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法人の資産運用を始めた


2025年に会社の経営で新たに始めたことに資産運用がある。本稿では、ひとり会社における資産運用への取り組みの過程をふりかえる。

これまで個人で株式投資をしていたが、応援している企業の株を買ったり、雰囲気で投資してきた。資産運用の視点からはほとんど自己投資してきた。現在ひとり会社を経営しているのも自己投資の1つといえる。やったことのないことをできるようになるのがおもしろいという、シンプルな動機づけで自己投資してきた。

資産運用に取り組むきっかけ

2025年の春頃に体調を崩して健康不安に陥った。現代人は生きているだけでストレスを受けながら生活している。それを承知した上であえて語弊のある言い方をすると、なにもしていないのに体調不良になった。これまでたくさん働いて学ぶというシンプルな生活をしてきた。加齢もあり、そのやり方が体力的に限界にきたのかもしれない。そして、これ以上の 自己投資をしない と決めた。投資に対して得られる結果や成果を自分に求めない。これまでの自身の生き方を否定する、辛い決断でもあったが、いつ働けなくなるかもしれない自身は信頼できないという事実を変えられない。

ひとり会社のメリットの1つとして個人とは異なる法人という人格を得られる。ひとり会社なので実質、自分自身ではあるが、この人格を個人と法人で使い分けると都合のよいときがある。

資産運用の文脈でいえば、個人と法人で異なる投資戦略を取るために人格から変えてしまうというわかりやすさにつながる。たとえば、個人ではやや大きくリスクを取ったり実験的な取り組みをする。法人では個人の資産運用から得た経験を元に安定性やリスクを取らない戦略で運用するといった考え方ができる。つまり1人で2つの投資戦略を取ることでリスク管理も分離できる。

税理士さんと相談

法人で資産運用をすることに懸念はないのか?まずは税理士さんと相談するところから始めた。税理士さんからは資産運用そのものは構わないが、次のことを決めておくのが大事だと助言を受けた。

資産運用の目的

冒頭に書いたように自己投資ができないため、これまでプロダクト開発のために貯めてきた余剰資金を有効活用することを目的とする。労働時間を減らしていくことで売上が減っていくことを想定する。少しでも売上の足しになればよい。

「法人としての」投資スタイル

どのぐらいの期間でリターンを目指すのか、どのぐらいの含み損を許容できるのか。とくに市場が悪化して含み損を出たときにストレスを受けてしまって本業に影響が出ないかという視点から話されていた。

  • 短期でリターンを得ようと考えていない

    • 目安として3-5年程度の投資期間でリターンを考える

    • 投資期間5年だと含み損が出る可能性を受け入れる必要がある

  • どのぐらい含み損が出たときに投資をやめるか、やめないか

    • 市場が悪化して含み損が出ても5年は投資をやめない

  • 投資手法はどうするか?

    • 原則として投資信託のみで分散投資する

      • 運用は年に数回程度ポートフォリオのリバランスをする

    • 私が機動的に意思決定をして売買はしない

      • 売買はなるべく仕組み化して定期的にオペレーションする

        • 例) 積み立てで定期的に購入する

実務的なところ

  • 消費税の簡易課税 (課税売上5000万円まで) の範囲内であれば税務的にコストはかからない

  • 証券会社の選定

    • 手数料の安いネット証券にする

    • 法人に信用がないと証券口座の開設を拒否される可能性がある

  • 会計システム (freee) と証券口座は API 連携できない

    • 証券口座の資金移動や売買の仕分けを手作業で行う必要がある

    • 年に数回程度のオペレーション、運用コストは無視できる

証券会社の選定

どこがよいかわからなかったので ChatGPT と相談しながら適当に決めた。次の比較表を作ってもらってランキングの高い順に証券口座の開設申請をしていくことに決めた。結果的には SBI 証券さんで開設した。

次の比較表は2025年8月頃に ChatGPT が作成したものになる。内容が正しいかどうか、私は一切裏付けを取っていない。誤っている可能性があることを考慮してみてほしい。

頻繁に取り引きしないため、手数料の多寡はあまり重要ではない。次の評価基準でランキングづけしてもらう。

  1. 取扱商品の幅(国内外の投信・ETF・債券・REITの充実度)

  2. 取引・管理ツールの品質(PC・スマホ両方の使いやすさ、分析機能)

  3. 口座管理・入出金のしやすさ(銀行連携、処理スピード)

  4. 法人向けサポート体制(法人特有の相談・対応力)

  5. 信頼性・経営基盤(親会社の信用力、障害発生率の低さ)

  6. 外貨・為替取引の柔軟性(外貨建て取引、為替手数料、外貨預かり)

  7. レポート・情報提供の質(マーケットレポート、分析情報の充実度)

ChatGPT が作成した証券会社の比較表
  • 総合力で選ぶなら → SBI証券(ほぼ全方位対応)

  • 債券・海外ETF重視なら → マネックス証券

  • UIや日常管理のしやすさ重視なら → 楽天証券

  • サポート重視なら → 大和証券 or 三菱UFJ eスマート証券

証券口座の開設実務 (SBI 証券さん)

  1. Web から法人口座開設の申込みを行うと1週間程度で申請書類が届く

  2. 口座開設に必要なもの

    1. 印鑑 (実印と銀行印)

    2. 法人口座

    3. 本人確認書類

      1. 法人の印鑑証明 (原本)

      2. 商業登記簿謄本 (原本)

      3. 代表者の本人確認書類を2種類 (コピー可)

        1. マイナンバーカード

        2. 運転免許証

  3. 各種申請書類を記入して証券会社へ送付する

  4. 審査が通れば口座開設の書類が届く (2週間ぐらい)

現物資産という考え方

友だちが不動産関係のお仕事をしている。資産運用への取り組みについて雑談しているときに現物資産も考えてみたら?と助言を受けた。

いま借りているシェアオフィスは約90万円/年の経費がかかっている。(同じ家賃で) 10年借り続けると仮定して、90万円 * 10 = 900万円でワンルームマンションを購入すれば経費を削減できないか?もし10年以上滞在すれば、さらに経費を削減できる可能性もある。

実際にシェアオフィスを借りている場所の近くで売りに出されているワンルームマンションを調べてみた。ビジネス的に利便性のよいところでオフィスを借りているせいか、築40年の部屋が600-900万円といった価格帯でみつかった (むしろこの価格帯だと築40年以上でなければみつからない) 。老後に住むわけではないから10年もてばよいと考えてみる。

しかし、所有すると別の経費もかかる。購入するワンルームマンションの価格を900万円としてシミュレーションしてみた。

  • 固定資産税・都市計画税

    • 固定資産税 1.4% + 都市計画税 0.3% = 合計 1.7%

    • 固定資産税評価額は購入価格より低め (一般的に7割前後)

      • 900 * 0.7 = 630

      • 630万円 * 1.7% ≒ 11万円/年

  • インターネットの通信費用

    • 5000円/月と見積もる => 6万円/年

  • 水道・光熱費

    • 1万円程度/月と見積もる => 12万円/年

  • 修繕積立金

    • 数千円/月 => 5000円/月として見積もる => 6万円/年

合計すると、11 + 6 + 12 + 6 = 35 万円/年かかることになる。月換算すると2.9万円/月の経費がかかる。少なくとも10年分の家賃で投資回収できるわけではないことが理解できた。ワンルームマンションへ移ることの定性的なメリットとデメリットを考察してみる。

メリット

  • ワークスペースが広くなる

  • 自由にテレビ会議できる

  • オフィスで食事を調理できる

  • 集中して働くときにそのまま泊まれる

  • トイレの利便性が上がる

  • エアコンの暑い・寒い問題が起こらない

デメリット

  • 会社の事情による引っ越しがやりにくくなる

  • 複合機 (プリンタ/スキャナ) が使えなくなる

  • 来客の打ち合わせスペース/有償会議室が使えなくなる

メリットもデメリットも、どちらも私にとって重要ではない。一方でいま借りているシェアオフィスは十分に競争力のある価格帯でサービスを提供していることも、現物資産の購入シミュレーションから理解できた。

シェアオフィスの懸念としてはインフレと連動して家賃が上がる可能性がある。数年前に契約したときは2年更新だった契約が、2024年に毎年更新に変更された (更新時の事務手数料も実質値上げ) 。そして2025年の更新時に共益費が20%値上げとなった。

健康不安から賃貸か所有かという問いにも意思決定できない。あと10年も働けるかわからないと消極的理由で現状維持とした。

2026-02-02 追記 マンションは資産とみなせるか?

区分所有マンションを資産として管理するときの落とし穴のようなことが書かれていておもしろいです。

ポートフォリオづくりと資産運用

ポートフォリオを作る上で信頼している情報源として後藤達也さんの note がある。私は2022年からコアメンバープランに参加している。当初は経済ニュースをわかりやすく解説してくれるので経済について学ぶきっかけにしようと考えていた。2025年の夏頃から資産運用に関心をもって学び始め、直近の経済状況を踏まえてポートフォリオを考察するときに後藤さんの考え方を参考にしている。

秋頃に証券口座を開設して、当時の状況からいくつか積み立て設定をして余剰資金を3ヶ月かけて投資してきた。現時点でのポートフォリオが次になる。

2025年12月末現在のポートフォリオ

始めたときの予定では外国株中心に投資することを考えていたが、ここ1-2ヶ月で AI バブルへの懸念や日米金利差の縮小などを考慮して自然にこのような配分に落ち着いた。あまり売買することを想定していないので意図的に REIT もはずしている。

余談だが、この3ヶ月間でもっとも含み益が多いのは金だった。また全体としては損益率が1.29%となる。3-5年程度をマイルストーンとしてリバランスしながら運用していく。どのぐらいの頻度でリバランスする必要があるかは、そのときの経済状況によって変わってくるように思える。一概に年何回とは決められないのかな?という、いまの所感。

ポートフォリオをみると株式と債券がほとんど同じ割合になってしまった。ポートフォリオを作っていて実感したのは、景気がよくなっても悪くなっても、為替が円安になっても円高になっても、どちらに動いても大きく含み損にならない状態を維持したり、一時的なインシデントに一喜一憂しなくて済むような状態をつくることが大事であるように感じている。

2026-01-31 追記 資産運用の構造理解

2026-02-14 追記 基準を見直しポートフォリオのリバランス

2026-03-07 追記 地政学リスクを考慮しポートフォリオのリバランス

インフレとはなにか

資産運用を始めるにあたって経済ニュースに関して疑問を感じる機会も多くなった。資産運用のような話題は友だちや知人と話題にしても敬遠される傾向が多い。そこで気になったニュースや話題を ChatGPT とよく議論している。私では ChatGPT の回答の正否を判断できないが、インターネットを調べればわかるような、基本的な背景知識について質問することが多い。

次の内容も ChatGPT とやり取りして学んだことを私が要約したものになる。誤りが含まれている可能性が高いので注意してほしい。

インフレを理解するためには、通貨と金の価格を比較するとよい。次のチャートは過去60年のドル建て金価格と実質金価格 (インフレ調整後、ドル建て金価格 ÷ 米国CPI) の推移を比較したものになる。

過去60年のドル建て金価格
過去60年の実質金価格 (インフレ調整後、ドル建て金価格 ÷ 米国CPI)

ドル建て金価格のチャートをみて、右肩上がりに金の価値が上がっているようにみえるが、これはドルの価値が下がったと解釈するのが本質に近い。現代経済の標準設計として、法定通貨はインフレを前提に供給量が増やされる仕組みになっている。これは法定通貨の価値が意図的に薄まることを表している。

一方で金は「増えない」ため、価値が保存されやすい。

  • 自然界での総量がほぼ決まっている

  • 中央銀行が勝手に刷れない

  • 何千年も「価値の保存手段」として使われてきた

金はインフレに対して中立な存在といえる。

ドル建て金価格のチャートをみると金の価値は史上高値圏にみえるが、実質金価格のチャートをみると1980年頃の歴史的ピークと同水準にみえる。実質金価格のチャートから、近年の金価格の上昇は金融・財政・通貨体制への不信が反映されたものと解釈できる。金は儲けるための資産ではなく、通貨が壊れないかを測る警報装置になる。

現在は次の状況といえる。

  • 高水準の政府債務

  • インフレが完全には鎮静していない

  • 実質金利は不安定

  • 地政学リスクは常態化

これは金にとって 「最高」ではないが「不要とも言えない」環境になる。

  • 金は主役ではない

  • ポートフォリオの安定装置

  • 定量的な最適解は5〜10%(今なら7〜8%が現実解)

  • それ以上は「保険」ではなく「投機」に近づく

金の価値を図るときにドル建て価格のチャートだけでみないことが大事。念のため、金はドル建てで取り引きされるが、日本で購入すると為替も影響するのでもう1つレイヤーが増えて複雑化する。ここではインフレの議論をするために円建ての話は割愛する。

インフレを理解して数字をみる

インフレについて調べていたときに次のような投稿をみかけた。

複利の計算 (名目値)

複利は次の計算式で求められる。

$$
1000 \times (1+r)^{60} = 600000
$$

このときの r の値は約0.1125となり、年平均成長率 (CAGR) は約11.25%になることを算出できる。

ここで S&P 500 の過去60年における実績を調べると次になる。

  • 対象: S&P500(配当再投資・名目リターン)

  • 期間: 約60年(1965年 → 2025年)

  • 2025年末の評価額: 約$39,650

  • 年次リターンの算術平均: 10.38%

1965年に S&P 500 に100ドル投資したときの2025年までのリターン (複利)

このチャートでは1965年に100ドル投資すると2025年末に評価額は39,650ドルのリターンを得られたという事実を示している。この値は物価上昇を無視した名目値になる。この後で名目値と実質値の違いをみていく。

2025年末の評価額である $39,650 から CAGR を算出する。

$$
100 \times (1+r)^{60} \approx 39650
$$

この実績から逆算した CAGR は約10.48%となる。年次リターンの算術平均10.38%とは異なり、CAGR は開始/終了の値から一意に定まる。算術平均は複利の成長率を表していないため、複利計算に用いると実際の評価額とこの例では約2200ドルの差異が出る。これは算術平均が年次の変動を考慮しない指標だからである。

$$
100 \times (1+r)^{60} = 100 \times 1.1038^{60} \approx 37448
$$

複利の計算には年次リターンの算術平均ではなく、CAGR を使う必要がある。

11.25%という値は S&P 500 の過去60年の CAGR よりも高いが、大きく外れた値でもないことが伺える。またこの数値は配当を再投資した値であることを意識しておくことも大事になる。配当を再投資すると複利効果が大きい。投資信託では分配金を自動で再投資する設定が一般的だが、ETF を購入すると分配金を受け取るときに課税された上で手動で再投資することになる。結果として課税タイミングにより長期の実効利回りが低くなる可能性がある。

実質値とインフレ

名目値だけみると、60年前に S&P 500 に投資したお金が約400倍になっているように錯覚してしまう。投資のリターンを評価するときはもう少し複雑で名目値ではなく実質値をみる必要がある。

実質値とは、インフレ (物価上昇) を考慮して「買える量 (購買力) でみた金額・利回り」になる。投資の目的は「お金を増やすこと」そのものではなく、将来の生活を維持したり、必要な物を購入できる力を増やすことになる。

それでは名目値をみなくてよいかというとそうでもない。本質は実質値だが、税金は名目値にかかる。インフレにより、名目値が上がると支払う税金も増え、実質値がほぼゼロまたはマイナスになる場合もある。

閑話休題。先に取り上げた実質金価格と同様に、インフレを考慮した実質値をみていく。1965年の100ドルの価値は2025年ではいくらに相当するのか。次の米国 CPI (消費者物価指数) を使って計算する。

  • 1965年: 約31

  • 2025年: 約320

$$
2025年のドル価値 = 31 \div 320 \approx 0.097
$$

この数値を使って39,650ドルを1965年のドル価値で換算すると次になる。

$$
39,650 \times 0.097 \approx 3846
$$

米国 CPI の数値から次のことがいえる。

  • 60年間でドルの価値が約十分の一になった

  • 60年間でドルは購買力を90%失った

この実質値 (購買力) で S&P 500 のリターンを評価すると60年で約40倍になったことがわかる。もちろん、この数値自体も十分に大きいリターンといえる。

将来の実質値をシミュレーションする

過去60年における CPI の数値を参考に、先の投稿のドル価値を計算してみる。念のため、このシミュレーションの結果自体にはほとんど意味がない。将来の数値が現在からみた過去の数値と同程度になるという根拠はなにもない。この先60年の CPI の値が約0.1になるかわからないし、S&P 500 の年平均利回りが約10%になるかもわからない。

1000ドルが60年後に600,000ドルになるという名目値が、S&P 500 の年平均利回りに近い約11.25%であったので、いまと同程度のインフレが起きたと仮定するだけの話でしかない。

60年後の600,000ドルは、いまの価値で60,000ドルとなる。1ドル=150円で換算すると、15万円が900万円になるというシミュレーション上の値となる。名目値と実質値で受ける印象が変わることを実感できればよい。

預金とインフレ

預金はインフレに対して構造的に弱い資産といえる。

  • 額面が固定 (インフレに応じて変わらない)

  • 利回りがインフレに追随しない

  • インフレで膨らむ名目利息にまで課税される

インフレにおいて預金は確実に価値が削られる資産とみなせる。米国と日本では金融構造が異なるため、ここでは日本の消費者物価指数 (CPI) と預金金利を比べてみる。

  • 2025年11月の消費者物価指数 (CPI) は前年同月比: +2.9%

  • 2025年12月時点のあおぞら銀行の円普通預金の金利: 0.50%

  • 税率: 20.315%

$$
税引き後名目金利 = 0.50 \times (1 - 0.20315) \approx 0.398 \% \newline
\newline
実質 (税引き後) = \frac{1+0.00398}{1+0.029} \approx -0.024 = -2.43 \%
$$

税引き後の実質リターンが約 -2.43% になる。購買力がマイナスになって価値が毀損している。預金は短期の流動性や支払い手段として必要なものであるが、中長期の資産運用の視点だと預金が元本保証しているのは名目値であり、インフレにおいては実質無保証とみなせる。


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