第6話:ポケットの中の共犯者
前回のお話▼
ポケットの中で震えたスマホを取り出し、
画面をロック解除する。
睦月からのメッセージだ。
『今日の放課後、僕の部屋に四人全員を呼んで。話がある』
心臓がドクリと跳ねた。
あの冴えない陰キャの睦月が、
学校一の美女たちを自分の部屋に招き寄せる。
その異常な光景を想像するだけで、
頭がクラクラした。
だけど、
彼のプロデューサーとしての、
そして探偵としての目には、
もう何かが見えているのかもしれない。
「みんな、今日の放課後、時間ある?」
私は意を決して、
図書室に集まった三人を見回した。
「乙羽くんの家で、この手紙の件、すべて決着をつけようって。四葉さんにも私から連絡しておくわ」
一華は眼鏡の奥の目を細め、
美月は不敵に唇を歪め、
詩織は小さく肩を震わせた。
誰も拒絶はしなかった。
それぞれが、何かを隠し、
あるいは何かを暴こうという強い意志を孕んだ目で、
私を、そして互いを見つめ合っていた。
♢
放課後。
睦月のワンルームマンションに、
私たち五人の女子生徒が集まった。
学校一の優等生、
美術部のエース、
気弱な図書委員、
そして派手なギャル。
およそ睦月の人生には交わるはずのない彩りが、
狭い室内にひしめいている。
「突然集まってもらってごめん」
睦月はいつもの冴えない調子ではなく、
どこか冷徹なトーンで話し始めた。
机の上には、
私の下駄箱にあった『熱狂的なラブレター』と、
彼の机に入っていた『白紙の便箋』が並べられている。
「この事件の奇妙なところは、容疑者がお互いに疑い合っている点だ」
睦月がホワイトボードにマーカーで図を書き始める。
「一ノ瀬さんは二階堂さんを見たと言い、二階堂さんは三波さんと四葉さんの共謀を疑い、三波さんは一ノ瀬さんが手紙を書くのを見たと言う。全員が『誰かが怪しい動きをしていた』という証言を持っているんだ。……四葉さんはどうかな? 誰か怪しい人を見た?」
話を振られたひなたは、
いつものへらへらした態度を一変させ、
真剣な顔で睦月を見つめた。
「わたしは……あすか先輩の下駄箱の近くで、乙羽先輩、あなたを見たよ」
室内の空気が、
一瞬で凍りついた。
私の視線が睦月へと向かう。
「昨日の朝、みんなが来る前の早い時間。あなた、あすか先輩の靴箱の前に立ってたじゃない。何してたの?」
ひなたの鋭い指摘に、
睦月は動揺する風もなく、
ただ静かに眼鏡の位置を直した。
「ああ、それは僕があすかに頼まれて、忘れ物がないか確認しに行っただけだよ」
「そんなの、うちらには確かめようがないじゃん」
美月が冷たく笑う。
「ねえ、そもそもさ、この中で一番怪しいのって、神代さんの『特別』なポジションに収まってる乙羽くん、あんたじゃないの?」
「乙羽くんが、犯人……?」
一華が呟く。
その声には、
怒りとも落胆とも取れる、
複雑な感情が混じっていた。
「私、乙羽くんの動画、よく見てるの。あの構成力、言葉選びの繊細さ。……あの上質なラブレターの文章、乙羽くん、あなたなら簡単に書けるんじゃないかしら。神代さんを恐怖させて、自分に依存させるために」
疑惑の矢印が、
一瞬にして私の隣にいる睦月へと集中した。
一華の筆跡、美月の動機、詩織の執着、ひなたの監視。
それらすべてを、
後ろから糸で操っていたのは、
本当にこの男なのだろうか。
「みんな、落ち着いて」
私は睦月の前に立ちはだかった。
「睦月がそんなことするはずないわ」
「どうして言い切れるの、神代さん」
詩織が長い前髪の隙間から、
見たこともないような冷たい目で私を射抜いた。
「貴女は、彼の本当の姿を、どれだけ知っているというのですか?」
全員の視線が、
私と睦月に突き刺さる。
睦月は、私の背後で何も言わず、
ただ静かに手紙を見つめていた。
その横顔は、
夕暮れの影に沈んで、
どんな表情をしているのか読み取れなかった。
続きはこちら▼

原作はこちら▼
