代謝と呼吸の関係〈呼吸で変わる〉 | 身体 - 1
運動する上で「呼吸が大事」だとわかっていても、それだけのために呼吸を深めるのは、なんかテンションが上がらないですよね。
それもそのはずで、呼吸の本質は「酸素を取り入れて、二酸化炭素を出す」ことでしかありません。でも、呼吸の理解が大事だと思う理由は、「エネルギー代謝・運動・栄養の繋がり」が簡単に見えるようになるからです。

例えば、脂肪燃焼すると大部分は呼気(吐く息:二酸化炭素)となって体内から排出されます。脂質のエネルギー代謝の結果です。
このnoteでは代謝×運動×栄養の繋がりの全体像をお伝えします。
体内の細胞で起こっていることを知り、今後のトレーニングやダイエットに役立ててください。
✅ この記事でわかること
「呼吸が大事」と言われる本当の理由
疲れやすい・集中力が続かない・運動してもスッキリしないのが食事と関係している理由
脂質やタンパク質をメインにした食事が、じわじわ身体のパフォーマンスを下げる理由
「何を食べるか」が呼吸の効率まで変えてしまう仕組み
深い呼吸ができる身体に必要なこと
👩🏫「呼吸」とは
冒頭にも記載した通り、呼吸の本質は「酸素を取り入れて、二酸化炭素を出す」ことです。
これをもっと噛み砕くと、
酸素は「細胞がエネルギー(ATP)を産み出すため」
二酸化炭素は「エネルギーが必要な箇所に酸素を届けるため」
これらに必要です。
もちろん、呼吸の役割は他にも様々あります。
・神経バランスの調整(交感神経・副交感神経)
・循環とリンパの促進(血流・免疫)
今回は「酸素を取り入れて、二酸化炭素を出す(ガス交換)」機能についてお話しします。
1. 「外呼吸」と「内呼吸」とは
まず以下の基本的な知識を確認しておきましょう。
呼吸は「肺で行われる外呼吸」と「細胞間で行われる内呼吸」の2つがあります
酸素は細胞のエネルギー生産(ATP合成)に使われ、二酸化炭素はその燃焼の副産物として生まれます

2. 「ガス交換」とは
ガスとは酸素と二酸化炭素のことです。
吸気で酸素を入れ、呼気で二酸化炭素を排出します。以下が「ガス交換」の一連の流れです。
息を吸い、肺にやってきた酸素を血液に渡します(外呼吸)
酸素を積んだ血液は各組織細胞へ酸素を渡し、それとともに二酸化炭素を受け取ります(内呼吸)
二酸化炭素を積んだ血液は肺へと流れていき、息を吐くことで体外へ排出されます(外呼吸)
もっとイメージを掴みやすくすると以下の流れになります。

画像1・2 肺呼吸(外呼吸)
↓
画像3 血液を介したO₂供給(酸素輸送)
↓
画像4 細胞呼吸(内呼吸・ミトコンドリア)
↓
画像5 ATP産生(栄養素と酸素の化学反応)
ここで最も大事なのは、1つでも滞るとエネルギー(ATP)産生効率が落ちるということです。
👩🏫エネルギー産生(エネルギー代謝)とは
代謝とはわかりやすくいうと、身体の細胞「ミトコンドリア」が「ATP(人間のガソリン)」を作る反応です。
代謝経路について知らなくても全然問題ありませんが、イメージだけでも知っていればエネルギー代謝についての理解度がぐっと上がります。
以下では代謝経路を見てみましょう。

糖質(グルコース)
↓ [解糖系]
ピルビン酸
↓ (ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体)
アセチルCoA
↓ [TCA回路]
NADH・FADH₂
↓ [電子伝達系]
ATP(大量産生)
1. 解糖系
糖から「ATP」と「ピルビン酸」が産生されます。
解糖系を回した結果、酸素量によって2分岐します。
無酸素運動:酸素が不足していれば「ピルビン酸」を「乳酸」に変換します
有酸素運動:酸素が十分であれば「ピルビン酸」が酵素(ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体)の力で「アセチルCoA」を産生します
筋トレは無酸素運動です。
糖不足状態で筋トレをしたなら、「糖」にすぐ変わりやすいアミノ酸を得るために筋肉を分解してエネルギーを補います。
(軽い有酸素程度であれば、まずは体脂肪が優先的に使われやすいですが、高出力をしたいなら必ず糖質が必要です)
ボディビルダーの人たちも、普段は完全に糖質断ちして筋トレしているわけではなく、無酸素運動ができる程度に糖質を摂ってトレーニングしています。
🔽間食をうまく取り入れてエネルギーを切らさない方法はこちら
2. TCA回路(クエン酸系)
酸素を使って大量のATPを作ります。
長時間持続する運動(マラソンなど)や高強度運動後のインターバルに利用できます。
ただしこの段階ではまだ糖・脂質・アミノ酸をCO₂まで分解し、少量のATPが発生するだけです。
発生したCO₂量によってO₂が供給されるので、それを受け取ってから電子伝達系を回すことになります。
3. 電子伝達系
TCA回路で発生したCO₂によってpHが下がった箇所に優先的に赤血球がO₂を持ってきてくれるので、ATPを大量生産します。
👩🏫 呼吸と代謝がどう影響し合うか
呼吸と代謝は一方通行の関係ではなく、互いに影響し合っています。
代謝が活発になるほどCO₂が多く産生されます。
そのCO₂が「ここに酸素を届けてください」というサインになり、血液中の酸素が必要な場所に優先的に集まります。
届いた酸素がさらにエネルギー産生(ATP合成)を加速させます。
つまり代謝が回るほど呼吸が機能し、呼吸が機能するほど代謝が回るという好循環の仕組みになっています。
逆に言えば、この循環のどこかが滞れば全体の効率が落ちます。
呼吸が浅くて酸素が届かなければ代謝が鈍り、食事が乱れていて代謝経路の効率が悪ければ呼吸を深めても活かしきれません。
この循環を理解するために、以下の3つの仕組みを押さえておきましょう。
1. 「ボーア効果」とは
体内では水素イオンH+もしくは二酸化炭素CO₂濃度が高いところに優先で酸素O₂が届くようになっています。
これを「ボーア効果」と言います。
血液中では酸素は赤血球の持つ「ヘモグロビン(Hb)」というタンパク質に結合して運ばれます。しかしヘモグロビンはどこでも同じように酸素を離すわけではありません。
H+ or CO₂が多い(=代謝が活発=酸素をたくさん使っている)場所では、血液中のpHが下がって酸性に傾きます。この「酸性の環境」になるとヘモグロビンは酸素との結合力が弱まり、酸素を手放しやすくなります。

①TCA回路で排出された二酸化炭素(CO₂)は水分と結合して炭酸となり、電離して重炭酸イオンと水素イオン(H⁺)となる
CO₂ + H₂O ⇄ H₂CO₃ ⇄ HCO₃⁻ + H⁺
②酸素を運んできたヘモグロビン(HbO₂)と水素イオン(H⁺)がくっつき、酸素(O₂)が取り出せる
HbO₂ + H⁺ → HHb + O₂
③酸素(O₂)が電子伝達系の回路に取り込まれる
生理学的に 「ボーア効果(Bohr effect)」 と呼ばれる現象で、体が「酸素を“必要な場所”に優先的に届ける」ための仕組みです。
だからたくさん使っている箇所に優先的にO₂が供給されて、使い続けることができます。
ここで一つ疑問が生まれます。
CO₂が多い場所に酸素が優先的に届くなら、CO₂をより多く出せる状態を作れば、酸素も届きやすくなるはずです。
では何をメインエネルギーにすると、CO₂が多く出るのでしょうか。
それを示す指標が「呼吸商」です。
2. 「呼吸商」とは
「呼吸商(RQ)」とはエネルギーに変換するまでの酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の体積比のことです。
酸素の消費量に対して二酸化炭素が多く発生すれば「呼吸商が高く」なります。
そして、この呼吸商が高い状態がよい状態です。
細胞がCO₂を多く排出している
=代謝がさかん(TCA回路・電子伝達系がよく回っている)
=酸素O₂をたくさん使ってATPを作っている

そして、エネルギー代謝は糖質・脂質・タンパク質を燃やすことでATP産生していますが、その効率は化学式で見るとわかりやすいです。
理科の授業で習ったと思いますが、「燃やす」って物質が酸素(O2)と反応して熱と光を発生する燃焼反応です。
解糖系 + TCA回路 + 電子伝達系まで含んだ 「総合的反応式」をそれぞれ見てみましょう。
①糖質を燃やす場合
対象:グルコース
化学式:C₆H₁₂O₆ + 6O₂ → 6CO₂ + 6H₂O ( + 38ATP)
呼吸商:RQ = 6CO₂ / 6O₂ = 1.0
→ 糖質は完全燃焼するため、CO₂とO₂の比が1:1。
→ 代謝効率が高く、ATP産生あたりの酸素コストが低い。
👉 酸素効率が高く、短時間高出力に強いです。
② タンパク質を燃やす場合
例:アラニン
化学式(概算):C₃H₇NO₂ + 3O₂ → 3CO₂ + 3H₂O + NH₃ ( + 約15〜20ATP)
呼吸商:RQ ≒ 0.8
※アミノ酸は種類が多く、便宜上「平均的な構造式」で表現
→ 一部が脱アミノ反応(NH₃:アンモニア発生)で肝臓に負担。
→ 主に糖質や脂質が不足したときの非常手段
👉 筋肉分解(異化)時にも利用されます。
③ 脂質を燃やす場合
例:パルミチン酸
化学式:C₁₆H₃₂O₂ + 23O₂ → 16CO₂ + 16H₂O ( + 129ATP)
呼吸商:RQ= 16CO₂ / 23O₂ ≒ 0.7
→ 酸素をたくさん使うわりにCO₂の排出が少ない。
→ 酸素コストが高く、ATP効率はやや低い。
👉 長時間運動には向くが、酸欠状態では燃やしにくいです。
💡【補足】燃焼した脂肪は「息」になる
これら化学式から、もう一つ面白いことがわかります。
エネルギー代謝の結果として出てくるCO₂は、実はそのまま呼気として体外に排出されます。つまり燃焼した脂肪は「息」になって出ていきます。
ダイエット(体重減)をしたい場合、体脂肪を落とすことを考えると思います。
つまり、ダイエットに必要なのはそもそも「消費カロリー」より「脂肪燃焼」です。
我々の体内でエネルギー代謝すると(糖質・脂質・タンパク質が燃やされると)、以下になることが先ほどの化学式でわかりましたね。
・CO₂(二酸化炭素)
・H₂O(水分)
・NH₃(アンモニア)
・ATP(エネルギー)
つまり燃焼したエネルギーは呼気(吐く息)となって出ていきます。
しっかり呼吸しながら運動することがエネルギー代謝をスムーズにし、消費カロリーを上げることができるのはこれが理由と考えられます。
何度も言いますが、カロリーバランス(PFCバランス)や栄養を整えた上で運動することが第一条件で、しっかり呼吸するだけで健康的に痩せることはありませんのでお間違いなく。
💡【補足】呼吸商(RQ)はなぜ「酸素:二酸化炭素」なの?
呼吸商 (RQ) = CO₂排出量 ÷ O₂消費量
呼吸商は、「ATPをどれだけ作ったか」ではなく、「体全体(呼吸・代謝全体)でどの栄養素が燃料になっているか」を表すものです。
なぜ「酸素:ATP」ではなく「酸素:二酸化炭素」で測られるかというと、以下2つの理由からです。
酸素の使われ方と二酸化炭素の出方は、燃やす栄養素によって決まる
・糖質を燃やすときは O₂ と CO₂ がほぼ同じ比率(1:1)
・脂質を燃やすときは O₂ が多く必要で、CO₂ は少ない(≈ 0.7)
→ なので、O₂ と CO₂ の出入りを比べれば「何を燃やしているか」がわかる。(糖質中心か、脂質中心か、の判定指標)ATP産生量は条件(筋肉量、酸素供給量など)で変動するため、測定しにくい。 一方で、O₂とCO₂は呼気ガス分析でリアルタイムに測定できる。
→ 実測できる「代謝の見える化指標」として呼吸商が使われる。
O₂ と CO₂の測定の方が簡単でブレが少なかったということですね。
3. 「細胞内酸欠状態」とは
日々の食事が脂質・タンパク質メインでは細胞内酸欠状態になりやすいです。
糖代謝に比べて脂質・タンパク質メインの代謝では、同じATPを作るために必要な酸素量が増えます(酸素効率が悪い)ため、細胞レベルで酸欠状態に近くなります。
理由を3つお伝えします。
① 脂質やアミノ酸の燃焼は「還元度」が高いから
脂質・アミノ酸は、糖に比べて 炭素あたりの水素が多く、「燃やすため(酸化させるため)に、より多くの酸素が必要」です。
・糖質が中心の代謝(RQ ≈ 1.0)
酸素効率が良く、代謝がスムーズ
・脂質中心の代謝(RQ ≈ 0.7)
酸素を多く消費 → 細胞がやや酸欠になりやすい
・タンパク質(RQ ≈ 0.8)
非常時用
細胞が取り込める酸素には限界があるため、脂質・タンパク質を燃やそうと思っても、同じ時間で燃やせるエネルギー量が少なく、「酸素不足=細胞内酸欠」状態になりやすいです。
② 脂質・タンパク質代謝は「電子伝達系」依存度が高いから
糖質代謝は途中(解糖系)でATPを少し作れますが、一方で脂質・アミノ酸代謝は、電子伝達系(O₂を最終受容体とする)でしかATPが作れません。
つまりO₂が少しでも不足したら電子伝達が止まり、ATP産生がストップするため細胞がエネルギー不足になります。結果的に 「酸素不足に弱い=酸欠に陥りやすい」代謝経路です。
③ 酸素あたりのATP効率(P/O比)が悪いから
O₂ 1分子あたりに得られるATP量(P/O比)を比べます。
・糖質が中心の代謝(P/O ≈ 3.0)
最も効率が高い(O₂あたりのATP多い)
・脂質中心の代謝(P/O ≈ 2.8)
わずかに低い(O₂を多く使う)
・タンパク質(P/O ≈2.5〜2.7)
不安定で効率が低い(脱アミノ反応の損失あり)
酸素を同じだけ使っても、糖質のほうが早く多くのATPを作れます。脂質・タンパク質ばかり燃やしていると、酸素を使いすぎてATPが少ない(=酸素効率が悪い)状態になります。
つまり、細胞内酸欠とは、血中の酸素が足りないわけではなく、「細胞が使える酸素の効率が悪い状態」のことを指します。
🔥 【実践】質のいい呼吸と代謝を回すには
では実際に、代謝をスムーズに回すために何をすればいいのでしょうか。
以上より、代謝には栄養素だけでなく、酸素O₂が絶対必要だということがわかりました。
糖質は脂質・タンパク質で代替できますが、酸素は一切代替できません。
その上で、効率よく酸素O₂を生み出すには、糖質を意識した食事が重要となります。
糖質中心
少ない酸素でたくさんATP
酸素効率が良い
脳や神経も安定
脂質・タンパク質中心
酸素をたくさん消費する
代謝速度が遅く、酸素不足時に止まりやすい
疲労・集中力低下・倦怠感・眠気などが出やすい
脂質・タンパク質代謝でもATPはちゃんと作れるのに「酸欠」と言われる理由は、エネルギーが作れないからではなく、酸素コストとスピードの問題です。
もし、呼吸を意識していても
・いまいち元気が出ない・パワー不足
・疲れやすい
・もっと動けるはず…
と思った場合は、カロリーバランス・PFCバランスを意識して食事を見直してみましょう。
🔽バランスのいい食事についてはこちら
🔥運動時に呼吸×糖質が重要な理由
運動から呼吸・代謝は切っても切り離せません。
では実際に運動するときに、呼吸と糖質の状態がどう影響するのでしょうか。
「運動すれば代謝が上がる」は正しいですが、呼吸が浅い・糖質が足りていない状態で運動しても、期待した効果が得られないどころか身体への負担が増える場合があります。
乳酸・筋トレ・有酸素それぞれの視点から見てみましょう。
1. 糖質と血流が乳酸の処理速度を左右する
乳酸は「疲労物質」と言われがちですが、実際はむしろ再利用されるエネルギー源となる代謝産物です。
筋肉が酸性になる主な原因は、激しい運動時にATP(エネルギー)を消費(分解)する過程で水素イオンH+が放出されるからだとされています。乳酸はむしろ、この水素イオンを取り込んで中和し、筋肉が酸性になりすぎるのを防ぐ「緩衝材」のような役割を果たしています。
そのため、乳酸は長時間動き続けるためには必要な物質です。
しかし、乳酸が必要以上に生成されると、やはり脚の重さ・だるさ・動かしにくさを引き起こします。
なので、乳酸の生成が処理を上回り続ける状態(乳酸閾値を超えた状態)を避けることが理想です。
🔽スタミナに関係する乳酸についてはこちら
体内に糖質が十分にある状態では、ピルビン酸がアセチルCoAに変換されてTCA回路に入るので乳酸はそこまで溜まりません。
反対に糖質不足では、ピルビン酸の処理が追いつかなくなり乳酸への変換が増えます。
結果として同じ運動強度でも乳酸の生成速度が上がり、乳酸閾値を超えやすくなります。
乳酸閾値は運動強度との兼ね合いで決まるものなので、糖質不足だけが原因ではありません。同じ糖質不足でも低強度の運動なら閾値を超えない場合もあります。
さらに、血流が悪いと乳酸を他の組織に運べないので処理されにくくなります。乳酸は血流に乗って肝臓や他の筋肉に運ばれ、エネルギーとして再利用されるので、代謝がうまく回っていると血流も促進され、乳酸の処理がスムーズになります。
逆に糖質が不足して代謝が鈍ると、乳酸の生成が増える上に処理も滞りやすくなります。
このように乳酸の蓄積を防ぐには糖質と血流、そして代謝経路がきちんと回っていることが重要です。
ただし乳酸閾値は糖質だけで決まるものではなく、運動強度・姿勢・体温・自律神経なども関係します。糖質と呼吸はあくまでその中の重要な要素です。
2. 無酸素運動ほど呼吸が代謝効率を決める
無酸素運動は「エネルギー代謝で酸素を使わない運動」ですが、だからといって呼吸がどうでもいいわけではありません。
たしかに酸素がなくても解糖系でATPは作れますが、呼吸が浅ければエネルギー産生効率がかなり悪くなります。
呼吸が浅い状態だと身体自体が軽い酸欠状態になっている可能性が高く、その状態でさらに無酸素運動したら、一応解糖系は回るものの、TCA回路・電子伝達系が鈍くなります。
つまりATP生産がすぐ頭打ちして体力切れになりますし、疲労感・だるさにつながります。
もっと簡単にいえば、呼吸が浅いまま無酸素運動することは「ATPは少し作れるけど、回路が閉じているから効率最悪・疲労最速・代謝低下する」ということです。
呼吸が浅いと以下のような問題が起きます。
呼吸筋が過緊張:胸鎖乳突筋・斜角筋・僧帽筋上部が張ります
二酸化炭素排出が減る:体内のpHが崩れます(呼吸性アシドーシス)
血管収縮:頭痛・手足の冷え・動悸が起きやすくなります
自律神経の乱れ:交感神経優位→コルチゾール過剰→筋分解リスクが高まります
逆に呼吸が整っていれば酸素がしっかり細胞に届くので、酸欠起因のトラブルは起こりにくいです。
このように、呼吸の質がエネルギー代謝効率(ATP生成率)を左右するので、深い呼吸のできる身体が必要です。
深い呼吸とは、胸だけでなく横隔膜をしっかり上下させる呼吸です。
そこまで意識せずに自然呼吸も深まれば最高です。
3. 有酸素運動は糖質によって代謝がスムーズに回る
では有酸素運動ならどうでしょうか。
「有酸素だから脂肪が燃えるはず」と思いがちですが、糖質の状態によっては逆効果になることがあります。
糖質が枯渇した状態では、血糖値を維持するために糖新生が始まります。
糖新生のためにコルチゾールが上昇し、筋肉が削られてエネルギーに変換されます。
いわゆる「筋肉が落ちている」状態です。
🔽血糖値についてはこちら
さらに糖質がないので脂質をメインに燃やすことになり、前述の通り細胞内酸欠状態になりやすく疲労が抜けにくい状態になります。
また有酸素運動中も呼吸が浅ければ、TCA回路・電子伝達系への酸素供給が滞り、エネルギー産生効率が落ちます。
「走っているのにすぐ息が上がる」「運動後にぐったりする」という場合は、呼吸の浅さと糖質不足が重なっている可能性があります。
有酸素運動を効果的にするには、運動前に適切な糖質を摂り、横隔膜を使った深い呼吸で酸素を細胞に届けられる状態を作ることが前提です。
以上のように糖質・呼吸が揃って初めて、有酸素運動が代謝をスムーズに回す手段になります。
とはいえ、糖質を摂れば万事解決というわけでもなく、脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルがそろったPFCバランスの上に糖質の優先度があります。最終的には食事・睡眠・運動・ストレスのバランスが土台です。
⚠️ よくある誤解
1. 呼吸を整えれば代謝が上がる
「呼吸を深めると代謝が上がる」という話はよく聞きますが、正確ではありません。
呼吸はエネルギー代謝に必要な酸素を届けるための機能であり、深呼吸そのものが代謝を上げるわけではありません。
食事でエネルギーと栄養素が十分に供給されていて初めて、深い呼吸が代謝をスムーズに回す意味を持ちます。
呼吸が整っていても、カロリーやPFCバランスが崩れていれば代謝は上がりません。
「筋トレだけで〜」「ピラティスだけで〜」みたいな言葉は過信しないようにしましょう。
2. 脂質をメインエネルギーにした方が長時間燃焼できるから効率がいい
脂質は1gあたりのエネルギー量が糖質の2倍以上あるため「効率がいい」と思われがちです。
しかし細胞レベルで見ると、脂質を燃やすには糖質より多くの酸素が必要で(呼吸商0.7)、酸素効率は糖質(呼吸商1.0)より低いです。
同じ酸素量でより多くのATPを作れるのは糖質です。
脂質がメインになると細胞内が酸欠状態に近くなり、疲れやすさや集中力の低下につながりやすくなります。
3. 呼吸さえ深めれば体脂肪が落ちる
脂肪燃焼の結果として二酸化炭素(CO₂)が呼気から排出されるのは事実です。
しかし「深く呼吸するから脂肪が燃える」という因果関係は逆です。
代謝が活発に回っているからCO₂が多く出るのであり、呼吸を深めるだけでは体脂肪は落ちません。
脂肪燃焼にはエネルギー収支・PFCバランス・運動の組み合わせが必要です。
📝まとめ
呼吸は、ただ酸素を吸って二酸化炭素を吐く動作ではありません。
体内でエネルギーを作り、必要な場所に酸素を届け、代謝を回すための重要な入口です。
ただし、呼吸だけを整えれば代謝が上がるわけではありません。
代謝がスムーズに回るには、酸素だけでなく、糖質を中心としたエネルギー、PFCバランス、運動による筋肉の使用が必要です。
この記事で押さえておきたいポイントは以下です。
呼吸は外呼吸と内呼吸に分かれる
酸素はATP産生に必要
二酸化炭素は酸素を必要な場所に届けるサインになる
糖質は酸素効率が高く、ATPを作りやすい
脂質やタンパク質中心の代謝は酸素コストが高くなりやすい
脂肪燃焼の結果、二酸化炭素として呼気から排出される
つまり、「呼吸が大事」という言葉の中身は、呼吸・代謝・食事・運動がつながっているということです。
呼吸は単独のテクニックではなく、代謝を支える一部として考えましょう。
食事・運動・呼吸が揃ったとき、身体は効率よくエネルギーを作り、使えるようになります。
まずはカロリーとPFCバランスを整え、糖質を適切に摂り、身体を動かし、酸素を使える状態を作っていきましょう!
