【聖なる経済学】 タイムバンキングと相互信用③
訳者コメント:
銀行業と聞くと半沢直樹を想像してしまいます。焦げ付いた融資を何としても回収する、ハゲタカのような組織を想像してしまいますが、それは現在のお金が持つ性質を反映しているだけです。マイナス金利を導入すれば高利貸しの性質は消えますが、信用の仲介者としての銀行の働きは、どのような経済にも必要とされるものです。しかし、それが巨大組織に集中する必要はなく、様々なレベルで、様々な形で実現することができます。
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(②から続く)
新しい形のP2P(ピア・トゥ・ピア)バンキングは、匿名のサイバースペースという隔たりを越えて信用度を判断するという、従来と同じ問題に直面します。例えば、5千ドルを6ヶ月間貸したいと考えている人と、それを6ヶ月間借りたいと考えている遠方の人が、データベースを通じて繋がるシステムを想像してみてください。あなたは相手のことを知りません。どうやって相手の信用度を判断すればいいのでしょうか。eBay(イーベイ)が使っているようなユーザー評価システムが部分的な解決策になるかもしれませんが、そのようなシステムは簡単に不正操作されてしまいます。本当に必要なのは、相手の信用度をあなたよりもよく知っている信頼できる機関です。あなたはその機関にお金を貸し、その機関が相手にお金を貸すのです。どこかで聞いたことがあるような気がしませんか。それを銀行というのです。
銀行は、お金と同じように神聖な側面を持っていて、銀行家とは、お金を美しく活用する方法を見出す人です。もし私が使い切れないほどのお金を持っているなら、「銀行さん、どうかこのお金を私が再び必要になるまで有効に使ってくれる人を見つけてください」と言うことができます。第12章で述べた劣化する通貨は、この銀行業務の観念を自己利益に結びつけます。「良い」ことがもはや「私の個人的な富を増やすこと」を意味しなくなったとしても、銀行は今後も必要な機能であり続けるでしょう。
その手段が社会的合意であれ、数式や専門家の決定であれ、信用を配分する方法は必ず存在します。銀行という機能は、暗黙であろうと明示的であろうと、常に存在し続けます。今日、銀行業界がこれらの機能を独占していますが、その利益の源は、信用を最も収益性の高い用途に配分する専門知識だけでなく、かつての信用コモンズに対する独占的支配にもあるのです。究極的には、新たな銀行制度がゼロから生まれる可能性があり、それは小規模な相互信用協同組合が互いに交換協定を結ぶことから始まるのです。異なる相互信用システム間の交換可能性は、この分野で注目されている話題であり、その原型は少なくとも2010年以降から開発が続いています。その課題は、長距離貿易を可能にするための交換可能性と、加盟国の内部経済を外部からの略奪や金融ショックから保護するための隔絶性とのバランスを取ることです。これらは、基本的に今日の小規模な主権通貨が直面している問題と同じものです。
相互信用制度は、地域社会、企業コミュニティ、または協同組合組織のために銀行機能を回復させるものです。これらの制度は、加盟組織内部の経済を育成・保護し、地域通貨と同じように外部からのショックや金融略奪から守ります。実際、地域通貨が取るに足りない地位を超えて拡大しようとするなら、多くの国家通貨が過去30年間に経験したような投機的な取り付け騒ぎから、自らを保護するための信用メカニズムが不可欠です。地域・広域の信用決済機関は、より賢明な国々が輸入代替を通じて経済を発展させた際に課したのと同じような、資本規制機能を行使できます。最も有名な相互信用制度であるスイスのWIRは、この原則のかなり極端なモデルを示しています。一度WIRに投資すると、現金化は許されません。地域レベルでは、これは外国投資家に部品調達を地元でするよう強制することになります。それほど極端でなくとも同様の措置が、1950年代と1960年代に台湾、日本、シンガポール、韓国によって、外国企業の利益の本国送金を制限する際に実施されました。
地方政府や地域政府が代替できる「輸入品」の一つは、信用そのものです。前述のアジア諸国もこれを実行し、政府の政策や非公式な文化的障壁によって銀行業界を外国銀行から締め出しました。地域・広域レベルでは、地域通貨がなくても、政府は独自の公営銀行を運営することで、外来の信用を代替することができます[12]。信用に対して支払いをするのであれば、その支払いは地域経済にとどまるべきではないでしょうか。今日、州政府や地方政府は税収を多国籍銀行に預け、銀行はそれを最も利益が得られる場所に貸し出しています。実際、現在のような銀行統合の時代においては、地方銀行がより大きな銀行に合併されてしまったため、ほとんど選択肢はありません。ノースダコタ銀行に代表される州立銀行は、地域に融資し、債券市場で高金利の債務を発行することなく地域のプロジェクトに資金を提供し、信用収縮時に融資することで逆循環効果を発揮し、銀行の利益をウォール街に輸出するのではなく地域に留めることができます。公営銀行は必ずしも利益を追求する必要はなく、もし利益が出たとしても、それは所有者である国民に還元され、信用コモンズが回復されます。こうした利点は、現在の金融システムにおいても当てはまるものです。
国家レベルでは、公的銀行は通貨発行権とほとんど同じものですが、米国(および他のほとんどの国)はこの権限を放棄し、連邦準備制度という民間機関に委ねています。しかし理論的には、独自の銀行を設立して自らに資金を貸し付け、実質的にゼロまたはマイナスの金利で紙幣を印刷することができます。あるいはアメリカ合衆国憲法で認められ、南北戦争中に制定されたように、銀行システムを迂回して直接通貨を作り出すこともできます[13]。第11章で概説した通貨の提案を実施すれば、地方自治体が同様のことを行い、世話をしている生物地域コモンズによって「裏付けられた」通貨を発行できるようになります。最終的に、政治的区分は生物地域や文化地域に適合するように変化するかもしれません。広域自治体は独自の通貨を発行する権限を持つことで、今日よりも大きな自治権を持つことになります。
大規模な資本をどう配分するかという決定は、単なる経済的な決定ではなく、社会的かつ政治的な決定です。今日の資本主義社会においてさえ、最大の投資決定は必ずしも企業の利益を考慮して行われるわけではありません[14]。人類を月に送ること、高速道路網を建設すること、軍隊を維持することはすべて、資本に対するプラスの利益を求めない公共投資です。しかし民間部門では、銀行の利益が資本配分を決定し、それは人間の労働力、創造性、そして地球の富の配分を決定づけます。私たち人類は、地球上で何をすべきでしょうか。この集団的な選択は、私有化されてしまったコモンズなのであって、神聖な経済においては私たち全員に回復されるべきものです。それは投資決定を民間部門から引き離すことを意味するのではなく、信用の性質を変えて、社会と生態系の利益に貢献する人々に資金が流れるようにすることを意味します。
信用コモンズの回復は、(第13章で述べた)P2Pレンディング、相互信用制度、信用組合などの協同組合銀行、公営銀行、そしてスウェーデンのJAK銀行のような革新的な新しいタイプの銀行など、さまざまな形で実現するでしょう。これらの制度は、お金と信用の力を人々に取り戻しますが、その形は様々で、相互信用制度のように草の根レベルのP2P構造を介して、あるいは公営銀行のような政治的に組織された機関を介して行われます。そして、通貨主権がなければ政治主権はほとんど意味をなさないため、信用に対する地域、広域、そして(小国の場合は)国家レベルの統制を再確立することは、経済、文化、生活の再地域化に向けた重要な道筋となります。
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注:
12. 公的銀行制度を支持する徹底的な議論については、 『負債の網』の著者であるエレン・ブラウンの著作を参照ください。公的銀行と相互信用通貨の類似性を指摘した記事としては、エレン・ブラウンの「貨幣の新理論の時」(http://www.webofdebt.com/articles/new_theory.php)が挙げられます。
13. デニス・クチニッチは最近、HR 6550: 2010年国家緊急雇用防衛法でこのアイデアを復活させました。
14. こうした政治的決定は、ますます企業の利益のために行われるようになっています。
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原文リンク:https://sacred-economics.com/sacred-economics-chapter-15-local-and-complementary-currency/
翻訳メモ:
regional:広域の。localを地域と訳したとき、regionalはより広域を指します。regional governmentを広域政府と訳すと国家連合のように聞こえてしまうので、広域自治体としました。

