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テニス上達メモ578.「カモン騒動」が教えてくれた、集中力の正体

ルールを破ると、なぜ集中力が落ちるのか?
テニスで本当に怖いのは、ミスよりも「集中の崩壊」。
ラケット破壊、静粛が求められる場面でのカモン、セルフジャッジのズル。
一瞬スッとするけど、その裏で何が起きているのか?
誠実さは道徳ではなく、「自他を利する集中法」。


▶私は、アウトサイダーに賭けてきた


こちら「おまけ1:『ひとかどの人』になるには」でも述べたように、スタン・ハンセンというよりもブルーザー・ブロディ、アンドレ・アガシというよりもジム・クーリエといった、アウトサイダーに惹かれてきました。

そこで、ノバク・ジョコビッチ。

今の彼が「アウトサイダー」かどうかはさておき(いやはや)。

プロとして駆け出しのころは、どうだったか?

目の利くある編集者が、まだ日本ではほとんど知られていなかった若いジョコビッチを練習コートで目の当たりにしたとき、「すごい選手が現れた」と、日本に報告したものの、「派手さがない」「絵にならない」みたいな理由で、取り上げてもらえなかった――そんな思い出が懐かしい(関連記事「おまけ:『地球か、何もかも皆懐かしい』」)。

▶その一言、インかアウトか


さて、そんなジョコビッチ妻のエレナさんが、大坂なおみの「カモン騒動」に言及したという。

いわく、

「これが妨害行為とされないことに驚いている」

「1本目と2本目のサーブの間に叫ぶのが公平だと思っていたなんて、審判と大坂の両方が信じられない」

「私がルールを見落としているの?」

と心境を吐露。

すると、私の見た限りですが、一部ネットユーザーから「虎の威を借る狐」だの「ボールガールにボールをぶつける選手の妻」だの「ラケット破壊する選手のパートナーであるお前が言うな」だの、散々言われる始末。

とはいえ、決勝戦まで残る数がテニス史上で最も多い選手の妻です。

世界で最も数多くトップレベルの試合を、会場でリアルタイム観戦してきたであろう経験を踏まえると、大坂の「カモン」に違和感を覚えたという事実――これは、重んじていいのではないでしょうか?

完璧な人間だけが、違和感を語る資格を持つわけではありません。

テニスがまだ初級者だからといって、声を上げてはいけないわけでもない(関連記事「『その教え方ではできません!』と声を上げる」)。

エレナさんだって、ノバクがボールをぶつけるアクシデントについて家では、「あなた、あれはマズイわよ」なんて、苦言を呈しているやもしれませんからね。

▶ルールを破れば、不利になる


ファーストとセカンドの間の「カモン」が、いいか悪いかはアンパイアの裁量に委ねられるとしても、ルールを破れば不利になる。

これがこの世の習わしです(関連記事「この世の中には『原因と結果の法則』が、ひとつの例外もなく作用している」)。

仏教の戒は、本来ルールや掟とは毛色が違いますが、結果として「不利になる」点は同じです。

別に破ったからといって、誰かに咎められるとか、天罰が下るとかいう話ではありません。

しかし私なりに意訳すると――

嘘をつくなかれ。
盗むなかれ。
殺すなかれ。
浮気するなかれ。
依存するなかれ。

自分が生きていく上で破ると不利になるという教えを説いた「ガイドライン」です。

浮気しても別に、刑事事件で罰せられるわけではないけれど、集中力が落ちること――それが、原始仏教の文脈で言えば、決定的な「悪」なのです(関連記事「『悪=下手くそ』の相関」)。

▶集中こそが、幸福そのもの


集中力というのは、よく耳にするありふれた一般名詞ですが、幸せをするための根幹です。

なぜなら人は集中している時こそ、至福だからです。

フローの生みの親、心理学者ミハイ・チクセントミハイは、「人はお金や地位よりも、フロー状態を味わうことに幸せを感じる」と言いました(関連記事「一気に上達する瞬間」)。

私も「そのとおりだ」と、強く実感する立場です。

幸せをするには(一般的に言うと幸せになるには)、必ずしも何かを得たり、何かができたりする必要はありません。

ただ集中すれば、今すぐここで、叶うのです。

▶人生も、鎖のようなもの


2026年、日本野球殿堂入りを果たした栗山英樹さんは言いました。

「ピッチャーは100球良くても、1球で負ける」

『タモリステーション』https://post.tv-asahi.co.jp/post-231500/

これは例の「鎖の話」に通じます。

「鎖の強さは、いちばん弱い輪によって決まる」

人生にも、そっくり当てはまります。

「人生全体の強度は、いちばん弱い輪っかによって決まる」

▶最弱の輪っかが、すべてを決める


たとえば、「嘘をつく」。

すると信用がなくなり、その部分が、人としていちばん弱い「輪っか」となるのです。

すると、どんなにマナーを守っても、よきことを言っても、受け入れられません。

逆に、慇懃無礼。

せっかくためになる話をしても、有名人になりかけても、その「輪っか」のせいで、人生という鎖は、ちぎれてしまうのです。

ルールを破れば不利になる。

100球良くても、1球ダメだと負けるのです。

何度も噛み締めたい教訓です。

▶鎖は、修復できる。より強く


松本人志も中居正広も国分太一も、どれほどのタレント(才能)が、ひとつの「輪っか」をきっかけに、人生の鎖を絡ませてきたことでしょう(関連記事「イップスは『絡まった糸』」)。

でも、その鎖は、きっと修復可能だと思っています。

なぜなら、鎖を錆びつかせた原因から、本人がいちばん深く学ぶからです。

筋肉は、傷ついて回復するとき、以前より強くなる。

心も同じ。

二度と同じミスをしないと決めて生きるなら、精神的超回復によって、その輪っかは以前より強くなる(関連記事「多少の病気や怪我や事故でさえ」)。

――――失敗は、終わりではないのですから。

▶おまけ:自利から利他へ、集中の話


「カモン騒動」に学ぶこと――。

誠実でいれば、やましい部分がありません。

そのぶん、集中という鎖の強度が上がります。

ラケット破壊も、インプレー中のカモンも、一瞬はスッとするかもしれない。

それで集中を取り戻したり、深めたりできるプレーヤーもいます。

しかし同時に、自分の中に「正当化」や「言い訳」というノイズが走ります。

セルフジャッジでズルをするのも同じ。

1ポイント、得した気になるかもだけど、実際には、集中力を自分で破壊しています。

「バレないだろうか」

「疑わしく思われていないだろうか」

「これで勝っても実力じゃないし」

ルールを破れば不利になる。

戒を破れば、心が乱れる。

結局のところ、誠実であることは、他人のための道徳というよりも、またきれいごとなんかじゃなくて、人生という、全部つながっている「鎖の強度」を強める話

「自分を利する集中法」であり、結果として、他も利する生き方なのだと思います。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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テニスゼロ代表
吉田無型(よしだ・むけい)

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即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO(テニスゼロ) スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero