テニス上達メモ567.言葉を超えた学び──アルカラスからコボッリが学んだこと
世界トップの選手と向き合った2時間の練習が、20分に感じられた──。その体験の中で、フラビオ・コボッリは、言葉によるアドバイスではなく、感じ取ることからしか得られない学びを経験しました。テニスで上達したいなら、まずは体験に身を置き、感じることが何より大事。本メモでは、その核心に迫ります。
▶2時間が20分になる体験
「時が過ぎるのもあっという間」
楽しい時を形容をするフレーズですね。
カルロス・アルカラスとの2時間に及ぶ練習が、20分に感じられたというフラビオ・コボッリ。
楽しかったに違いありません。
▶アドバイスは現状の否定
「彼はごく自然に多くのアドバイスをくれるし、たとえそれを言葉にしなくても、僕はそれを学び取っている」
こう練習を振り返るコボッリですが、アルカラスは実は、いわゆる「アドバイス」など、ほとんど与えていないというのが私の見立て。
アドバイスというのは、少なからず現状の否定を、そのニュアンスに含みます。
振る舞った料理について、「ハチミツを入れればもっと美味しくなるよ!」などとアドバイスされて、それがたとえ本当だとしても、作り手としては、やっぱり面白くないのです。
そのようなやり取りは、端から見ているだけでも、怒りすら覚えるのでしたね(関連記事「ボールを見る理由おまけ『とやかく言わせないため』」)。
▶否定のない学び
もう少し丁寧に読み解きます。
「彼はごく自然に多くのアドバイスをくれるし、たとえそれを言葉にしなくても、僕はそれを学び取っている」
「ごく自然に」と、コボッリは言っています。
「彼は多くのアドバイスをくれる」とだけ言って、「ごく自然に」のひと言は省略しても、十分通じるコメントです。
あえて「ごく自然に」を差し入れているのは、アルカラスのアドバイスに、否定や押しつけ、あまつさえ矯正の強制などが、一切含まれていないことを示唆しています。
▶テニス(芸術)は、考えのではなく感じる
そして、テニスは芸術なのでしたね。
「たとえそれを言葉にしなくても」とコボッリ。
池波正太郎曰く芸術とは、下記でした。
1.言葉で言い表せない。
2.他人と違う自分だけが生み出すもの。
アルカラスという唯一無二の芸術家から放たれる、唯一無二の一球から、コボッリは何かを感じ取っているのです。
それは、言葉で言い表せない「学び」です。
▶インパーソンという最大の教材
ちなみにこちら「未来は、支援から育つ」でご登場いただいたエンゼルスの菊池雄星に関する記事には、実は続きがありました。
「プロ野球選手がやっぱり言葉だけではなくて、こうやって、インパーソン(直接)で接するっていうことが、何よりも子供たちにとっては大事なことかなというのは強く感じてます」
言葉にできない大切なこと――その場で感じ、見て、触れる経験が、子どもたちの学びを豊かにします。
まさに、自分の時間や気持ち、やってみようと勇気を投じる行為こそが、学びへの投資と言えるのです。
▶とにかく始めた人だけが、学べる
コボッリは、2時間を「20分」に感じるほどの体験に、自分のリソースを投じました。
投資とは、成果が保証されたものにお金を出すことではなく、価値があるかもしれない体験に、まず身を置くこと。
「投資をしない理屈を重ねる人へ、バフェットからの単純なアドバイス」という記事について。
「とにかく始める」とは、こういうことなのだと思います。
▶言葉が、調子を狂わせる
改めまして、言葉で言い表せない学びです。
・「フォアかバックか判断して!」
・「足をもっと動かして!」
・「ちゃんと振り切って!」
ある現場で、ごく最近耳にしたアドバイスです。
このような「言葉」で、むしろ調子が狂ったご経験は、ないですか?
事実、遠くから眺めると、完全に調子を崩している様子が見て取れました。
それらの言葉は、判断を急かす否定であり、つまるところ「サボってないで足を動かせよ」という押しつけ、事情があるのに「振り切れよ」と強制する矯正でした(関連記事「『また同じこと言われてるよ!』って言われない?」)
それらアドバイスによりテニスの調子がかえって狂ったのだとしたら、その経験が、あなたのテニスを作っていますよ。
2時間が、20分に感じられるようなテニスを、楽しみましょう。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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テニスゼロ代表
吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero