テニス上達メモ499.それは“勝ちたい欲”であって、やる気じゃない----スポーツメンタル最終答
▶理屈より一歩。行動だけが現実を変える
やるかやらないか?
いくら知識として頭で理解しても、それは「畳の上の水練」に等しいのです。
実際にやってみないことには、水泳もテニスもできるようにはならない。
つまり実践。
そのために必要なのは何?
やる気、モチベーションです。
▶「実践する人」の生き方
「上手くなりたい」「勝ちたい」と思えば、やる気やモチベーションは上がるでしょうか?
否。
欲が、やる気やモチベーションにつながらない(むしろ逆効果な)理由について、綴ってみたいと思います。
そして、やる気やモチベーションが自然と高まる、つまり難なく「実践する人」になる生き方についてのご紹介。
▶欲が強いほど、心は不安定になる
一般的には「上手くなりたい」「勝ちたい」などの欲があるから、練習する意欲も湧いて、目標を達成できるんだと考えるかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか?
なぜ、「上手くなりたい」「勝ちたい」などと思うのでしょうか?
それは「上手くなりたい」「勝ちたい」などという欲の実体が、「叶っていない今は不満足」というストレスだからです。
不満足のマイナスにプラスを掛け合わせても、出てくる答えがマイナスなのは基礎の数学です。
頑張ったご褒美にルイ・ヴィトンのバッグを買いたいけど、今は買えていないから欲しくてしょうがない……。
彼ないし彼女と付き合いたいのだけれど、まだ付き合えていないから、ほかのことが手につかなくなる……。
手に入れていないから、つらい。
専門用語では「渇愛」などと言いますね。
よしんば手に入ったとしても、すぐに飽きたり、上手くいかなかったりと、出てくる答えはマイナスです。
▶欲は原動力になる。だけど長くは続かない
つらいストレスで自分を動かそうとするのですから、それはあたかも「馬の尻を叩いて走らせる」ようなもの。
確かに、走り出すための「原動力」には、なるでしょう。
しかしずっと鞭打ち続けながら走り続ける人生……。
ご想像ください。
やがて嫌になって、すべてを放り出したくなるのです。
欲の原動力によって、実践し始めたはいいけれど、突然「もう、やーめた」 となるのは、尻を叩き続けるストレスに、嫌気がさしたからなのですね。
▶欲アレルギー発症中? それ、「花粉症型バーンアウト」です
「もう、やーめた」
それは確かに、一見すると突然のバーンアウトに見えるかもしれないけれど、尻を叩き続けている間もずっと、「痛い」「辛い」「嫌だ」「しんどい」ストレスを、じわじわと溜め込んできた結果です。
花粉症よろしく、ストレスが我慢ならない閾値を超えると、「もう、やーめた」が突如、発症します。
何かを続けられなくなった過去があったとすれば、テニスはもちろん、勉強も筋トレもダイエットも英会話も、「できるようになりたい(できない今は不満足)」という欲(怒り)が、あったはずなのです。
▶充実感の種が実を結んでやる気となる。自業自得のエッセンス
では、どうすれば「本当のやる気」を高めることができるのでしょうか?
「上手くなりたい(下手は嫌)」「勝ちたい(負けるのはゴメン)」などといった欲(怒り)をよぎらせることなく、集中するのです。
上手くなりたい欲。
それが叶っていないから嫌悪する怒り。
それらを抜きにして(つまり集中して)得られた充実感こそ、真の動機づけとなる。
これが本来の、「自業自得」のエッセンスです(関連記事「ウキウキ、ワクワク!」)。
▶すべての人に備わるモチベーターとしての素質
人は誰しも、本来ならやる気が備わっています。
「褒められたいからやる」「怒られたくないから動く」といった原動力を抜きにして、純粋に「描きたいから絵を描いていたら夢中になっていた」というような経験が、一度や二度はあるのではないでしょうか。
絵に限らず、歌唱でも、読書でも、掃除でも。
この充実の経験が潜在意識に刻み込まれて 、また次もやろうとする純度の高い動機づけとなる。
なぜなら、欲や怒りによって無駄に使われていたエネルギーが浪費することなく残る分、「エネルギー保存則」に従い、集中力へ賄えるからです(関連記事「集中力の『再エネ』で、どんどん優秀になる!」)。
▶「手に入れる」秘訣
上手くなりたい欲(ミスしたくない怒り)の悪い感情が、入ってこないようにする。
要するに、欲しがったり嫌がったりしない。
引っ張ったり押しのけたりしない。
すると、「手に入る」のです。
▶「悪=下手くそ」の相関
今、「悪い感情」と言いました。
「悪」という言葉は、もともと「下手」を含意しています。
つまり「上手くなりたい」「ミスしたくない」という悪感情(ストレス)のせいで、「下手になる」のです。
▶犯罪は割に合わない
悪がなぜ「下手」かについて。
犯罪を行うのはもちろん「悪」でしょう。
それは、生き方が「下手」を含意します。
確率としては、ほぼ確実に捕まるのですから。
いえたとえ捕まらなくても怯えながら生きる逃亡生活は、心の休む暇がありません。
一生に一度の人生、その生き方は「下手すぎる」のです。
▶「やらされ感」卒業。内発的動機の高め方
テニスでいえば、勝ちたいとかミスしたくないとかよぎらせることなく(それは悪です)、ボールへ集中。
それにより、「褒められたいからやる」「怒られたくないから動く」といった原動力に依存しない、あたかも夢中になって絵を描いていたかのような純度の高いやる気のエネルギーを得ます(自業自得)。
尻を叩かれたり、ニンジンをぶら下げられたりするから動こうとするのではなくて、「走りたいから走る」ことに喜びを感じる内発的動機で、取り組めるようになるのです。
▶欲に囚われると、集中力は逃げていく
言い換えればテニスに限らず、世間的に忌避されがちな仕事や勉強や家事であろうと、やる気は楽しく絵を描いていたあの頃と同じように、誰でもイキイキと引き出せます。
もしやる気が出ないなら、「ああしたい」「こうしたい」という欲へ、意識がさまよっているだけ。
それがつまり、「集中を欠いた状態」と言えるのです。
▶ちなみに、欲がなければ英語も話せる!
それはあたかも、日本人が英語を話そうとするときに、頭の中で「上手くしゃべりたい(欲)」とか「間違ったら恥ずかしい(怒り)」などと考えながら喋ろうとする弊害に近しい。
要言すれば、「考えない」から感覚的に喋れるようになるという、テニスの上達とまったく同じ理屈になるのです(関連記事「テニスと英会話のそっくりすぎる共通点と、『10倍速超』の習得法」)。
ためしに英会話しながら、「文法は合っているだろうか?」などと、考えてごらんなさい。
それを続けているから英語アレルギーが量産され続けているのです、この日本で。
▶「ストレスゼロの世界」へようこそ!
尻を叩かれる痛みによるストレスも、ニンジンに届きそうで届かないストレスも、ありません。
「上手くなりたい、ミスしたくない」と考える欲や怒りの「思考」と、ボールがクッキリ見えている「実感」とは、両立しません。
すなわち、集中することでストレスが「ゼロ」となり、その充実感が純度の高いモチベーションを得る。
▶「チャラ男=ピュア」の相関
身も蓋もない言い方をすれば、「優勝するぞ」などと真面目に頑張るシリアス・プレーヤーというより、その場その場を楽しもうとするカジュアル・プレーヤーは一見「チャラい」ようでいて、ライバルを蹴落とそうとする他意・悪意(=下手を含意)がない分、純粋だったりします。
テレビでもチャラ男が案外ピュアだったりする顔が、思い浮かんだりしませんか(笑)。
いえ、別にテニスが上達するために、チャラ男やチャラ子になるよう押し付けているわけではありません。
欲は、やる気やモチベーションとはまったく別物であり、それはぶら下げられたニンジンを欲して追うイライラした原動力にすぎず、閾値に達すると突然「やーめた」になる危険性をご説明しています(関連記事「真面目にやるほど下手になる!? カジュアル・テニスのススメ」)。
働く動機が「お金(という欲)のため」であればあるほど、やる気は削がれる、つまり 仕事が嫌になるのです。
▶集中は特別じゃない。あなたにもできるシンプルな習慣
もう一度、確認します。
「やる気まがい」の欲を原動力としてしまいませんように。
彼ないし彼女に対して、引っ張ったり押しのけたりせず、一期一会を楽しむ(関連記事「今日のテニスが『生涯最後』だとしたら?」)。
痩せたい、食べたら太る、などと考えることなく、噛み締めて味わう。
純度の高いやる気・モチベーションがみなぎります。
集中なんて、習慣化すれば誰でもする(できる)ものです。
▶集中力を分けて鍛える、新しいアプローチ
とはいえ「上手くなりたい」「勝ちたい」などと欲がよぎり、集中が逸れることもあるでしょう。
難しければ初歩のうちは、細分化して取り組むのもよいかもしれません。
「この1ゲームだけは、とにかくボールに集中」→「この1ポイントだけは……」「この1ラリーだけは……」「この1球だけは……」といった具合に。
それが上手くいくと、「次の1球もとにかくボールに集中」→「次の1ラリーも……」「次の1ポイントも……」「次の1ゲームも……」といった逆ルートをたどって、ボールに集中する力がどんどん上がる可能性大。
すると暁には、「この1試合だけはとにかくボール!」という集中持続力が発揮されます。
それは繰り返しになりますが、欲や怒りによって無駄に使われていたエネルギーが浪費することなく残る分、「エネルギー保存則」に従い、集中力へ賄えるからです。
▶まとめ1・自分への鞭打ち禁止! 楽しみがやる気を生む
テニスのみならず、日本の教育にはニンジンをぶら下げたり、尻を叩いたりして、無理やり動かそうとする文化があった。
怒鳴りつける先生の言うことに従う生徒がしぶしぶ動くのは、何も「やる気が高まったから」ではありませんよね。
尻を叩かれていやいや動いても、ストレスを溜め込むだけなのです。
それを、自分で自分に課してしまわないように。
楽しさが、純粋なやる気の源です(関連記事「テレビゲームを楽しむ子どもの『指さばき』の正体」)。
▶まとめ2・ゆっくりやるのが結局速い
「早く終えたい」なんていう思いは、典型的なやる気を削ぐ欲でしょう。
早く終えたいのに終わらないから、ずっとイライラしっ放し。
そのせいで、ケアレスミスが多くなって、さらに遅れて、遅くなるのです。
これを「下手」という。
欲のせいで、仕事をまったく楽しめません。
ですから、ゆっくりやるのが結局速いのです。
▶まとめ3・最速で上手くいく「小泉今日子さんのバイブル」
「早く終えたい病」には、小泉今日子さんが「わたしのバイブル」という下記。
「ゆっくり歩けば歩くほど、はやくすすみます。いそげばいそぐほど、ちっともまえにすすめません」
とはいえ仕事も、「何を」するかではなく、「いかに」するか、ですよ(関連記事「『何を』食べるかではなくて、『いかに』食べるか」)。
みんなが憧れる職業に就いたからといって、必ずしも楽しいわけではありません。
忌避されがちな単純作業の仕事であっても、集中すればゲームのような楽しさです。
それこそ、時の立つのもあっという間(関連記事「感覚として『真逆』」!?」)。
お金を得るのは、おまけのようなものです。
▶まとめ4・やる気を操る秘密兵器、それが「智慧」の力
「欲なんてコントロール(制御)できるよ」などと考えても、無理です。
それは冒頭で申し上げた、欲が悪だと知った「知識」にすぎません。
食べすぎる人が食欲をコントロールしようと試みたとて、むしろ「食べてはダメと思うと余計に食べたくなる」のでした。
アルコールもギャンブルも、やめようと思ってやめられるほど、欲のコントロールは一筋縄ではいきません。
ですから、体験して腹落ちする「智慧」が、私たちが良い方向へ変わるには必要なのです(関連記事「ミスタープロ野球・長島茂雄さんが教えてくれた、言葉を超える智慧」)。
必要なのは、「知識」ではなく、「智慧」。
昨日、イチローも、言っていました。
「(長嶋さんは)理屈ではなくフィーリングでプレーする方」と。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
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テニスゼロ代表
吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero