ベトナム食文化🇻🇳粉もん編 ẨmThựcViệtPedia

日越食文化協会(JVGA)のベトナム食文化「アムトゥックベトペディア〜粉もん編」です。

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🧑‍🔬ベトナムの粉もん

日越食文化協会(JVGA)のベトナム食文化「アムトゥックベトペディア〜粉もん編」です。

ベトナムの「粉もん」は、米の生産量が世界屈指であることから、米粉(ライスフラワー)を主役にした料理が圧倒的に多いのが特徴です。 日本の粉もん(小麦粉中心)が「ソース味」でまとまることが多いのに対し、ベトナムの粉もんは「米粉のぷるぷる・モチモチ感」を楽しみ、「ヌクマム(魚醤)のタレ」や「大量のハーブ」と一緒に食べるヘルシーなスタイルが主流となっています。

主なバリエーションは以下の通りです。

①💧蒸しもの(ぷるぷる系):最もベトナムらしい粉もんです。バインクオン(Bánh cuốn)、バインベオ(Bánh bèo)など。

②🔥焼き・揚げもの(パリパリ・サクサク系):バインセオ(Bánh xèo)、バインコット(Bánh khọt)、バインチャン(Bánh tráng)など。

③🍜麺類(つるつる系):麺も「粉を練って作ったもの」なので、バイン(Bánh)の仲間です。バインカン(Bánh canh)、フォー(Phở)など。

④🍡デザート(モチモチ系):バインザン(Bánh rán)、バインダロン(Bánh da lợn)など。

ベトナムの粉もんの多くは、「米粉+タピオカ粉」の配合によって、日本人好みの「モチモチ」や「ツルン」とした食感がバリエーション豊かに生み出されています。


⏳️カオラウ (Cao lầu)


⏳️チェートイヌオック (Chè trôi nước)


🥢バインイットラーガイ(Bánh ít lá gai)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】真っ黒な生地に秘められた薬効!もち米とハーブが織りなす伝統菓子「バインイットラーガイ」

Bánh ít lá gai

ベトナムの旧正月(テト)や結婚式、法事などの冠婚葬祭に欠かせない、小ぶりで可愛らしいピラミッド型のお菓子があります。 それが、もち米粉(白玉粉)を使った強烈な「モチモチ感」が特徴の「バインイット(Bánh ít)」です。中に詰める具材や葉っぱの有無によって、スイーツにもお惣菜にもなる変幻自在な粉もんですが、今回はベトナム中部(特にビンディン省)の名物として名高い、真っ黒なスイーツ系の「バインイット・ラーガイ(Bánh ít lá gai)」を中心にその魅力に迫ります。

■ 語源:王女様が考案した「ささやかな」お菓子

このお菓子の名前には、ベトナムの建国神話にまつわるロマンチックな伝説が隠されています。

  • Bánh(バイン): 粉もん(粉を練って作ったもの、お菓子)

  • Ít(イット): 少ない、少しの

直訳すると「少しの粉もん(小さなお菓子)」。 伝説によると、フン王(ベトナムの神話上の王)の末娘であった王女が、伝統的なお正月料理である「バインチュン(四角いもち米のちまき)」と「バインザイ(丸いお餅)」の両方の良さを取り入れ、より上品で一口サイズの「ささやかな(Ít)」お菓子を考案したことから、この名前が付けられたと言われています。

■ 製法とカテゴリー:カラムシの葉が黒と弾力を生む【デザート(モチモチ系)】

もち米粉を主役とするバインイットは、日本の大福やお団子に通じる「④🍡デザート(モチモチ系)」のカテゴリーを代表する一品です。

最大の特徴は、生地に「ラーガイ(Lá gai=カラムシ/苧麻の葉)」というハーブをすり潰して練り込むことです。この葉を加えることで、生地が深緑から真っ黒な色に染まり、同時にハーブの成分がもち米のデンプンと反応して、驚くほどの「強いコシと弾力」を生み出します。 この真っ黒な生地で、すりつぶした緑豆(Đậu xanh)や細切りのココナッツ、砂糖を混ぜた甘い餡を包み、バナナの葉でピラミッド型に包んでせいろで蒸し上げます。

※ちなみに、葉っぱで包まずにエビや豚肉の塩気のある餡を包んだものは「バインイットチャン(Bánh ít trần=裸のバインイット)」と呼ばれ、ヌクマムをつけて食べるお惣菜系の粉もんとして親しまれています。

■ 味わいの魅力と食べ方:素朴な甘さとヨモギのような大地の香り

バナナの葉を一枚ずつ剥がしていくと、オイルを塗られてツヤツヤと光る真っ黒なお餅が顔を出します。

一口かじると、日本のヨモギ餅にも似た、爽やかで少し土っぽい「ラーガイ」の素朴な香りが鼻を抜けます。食感は非常に力強く「ムッチリ、モッチリ」。そこから、緑豆のホクホクとした優しい甘さと、シャキシャキとしたココナッツの食感が現れ、噛むほどに味わい深いハーモニーを奏でます。甘すぎず、素材の味をしっかりと感じられるのがベトナム伝統菓子の素晴らしいところです。

■ 健康への恩恵:お腹の調子を整える「食べる胃腸薬」

バインイットは、ただ美味しいだけではなく、薬膳のような効果も持ち合わせています。

  1. ラーガイ(カラムシの葉)の薬効: 古くからベトナムの民間療法で使われてきたラーガイは、抗菌作用や止血作用があり、特にお腹の調子を整える(腹痛を防ぎ、消化を助ける)効果が高いとされています。もち米は消化に時間がかかりますが、この葉を練り込むことで胃腸への負担を和らげるという、先人の見事な知恵です。

  2. 緑豆のデトックス効果: 餡に使われている緑豆は、体内の余分な熱を冷まし、老廃物を排出する解毒作用に優れています。

  3. 良質なエネルギー源: もち米は腹持ちが良く、少量でもしっかりとエネルギーを補給できるため、農作業の合間のおやつや、長旅の携帯食としても重宝されてきました。

■ 飲用とペアリング:濃いめの「ハス茶」や「温かい緑茶」

もち米のしっかりとした弾力と、緑豆の甘み、そしてハーブの香りを持つバインイットには、香りが良くて口の中をすっきりさせてくれるお茶が最適です。

  • ハス茶(Trà sen / 不発酵・着香茶): ベトナムならではの組み合わせを楽しむなら、ハス茶が一番です。ハスの高貴な香りが、ラーガイの野性味あふれる香りを優しく包み込み、ワンランク上のティータイムを演出してくれます。

  • 温かい緑茶(Trà xanh nóng): もち米を使ったお菓子なので、冷たい飲み物よりも温かいお茶の方が胃腸での消化を助けてくれます。渋みの強い北部の緑茶と合わせると、お餅の甘みがより一層引き立ちます。

■ 終わりに:小さな包みに込められた大きな願い

「少ない・ささやか」という謙虚な名前を持ちながらも、冠婚葬祭などの重要なハレの日に欠かせない存在として、ベトナムの人々の生活に深く根付いているバインイット。

黒いお餅というビジュアルに最初は少し驚くかもしれませんが、一口食べればそのもっちりとした食感とハーブの優しい香りに、どこか懐かしさを覚えるはずです。ベトナムを訪れた際は、ぜひ温かいお茶と一緒に、このロマンチックな伝説を持つ「小さなお菓子」を味わってみてください。


⏳️バインイッチャン (Bánh ít trần)


⏳️バインカム (Bánh cam)


⏳️バインカン (Bánh canh)


⏳️バインカンボッガオ (Bánh canh bột gạo)


⏳️バインカンボッロック (Bánh canh bột lọc)


⏳️バインクアイ (Bánh quẩy)


🥢バインクオン(Bánh cuốn)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】極上のぷるぷる食感とハーブの共演!ベトナム式・蒸し春巻き「バインクオン(Bánh cuốn)」

ベトナムの「粉もん」と聞いて、多くの日本人がまず思い浮かべるのはフォーや生春巻き(ゴイクオン)かもしれません。しかし、ベトナム現地の朝の風景に欠かせない、もう一つの偉大な「粉もん」が存在します。 それが、米粉の生地を極限まで薄く蒸し上げた、美しく透き通るような一皿「バインクオン(Bánh cuốn)」です。日本では「蒸し春巻き」とも呼ばれるこの料理は、米粉のポテンシャルを最大限に引き出したベトナム粉もん文化の最高傑作の一つです。

■ 語源:「粉もん(Bánh)」を「巻く(cuốn)」

今回も、名前の由来をシンプルに分解してみましょう。

  • Bánh(バイン): 粉を練って作ったもの(パン、餅、麺、菓子など「粉もん」全般を指す言葉)

  • Cuốn(クオン): 巻く

直訳すると「巻いた粉もん」となります。生春巻きが「Gỏi cuốn(ゴイクオン=和え物を巻く)」、揚げ春巻きが「Chả giò(チャージョー) / Nem rán(ネムザン)」と呼ばれるのに対し、バインクオンは自らが「粉もん(Bánh)」であることを名前に冠しているのが特徴です。

■ 製法とカテゴリー:熟練の技が光る【蒸しもの(ぷるぷる系)】

ベトナムの粉もんは「蒸し」「焼き・揚げ」「麺」「デザート」など製法によって様々なカテゴリーに分かれますが、バインクオンは「①💧蒸しもの(ぷるぷる系)」に分類されます。

その製法はまさに職人技です。ベースとなるのは、水で溶いた米粉(地域やお店によってはタピオカ粉をブレンドして食感を調整します)。これを、お湯を張った鍋の上にピンと張った布の上に、クレープのように薄く丸く広げます。蓋をして数秒蒸らし、竹串を使って布から破れないようにサッと剥がし取ります。 小麦粉では絶対に出せない、米粉ならではの「絹のように滑らかで、ぷるぷる・モチモチとした生地」は、この非発酵・水蒸気加熱という繊細なプロセスから生まれるのです。

■ 味わいの魅力と食べ方:特製ダレとハーブでさっぱりと

極薄のぷるぷる生地の中には、細かく刻んだ豚のひき肉とキクラゲ(木耳)、エシャロットを炒めた餡が包まれています。 お皿に盛り付けられた後、上からカリカリに揚げたフライドエシャロット(Hành phi)がたっぷりと振りかけられ、付け合わせとしてベトナムハム(Chả lụa)などが添えられます。

食べ方のスタイルとしては、ヌクマム(魚醤)に砂糖、ライム、唐辛子などを合わせた甘酸っぱい特製ダレ(ヌクチャム)に浸すか、上から豪快にかけていただきます。そして忘れてはならないのが「大量の生野菜とハーブ」です。ミントやコリアンダー(パクチー)、シソなどの香草と一緒に口に運ぶことで、お肉の旨味、生地の甘み、ハーブの清涼感が一体となります。

■ 健康への恩恵:日本の粉もんとは違う「究極のギルトフリー」

バインクオンが日本の粉もん(お好み焼きやたこ焼き)と決定的に違うのは、その圧倒的なヘルシーさにあります。

  1. グルテンフリー&ノンフライ: 小麦粉を使わず米粉主体であり、油で焼いたり揚げたりせず「水蒸気で蒸す」ため、非常に低カロリーで胃腸への負担が少ないです。

  2. 腸内環境を整える食材: 具材のキクラゲは食物繊維とミネラルが豊富。さらに発酵調味料であるヌクマムがアミノ酸を補給してくれます。

  3. 抗酸化作用とビタミン: どっさりと添えられるフレッシュなハーブ類には、ビタミンやデトックス効果、消化促進作用が詰まっています。

ソースやマヨネーズで重くなりがちな粉もんの概念を覆す、食べれば食べるほど体が喜ぶような「究極のギルトフリー粉もん」なのです。朝食として、あるいは小腹が空いた時の軽食として、ベトナムの人々が日常的にバインクオンを愛飲・愛食する理由がここにあります。

■ 終わりに:米粉の優しさに包まれる朝

口の中でツルンと溶けるような生地と、キクラゲのコリコリとした食感のコントラスト。 ベトナムの朝の街角を歩いていると、白い湯気をもうもうと立てながらリズミカルにバインクオンを蒸し上げる屋台に出会うことができます。

重たいソース味の粉もんも美味しいですが、たまにはハーブと魚醤でさっぱりといただく「ぷるぷる系」の粉もんで、心と体を優しくリセットしてみてはいかがでしょうか。ベトナム料理店に足を運んだ際は、ぜひこの繊細で美しい「バインクオン」を味わってみてください。


⏳️バインクオンカット (Bánh cuốn cắt)


⏳️バインクーン (Bánh cúng)


⏳️バインケップ (Bánh kẹp)


⏳️バインケップラーズア (Bánh kẹp lá dứa)


⏳️バインコアイ (Bánh khoái)


⏳️バインコアイミハップ (Bánh khoai mì hấp)


⏳️バインクアイミーヴィエン (Bánh khoai mì viên)


⏳️バインゴイ (Bánh gối)


⏳️バインコット (Bánh khọt)


⏳️バインコン (Bánh cống)


⏳️バインザイ (Bánh dầy)


⏳️バインザン (Bánh rán)


⏳️バインザンゴット (Bánh giăng ngọt)


⏳️バインセオ (Bánh xèo)


🥢バインゾー(Bánh giò)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】バナナの葉に包まれたピラミッド!肉の旨味が溶け込むトロトロ蒸し餅「バインゾー(Bánh giò)」

ベトナムの朝の路上や市場を歩いていると、発泡スチロールの箱から湯気を立てている「緑色のピラミッド」を見かけることがあります。 ずっしりとした重みのあるバナナの葉の包みを開けると、中から現れるのは、プルプル・トロトロの純白の生地。ハノイを中心とする北部で特に愛され、朝食や午後のおやつとして絶大な人気を誇るお惣菜系粉もん、それが「バインゾー(Bánh giò)」です。日本の「肉まん」や「ちまき」にも似た立ち位置ですが、米粉が生み出す独特の食感は、まさにベトナムならではの傑作です。

■ 語源:たっぷりのお肉を包み込んだ「肉の粉もん」

名前の由来は、中に詰まったたっぷりの具材に由来しています。

  • Bánh(バイン): 粉もん(粉を練って作ったもの)

  • Giò(ゾー / ヨー): 豚肉のすり身、または肉の塊(ベトナムハム「Giò lụa」などにも使われる言葉)

直訳すると「肉の粉もん」。その名の通り、豚のひき肉をベースにした旨味たっぷりの餡が、生地の中にぎっしりと隠されています。北部では「バインゾー」、南部では「バインヨー」と発音されます。

■ 製法とカテゴリー:豚骨スープで練り上げる【蒸しもの(トロトロ・ぷるぷる系)】

バインゾーも「①💧蒸しもの(ぷるぷる系)」に分類されますが、他の粉もんと決定的に違うのは、生地作りに「豚骨スープ」を使う点です。

米粉(少量のタピオカ粉やコーンスターチを混ぜることもあります)を水ではなく、旨味たっぷりの豚骨スープで溶き、火にかけながらトロトロの糊状になるまで練り上げます。 この半透明の熱い生地をバナナの葉で作ったピラミッド型の型に流し込み、中央に豚ひき肉、キクラゲ、エシャロットを炒めた餡と、うずらの卵(Trứng cút)をポツンと忍ばせます。上からさらに生地で蓋をしてバナナの葉を密閉し、せいろでじっくりと蒸し上げます。

■ 味わいの魅力と食べ方:スプーンで崩しながら熱々を頬張る

熱々のバナナの葉を広げると、スープの旨味を吸った米粉の生地がプルプルと震えます。お箸ではなく、スプーンですくって食べるのがバインゾーの基本スタイルです。

口に入れると、お餅のような粘り気はなく、茶碗蒸しやとろけるプリンのように「トロッ」とほどけていきます。そこに、甘辛く味付けされた豚肉のガツンとした旨味、キクラゲのコリコリ感、そしてうずらの卵のホクホク感が加わり、見事な味のコントラストを生み出します。 ハノイの若者たちは、ここにベトナムハム(Chả lụa)や発酵ソーセージ(Nem chua)をトッピングし、甘辛いチリソース(Tương ớt)をたっぷりとかけて、ジャンクでボリューム満点な一皿として楽しむのが大好きです。

■ 健康への恩恵:コラーゲンと食物繊維の温かな小包

ジャンクな食べ方もありますが、バインゾー自体はとても栄養バランスの取れたヘルシーな粉もんです。

  1. 豚骨スープのコラーゲンとアミノ酸: 生地自体に豚骨スープが練り込まれているため、良質なアミノ酸やコラーゲンが豊富。滋味深い味わいで、胃袋からじんわりと体を温めてくれます。

  2. キクラゲの整腸作用: 餡にたっぷりと使われているキクラゲは、食物繊維と鉄分、ビタミンDの宝庫。腸内環境を整え、デトックス効果を促進します。

  3. 完全食としてのバランス: 炭水化物(米粉)、タンパク質(豚肉・うずらの卵)、ミネラル(ハーブやバナナの葉の成分)がこのピラミッドの中に全て詰まっており、手軽に栄養補給ができる「食べる点滴」のような役割も果たします。

■ 飲用とペアリング:渋みのある「北部のお茶」と共に

豚肉の脂と旨味がしっかり効いたバインゾーには、口の中をさっぱりとリセットしてくれる「タイグエン茶(Trà Thái Nguyên)」などの、ベトナム北部の高品質な緑茶(不発酵茶)がベストマッチです。 あるいは、街角の屋台で食べるなら、氷をたっぷり入れた冷たい「チャダー(Trà đá / アイス緑茶)」をゴクゴクと飲みながら熱々のバインゾーを頬張るのが、最高にローカルで粋な楽しみ方です。

■ 終わりに:心も体も温まる、ベトナム式「肉まん」

日本の肉まんは小麦粉のフカフカした生地を楽しみますが、ベトナムのバインゾーは、米粉のトロトロ感とダシの旨味を楽しむ料理です。

朝の冷え込みが厳しい冬のハノイで、湯気を立てる熱々のバインゾーをスプーンでハフハフとすくいながら食べるひとときは、ベトナムの日常の幸せそのもの。見た目のインパクトも抜群なこのピラミッドを見かけたら、ぜひその「トロプル」な食感に癒されてみてください。


🥢バインベオ(Bánh bèo)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】小さな器に詰まった小宇宙!フエ宮廷由来の一口粉もん「バインベオ(Bánh bèo)」

「バインクオン」が北部の朝の定番だとしたら、ベトナム中部の古都・フエ(Huế)を代表する蒸し系の粉もんが「バインベオ(Bánh bèo)」です。 まるでおままごとのような可愛らしい小皿がズラリとお盆に並べられて運ばれてくるそのビジュアルは、一度見たら忘れられないインパクトがあります。宮廷料理の繊細さと、庶民のストリートフードの気軽さを併せ持つ、一口サイズの芸術的な「粉もん」をご紹介します。

■ 語源:水面に浮かぶ「浮草(ウキクサ)」

名前の由来は、その可愛らしい見た目そのものから来ています。

  • Bánh(バイン): 粉もん(粉を練って作ったもの)

  • Bèo(ベオ): 浮草(ウキクサ)

直訳すると「浮草の粉もん」。小さな丸い器の中で蒸し上がった純白の生地が、池の水面にポッカリと浮かぶ丸い「ウキクサ」の葉に似ていることから、この風流な名前が付けられました。ベトナム中部の古都フエの雅な感性がネーミングにも表れています。

■ 製法とカテゴリー:小さなくぼみが「美味しい」のサイン【蒸しもの(ぷるぷる系)】

バインベオもまた、バインクオンと同じく「①💧蒸しもの(ぷるぷる系)」のカテゴリーに属します。

米粉に少量のタピオカ粉と水を混ぜたサラサラの生地を作ります。これを「チェン(Chén)」と呼ばれる手のひらに収まるほどの極小の陶器の小皿に少しだけ流し込み、強い蒸気で一気に蒸し上げます。 火加減と生地の配合が完璧だと、蒸し上がった際に生地の中心がクルッと凹んで「えくぼ」のような小さなくぼみができます。このくぼみこそが、本場の美味しいバインベオの証拠なのです。

■ 味わいの魅力と食べ方:すくって食べるベトナム風タパス

蒸し上がった純白の「おしだま」のような生地の上には、彩り豊かな具材がトッピングされます。 定番は、細かく砕いて炒った風味豊かな「干しエビ(Tôm chấy)」、カリカリに揚げた「豚の皮(Tóp mỡ)」やクルトン、そして香ばしい「ネギ油(Mỡ hành)」です。

食べ方はとてもユニークです。テーブルに運ばれてきたら、小皿の上のバインベオに、甘辛く調味された専用のヌクマムダレ(魚醤)をスプーンで少しずつ回しかけます。そして、竹串や小さなスプーンを使って、器からツルンと剥がすようにすくい取り、一口でパクリといただきます。 米粉の「ぷるん・もっちり」とした舌触りに、干しエビの濃厚な旨味、豚皮の「サクサク」というクリスピーな食感が口の中で弾け、いくつでも食べられてしまう悪魔的な美味しさです。

■ 健康への恩恵:小鉢スタイルで楽しむヘルシー・ファストフード

日本のたこ焼きも一口サイズですが、バインベオの健康へのアプローチは全く異なります。

  1. 低脂質・高タンパクなトッピング: 日本の粉もんはマヨネーズや豚バラ肉など脂質が高くなりがちですが、バインベオの主役は「干しエビ」。干しエビは高タンパク・低脂質であるだけでなく、カルシウムや抗酸化作用の高いアスタキサンチンがギュッと凝縮されたスーパーフードです。

  2. 蒸し米粉の消化の良さ: バインクオン同様、油を使わずに水蒸気で加熱した米粉は胃腸への負担が少なく、消化吸収に優れています。

  3. 食べ過ぎを防ぐ小皿スタイル: 小さな器で一つずつ食べるスタイルは、視覚的な満足感が高く、早食いやドカ食いを防ぐ効果もあります。

小腹が空いた時のおやつとして、あるいはビールのお供(タパス)として、罪悪感なく楽しめるのがバインベオの素晴らしいところです。

■ 終わりに:わんこそばのように重なる小皿の山

フエの専門店に行くと、地元の人たちのテーブルには、食べ終わったバインベオの空の小皿が「わんこそば」のように高く積み上げられています。何皿食べたかを競い合うのも、この料理ならではの楽しみ方の一つです。

見た目の愛らしさ、多彩な食感のハーモニー、そしていくら食べても胃もたれしない米粉の優しさ。ベトナムの「粉もん」の奥深さを体感できるバインベオ、メニューで見かけた際はぜひ「何皿積み上げられるか」に挑戦してみてください。


⏳️バインタイヘオ (Bánh tai heo)


⏳️バインダオ (Bánh đậu)


🥢バインダロン(Bánh da lợn)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】名前は「豚の皮」でも中身はもっちり無添加スイーツ!緑と黄色の美しい層状ケーキ「バインダロン(Bánh da lợn)」

ここまでお惣菜系の「粉もん」をご紹介してきましたが、ベトナムにおいて「粉もん(Bánh)」という言葉は、食事だけでなく甘いお菓子(スイーツ)にも使われます。 今回は、ベトナム南部を代表する伝統的なスイーツ粉もんをご紹介しましょう。市場のスイーツ売り場でひときわ目を引く、緑色と黄色の鮮やかな縞模様。日本の「ういろう」にも似ていますが、食感は驚くほど弾力がある、その名も「バインダロン(Bánh da lợn)」です。

■ 語源:「豚の皮」という名の、キュートなフェイク

名前を聞いて、ギョッとする方もいるかもしれません。

  • Bánh(バイン): 粉もん(粉を練って作ったもの、お菓子)

  • Da(ダ):

  • Lợn(ロン): 豚(主に北部での呼び名。南部ではHeo/ヘオとも言いますが、このお菓子はダロンで定着しています)

直訳すると「豚の皮の粉もん(ケーキ)」。しかし、安心してください。実際の豚の皮や動物性食材は一切使われていません。 蒸し上がった生地の表面がツヤツヤと輝き、触ると「プルンッ、モチッ」と跳ね返ってくるような強烈な弾力があることから、「まるで豚の皮みたいだね!」という庶民のユーモアから名付けられた、非常に愛嬌のあるネーミングなのです。

■ 製法とカテゴリー:根気のいる「重ね蒸し」の芸術【デザート(モチモチ系)】

バインダロンは、スイーツの粉もんである「④🍡デザート(モチモチ系)」に分類されます。その独特の食感と香りは、南国の豊かな素材から生まれます。

主原料は「タピオカ粉」に少量の米粉をブレンドしたもの。そこにココナッツミルクと砂糖を加えます。 鮮やかな色の秘密は、天然の植物です。緑色の生地には「パンダンリーフ(Lá dứa)」という東洋のバニラとも呼ばれる甘い香りのハーブの搾り汁を。黄色の生地には、ホクホクに蒸して裏ごしした「緑豆(Đậu xanh)」のペーストを混ぜ込みます。 作り方は非常に手間がかかります。型に緑の生地を薄く流し込んで蒸し、表面が固まったら黄色の生地を重ねて蒸し…と、何層にもなるまで「重ね蒸し」を繰り返すことで、あの美しい縞模様が出来上がるのです。

■ 味わいの魅力と食べ方:層を剥がすか、ガブリといくか

食べ方は自由ですが、ベトナムの子供たち(そして大人も!)が大好きなのが、バームクーヘンのように「一枚ずつ層をペリペリと剥がしながら食べる」というスタイルです。

緑色のパンダンリーフの層は、タピオカ粉の比率が高く「もっちり、グミのような弾力」と爽やかなバニラ香があります。一方、黄色の緑豆の層は、ホクホクとしていて「素朴な甘さとコク」があります。 もちろん、全ての層を一緒にガブリと頬張れば、ココナッツミルクのまろやかな風味が全体を包み込み、口の中で食感と香りの見事なハーモニーが完成します。

■ 健康への恩恵:南国の恵みが詰まったギルトフリー・スイーツ

東南アジアのスイーツは甘すぎると思われがちですが、バインダロンは天然素材の恩恵をたっぷり受けたヘルシーな和菓子のような存在です。

  1. 完全グルテンフリー&ヴィーガン: 小麦粉、卵、乳製品を一切使わず、タピオカ粉、米粉、植物性ミルク(ココナッツ)、豆で作られているため、アレルギーが気になる方でも安心です。

  2. パンダンリーフのデトックス効果: 緑色の着色に使われるパンダンリーフには、解熱作用や血圧を下げる効果があり、暑い国でほてった体を優しくクールダウンしてくれます。

  3. 緑豆の疲労回復: 黄色い層の緑豆は、ビタミンB群やミネラルが豊富で、東洋医学でも「解毒作用」が高いとされるスーパーフードです。

■ 飲用とペアリング:香りを引き立てるお茶の選び方

ココナッツミルクのコクと、パンダンリーフの甘い香りを持つバインダロンには、ベトナムの豊かなお茶文化がぴったりと寄り添います。

  • ハス茶(Trà sen / 不発酵・着香茶): ベトナムを代表する緑茶ベースのフレーバーティー。ハスの花の優雅で清らかな香りが、ココナッツの甘さを上品に引き立ててくれます。

  • ベトナム紅茶(Hồng trà / 完全発酵茶): もしスイーツの甘みをすっきりと切り上げたい場合は、しっかりと発酵させた「赤いお茶(紅茶)」がおすすめ。発酵茶特有の心地よい渋みが口の中のココナッツの油脂分を洗い流し、次の一口を誘います。

■ 終わりに:ユーモアと自然の恵みが重なる味

名前は「豚の皮」と少しワイルドですが、その正体は天然の植物の美しさと、もっちりとした弾力が魅力の優しいスイーツです。

ベトナムの市場の片隅で、おばちゃんが切り分けてくれるバインダロン。日本のういろうや葛餅が好きな方なら、絶対にハマる食感です。食後のデザートや、午後のお茶の時間に、ぜひこの美しい層を一枚ずつ剥がしながら、のんびりとしたベトナムのカフェタイムを楽しんでみてください。


⏳️バインダークア (Bánh đa cua)


⏳️バインチャンタップ (Bánh tráng đập)


⏳️バインチャンヌン (Bánh tráng nướng)


⏳️バインチャンメー (Bánh tráng mè)


⏳️バインチュオイチエン (Bánh chuối chiên)


⏳️バインチュオイハップ (Bánh chuối hấp)


⏳️バインチュンムオイ (Bánh trứng muối)


⏳️バインティウ (Bánh tiêu)


⏳️バイントアイ (Bánh thuẫn)


🥢バインドゥック(Bánh đúc)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】型に流し込む素朴な伝統食!熱々トロトロと冷やしぷるんの二つの顔を持つ「バインドゥック(Bánh đúc)」

ベトナムの粉もんを語る上で、最も古くから庶民の生活に根付き、究極の「ソウルフード」として愛されているのが「バインドゥック(Bánh đúc)」です。 ハノイを中心とする北部発祥のこの料理には、夏の暑さを涼やかに癒す「冷たいゼリー状」のスタイルと、冬の厳しい寒さの中で人々を芯から温める「熱々トロトロ」のスタイルの、全く異なる二つの顔が存在します。今回は、変幻自在の米粉の魔法が詰まった、奥深い伝統食をご紹介します。

■ 語源:金属のように「型に流し込んで固める」

名前の由来は、その伝統的な製法から来ています。

  • Bánh(バイン): 粉もん(粉を練って作ったもの)

  • Đúc(ドゥック): 鋳造する、型に流し込む

直訳すると「型に流し込んだ粉もん」。金属を溶かして型に流し込む「鋳造(ちゅうぞう)」と同じ単語が使われているのが非常にユニークです。鍋でドロドロになるまで火を入れながら練り上げた米粉の生地を、平たいお盆や型に流し込んで冷まし固めていた昔ながらの作り方が、そのまま名前になりました。

■ 製法とカテゴリー:石灰水が生み出す不思議な食感【蒸しもの(ぷるぷる系)】

バインドゥックは、米粉がもたらすその独特の食感から「①💧蒸しもの(ぷるぷる系)」の仲間に分類されます。厳密にはせいろで「蒸す」のではなく、鍋で力強く練り上げながら火を通すのですが、この系統の真骨頂である「ぷるぷる・トロトロ感」を存分に味わえる一品です。

最大の特徴は、生地作りに「澄まし石灰水(Nước vôi trong)」を伝統的に使用することです。水に溶いた米粉(タピオカ粉を混ぜることも)にこの石灰水を少しだけ加えることで、小麦粉のグルテンを使わなくても、生地に独特の「弾力(ぷるんとした歯切れの良さ)」が生まれます。 ここで火を止めて熱々のまま提供するのが「バインドゥックノン(Nóng=熱い)」、型に流し込んで冷やし固めたものが「バインドゥックグオイ(Nguội=冷たい)」となります。

■ 味わいの魅力と食べ方:冬の「熱々」と夏の「冷んやり」

① バインドゥックノン(熱々トロトロの冬スタイル) ハノイの冬の風物詩です。お椀に盛られた糊(のり)のようにトロトロで熱々の生地の上に、豚ひき肉とキクラゲを炒めた甘辛い餡、揚げたエシャロット、パクチーをのせ、温かいヌクマムダレをたっぷりとかけてスプーンでいただきます。お粥よりも粘り気があり、冷えた体に染み渡る究極のコンフォートフードです。

② バインドゥックラック(冷やしぷるんの夏スタイル) 生地に茹でたピーナッツ(Lạc)を混ぜ込み、型に入れて冷やし固めた伝統的なスタイル。包丁で菱形に切り分けて提供されます。こちらは食感が変わり、寒天や硬めのゼリーのように「ぷるんっ、サクッ」と歯切れが良くなります。これを、ベトナム北部の特産である大豆を発酵させた甘味噌ダレ「トゥオンバン(Tương Bần)」につけて食べると、素朴な米の甘みと発酵調味料のコクが見事にマッチします。

■ 健康への恩恵:古人の知恵が詰まった消化吸収の味方

見た目はシンプルですが、バインドゥックにはベトナムの風土に根ざした健康への知恵が隠されています。

  1. 石灰水によるカルシウム補給とアルカリ性: 伝統製法で使われる澄まし石灰水は、食感を良くするだけでなく、料理を微アルカリ性に保ち、暑い気候下での腐敗を防ぐとともに、貴重なカルシウム源にもなっていました。

  2. 究極に消化の良い炭水化物: 長時間火にかけて完全に糊化(アルファ化)させた米粉は、胃腸に負担をかけず、病み上がりや食欲のない時でも素早くエネルギーに変わります。

  3. ピーナッツ(落花生)の良質な脂質: 冷たいバインドゥックに練り込まれたピーナッツは、植物性タンパク質と血中の悪玉コレステロールを下げるオレイン酸などの良質な脂質を含んでおり、腹持ちを良くしてくれます。

■ 飲用とペアリング:発酵調味料を受け止める「渋めの緑茶」

バインドゥックには、甘辛いひき肉や、発酵した大豆の味噌ダレといったパンチのある味が合わせられます。そのため、口の中をスッキリとさせてくれるお茶が欠かせません。

  • タイグエン茶(Trà Thái Nguyên / 不発酵茶): ベトナム北部を代表する、渋みと旨味が強い高品質な緑茶(不発酵茶)です。ピーナッツの香ばしさやトゥオンバン(大豆みそ)の独特の発酵臭を、緑茶のキリッとした渋みが綺麗にまとめ上げてくれます。温かいバインドゥック・ノンを食べながら、あえて熱い緑茶をすするのも、ハノイの冬の粋な楽しみ方です。

■ 終わりに:変幻自在な米粉のポテンシャル

熱を加えればお粥のように人々を温め、冷ませばゼリーのように涼をとる。 バインドゥックほど、米粉という素材の柔軟性と、ベトナムの人々の生活の知恵を体現している粉もんは他にないかもしれません。

日本の皆さんにはまだあまり馴染みのない料理ですが、もしメニューで見かけたら、冬は「ノン(熱)」、夏は「ラック(冷)」と、季節に合わせてその変幻自在な米粉の魔法を楽しんでみてください。


⏳️バインドゥックヌン (Bánh đúc nướng)


⏳️バイントム (Bánh tôm)


🥢バインナム(Bánh nạm)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】バナナの葉が香る古都の包み蒸し!ペタンコで優しい「バインナム(Bánh nạm)」

前回の「バインベオ」に続き、同じくベトナム中部・フエ(Huế)を代表する伝統的な粉もんをご紹介します。 フエの宮廷料理や郷土料理を提供するお店に行くと、バインベオと一緒に必ずと言っていいほど注文されるのが、バナナの葉で長方形に包まれた「バインナム(Bánh nạm)」です。素朴な見た目からは想像できないほど、奥深い香りととろけるような口当たりを持つこの一品は、ベトナムの「包む文化」と「粉もん文化」が見事に融合した傑作です。

■ 語源:葉っぱの上に「薄く広げる」

名前の由来は、その独特の調理工程と形状に隠されています。

  • Bánh(バイン): 粉もん(粉を練って作ったもの)

  • Nạm(ナム): (生地を)薄く広げる、なでつける

直訳すると「薄く広げた粉もん」。その名の通り、バナナの葉の上に米粉の生地をペタンと薄く長方形に広げて作ることから、この名前で呼ばれるようになりました。

■ 製法とカテゴリー:バナナの葉が魔法をかける【蒸しもの(ぷるぷる系)】

バインナムもまた、フエ名物の「①💧蒸しもの(ぷるぷる系)」カテゴリーに属します。ただし、バインベオよりも水分量が多く、さらにとろりとした滑らかな生地であるのが特徴です。

水で溶いた米粉(少量のタピオカ粉を加えることもあります)を火にかけて練り上げ、とろみがついた半生状態の生地を作ります。これを綺麗に拭いたバナナの葉の上に薄く長方形に塗り広げ、その中央に、細かく叩いて炒めたエビと豚肉のそぼろを一本の線のように乗せます。そして、葉っぱをパタンパタンと平たい長方形に折りたたみ、せいろでじっくりと蒸し上げます。 蒸気の中で、バナナの葉の爽やかな緑茶のような香りが米粉の生地に移り、ほんのりと翡翠色に染まるのが最大の特徴です。

■ 味わいの魅力と食べ方:葉っぱをお皿代わりに、スプーンで削り取る

テーブルに運ばれてくると、まずは熱々のバナナの葉を自分で開くところからエンターテイメントが始まります。葉を開いた瞬間にフワッと立ち上る、米粉の甘い香りとバナナの葉の青々とした香りはたまりません。

食べ方も非常にローカルでユニークです。お皿に移すのではなく、開いたバナナの葉をそのままお皿代わりにします。生地の上に、甘辛いヌクマム(魚醤)のタレをスプーンで直接かけ、葉っぱからツルンと削り取るようにスプーンですくって一口でいただきます。 口に入れた瞬間、噛む必要がないほどトロトロに溶ける米粉の優しさと、エビの濃厚な旨味が広がり、心までほどけるような味わいです。

■ 健康への恩恵:老若男女を癒す「食べるお粥」のような粉もん

バインナムは、ベトナムの粉もんの中でもトップクラスに胃腸に優しい料理として知られています。

  1. バナナの葉の恩恵(ポリフェノールと殺菌作用): バナナの葉にはポリフェノールが豊富に含まれており、蒸すことでその成分や抗酸化作用が生地に溶け出します。また、葉が持つ天然の抗菌作用により、高温多湿のベトナムでも安全に保存・携帯できるという先人の知恵が詰まっています。

  2. 究極の消化吸収: 水分をたっぷり含ませてとろとろに蒸し上げた米粉は、まるでお粥のように消化に優れています。現地では、小さな子供の離乳食や、お年寄り、体調を崩した時の回復食としても重宝されるほどのヘルシーフードです。

  3. エビと豚肉のクリーンなタンパク質: 脂っこい調理法を一切避け、少量の良質なタンパク質とアミノ酸(ヌクマム)を同時に摂取できるため、疲れた胃腸を休めたい時にぴったりです。

■ 終わりに:フエの「粉もん三兄弟」の癒し担当

フエの郷土料理には、「バインベオ(お椀蒸し)」「バインナム(葉っぱ包み蒸し)」「バインボットロック(タピオカ包み蒸し)」という、絶対に外せない「粉もん三兄弟」が存在します。その中でも、最も自己主張が控えめで、優しく寄り添ってくれるのがこのバインナムです。

バナナの葉という天然のパッケージに包まれた、エコロジーでヘルシーな一口サイズの粉もん。ベトナムの食堂でこの四角い緑の包みを見つけたら、ぜひ熱々の葉っぱを開いて、古都の雅な香りを楽しんでみてください。


⏳️バインナムゴット (Bánh nạm ngọt)


⏳バインニョイ (Bánh nhồi)


⏳️バインフォントム (Bánh phồng tôm)


⏳️バインプテ (Bánh phu thê)


⏳️バインベオチェン (Bánh bèo chén)


🥢バインボットロック(Bánh bột lọc)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】透き通る生地に隠された宝石!フエが誇るクリスピー&モチモチの最高峰「バインボットロック(Bánh bột lọc)」

フエの「粉もん三兄弟」の中で最も個性的で、かつ日本人のファンも多い「バインボットロック(Bánh bột lọc)」です。 「バインベオ」や「バインナム」が米粉の「優しさ」や「滑らかさ」を強調していたのに対し、このバインボットロックは「弾力」と「インパクト」が主役。透き通った生地の中から真っ赤なエビが顔を出すその美しさは、まるで食べる宝石のようです。

■ 語源:磨き上げられた「精製された粉」

名前の由来は、その特殊な原料の加工プロセスにあります。

  • Bánh(バイン): 粉もん(粉を練って作ったもの)

  • Bột(ボット): 粉、澱粉

  • Lọc(ロック): 濾過する、精製する、洗練する

直訳すると「濾過された粉の粉もん」。これは、原料であるキャッサバ芋(タピオカの原料)から抽出した澱粉を、何度も水にさらして不純物を取り除き、真っ白で純度の高い澱粉にする工程を指しています。この「Lọc(濾過)」された粉こそが、あの独特の透明感を生み出します。

■ 製法とカテゴリー:タピオカが生む究極の弾力【蒸しもの(ぷるぷる系)】

バインボットロックは「①💧蒸しもの(ぷるぷる系)」に分類されますが、主原料が米粉ではなく「タピオカ粉(キャッサバ澱粉)」である点が最大の特徴です。

熱湯で練り上げたタピオカ粉の生地で、小さなエビ(川エビ)と豚の脂身を甘辛く炒めた餡を包みます。エビはあえて殻付きのまま使うのが本場流。これをバナナの葉で包んで蒸し上げる「バインボットロックラー(Lá=葉)」と、葉を使わずにお湯で茹で上げる「バインボットロックチャン(Trần=裸)」の2パターンがあります。 蒸し上がると、白かった生地が魔法のように透き通り、中のエビの赤色が鮮やかに浮かび上がります。

■ 味わいの魅力と食べ方:噛むほどに溢れるエビの旨味

食べ方は、バナナの葉を開くか、茹で上げたものに「ネギ油」と「カリカリのフライドエシャロット」をたっぷりとかけていただきます。 口に入れた瞬間、タピオカ特有の「グニュッ、モチッ」とした強烈な弾力が押し寄せます。続いて、殻付きエビの「パリッ」としたクリスピーな食感と、豚の脂身から溢れ出す濃厚なコクが混ざり合い、噛むほどに旨味が口いっぱいに広がります。

これを、唐辛子をピリッと効かせたヌクマムベースの甘酸っぱいタレにつけて食べれば、もうビールや手が止まりません。

■ 健康への恩恵:エネルギー補給とアンチエイジングの結晶

バインボットロックは、その食感の通り、非常にパワフルな栄養素を秘めています。

  1. 即効性のエネルギー源: タピオカ粉は消化吸収の良い炭水化物の塊。ベトナムでは、農作業や勉強の合間の「エネルギーチャージ」として重宝されてきました。

  2. 殻付きエビの「アスタキサンチン」: 本場のバインボットロックに使用されるエビの殻には、強力な抗酸化作用を持つ「アスタキサンチン」が豊富に含まれています。肌の老化を防ぎ、免疫力を高める効果が期待できる、まさに「食べる美容液」です。

  3. グルテンフリーの安心感: 100%タピオカ粉(または一部米粉)で作られるため、小麦アレルギーの方でも安心して楽しめる高エネルギーな粉もんです。

■ 飲用とペアリング:お茶との組み合わせ

この濃厚なエビの旨味とタピオカの弾力を楽しむ際は、口の中をスッキリさせてくれる「緑茶(Trà xanh)」や、フエで好まれる「ハスの実茶(Trà hạt sen)」が最適です。 ベトナムの緑茶は、日本のものより発酵を抑えた「不発酵茶」であり、強い渋みと爽やかな香りが特徴。これが、ヌクマムの塩気やエビの脂っぽさを綺麗に洗い流し、次の一口をさらに美味しくしてくれます。

■ 終わりに:フエの知恵が詰まった小さな芸術品

「バインベオ」の滑らかさ、「バインナム」の香りに続き、この「バインボットロック」の弾力を体験することで、ベトナム中部の粉もん文化の全貌が見えてきます。 同じ「蒸しもの」でも、粉の種類や包む葉、具材の処理ひとつでここまで表情が変わる。

ベトナムを訪れたら、ぜひこの「透明な不思議」を体験してみてください。見た目の美しさと、それを裏切る力強い食感のギャップに、きっと驚かされるはずです。


⏳️バインボーヌオックズア (Bánh bò nước dừa)


⏳️バインボーヌン (Bánh bò nướng)


🥢バインボーハップ(Bánh bò hấp)

🇻🇳 【ベトナム食文化コラム】発酵米粉が「這い上がる」!?フカフカ&モチモチのベトナム風蒸しパン「バインボーハップ(Bánh bò hấp)」

ベトナムの市場のスイーツコーナーで、先ほどの「バインダロン」と並んでよく売られているのが、色とりどりのカップケーキのようなお菓子です。 日本の「蒸しパン」や「かるかん」によく似たフカフカの見た目ですが、一口かじると、米粉特有の強烈な「モチモチ感」と、ココナッツの甘い香りが口いっぱいに広がります。それが、ベトナム南部の人々が愛してやまない伝統菓子「バインボーハップ(Bánh bò hấp)」です。

■ 語源:牛?それとも這い上がる?ユニークなネーミングの秘密

このお菓子もまた、その名前に面白い由来を持っています。

  • Bánh(バイン): 粉もん(粉を練って作ったもの、お菓子)

  • Bò(ボー): 牛、または「這う(はう)」

  • Hấp(ハップ): 蒸す

直訳すると「蒸した牛の粉もん」あるいは「蒸して這う粉もん」。 なぜ「ボー(Bò)」という言葉が使われているのかには、2つの有名な説があります。一つは、生地を発酵させる際に、ボウルの中で生地がムクムクと「這い上がる(Bò)」ように膨らむ様子から名付けられたという説。もう一つは、蒸し上がった生地の内部にできる無数の気泡の形が「牛(Bò)の乳房」に似ているから、という説です。どちらにせよ、ベトナムの人々の豊かな想像力が光るネーミングですね。

■ 製法とカテゴリー:発酵の力が生み出す「竹の根」の空洞【デザート(フカフカ・モチモチ系)】

バインボーハップはスイーツ系の粉もんである「④🍡デザート(モチモチ系)」に分類されます。最大のポイントは「酵母(イースト)」を使って米粉を発酵させる点です。

米粉、タピオカ粉、砂糖、ココナッツミルクを混ぜ合わせた生地に酵母を加え、じっくりと発酵させます。これを小さなカップや型に流し込んで蒸し上げます。 蒸し上がった生地を半分に割ると、発酵によって下から上へ真っ直ぐに伸びた細長い空洞が無数に並んでいます。ベトナムではこれを「竹の根(Rễ tre)」と呼び、この美しい気泡の筋がしっかりできているものほど、美味しくて成功したバインボーとされます。

■ 味わいの魅力と食べ方:ココナッツソースとごまでおめかし

市場などでは、手のひらサイズで白、緑(パンダンリーフ)、紫(マゼンタの葉)、茶色(パームシュガー)など、天然素材でカラフルに色付けされたものが売られています。

食べ方はそのままパクッといくのも良いですが、南部スタイルでより本格的に楽しむなら、「特製ココナッツソース(Nước cốt dừa)」をたっぷりとかけ、炒りごまをパラパラと振っていただきます。 噛むと最初はフカフカ、そしてすぐに米粉とタピオカ粉の「むっちり・もっちり」とした強い弾力が歯を押し返してきます。発酵によるわずかな酸味と、パームシュガーやココナッツの濃厚な甘さのバランスが絶妙で、見た目以上にお腹にたまる満足感の高い粉もんです。

■ 健康への恩恵:発酵の力で胃腸を助ける米粉スイーツ

日本の小麦粉を使った甘い菓子パンとは一味違う、ベトナムならではの健康的な要素が詰まっています。

  1. 発酵食品としての働き: 酵母を使って発酵させているため、消化吸収が良く、胃腸への負担を軽減してくれます。

  2. 完全グルテンフリー: 米粉とタピオカ粉がベースであり、小麦粉を一切使用していません。小麦アレルギーの方でも安心してフカフカ食感を楽しめます。

  3. 天然由来の糖分とミネラル: 茶色いバインボーには、未精製のヤシ砂糖(パームシュガー)が使われることが多く、精製糖よりもミネラルが豊富で、血糖値の急上昇を比較的穏やかにしてくれます。

■ 飲用とペアリング:ココナッツの甘みを切る「半発酵茶」か「花茶」

もっちりとした生地と濃厚なココナッツソースの甘みには、口の中を爽やかにリフレッシュしてくれるお茶がよく合います。

  • ジャスミン茶(Trà Lài / 不発酵・着香茶): 緑茶をベースにジャスミンの花の香りを移したお茶。パンダンリーフやココナッツの南国らしい香りと、ジャスミンの上品な香りは相性抜群です。

  • ウーロン茶(Trà Ô Long / 半発酵茶): 茶葉を途中で発酵させる「半発酵」で作られるお茶。適度な渋みとスッキリとした後味が、バインボー特有のもっちり感と甘さをスパッと断ち切り、次の一口を軽くしてくれます。

■ 終わりに:手間暇かかった「呼吸する粉もん」

発酵というプロセスを経ることで、米粉の生地がまるで呼吸しているかのようにフカフカに膨らみ、独自の食感を生み出している「バインボーハップ」。

市場でおばちゃんが売っている素朴なおやつですが、美しい「竹の根」のような気泡を作るには、気温や湿度の見極めという熟練の技が必要です。ベトナムのカフェや市場でこのカラフルな蒸しパンを見かけたら、ぜひ真っ二つに割って、中にある美しい発酵の軌跡を確かめてから頬張ってみてください。


⏳️バインラーガイ (Bánh lá gai)


⏳️バインレ (Bánh rế)


⏳️バインロッ (Bánh lọt)


⏳️フォー (Phở)


⏳️ブン (Bún)


⏳️ブンチャー (Bún chả)


⏳️ブンティットヌン (Bún thịt nướng)


⏳️ブンボー (Bún bò)


⏳️ブンモック (Bún mọc)


⏳️ブンリュウ (Bún rêu)


⏳️フーティウ (Hủ tiếu)


⏳️ミエン (Miến)


⏳️ミー (Mì)


⏳️ミークアン (Mì Quảng)


⏳️ミーシエム (Mì xiêm)


⏳️ミートゥイ (Mì tươi)


⏳️ミーホアンタン (Mì hoành thánh)

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