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「小説 組織風土改革推進委員会」第18話:第2回ミーティング。アジェンダ案

第18話:第2回ミーティング。アジェンダ案

 夏日が続き、まだ梅雨入りには早かったが、昨晩からジメジメした日であった。湿度がかなり高い朝だった。南九州地方は梅雨入りだった。福岡に住む家族からも、北部九州地方ももうすぐ梅雨入りすることを聞いていた。このワークショップの一つ目の施策が進む頃は梅雨も明けて、博多山笠だなと懐かしくも思っていた。
 5月29日、三つのワーキンググループは、ともに2回目のミーティングをオンライン開催した。 

 組織風土WGは、三社の組織課題の解決方法として、三社の課長層、三社の役員層によるワークの開催を提言していた。本日は、実際のアジェンダを仮でも作っていこうということとなっていた。今日のファシリテーターは大谷商事の古賀さんであった。古賀さんは、今日は、ショートカットの髪をさらにカットしており、前髪を揃える今風な感じであった。小柄な顔立ちだが、かなり意志の強い方に見えた。特に、1回目のミーティングでも提言していたが、役員層の合宿的なワーク開催に思いが強いようであった。 

 古賀さんに「その思いや感情はどこからきているものなのか」を確認したかった。そこには、大谷商事全体の課題、何かしらの背景や、古賀さん自身の経験もあるのだろう。
「今日は、アジェンダ作成となっております。まず課長層のアジェンダからです。議題の順番として、何をゴールとするかの言語化、そのためのワークショップではどんな問いを立てて参加者に思考してもらうか、ひとつは入り口の問いと、メインの問いも議論したいと思います。まずはゴールの言語化のところですが、早速、マイケルジャパンの野間さんからからどうですか?」
「そうですね、ここでの最終ゴールは、積極的に他社の取り組みを学んで、自責の視点で自身の組織を見直す、組織課題を解決するといったところでしょうか」
「なるほど。簡潔にまとめてもらえてありがとうございます。うん、わかります。そうですね、村田さんはこれに関しては?」
「”他社からの学び”と、”自責”というワードは非常に良いと思います。例えばここで自律とか言っても曖昧な感じとなるので自身の責任でという意味の言葉は良いと思いました。なんか、みんな逃げ出すことが出来ないような感じですね」

「ほかにみなさん、この文面に含みたい意味とか、大切なワードはありますか?」
「いつまでにとか、いつを目処にとか期限を設けても良いかと。このプロジェクトや、ワークの意味合いが明確になるのでは感じました」
と、荻野が提案した。
「それもいいですね、ある程度の枠を設けてやってもらうことは、解像度が上がりますね。実際は、さらに、マイルストーンで明確にしてもらうとかもありですね」

話し合いの結果、最終ゴールは、

  • 積極的に他社の取り組みを学んで、自責の視点で自身の組織を見直す

  • さらに各社、各組織、期限を決めて組織課題を解決する(期限は、最長一年として、測定できる形でマイルストーンを設定する) 

で、いこうということとなった。ゴールは本日のところは、仮で確定し、古賀さんは次の話へと進んだ。
「課長層への問いは、どんな形で出していきましょうか?八木沢さんはどうですか?」
「メインの問いは、他社の取り組みを学んで、自責の視点で自身の組織で見直す点は?で良いのかなと考えます。そして、まず最初の入り口の問いは、今までの自組織の取り組みで良かった点、悪かった点は?と内省してもらえればどうかなと思いました」

 みんな八木沢のコメントに頷いていた。
「ありがとう、八木沢さん。みなさん、何か八木沢さんの話に付け加えたり、少し視点を変えて進めたが良いところなどありますか?」
末次さんが、
「その施策、取り組みに至る背景とか、また、その方の価値観もわかったがよいので、自己紹介カードとか事前に準備しておいてもいいですね。あっ、みなさん、ちょっと話をずらしてしまい申し訳ありません」
「いえ、いいですよ。自己紹介カード、ここもおさえておきましょうか。では、戻して、八木沢さんの意見にプラスする内容とか、何かちょっとした違和感とか感じているとかいうことはありますか?」
マイケルの井尻さんが手を挙げた。
「前段のところもう少しいいですか?入り口の問いの前に、各自が、本日、期待することも聞いておきたいです。その人が何を目的に参加しているかわかるので」
「ありがとう、そうね、その方のことを、まずは理解しよう、知ろうという姿勢を出していくことになりそうで、いいですね」

 しかし、誰も「古賀さんの問い」には答えていなかったような気がした。少し、骨格のところに話を戻したいと考えていた。俺は、全体像を考えながら、なんとなく八木沢の案に違和感というか、これでいいのかなと思い、手を挙げた。

「先ほどの末次さんの自己紹介案、野間さんのおっしゃった本日の期待に賛成します。そのあとは、ストーリーとしては、他の会社の課長が何を考えているかを捉える問いがよいかと感じたのですが。課長自らの組織のゴールは何か?という問いに対して話してもらうことが入り口の問いで、メインは、そのゴールに向かって、何をしているのか?何が足りていないのか?今後何をやろうと考えているか?そこでの強みは何なのか?を語ってもらい、それを他の会社から見てどう感じたか?もっとよくするならば何を提言するか?という流れのほうが、ゴールに自ずと近くなるような気がしました。そういう問いがあってゴールへの答えが自然に出てくるのではないかと。少しストレートな問いは、無理につくった答えになりそうな気がしました。私の考えすぎでしょうか?」

 八木沢には少し悪い気がしたが、さっきのコメントには、もっと深掘りすべきだと感じていた。どちらもゴールへの導きだが「他社の取り組みを学んで、自責の視点で自身の組織で見直す点は?」と言った八木沢のストレートな問いは、参加している課長たちは、みんな賢いわけだから、なんだか、良い言葉で作文してしまう気がした。
 単なる三社が集まった研修で終わるわけにはいかないなと思っていた。せっかく三社集まるのだから、各自が、フィードバックをきちんと出来れば心にも響くような形になるのではないかと。

 八木沢は、
「うん、うん、村田さんの話、わかります。なるほどーー」
マイケルジャパンの井尻さんも、
「議論が盛り上がりそうですね。この流れだったら」
古賀さんは、俺が話したことをオンライン上のチャットに箇条書きした。そして、下記に決定した。

  • 事前に提出した自己紹介カードをもとに、自己紹介、且つ、本日の期待を話す

  • 入口の問いは→「他の会社の課長が何を考えているかを捉える」問い→「課長自らの組織のゴールは何か?」を語る

  • メインの問い→各自に、

  1. そのゴールに向かって、何をしているのか? 

  2. 何が足りていないのか? 

  3. 今後何をやろうと考えているか? 

  4. そこへの強みは何なのか?を語ってもらう

  • それを他の会社から見て「どう感じたか、もっと良くするならばどうするか」などをフィードバックする

  •  振り返りの問い→本日の内容で良かった点を話す

 なんだか、自分たちの案に、皆、よい感触をもっていた。そして、自社でみんなに、この案を早く伝えたい衝動に駆られていた。八木沢も荻野もそうであろう。だが、ぎゅっと握りつぶされたり、壊されたくないという思いもあった。八木沢と荻野には、話が漏れでもしたら、反対派がどこからか出てきて面倒なことになりかねないことと、明らかに、役員層への社内の根回しが必要なので絶対に社内では公言しないようにと伝えた。俺は、やはり、このあたりは加藤さんに任せたがいいかなと考えていた。
 ジメジメした朝とは打って変わって、南風が強く吹いていた。いつにわか雨が降ってもおかしくない感じであったが、少し晴れ間も見えてきた。俺たち自身には、強いチーム意識も芽生えていた。


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