第7話:裏切りのデッサン
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一瞬にして逆転した容疑の矛先。
学校一の陰キャ男子であるはずの睦月に、
四人の女子生徒たちの鋭い視線が集中する。
「どうしたの、乙羽くん。言い訳はしないわけ?」
美月が机に肘をつき、
挑発するように睦月の顔を覗き込んだ。
「……確かに、僕にはその文章を書く技術がある」
睦月は否定しなかった。
ただ、
感情の消えた声で淡々とホワイトボードのマーカーを弄んでいる。
「でも、僕があすかに恐怖を植え付ける動機がない。僕はすでに、彼女のプロデューサーであり、特別な存在だからね」
「それが動機そのものじゃないかしら」
一華が腕を組み、
冷徹な声で論理を組み立てていく。
「神代さんは完璧に見えて、内面はとても脆い。配信の同接が伸び悩んでいることも、あなたが一番よく知っているはず。彼女を精神的に追い詰め、孤立させれば、彼女はあなたという『救い手』に完全に依存するわ。自作自演の救世主。クリエイターの独占欲としては、最高に歪んでいて美しいと思わない?」
一華の言葉は、
まるで鋭いナイフのように私の胸に突き刺さった。
配信が伸び悩んでいること。
本当の私が脆いこと。
それを知っているのは、確かに世界中で睦月だけだった。
私は思わず、
一歩睦月から距離を置いてしまった。
その私の小さな動きを、四人の目は見逃さなかった。
「ほら、あすか先輩だって疑ってんじゃん」
ひなたが低く笑う。
「乙羽くん……本当のことを、言って……」
詩織がすがるように睦月を見つめる。
「面白いね」
睦月がふっと笑った。
それは、
私が今まで見たことのない、
冷たくて乾いた笑みだった。
「一ノ瀬さん、君は僕の動画のファンだと言った。じゃあ、僕の動画の特徴を、一番よく研究しているのは君なんじゃないかな。」
「なっ……」
一華の顔が初めて屈辱に染まる。
「それに、二階堂さん」
睦月は次に美月を指差した。
「君は僕の部屋に来たことがないと言った。でも、僕のベランダから見える美術室の窓に、君のスケッチブックが置き忘れられているのを僕は知っている。君は、この部屋を外から観察していた。あるいは、僕の留守中に……」
「……何それ、ストーカー扱い? 最低」
美月が顔をそむけたが、
その耳の裏が微かに赤くなっている。
「三波さんも、四葉さんも同じだ。全員が、僕とあすかの『距離』に嫉妬し、あるいは利用しようとしている」
睦月の反撃によって、
部屋の中の疑惑は再び乱反射を始めた。
誰もが誰かを疑い、
誰もが誰かに監視されている。
「もうやめて!」
私は耐えきれずに叫んだ。
「みんな、何が目的なの!? 誰がこの手紙を入れたのよ!」
私の叫びに、
部屋は再び静まり返った。
夕闇が部屋を完全に支配し、
机の上のサクラ色の便箋が、
まるで血の色のようにどす黒く見えた。
その時、
私のスマホがまた震えた。
今度は画面に、
非通知の着信が表示されていた。
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