ野生茶「雪山古樹茶(チャーシャントゥイエットコートゥー)」

Trà Shan Tuyết

ベトナム茶の「7分類」について解説した際、第2のカテゴリー「白茶」や、第6のカテゴリー「黒茶(プーアル茶)」の原料として、北部山岳地帯の古い木から採れる希少なお茶に少し触れました。

今回は、その茶葉そのものに焦点を当てます。農園で綺麗に刈り込まれた茶畑ではなく、深い森の霧の中で何百年も生き抜いてきた巨大な野生の茶樹。ベトナムではこれを「チャーシャントゥイエット(Trà Shan Tuyết)」、あるいは「チャーコートゥー(Trà Cổ Thụ)」と呼び、最高級の銘茶として珍重しています。

■ 語源とカテゴリー:2つの名前が示す「過酷な環境」と「生命力」

ベトナムのお茶専門店に行くと、この2つの名前はしばしば「Trà Shan Tuyết Cổ Thụ(雪山古樹茶)」とセットで呼ばれます。それは、この2つの言葉が「同じ一つの奇跡の木」を異なる角度から表現しているからです。

  • Cổ Thụ(コートゥー = 古樹): 文字通り「古い樹木」のこと。樹齢100年から、古いものでは500年を超える大木であることを示します。

  • Shan Tuyết(シャントゥイエット = 雪山): 「Shan」は山、「Tuyết」は雪を意味します。標高1,000メートル以上の高地(イエンバイ省スオイザンやハザン省など)の過酷な寒さから身を守るため、新芽が真っ白でフワフワとした「雪のような産毛」に覆われている特徴を表しています。

※なお、これは「木の種類・状態」を指す言葉であるため、摘み取った後の加工方法によって、緑茶、白茶、紅茶、後発酵茶(プーアル茶)など、様々なカテゴリーのお茶へと姿を変えます。

■ 誕生の背景:少数民族による命懸けの手摘み

一般的なお茶の木は、大人の腰くらいの高さに切り揃えられています。しかし、ベトナム北部の雪山古樹は、高さが10メートル以上、幹の太さは大人が両手を回して抱えるほどの巨木です。

これらの茶樹は、農薬や肥料を一切使わず、大自然の霧と土壌の力だけで完全に野生の状態で育ちます。収穫の時期になると、モン族(H'Mông)やザオ族(Dao)といった山岳少数民族の人々が、竹のハシゴを使い、高い枝に登って一つひとつ白い新芽を手摘みします。まさに自然への敬意と、命懸けの作業から生まれる産物なのです。

■ 味わいと飲用文化:大地のエネルギーを感じる「茶気」

チャーシャントゥイエット(コートゥー)は、平地で育つお茶とは次元の違う奥深い風味を持っています。

熱湯を注ぐと、蘭の花や蜜のような野性味あふれる香りが立ち上ります。口に含むと、力強い渋みの後に、喉の奥から驚くほど長く強い甘み(Hậu ngọt=ハウ・ンゴット)がこみ上げてきます。

また、茶葉が非常に肉厚で成分が凝縮されているため、同じ茶葉で7〜10回はお湯を注いで楽しむことができるのも特徴です。茶器を使い、時間をかけてじっくりとその変化を味わうのが愛好家のスタイルです。

■ 健康効果:深く根を張った古樹のミネラル

何百年もの間、地中深くへと根を伸ばし続けてきた古樹には、大地のミネラルや栄養成分が桁違いに蓄積されています。

  • 強力なデトックスと免疫力向上: 完全無農薬で育った野生茶ならではの純度の高いカテキンやアミノ酸が、血液を浄化し、細胞の老化を防ぎます。

  • 体を芯から温める「茶気(Trà khí)」: 中国茶やベトナム茶の愛好家の間で言われる「茶気(エネルギー)」。上質な古樹茶を飲むと、血流が良くなり、背中やお腹のあたりがポカポカと温かくなるのを感じることができます。冷え性の改善にも効果的です。

■ 終わりに:一杯の茶杯に広がる大自然

現代の大量生産された飲料とは対極にある、チャーシャントゥイエット。それは単なる飲み物ではなく、ベトナム北部の厳しい自然と、そこに生きる少数民族の歴史そのものを味わう体験です。

もしベトナムの茶館や専門店で「Shan Tuyết」や「Cổ Thụ」の文字を見つけたら、ぜひゆっくりと時間をとって味わってみてください。何百年もの時を生きた古樹のエネルギーが、都会の喧騒で疲れた心と体を、静かに、そして力強く癒してくれるはずです。

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森を守り、搾取を乗り越える...「知られざるお茶大国」ベトナムで「古木茶」経済が動き出した (Newsweek ニューズウィーク日本版, 2026/03/19, 監修: 日越食文化協会)


🪷チャーセン(Trà Sen)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】何千もの花と途方もない手間が生み出す芸術品。ベトナムを代表する着香茶「チャーセン(ハス茶)」

Trà Sen

前回解説したベトナム茶の「7分類」。その中でも、ベトナム独自の茶文化として非常に重要かつ特別な位置を占めているのが、第7のカテゴリーである「着香茶・花茶(Trà ướp hoa)」です。

今回は、その花茶の中でも最高級品とされ、古くから王侯貴族や文人墨客に愛されてきたベトナムの象徴的なお茶、「チャーセン(Trà Sen)」をご紹介します。

■ 語源とカテゴリー:国花「ハス」の香りをまとった芸術品

名前の由来は極めてシンプルです。

  • Trà(チャー): お茶

  • Sen(セン): ハス(蓮)

泥の中から真っ直ぐに茎を伸ばし、美しく清らかな花を咲かせるハスは、ベトナムの「国花」でもあります。チャーセンは、緑茶(主に前回ご紹介したタイグエン茶などの上質な不発酵茶)をベースに、このハスの花の香りを茶葉に吸着させた「再加工茶(着香茶)」に分類されます。

■ 誕生の背景と製法:途方もない時間と職人技

チャーセンの最大の特徴は、そのあまりにも手間のかかる製法にあります。特にハノイのタイ湖(Hồ Tây:西湖)周辺で採れる「百葉(Bách Diệp)」と呼ばれる八重咲きのハスを使ったものは、最高級ブランド「タイ湖のハス茶(Trà sen Hồ Tây)」として知られています。

伝統的な製法では、花が最も強い香りを放つ夜明け前、まだ朝露が残る時間帯に小舟に乗ってハスを摘み取ります。そして、花びらの中にある「白い米粒のような葯(やく・ガオセン)」だけを丁寧に取り出し、上質な緑茶の茶葉と何層にも交互に重ねて香りを移し、乾燥させます。

この「香りを移しては乾燥させる」という工程を5回〜7回も繰り返すため、1キロの最高級ハス茶を作るために、なんと1,000〜1,500輪ものハスの花が必要になるのです。

※現在では、香料を吹き付けた安価なものや、ハスの花そのものの中に茶葉を包み込んで一晩置く簡易的な製法(Trà sen xổi)などもありますが、伝統的な本物のチャーセンは非常に高価な芸術品です。

■ 飲用文化:静寂の中で「香り」を嗜む

かつてのグエン(阮)朝時代の王宮や、ハノイの貴族たちが愛したチャーセン。その飲み方は、喉の渇きを潤すためではなく、精神を落ち着け、香りそのものを嗜むための「儀式」に近いものがあります。

熱すぎないお湯(80〜85度程度)で丁寧に淹れ、香りが逃げないように小さな茶器に注ぎます。口に含むと、緑茶の爽やかな渋みの奥から、甘く高貴で、どこかエキゾチックなハスの香りが鼻腔へとふわりと抜けていきます。お正月(テト)や特別なお祝いの席、あるいは大切な客人を最高級の敬意を持ってもてなす際に、このチャーセンが振る舞われます。

■ 健康効果:心身の熱を冷まし、安らぎをもたらす

チャーセンは、ベースとなる緑茶の健康効果(抗酸化作用や消化促進)に加え、ハス由来の薬効や香りのリラックス効果が期待できます。

  • 深いリラックスとストレス緩和: ハスの甘く清らかな香りには、高ぶった神経を鎮め、ストレスや不安を和らげるアロマテラピー効果があります。

  • 清熱解毒(ほてりを取る): 東洋医学において、ハスは体内にこもった余分な熱を冷まし、毒素を排出する「 thanh nhiệt(清熱)」の作用があるとされています。暑いベトナムの気候において、理にかなった飲み物です。

  • 【補足】不眠解消には「ティム・セン(Tim Sen)」を: チャーセン自体はベースが緑茶のためカフェインを含みます。もし「睡眠の質を上げたい」という場合は、ハスの実の緑色の胚芽部分だけを集めたハーブティー(茶外茶)である「チャーティムセン(Trà tim sen)」がおすすめです。強烈な苦味がありますが、不眠症に効く民間薬としてベトナムで広く親しまれています。

■ 終わりに:ベトナムの美意識が凝縮された一杯

「泥より出でて泥に染まらず」というハスの花のあり方は、ベトナム人の精神的な清らかさや力強さの象徴です。

何千輪もの花を摘み、途方もない時間をかけてその香りを茶葉に封じ込めるチャーセンには、自然への敬意とベトナムの職人たちの美意識がギュッと凝縮されています。もしベトナムで「本物のチャーセン」に出会う機会があれば、ぜひ目を閉じて、その高貴な香りの奥にある歴史と手間に思いを馳せてみてください。


🧊チャーダー(Trà Đá)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】路地裏のオアシスであり、ベトナム人のソウルドリンク。究極の日常茶「チャーダー(Trà Đá)」

「7分類」をベースに、タイグエン茶(緑茶)、ハス茶やジャスミン茶(着香茶)といった茶葉の種類をご紹介してきました。しかし、ベトナムの茶文化を語る上で、絶対に避けては通れない「国民的なお茶」があります。

Trà Đá

それが、街の至る所で飲まれている氷入りのお茶、「チャーダー(Trà Đá)」です。

これは茶葉の品種や製法を指す言葉ではなく、「飲み方のスタイル」の名前です。しかし、この一杯の冷たいお茶こそが、現代ベトナムの日常生活とコミュニケーションの根幹を支えていると言っても過言ではありません。

■ 語源と位置づけ:種類ではなく「スタイルの名前」

名前の由来は、見た目そのものです。

  • Trà(チャー): お茶

  • Đá(ダー):

直訳して「氷茶(アイスティー)」。ベースとなるお茶は、これまでご紹介してきた「緑茶(タイグエン茶など)」や「ジャスミン茶」が一般的です。特に、少し渋みの強い安価な茶葉を濃いめに抽出し、たっぷりの水と氷で割って作るのが定番のスタイルです。

■ 飲用文化①:路上カフェ「クアン・チャーダー(Quán trà đá)」の風景

ベトナムの街を歩けば、路上のあちこちに低いプラスチックの椅子と小さなテーブルを並べただけの簡易的なお茶屋「クアン・チャーダー」を目にします。

一杯わずか3,000〜5,000ドン(約20〜30円)程度。人々はここでヒマワリの種(Hạt hướng dương)をかじりながら、友人や同僚と「チェムゾー(Chém gió=直訳は風を斬る、転じて『雑談する、大風呂敷を広げる』の意)」と呼ばれるおしゃべりに花を咲かせます。

タクシーの運転手から、学生、スーツ姿のビジネスマンまで、誰もが同じ低い椅子に腰掛けて喉を潤すこの場所は、身分や年齢に関係なく人々が交流する「ベトナム社会の縮図」のような空間です。

■ 飲用文化②:食堂での「無料(または格安)のサービス」として

フォー(Phở)やコムタム(Cơm tấm)などのローカル食堂に入ると、席に着くや否や、あるいは料理と一緒にポンッと出されるのがチャーダーです。

日本の食堂で出てくるお水や麦茶と同じ感覚で、無料、もしくはおしぼり代程度のごくわずかな金額で提供されます。南部のホーチミンなど一年中暑い地域では、ピッチャーと氷の入ったグラスがドンと置かれ、セルフサービスで飲み放題というスタイルもよく見かけます。

■ 健康効果と役割:熱帯のオアシスとしての機能

高級な茶葉を使ったお茶のような繊細な香りや深い効能を求めるものではありませんが、チャーダーには熱帯のベトナムならではの重要な役割があります。

  • 猛暑を乗り切る水分補給と「清熱」: うだるような暑さの中、氷でキンキンに冷えたチャーダーは最高の水分補給です。緑茶の成分が体内の熱を冷ましてくれます。

  • ローカルフードとの完璧な相性(口内リセット): 油を使った炒め物や、甘辛い味付け、ヌクマム(魚醤)の香りが効いたベトナム料理。その後に飲むチャーダーのキリッとした渋みと冷たさは、口の中の油分や匂いをスッキリと洗い流す「口内リセット」の役割を完璧に果たしてくれます。

■ 終わりに:ベトナムのリアルな息遣いを感じる一杯

美しい茶器で淹れるハス茶が「特別な日のお茶」だとしたら、プラスチックのコップに注がれたチャーダーは「生きるためのお茶」です。

ベトナムを訪れたら、ぜひ勇気を出して路上の椅子に座り、チャーダーを一杯頼んでみてください。氷が溶けてカランと鳴る音、行き交うバイクの喧騒、そして人々の笑い声。そのすべてが溶け込んだその冷たい一杯の中に、ベトナムの最もリアルな魅力が詰まっていることに気づくはずです。


🍵チャー・タイグエン(Trà Thái Nguyên)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】世界基準の六大茶類とベトナム流「7分類」、そして最高峰の緑茶「チャー・タイグエン」

Trà Thái Nguyên

カテゴリーの①「緑茶」に属し、ベトナム緑茶の最高峰として名高い「チャー・タイグエン(Trà Thái Nguyên)」をご紹介します。

■ 語源:北部が誇る「お茶の都」の地名

名前の由来は非常にシンプルで、産地の名前そのものです。

  • Trà(チャー): お茶

  • Thái Nguyên(タイグエン): タイグエン省(ベトナム北部の省)

ハノイから北へ約80kmに位置するタイグエン省、特に「タンクオン(Tân Cương)」という地域は、気候や土壌が茶葉の栽培に最も適しています。ここで採れたお茶は「チャー・タンクオン(Trà Tân Cương)」とも呼ばれ、古くから献上茶として珍重されてきたベトナム緑茶のトップブランドです。

■ 飲用文化:「茶に始まり、茶に終わる」ベトナムのおもてなし

ベトナムのことわざに「Khách đến nhà không trà thì rượu(客が家に来たら、お茶がなければ酒を出す)」とあるように、チャー・タイグエンは来客へのおもてなしに欠かせない飲み物です。

街角の路上カフェ(Quán trà đá)などで、プラスチックのコップに氷を入れて出される薄めの冷茶「チャダー(Trà đá)」とは異なり、チャー・タイグエンは熱いお湯でじっくりと淹れ、小さな茶器で豊かな香りを楽しむのが伝統的なスタイルです。

淹れ方にも独自の作法があります。小さな陶器の急須(Ấm trà)に茶葉を入れ、お湯を注いだら「最初の1煎目はすぐに捨てる」のが基本です。これは「洗茶(Tráng trà)」と呼ばれ、茶葉を開かせつつホコリや雑味を取るための重要な工程。そして2煎目以降を、おちょこのような小さな茶杯に注ぎ、少しずつすすりながら味わいます。

また、タイグエン茶特有の強烈な渋みがあるため、甘いピーナッツ菓子(Kẹo lạc)や、ホロホロとした緑豆の落雁(Bánh đậu xanh)などと一緒に楽しむのがベトナム流です。

■ 健康効果:心身を整える「緑の万能薬」

チャー・タイグエンは、ただ香りが良いだけでなく、健康に多くのメリットをもたらす面でも古くから愛されてきました。

  • 強力な抗酸化作用(エイジングケア): 緑茶特有のポリフェノールであるカテキン(特にEGCGという成分)が豊富に含まれています。これにより細胞の老化を防ぎ、免疫力を高める効果が期待されます。

  • リラックス効果と集中力アップ: 旨味成分であるアミノ酸の一種「L-テアニン」が含まれており、カフェインの過剰な興奮作用を穏やかにします。ストレスを軽減させつつ、静かな集中力をもたらしてくれます。

  • 消化促進・オーラルケア: 食後の一杯は消化器官の働きを助け、口の中の油分をスッキリとさせる効果もあります。油っぽい食事の後に渋めのチャー・タイグエンを飲むのは、非常に理にかなった習慣なのです。

■ 終わりに:ベトナムの精神性に触れる一杯

ベトナムコーヒーの濃厚な甘さも魅力的ですが、小さな茶器から立ち上る若草のような香りと、ガツンとくる力強い渋み、そして飲んだ後に喉の奥からフワッと戻ってくる甘い余韻(Hậu ngọt=ハウ・ンゴット)は、ベトナム人の美意識そのものです。

ベトナムを訪れた際や、現地の知人の家に招かれた際は、ぜひこの「ベトナム緑茶の最高峰」をじっくりと味わい、その奥深い文化を感じてみてください。


☕️チャーデン / ホンチャー(Trà Đen / Hồng Trà)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】若者のカフェ文化を支える立役者であり、世界へ羽ばたく輸出のエース!「チャーデン(紅茶)」

ベトナムのお茶といえば、これまでご紹介してきたような渋い「緑茶」や、香りの良い「花茶」のイメージが強いかもしれません。確かに、伝統的な家庭や路上で飲まれているのは主に緑茶です。

Trà Đen

しかし、現代の活気あふれるベトナムの街角、特に若者たちが集まるモダンなカフェにおいて、最も消費されているお茶のベースは間違いなくこの「チャーデン(Trà Đen / 紅茶)」です。今回は、ベトナム茶の「現代の顔」とも言える全発酵茶の魅力に迫ります。

■ 語源とカテゴリー:「黒い葉」と「赤い水」の2つの呼び名

カテゴリーとしては、茶葉を完全に(100%近く)発酵させた第5分類の「全発酵茶」に属します。ベトナムでは主に2つの呼び名が混在しています。

  • Trà Đen(チャーデン): 直訳すると「黒茶」。西洋の「Black Tea」の直訳であり、完全に発酵して黒褐色になった「茶葉の色」に由来します。

  • Hồng Trà(ホンチャー): 直訳すると「紅茶」。中国や日本と同じく、抽出した「水色(すいしょく)が赤いこと」に由来します。

一般的に、スーパーで売られているティーバッグや輸出用のものは「チャーデン」、タピオカミルクティーなどの台湾発祥のカフェドリンクのベースとして使われる際は「ホンチャー」と呼ばれることが多いです。(※なお、第6分類の後発酵茶であるプーアル茶などもTrà Đenと呼ばれることがありますが、現代の一般的な市場では紅茶を指すのが主流です)。

■ 誕生の背景:国内向けは「緑」、世界向けは「黒」

実は、ベトナムは世界でもトップクラスの紅茶(チャーデン)の輸出国です。

フランス植民地時代に本格的な栽培が始まり、現在では中南部のラムドン省(Lâm Đồng)や北部のフート省(Phú Thọ)などで大量に生産されています。その多くは、ティーバッグ用やペットボトル飲料の原料として中東やロシア、ヨーロッパなど世界中へ輸出されています。 つまり、ベトナムの茶業において、「国内で伝統的に楽しむための緑茶」と「世界を相手にビジネスをするための紅茶」という見事な役割分担ができているのです。

■ 味わいと飲用文化:大流行の「フルーツティー」と「ミルクティー」の土台

チャーデンは、緑茶のような鋭い渋みや青臭さがなく、発酵による深く芳醇なコクと、穏やかな甘みを持っています。

伝統的な茶器でストレートで飲むことは少なく、現代ベトナムでは「アレンジドリンクの最強のベース」として大活躍しています。 その代表格が、コンデンスミルクやタピオカをたっぷり入れた「チャースア(Trà sữa=ミルクティー)」。そして、もう一つ忘れてはならないのが、フレッシュな桃やオレンジ、レモングラスを合わせた「チャーダオ(Trà đào=ピーチティー)」「チャーダオカムサー(Trà đào cam sả=ピーチ・オレンジ・レモングラスティー)」です。チャーデンの深いコクが、フルーツの酸味やシロップの甘さをしっかりと受け止め、絶妙なバランスの南国カフェドリンクを生み出しています。

■ 健康効果:体を優しく温め、胃腸を守る

緑茶が体を冷ます(清熱)作用を持つのに対し、完全に発酵したチャーデンは真逆の性質を持っています。

  • 体を芯から温める(温胃): 東洋医学では、紅茶は胃腸を温め、消化を助ける働きがある(温性)とされています。冷たいものを飲みすぎた時や、エアコンで冷えた体に最適です。

  • 心疾患の予防と抗酸化作用: 発酵の過程で生まれる「テアフラビン」や「テアルビジン」といった紅茶特有のポリフェノールが、血流を改善し、悪玉コレステロールを減らす効果があるとされています。

  • 穏やかな覚醒作用: カフェインを含みますが、緑茶よりも吸収が穏やかなため、リラックスしながら持続的な集中力を保つことができます。

■ 終わりに:進化し続けるベトナムのお茶文化

おじいちゃんたちが急須で淹れる渋い緑茶(チャーマン)と、若者たちがカフェでストローを使って飲む甘いミルクティー(チャースア)。一見すると全く違う飲み物ですが、どちらもベトナムの豊かな大地が育んだお茶の文化です。

ベトナムのカフェに入ったら、コーヒーだけでなく、ぜひこの「チャーデン」をベースにした華やかなフルーツティーやミルクティーも味わってみてください。伝統と最新のトレンドが交差する、ベトナムの「今」を感じることができるはずです。


🍄チャートゥイサム(Trà Thủy Sâm / コンブチャ)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】シュワっと弾ける「水の中の高麗人参」!現代のカフェで大ブームの発酵茶「チャートゥイサム(コンブチャ)」

これまで様々な茶葉やハーブをご紹介してきましたが、今回はお茶の世界に「菌」の力を掛け合わせた、全く新しい(そして実はとても古い)カテゴリーのお茶をご紹介します。

Trà Thủy Sâm

世界中のセレブや美容家を虜にしている「Kombucha(コンブチャ=紅茶キノコ)」。実はベトナムでも、南国フルーツなどとブレンドされた「チャー・トゥイサム(Trà Thủy Sâm)」として、カフェの定番メニューになるほどの大ブームを巻き起こしています。

■ 語源とカテゴリー:栄養価の高さから名付けられた「水の人参」

ベトナム語の名前には、このお茶への絶大な期待が込められています。

  • Trà(チャー): お茶

  • Thủy(トゥイ):

  • Sâm(サム): 高麗人参、あるいは滋養強壮の薬草

直訳すると「水の中の高麗人参のお茶」。カテゴリーとしては、緑茶や紅茶(主に紅茶が使われます)に、砂糖と「SCOBY(スコビー)」と呼ばれる酵母・乳酸菌の塊(ベトナム語でCon nấm=キノコ)を入れて発酵させた「発酵茶(Trà lên men)」に分類されます。日本の昆布茶(こんぶちゃ)とは全くの別物です。

■ 誕生の背景:古代の秘薬から、現代の「ヘルシードリンク」へ

コンブチャの起源は古く、約2000年前の中国・満州地方で生まれ、不老長寿の霊薬として皇帝たちに愛されたと言われています(ベトナムでも古くはTrà Mãn Châu=満州茶と呼ばれていました)。

かつては各家庭の瓶の中でブヨブヨとした菌(SCOBY)を育てる、少しマニアックな民間療法の飲み物でした。しかし近年、欧米での大流行がベトナムにも逆輸入され、現代風にオシャレに進化。熱帯フルーツのシロップやハーブと二次発酵させることで、まるでフルーツビールやシャンパンのような洗練されたドリンクへと生まれ変わりました。

■ 味わいと飲用文化:甘酸っぱい微炭酸の「極上フルーツソーダ」

「菌を発酵させたお茶」と聞くと酸っぱそうですが、ベトナムのカフェで提供されるチャートゥイサムは、驚くほどフルーティーで飲みやすいのが特徴です。

発酵の過程で酵母が砂糖を分解し、自然な微炭酸が生み出されます。パッションフルーツやりんご、ベリー系などの果物と一緒にグラスに注がれたコンブチャは、シュワシュワと爽快に弾け、お茶というよりも「甘さ控えめの極上ソーダ」といった味わいです。 暑いベトナムの午後、重たいコーヒーの代わりにスッキリとリフレッシュしたい若者たちにとって、最高の一杯となっています。

■ 健康効果:腸内フローラを整える「生きたプロバイオティクス」

「水の人参」という名前の通り、その健康効果は科学的にも高く評価されています。

  • 腸内環境の改善(プロバイオティクス): 生きた乳酸菌や酵母がたっぷりと含まれており、腸内の善玉菌を増やして消化を助け、便秘を解消します。

  • 強力なデトックスと免疫力アップ: 発酵によって生まれる「グルクロン酸」が、体内の毒素を絡め取って排出する肝臓の働きをサポートします。また、抗酸化物質も豊富で、免疫力を高めてくれます。

  • 疲労回復とエネルギー補給: ビタミンB群やアミノ酸、有機酸が豊富に含まれており、夏バテ気味の時や運動後のエネルギー補給に最適です。

■ 終わりに:古くて新しい「生きたお茶」

2000年の時を超えて、オシャレなグラスで現代の若者たちを楽しませているチャー・トゥイサム。

ベトナムのカフェのメニューで「Kombucha」や「Trà Thủy Sâm」の文字を見つけたら、ぜひトロピカルフルーツとブレンドされた南国ならではのフレーバーを試してみてください。シュワっと爽快な口当たりと生きた菌の力が、旅の疲れを吹き飛ばし、体の中から元気にしてくれるはずです!


🌼チャーニャイ / ライ(Trà Nhài / Lài)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】日々の生活に寄り添う清涼な香り。ベトナムで最も愛される花茶「ジャスミン茶(Trà Nhài / Lài)」

Trà Nhài

ベトナム茶の「7分類」の中でも、ハス茶(チャーセン)と並んで「着香茶・花茶(Trà ướp hoa)」の双璧をなすのが、このジャスミン茶です。

高貴で特別な存在であるハス茶が「花の王」なら、ジャスミン茶は「日々の暮らしの女王」。ベトナムの街角から家庭の食卓まで、どこにいても漂ってくるあの爽やかな香りの正体に迫ります。

■ 語源:南北で呼び名が変わる白い小さな花

名前の由来は、使われている「ジャスミン(茉莉花)」を指す言葉です。

  • Trà(チャー): お茶

  • Nhài(ニャイ): ジャスミン(主に北部での呼び名)

  • Lài(ライ): ジャスミン(主に南部での呼び名)

北部ハノイ周辺では「チャーニャイ」、南部ホーチミン周辺では「チャーライ」と呼ばれます。ベトナムを旅してメニューを見る際、この呼び名の違いを知っておくと、今自分がどちらの文化圏にいるのかを感じることができます。

■ 誕生の背景と製法:夜に開く花の命を写し取る

ジャスミン茶のベースとなるのも、やはりベトナムが誇る「緑茶(不発酵茶)」です。特に、北部産の力強い緑茶とジャスミンの可憐な香りの組み合わせが伝統的です。

製法はハス茶と似ていますが、ジャスミンの花は「夜に開花し、最も香りが強くなる」という特性があります。そのため、夕方にまだ蕾の状態の花を摘み取り、夜、花が開いて香りが最大になった瞬間に茶葉と混ぜ合わせる「窨制(いんせい)」という工程が行われます。

茶葉が花の香りを吸い込んだら、役割を終えた花を取り除き、再び新しい花と混ぜる……この作業を繰り返すことで、茶葉の芯まで清涼感あふれる香りが染み込んでいくのです。

■ 飲用文化:レストランの「チャダー」から午後のティータイムまで

ジャスミン茶は、ベトナムで最も「多才」なお茶と言えます。

  1. おもてなしの熱茶: 家庭やオフィスで、来客時にまず出されるのが温かいジャスミン茶です。緑茶の渋みがジャスミンの香りで和らぎ、誰にでも飲みやすい味わいになります。

  2. 食卓の定番「チャダー(氷茶)」: ベトナムの食堂やレストランで座ると最初に出てくる氷入りのお茶。その多くには、ほのかにジャスミンの香りがついています。油っぽい料理の口直しに、これほど最適な飲み物はありません。

  3. リラックスのひととき: 最近のモダンなティーショップでは、ジャスミン茶をベースに新鮮なフルーツやチーズフォームを合わせた進化系ドリンクも若者の間で大人気です。

■ 健康効果:ストレスを解き放つアロマの力

ジャスミン茶は、緑茶の健康成分に加えて、その「香り」による素晴らしい効能があります。

  • 自律神経を整える(リラックス効果): ジャスミンの香りの主成分「リナロール」には、鎮静作用があります。イライラや不安を鎮め、心身をリラックス状態へ導いてくれるため、仕事の合間のリフレッシュに最適です。

  • 胃腸の働きを助ける(消化促進): ベトナムでは食後にジャスミン茶を飲む習慣がありますが、これは香りが胃腸の働きを活発にし、消化を助ける効果があるからです。

  • 美肌とアンチエイジング: ベースの緑茶に含まれる豊富なビタミンCとカテキン、そしてジャスミンの成分が合わさり、肌の調子を整え、酸化を防ぐ手助けをしてくれます。

■ 終わりに:ベトナムの風を感じる「一番身近な香り」

ベトナムの空港に降り立った時、あるいは現地の小さな食堂に入った時、ふと感じる甘く爽やかな香り。それは、ベトナムの人々のホスピタリティ(おもてなし)に寄り添うジャスミン茶の香りかもしれません。

高級なハス茶も素晴らしいですが、まずはこの「チャー・ライ」で、ベトナムの日常の心地よさを味わってみてください。どんな時でも、その一杯があなたの心をスッと軽くしてくれるはずです。


🤍チャーバック / チャーチャン(Trà Bạc / Trắng)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】新芽に宿る銀色の産毛。極限まで手を加えない“引き算の美学”、幻の白茶「チャーバック」

ベトナム茶の基本である「7分類」。その第2のカテゴリーに属し、全生産量の中でもごくわずかしか作られない幻のお茶があります。それが「白茶(弱発酵茶)」です。

Trà Bạc

緑茶の鋭い渋みや、紅茶の深いコクとは対極にある、まるで湧き水のように清らかで繊細なお茶、「チャーバック(Trà Bạc)」、あるいは「チャーチャン(Trà Trắng)」をご紹介します。

■ 語源とカテゴリー:新芽を包む「銀色の毛」

名前の由来は、茶葉の「見た目の色」そのものです。

  • Trà(チャー): お茶

  • Bạc(バック):

  • Trắng(チャン):

お茶なのに「銀色」や「白色」と呼ばれるのには理由があります。 このお茶は、北部山岳地帯の古樹(シャントゥイエット種など)の、まだ開いていない「先端の新芽(一芯、または一芯一葉)」だけを贅沢に摘み取って作られます。高山の過酷な寒さから身を守るため、新芽には白くフワフワとした産毛である「白毫(はくごう)」がびっしりと生えており(※紅茶の用語である「ペコ」の語源です)、乾燥させるとそれが銀白色に輝くのです。

■ 誕生の背景:一切の装飾を捨てる「究極の引き算」

白茶の製法は、六大茶類(緑・白・黄・青・紅・黒)の中でも最もシンプルです。

お茶の葉は通常、熱を加えて発酵を止めたり(緑茶)、揉んで成分を出やすくしたり(烏龍茶)、完全に発酵させたり(紅茶)という「加工」を行います。しかし、チャーバックの製法は「ただ摘んで、少し萎れさせて(萎凋)、自然乾燥させるだけ」です。茶葉を揉むことすらしないため、細胞が壊れず、極めてゆっくりとわずかに発酵(微発酵)が進みます。

人間の手を極限まで加えないからこそ、ごまかしが一切ききません。最高品質の新芽と、北部の山岳地帯の澄んだ空気、そして職人の絶妙な乾燥のタイミングだけが、このお茶の命なのです。

■ 味わいと飲用文化:静寂の中で探す「蜜の甘み」

「お茶を揉んでいない」ということは、お湯を注いでもすぐには成分が溶け出してこないということです。そのため、水色(すいしょく)は限りなく透明に近い淡い黄色になります。

渋みの強い「チャーマン(緑茶)」を飲み慣れた人からすると、最初は「味が薄い」「お湯みたいだ」と感じるかもしれません。しかし、意識を集中させて口に含むと、大自然の草花の香り、メロンのような清涼感、そして驚くほど上品な「蜜のような甘み」が、後からフワリと追いかけてきます。 熱湯で淹れると繊細な甘みが飛んでしまうため、少し冷ましたお湯(70〜80度)で、時間をかけてゆっくりと抽出するのが美味しく飲むコツです。

■ 健康効果:自然の力をそのまま残した「抗酸化の王様」

熱処理や揉む工程を経ていないため、茶葉の成分が壊れることなく、自然のままの形で最も多く残っています。

  • 最高クラスのアンチエイジング(抗酸化作用): 豊富に含まれるポリフェノールやビタミンCが破壊されずに残っているため、「若返りのお茶」として世界中の美容家からも注目されています。

  • 体の熱を冷まし、心を鎮める(清熱解毒): 東洋医学では、白茶は「涼性(体を冷ます性質)」が強いとされ、夏場のほてりを取ったり、興奮した神経を鎮めてリラックスさせたりする効果が抜群です。

  • 二日酔いや風邪の引き始めに: 体内の毒素を排出し、免疫力を高める働きがあるため、体調が優れない時の優しい水分補給としても最適です。

■ 終わりに:ベトナム北部の「静寂」を味わう

活気に満ちた路上カフェでワイワイと飲む氷入りの「チャーダー」も最高ですが、誰もいない静かな部屋で、美しい茶器を使って淹れる「チャーバック」もまた、ベトナム茶の奥深い世界の一つです。

新芽の産毛がキラキラと湯の中を舞う姿を眺めながら、ベトナム北部の霧深い山々の「静寂」と「ピュアな生命力」を、ぜひ一度じっくりと味わってみてください。


🦋チャーホアダウビエック(Trà Hoa Đậu Biếc)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】鮮やかな青から紫へ!SNS世代を魅了する魔法の青い花茶「チャーホアダウビエック(バタフライピーティー)」

ベトナムのモダンなカフェを訪れると、グラスの中にハッとするほど鮮やかで透明感のある「真っ青なドリンク」を飲んでいる若者たちをよく見かけます。

人工着色料を一切使わず、大自然が生み出したこの神秘的な青いお茶の正体が、今回ご紹介する「チャーホアダウビエック(Trà Hoa Đậu Biếc)」です。日本でも「バタフライピー」として知られるこのお茶は、ベトナムのカフェ文化に新しい風を吹き込んでいます。

■ 語源とカテゴリー:真っ青な「豆の花」

名前の由来は、植物の特徴と色をそのまま表しています。茶葉は使わないため「茶外茶(花茶)」のカテゴリーに入ります。

  • Trà(チャー): お茶

  • Hoa(ホア):

  • Đậu(ダウ):

  • Biếc(ビエック): 濃い青、紺碧

直訳すると「真っ青なマメ科の花のお茶」。日本語では「チョウマメ(蝶豆)」と呼ばれるツル性の植物で、朝顔に似た濃い青色の美しい花を咲かせます。この花を摘み取り、乾燥させたものがお茶の原料になります。

■ 誕生の背景:伝統的な「天然着色料」からカフェの主役へ

実は、ホアダウビエック自体はベトナムや東南アジアで古くから親しまれてきた植物です。かつては、お祝いの席で食べる「ソイ(Xôi=おこわ)」や伝統的なお菓子を青く染めるための「天然の食用着色料」として、農家の庭先で栽培されていました。

それが近年になり、この花を煮出したお茶が持つ「ある魔法」がSNSを通じて大流行しました。その魔法とは、レモンやクアット(キンカン)などの「酸」を加えると、青色から鮮やかな紫色、あるいはピンク色へと一瞬で変化するという現象です。この理科の実験のような美しく楽しいギミックが、写真や動画を好むZ世代の心を完全に掴み、今やカフェの定番メニューへと急成長を遂げました。

■ 味わいと飲用文化:味がないからこそ無限に広がるアレンジ

見た目のインパクトが強烈なため「さぞかし変わった味がするのでは?」と思うかもしれませんが、実はチャーホアダウビエックのお茶自体には、ほとんど味がありません。ほんのりと豆や植物の根のような「土の香り(ウッディな風味)」がする程度で、クセがないのが最大の特徴です。

だからこそ、他の素材とブレンドする「キャンバス」として非常に優秀なのです。 ベトナムのカフェでは、これにハチミツやレモングラス、柑橘の果汁を加えた「チャーチャインホアダウビエック(レモンとバタフライピーのお茶)」が定番です。さらに、上に濃厚なマキアート(チーズフォーム)を乗せたり、チアシードを入れたりと、見た目も味も爽快な夏のコールドドリンクとして進化し続けています。

■ 健康効果:眼精疲労とアンチエイジングの青い成分

見た目が楽しいだけでなく、この「青色」の正体には、現代人に嬉しい健康・美容成分がたっぷりと詰まっています。

  • 強力な抗酸化作用(アンチエイジング): 青色の色素成分は、ブルーベリーなどにも含まれる「アントシアニン」です。これが活性酸素を抑え、肌の老化を防ぎ、髪を美しく保つサポートをしてくれます。

  • 眼精疲労の回復: アントシアニンは視力低下の予防や、スマートフォンやパソコンで酷使した目の疲労回復にも高い効果を発揮します。

  • 血流改善とリラックス: 血の巡りを良くして冷え性を改善するほか、ストレスを和らげ心を落ち着かせる鎮静作用もあるため、就寝前のリラックスティーとしても優秀です。

■ 終わりに:目と心を楽しませる、南国のティータイム

伝統的なお茶が持つ「深みや渋み」をじっくり味わうのとは違い、チャーホアダウビエックは「視覚的な喜び」と「アレンジの楽しさ」を提供してくれる、全く新しいタイプのお茶です。

ホームパーティーや来客時、透明なグラスに青いお茶を注ぎ、目の前でレモンを絞って紫に染まる魔法を披露すれば、きっと歓声が上がるはずです。目でも舌でも楽しめる、南国ベトナムの遊び心に満ちた一杯をぜひ体験してみてください。


🌵チャーホアタンロン(Trà Hoa Thanh Long)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】「ドラゴンフルーツの王国」が編み出したサステナブルな新特産品。太陽と風の恵み「チャーホアタンロン(ドラゴンフルーツ花茶)」

ベトナム南部、美しい砂丘と海が広がるリゾート地として知られるファンティエット(ビントゥアン省)。この土地をバスで走ると、見渡す限りにサボテンのような不思議な植物の畑が広がっています。

Trà hoa thanh long

そう、ファンティエットはベトナム随一の「ドラゴンフルーツ(Thanh Long)」の生産地。今回は、この土地ならではの知恵から生まれた新しい「茶外茶(ハーブティー)」の特産品、「チャーホアタンロン(Trà hoa thanh long)」をご紹介します。

■ 語源とカテゴリー:夜にだけ咲く「巨大な花」のお茶

名前の由来は、使われている素材そのままです。

  • Trà(チャー): お茶

  • Hoa(ホア):

  • Thanh Long(タンロン): ドラゴンフルーツ(青龍)

カテゴリーとしては、茶葉(チャノキ)を使わない「茶外茶(Trà thảo mộc)」に分類されます。ドラゴンフルーツはサボテンの仲間であり、月下美人のように「夜にだけ開花する、白くて巨大な美しい花」を咲かせるのが特徴です。

■ 誕生の背景:農家の知恵と「サステナブル」な発想

実は、立派なドラゴンフルーツの果実を実らせるためには、余分なつぼみや花を間引く作業が欠かせません。かつては捨てられてしまっていたこの間引かれた花に、農家の人々が着目したのが始まりです。

手作業で丁寧に花粉やガクを取り除き、最新の技術で衛生的に乾燥・焙煎させることで、栄養価が高く香り豊かなお茶へと生まれ変わりました。単なる農産物の廃棄ロスを減らすだけでなく、地域に新しい雇用と価値を生み出す「サステナブル(持続可能)」な特産品として、近年ベトナム国内で高く評価されています。

■ 味わいと飲用文化:見た目からは想像できない「優しい甘さ」

サボテンの花のお茶と聞くと少し身構えるかもしれませんが、チャーホアタンロンの味わいは驚くほど繊細で上品です。

お湯を注ぐと、澄んだ淡い黄金色に染まります。香りはほのかに甘く、少しだけトウモロコシのひげ茶やカモミールに似た「草花の優しい風味」があります。クセが全くないため、冷やしてゴクゴクと飲むのにも適しており、最近ではドライフルーツを浮かべて楽しむモダンなカフェメニューとしても人気を集め始めています。

■ 健康効果:過酷な環境で育つ植物の「生命力」を取り込む

ファンティエットの強烈な太陽と乾燥した風に耐えて育つドラゴンフルーツ。その花には、生命力にあふれた嬉しい成分がたっぷりと含まれています。

  • 呼吸器を労わり、咳を鎮める: ベトナムの民間療法では、ドラゴンフルーツの花は肺を潤し、咳や気管支のトラブルを和らげる効果があると言われており、季節の変わり目に重宝されています。

  • 胃腸に優しいノンカフェイン: 茶葉を含まないためカフェインゼロ。胃への刺激が少なく、お子様からお年寄りまで、就寝前でも安心して飲むことができます。

  • ビタミン・ミネラルによる美肌効果: 果実と同様に花にも抗酸化物質やアミノ酸が含まれており、日差しを浴びた肌のケアや、日々の健康維持を優しくサポートしてくれます。

■ 終わりに:ファンティエットの新しいお土産として

ヌクマム(魚醤)や海鮮だけではない、ファンティエットの新しい魅力「チャー・ホア・タンロン」。

パッケージの中でふわりと広がる大きな乾燥花は、見た目のインパクトもあり、ベトナムの新しいお土産としても喜ばれること間違いなしです。もしファンティエットを訪れる機会があれば、リゾートの海風を感じながら、この土地の太陽が育んだ優しいハーブティーで心と体を癒してみてはいかがでしょうか。


🍵チャーマン(Trà Mạn)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】花を纏わない「素顔の緑茶」。北部ベトナムの精神と客人への最高のおもてなし「チャーマン」

Trà Mạn

ベトナム北部(特にハノイやその周辺)の伝統的な家庭を訪れると、家主が必ず小さな急須で熱いお茶を淹れてくれます。その際、ハスやジャスミンのような花の香りがついていない、純粋で渋みの強い緑茶のことを、現地の言葉で「チャーマン(Trà Mạn)」と呼びます。

「タイグエン茶(Trà Thái Nguyên)」も、このチャーマンを代表する最高級ブランドの一つです。今回は特定の産地ではなく、北部ベトナムにおける「純粋な緑茶を嗜む文化」としてのチャーマンをご紹介します。

■ 語源とカテゴリー:香りをつけない「ありのままのお茶」

名前の由来については諸説ありますが、最も一般的な解釈は以下の通りです。

  • Trà(チャー): お茶

  • Mạn(マン): ① ハノイから見た「Mạn ngược(マングオック=北部の山岳・丘陵地帯)」で栽培されたお茶という意味。 ② 花の香りを移す「着香(Ướp)」の工程を行わない、そのままの「素(プレーン)」のお茶という意味。

カテゴリーとしては、第1分類の「不発酵茶(Lục trà / 緑茶)」に属します。花茶(Trà ướp hoa)の対義語として「何もブレンドしていない、茶葉本来の味を楽しむ緑茶」を指す言葉として使われます。

■ 誕生の背景:北部ベトナムの「男たちの美学」

チャーマンは、古くから北部ベトナムの人々、特に一家の長である男性たちにとっての「教養」であり「美学」でした。

良質な茶葉を選び、お湯の温度に気を配り、急須(Ấm)と小さな茶杯(Chén)を熱湯でしっかりと温めてから淹れる。この一連の静かな儀式は、自分自身の心を落ち着かせると同時に、訪れた客人に対する最大の敬意(おもてなし)を表すものです。「お茶の淹れ方を見れば、その人の人柄がわかる」と言われるほど、チャーマンは人々の生活と精神に深く根付いています。

■ 味わいと飲用文化:強烈な「渋み(Chát)」とピーナッツ菓子の出会い

日本の緑茶が「旨み(アミノ酸)」を重視するのに対し、ベトナムのチャーマンは、ガツンとくる力強い「渋み(Chát=チャット)」を良しとします。

口に含んだ瞬間、舌がキュッとなるほどの強い渋みを感じますが、それをゆっくりと飲み込むと、喉の奥から清々しく甘い余韻(Hậu ngọt=ハウンゴット)が戻ってきます。 この強烈なお茶請けとして欠かせないのが、「ケオ・ラック(Kẹo lạc)」と呼ばれる甘いピーナッツ飴や、緑豆の落雁です。お菓子の濃厚な甘さと、チャーマンの鋭い渋みが口の中で交わる瞬間は、まさに計算し尽くされた「完璧なマリアージュ」と言えます。

■ 健康効果:頭をクリアにする「朝の目覚めの一杯」

香料などを一切使わない自然のままの緑茶であるため、茶葉が持つ健康成分をダイレクトに摂取できます。

  • 覚醒作用と集中力アップ: カフェインとカテキンが豊富に含まれており、朝一番に飲むことで脳をシャキッと目覚めさせ、仕事への集中力を高めてくれます。

  • 強力な抗酸化作用と免疫力向上: 純度の高いカテキンが活性酸素を除去し、細胞の老化を防ぐとともに、風邪などのウイルスから体を守るサポートをします。

  • 食後の消化促進: 脂っこい食事の後に渋いチャーマンを飲むと、胃液の分泌が促され、口の中も胃袋もスッキリとリセットされます。

■ 終わりに:飾らない「素顔」の魅力

近代化が進み、甘いミルクティーやフルーツティーが若者の間で流行する現代においても、旧市街の軒先や家庭の居間には、変わらずチャーマンの渋い香りが漂っています。

それは、花で飾らなくとも、茶葉そのものが持つ力強さと奥深さで十分であるという、ベトナムの素朴で真っ直ぐな精神性の表れかもしれません。ハノイを訪れた際は、ぜひ地元の人々と一緒に小さな茶杯を傾け、この飾らない「素顔の緑茶」の渋みと甘みを楽しんでみてください。


🌽チャーラウンゴー / ラウバップ(Trà Râu Ngô / Râu Bắp)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】「捨ててしまう部分」が万能薬に!熱帯の夏を乗り切る、農家の知恵から生まれた甘い水「チャーラウンゴー(トウモロコシのひげ茶)」

これまで、玄米やゴーヤなど、身近な食材を使った「茶外茶(ハーブティー)」の数々をご紹介してきましたが、今回登場するのは、ベトナムの市場や路上で茹でたてが売られている「トウモロコシ」から作られるお茶です。

Trà Râu Ngô

ただし、使うのは黄色い実の部分ではありません。実を包む皮の中にある「フサフサのひげ」を煮出した「チャーラウンゴー(Trà Râu Ngô)」をご紹介します。韓国の「コーン茶」などとは一味違う、ベトナム流のデトックス・ウォーターの魅力に迫ります。

■ 語源とカテゴリー:南北で呼び名が変わる「トウモロコシのひげ」

このお茶も、ジャスミン茶やゴーヤ茶と同様に、北部と南部で呼び名が変わります。もちろんお茶の樹の葉は使わないため「茶外茶」に分類されます。

  • Trà(チャー): お茶

  • Râu(ラウ): ひげ

  • Ngô(ンゴー): トウモロコシ(主に北部での呼び名)

  • Bắp(バップ): トウモロコシ(主に南部での呼び名)

北部では「チャーラウンゴー」、南部では「チャーラウバップ」と呼ばれます。ベトナムの農家では、トウモロコシを収穫して皮を剥く際、この「ひげ」を捨てずに集め、生きたまま、あるいは天日で乾燥させてお茶の材料として大切に保管します。

■ 誕生の背景:路上の「ヌオックマート(冷却水)」文化

ベトナム、特に一年中暑い南部には、道端の屋台で自家製の冷たいハーブティーを売る「Nước mát(ヌオックマート=直訳すると『涼しい水』)」という素晴らしいストリート文化があります。

チャーラウンゴーは、このヌオックマートの代表格です。家庭や屋台では、トウモロコシのひげ単体で煮出すこともありますが、より美味しく効果を高めるために、サトウキビ(Mía lau)やパンダンリーフ(Lá dứa)、チガヤの根(Rễ tranh)などと一緒に大きな鍋でグツグツと煮出すのがベトナム流の伝統的なレシピです。

■ 味わいと飲用文化:大地の甘みが溶け込んだ、琥珀色のオアシス

トウモロコシのひげのお茶と聞くと少し青臭いイメージがあるかもしれませんが、実際の味わいは驚くほどクリアで優しい甘さに満ちています。

お湯を注ぐ(または煮出す)と、透き通った美しい琥珀色になります。香りはまさに「茹でたてのトウモロコシ」そのもの。ほのかな香ばしさと、サトウキビなどから引き出された自然な甘みが口いっぱいに広がり、渋みや苦味は一切ありません。 ノンカフェインで胃腸への刺激もないため、小さな子供からお年寄りまで、氷をたっぷり入れたグラスでゴクゴクと喉を潤すことができます。

■ 健康効果:腎臓を洗い流す「天然の利尿薬」

東洋医学において、トウモロコシのひげは「南蛮毛(なんばんもう)」と呼ばれる立派な生薬です。ベトナム人が夏にこれを好んで飲むのには、明確な健康上の理由があります。

  • 抜群の利尿作用とデトックス: チャーラウンゴーの最大の効能は、その強力な利尿作用です。体内に溜まった余分な水分や老廃物を尿としてスッキリと排出し、むくみを解消します。

  • 結石の予防と腎臓のサポート: 尿の通りを良くするため、腎臓結石や尿路結石の予防・改善に非常に効果的だとされており、ベトナムの民間療法として古くから重宝されています。

  • ほてりを取る「清熱効果」と血糖値の安定: 体にこもった熱を冷ます(清熱)だけでなく、血圧や血糖値を安定させる働きもあるため、脂っこい食事や甘いものの食べ過ぎをリセットするのにも最適です。

■ 終わりに:「もったいない」が生んだ美味しい知恵

普段ならゴミ箱に直行してしまう「トウモロコシのひげ」。しかし、それこそが大地からの恵みであり、私たちの体を綺麗に洗い流してくれる最高のデトックス・ティーになることを、ベトナムの人々は昔から知っていました。

暑い日や、体が少し重くむくんでいると感じた時は、ぜひベトナムの街角で愛されるこの「甘くて涼しいお茶」を思い出してみてください。農家の人々のエコな知恵が、あなたの体と心をスッキリと軽くしてくれるはずです。

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