傷を愛せるか|記事紹介
子は親の鏡だ。
だから、子どもが、自分のダメなところを受け継いでいると、まるでダメな自分をみているようで、心が悶え、ゆらぐ。
そんな親心のゆらぎを実直に綴り、煩慮憤悶の末に苦悩を克服しようとしているこちらの記事が、本稿の主役である。
タイトルにある「自己覚知」とは、端的には自分を正しく理解することだ。
特に福祉の世界では、ケアする側にこの「自己覚知」が求められる。自分のことも理解・制御できない人間に、適切なケアは提供できない。
筆者のはなさんは、「子は親の鏡」であり、子どもを見ることが自己覚知につながると指摘したうえで、こう説く。
もちろん、いい部分も子どもは見ていて真似します。
でも同じくらい、悪い部分も映してしまう。
やっぱり親の影響はとても大きいんだと思います。
自己覚知は正直、しんどい作業です。
自分の見たくない部分も見つめなければいけないから。
その通りだ。
人間だれしも、どうしても「自分の見たくない部分」がある。
それは、性格だったり、能力だったり――もっと言えば、嫌な経験、思い出したくもない過去のトラウマ、そして、それらによって歪められた自分の思想・価値観・ものの考え方など、実に様々なものが当てはまる。
1文字で言い換えることが許されるなら、それは、
「傷」
だ。
例えばだれかに切りつけられて、顔におおきな傷を負ったとする。
止血し、「もう治っただろうか」と鏡を見ると、そこには不気味な傷跡が生々しい、「誰かの顔」が映っている。
こんなの、自分じゃない…と、一筋の涙が頬をつたう。
傷とは、そういうものだ。
深かろうが、浅かろうが、何の関係もない。傷がそこにある限り。
直視するほど、自分が自分ではないように感じられて、息を呑んでしまう。
そんなはなさんを立ち直らせるのは、一言のフレーズだという。
「育児は育自だよ」
これは母から教えてもらった言葉です。
素晴らしい言葉だと思う。
映し鏡としての我が子を育てること。それはまさに、
自らの傷と向き合い、癒すことで、
自らを次の高みへ導く成長のプロセス
でもあるからだ。
この世で起きることには、本来、何の色も着いていない。
そこに、喜びだの悲しみだのの色を着けるのは人間だ。
もしかしたら、今は傷に見えるけど、見方によってはかけがえのないチャームだと思える日がくるかもしれない。
そんな日がくるまで、たゆまず「育自」していったらいい。
そう思わせてくれる。
***
しかし、癒える傷ばかりではない。
癒えるまで途方もない年月を要する傷や、あるいは一生モノの傷を負った人だって、世の中にはごまんといる。
両親の虐待、離婚や、家庭内暴力、犯罪被害、職場でのハラスメント……。
人の数だけ、傷の形がある。
自らに深く刻み込まれた傷が、我が子に重なって見えるとき、
目の前に立ちはだかるのは、本稿のタイトルでもある
傷を愛せるか
という命題だ。
お気づきの方もいると思うが、私の言葉ではない。
トラウマ研究の第一人者である、宮地尚子さんが書いたエッセイのタイトルから勝手に拝借している。
精神科医師としてトラウマを抱える患者と向き合う傍らで、研究者としても知見を深めていった彼女が綴る言葉は、「傷」を抱えて生きるすべての人の、夜の底に沈むような思いを、脱脂綿のようにごくごくと吸い取っていく。
傷を愛することはむずかしい。傷は醜い。傷はみじめである。直視できなくてもいい。ときには目を背け、見えないふりをしてもいい。隠してもいい。
……
ただ、傷をなかったことには、しないでいたい。
このような「傷と向き合う心構え」を示したうえで、彼女は、わた毛のようにふわりとした筆致で、そっと処方箋を差し出す。
傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷のまわりをそっとなぞること。
身体全体をいたわること。
ひきつれや瘢痕を抱え、包むこと。
さらなる傷を負わないよう、手当をし、好奇の目からは隠し、それでも恥じないこと。
傷とともにその後を生きつづけること。
なかったことには、しない。
でも、恥じることはない。
あわよくば、傷を愛したい。
我が子には、こんなまなざしを向けられる親でありたい。
こんなことを書いたのは、なんとなく、はなさんなら、傷を癒すだけでなく、癒えない傷を愛せる親にもなれる気がしたからだ。
それを予感させる、Noteの別記事でしたためられたはなさんの言葉を最後に、本稿をしめくくりたい。
期待することは悪くない。
でも、それが押し付けになったり、できなかった時に落胆するような向き合い方は、やめたい。
息子の真っ白なキャンバスに、できるだけ温かい色を置いてあげたい――そう思っています。
(ご参考 1/3)補足記事
内容はほとんど私自身の「傷」に関するものです。
(ご参考 2/3)あなたの記事を紹介させてください!
ご希望の記事をご連絡いただけると、私が全力でレビューさせていただく企画をやっています!
引き続き大絶賛☆募集中ですので、ぜひぜひご応募お待ちしております!
(ご参考 3/3)引用した書籍
宮地尚子「傷を愛せるか」は、勝手に本稿のタイトルにしてしまうくらい大好きな名作。我が子に自分の傷が重なって見えてしまう全ての人に、全力でおすすめします。
北野武「全思考」は、「傷を愛せるか」の対極にあるかの如き武骨な子育て論。切れ味抜群です。傷を「愛す」よりも、「癒したい」あるいは「乗り越えたい」マインドの方におすすめします。
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お気持ちめちゃくちゃ嬉しいです!でも、本当にいいんですか?