「小説 組織風土改革推進委員会」第15話:三社間協働プロジェクト
第15話:三社間協働プロジェクト
五月の連休明けのみんなの顔はそれぞれであった。家族サービスで体全体から疲れた感が溢れ出ている香取、沖縄でマリンスポーツエンジョイしてきたと言わんばかりの真っ黒な顔で精悍さを増した八木沢、ゆっくりと連休期間は読書で過ごしたという青山は、銀ブチ眼鏡に色白でクールな雰囲気のままだった。荻野はさらに有給休暇プラス2日で友人たちとまだハワイにいるそうだ。確かに少し連休から日程ずらした方が少しでも旅行代金は安くなるし、せっかくだからあと2日というのは彼にとって正解である。単身赴任の俺は自宅のある福岡に帰り、まあ、家族に気を使いながらの休みだった。どうしても日頃いない男が、5日間も家の中にいると、家族もどこかしら具合が悪くなるようだ。
加藤さんとのミーティングも連休明け初日だった。
「みんな、エンゲージメント施策の説明会準備や、各組織ヒアリングなど日程が詰まっているかもしれないが、以前、村田さんが話していた大谷商事との組織風土改革の定例意見交換ミーティングを五月から開催するのだが、一社混ぜて欲しいと、会社に連絡が来たんだ。そのことについて少し話をするけどいいかな」
大谷商事はまだまだスタートの会社であり、もう一社となると、大谷商事もやりづらくないかなあと、不安がよぎった。どういう理由でそういうことになるのだろうか。すぐに、加藤さんは、俺に向けて
「村田さん、大谷商事の大谷社長は既に知っているんだ。というか、大谷社長からの申し入れで、マイケルジャパンと一緒にやろうとなったんだよ」
みんな、少し呆気にとられていた。思わず青山が
「外資のマイケルさんとは、うちとも、大谷さんとも組織カルチャーが大きく違いませんかね。お互いの参考になるのでしょうか?」
村田も、どうなるのだろうか、大谷商事とはわかるが、マイケルジャパンとなると、上手く意見交換や議論が出来るのか迷いがあった。なぜ大谷社長はマイケルと一緒にと思ったのか。この件で、マイケル側にメリットあるのだろうか?
加藤さんが続けた。
「マイケルさんも外資として様々な課題があるようだ。様々な人事制度など、彼らは日本企業よりも進んでいる側面があるが、いろんな面で、グローバルに画一的にやってきたことから、弊害もあるのか、少し、日本法人らしさというものが求められてきているそうだ。今後、日本に根付いた制度導入や、風土醸成を行っていきたいとも聞いている。おそらく、その背景には、若年層の離職の問題や、何かしらの課題があるとは思うが、他社と一緒に学ぶことで採り入れられるよいものもあるだろうということで、大谷商事の社長とマイケルジャパンの社長との間で話が進んだそうだ。是非、三社で協働していく仕組みをつくれないものかということだ」
たしかに、二社よりも三社で集まったほうが多様な意見が出て、参考になるものも得やすいだろう。実際マイケルジャパンはどういった組織運営をしているかなど参考になるであろう。
加藤さんが話を終えるとすぐに香取が口をはさんだ
「加藤さん、参画するメンバーは決まっているのでしょうか?うちは、もともと、その意見交換ミーティングのプロジェクトでは、人事ワーキンググループに人事から二名がはいると聞いています。サーベイグループに青山さんと私、そして事例研究のワーキンググループに村田さん、荻野さん、八木沢さんですよね。他社はどういったメンバーなのでしょうか?」
加藤さんは
「まだ聞いていないが、うちと同様にそれぞれのワーキングに二人か三人を参画させるそうだ。大谷商事も、マイケルジャパンも同様だ」
と言って、加藤さん自身も、本当はそのあたりのことは、まだ知らないような態度を見せてはいたが、何かとりつくろって、すぐに香取に返した感じもないではなかった。
たしかにどんなメンバーなのか非常に気になるところである。思い切り「人事しかやったことがありません」というようなプロ人事が来ても、お互いに参考になるのだろうか?とふと思ったりした。
ちょっとPCを打ち込みながら、話を聞いていた八木沢が、たずねた。
「当初から企画していた、外販も考えて進めている新サービス事業、つまり、社内のアワードをベースとした好事例を集めて、事例研究かつ、研修やワークに落としていく、組織風土改革事業は、この二社と一緒にやるとか、加藤さんはどう思っています?」
「そうだな、当初から君たちは社内でテスト導入して、ブラッシュアップして、数社でテスト導入していこうという考えでしたね。社内をやって、他社でテスト導入だと、なかなか時間も要するので、この際、うちが主管となって大谷商事とマイケルジャパンへテスト導入を最初の段階から行ってもらったらどうだろう?マイケルさんは全てのものには、のってこないかもしれないが、実際のワークショップなどの感想などをもらうことと割り切って、フィードバック役で依頼したらいいかもな。大谷商事さんならば、彼らにもノウハウを渡して代理店販売という展開もあるかもしれないな。今後のミーティングで、我々が意図していることなど、そのあたりも話をしてみよう。きちんとNDA結んでのプロジェクトなのでお互い安心して話せる場にしていこうな」
加藤さんは八木沢の不安を打ち消して、さらに前向きに進めていく方向を示してくれた。但し、まだ相手と会って話もしていない状態だったので、この時は100パーセント自信があるとかいうことてもなかった。
そして最初の三社間での意見交換ミーティングは早速ではあるが、5月15日月曜日、大谷商事で開催されることとなった。場所は三社持ち回りで、まずはリアルの対面主体でスタートし、ワーキンググループ会議はオンラインということとなっていた。
