「小説 組織風土改革推進委員会」第20話:連絡
第20話:連絡
6月3日の三社での全体ミーティングはあっという間に終わった。みんな考えている方向はほぼ同じであった。ひとまず、課長層ミーティングについて連絡内容を検討し、文案まで作成した。
件名:課長層ワークショップについてのご案内
各位
六月三日に行われた三社合同の全体事務局ミーティングは、迅速に終了しました。七月以降の課長層ミーティングについて以下の点を決定いたしました。
日時:
第一回:七月四日(木)十時~十八時
第二回:七月十一日(木)
場所:
両回とも大谷商事Aホールにて開催
対象者:
課長歴一年目~五年目の方々
各社、計二十名ずつ参加し、第二回では課長を入れ替える
応募方法:
自薦または手挙げ方式での参加を推奨(各社の人事・総務窓口担当へ六月十日までに参加有無を知らせること)
チーム構成:
一チーム六名×五チームで二回開催
事前課題:
自己紹介カードの提出
ワークショップの目的:
他社の取り組みを学び、自身の組織を客観的に見直す
各社・各組織ごとに期限を設定し、組織課題を解決する(最長一年で測定可能なマイルストーンを設定)
ワークショップの内容:
第一部:
他社の課長が考えていることを捉えるため、「課長自身の組織のゴールは何か?」という問いを立てる
各自に対して、以下の点を話してもらう:
ゴールに向かって何をしているか?
足りていない要素は何か?
今後どのような取り組みを考えているか?
そこへの組織、自身の強みは何なのか?
各社のエンゲージメントサーベイ結果や取り組みを材料に、他社からのフィードバックを受ける
第二部:
自社の制度によって良かった点や影響を議論する
本日の内容で良かった点を振り返る
予告:
八月末から九月初旬に役員層ミーティングを開催予定です。課長層研修とのギャップを含めて議論いたします。
加藤さんも、ここに参加した全員が、最後の役員層ミーティングについては、たったの二行であるが、課長だけではなく、役員もやるのだという意思をしっかり表現できたと思っている。また、ギャップを議論するなどの抽象的な文言で、参加する課長に真剣度合いを上げたいと思っていた。
連絡文書は、6月4日に各社人事から、課長層に配信された。また、参考で役員層から部長層も同様のメールを受け取ることとなった。もちろん、役員層にいたっては、まったく知らされていない内容だったので、事務局メンバーがそれぞれ関係の深い役員に呼ばれる始末であった。これは各社においてもそうであり、大谷商事にいたっては、「なぜ私は呼ばれないのか」という本部長や部長も数名いたと聞く。彼らには悪いが、今回は対象を課長になって5年以内と絞り、課長とか、管理職に完全に染まっていない方を選びたいと思っていたので仕方ないことであった。これからの会社を誰が変革していくのかを考えたときに、そこは本部長や部長ではなかった。たぶん、そこはあの古賀さんが厳しく伝えているようイメージが浮かんだ。伝えられた方はシュンとなって小さくうなずき、その場から退散するしかないような風景であった。
6月10日を待たずして、6月7日には20名超の申し込みがあった。マイケルジャパンも、大谷商事も同様であった。あとは人事で選ぶこととなった。ここで落選した課長も可哀そうである。落選したメンバーには抽選で外れたと連絡をいれた。20名のリストが出来上がった。
荻野は、リストを見ながら、
「元上司の課長がいるよ」
と八木沢に伝えていた。八木沢も
「いや、うちの課長、いやうちの課長ではなく元上司だな、同じく通過してるよ、びっくりだな。頑張ってもらおう」
誰が、この10名ずつの中からリーダー役で引っ張ってもらえばいいのだろうか?
加藤さんは、
「終わった時におのずとそういうものは自然に決まるよ」
なるほどなと思った。それはそれで、楽しみであった。
「この三人は要マークしてもらっていいかな。うちの20人のリストだ。ほかのメンバー、香取さんや八木沢さん、荻野さん、それに青山さんにも言わなくていいから」
加藤さんからプリントを渡された。
そこには名前が書かれた名簿表の中に、三人がマーカーされていた。
「安藤茂、山本亜紀、星野健太郎か・・・」
知らない名前であった。これはどういう意味がわるのだろうと考えていたが、すぐに加藤さんは立ち去った。
