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【すっぱいチェリーたち🍒】スピンオフ 多さわこ(おおのさわこ)編 ⑪

こちらの記事は、仲良くさせてもらっているうりもさんの企画に乗っかって書いています。

▼ プロローグはこちら。

▼ スピンオフ さわこ編 前回の第⑩話はこちら。

▼▼▼ 今回は、以下の記事の直後か直前のお話となりますので、ご参照くださいませ。


さわこ ・ エピソードⅥ ‐ 黒猫の帰還 - (後編③)


文化祭2日目の朝、今日も良い天気だ。

早くに目が醒めてしまったおおのさわこは、早めに登校して、クラスの売り場の準備などする為にいつもより早く学校に着いた。

そういえば、今日は宇利くんや吉田くん、阿久くんと保志田くんが結成したバンドがデビューする日だ。

あんまり音楽には詳しくなかったし、普段から聴く習慣もなかったので、さわこは売り場の留守番をすることになっていたが、いまはその選択を少し後悔していた。

宇利くんは体調大丈夫かな・・・

昨日は劇に出られずに悔しい思いをしていたと思うので、今日は元気にやりたかった事が出来たらいいな、と思うさわこだった。

そうこうしている内に、千代子さんや冨永利子とみながきこさんがやってきて、手際よく調理を始めた。

利子さんは、毎朝恒例の垣野先生と彩子さんとのトイレバトルを終えて来たようで、少し悔しそうだった。

昨日の劇では、終盤の大きな山場で登場する河合奈保子役で大活躍だったので、準備をしている教室の外に昨日の劇を観てファンになった男子生徒が何人か来ていて、利子さんの様子を伺っているようだ。

実は利子さんは、ひじき煮の件でおばあちゃんと仲良くなっていて、その事もあってさわことも最近になってよく喋るようになっていた。

さわこにとっては、利子さんも眩しい光を放つ存在だったので、まだまだ直視出来ないでいる存在の1人だ。

『なんで同じレシピで作ってるのに、おばあちゃんみたいな味が出ないのかしら・・・』
味見をしながら首を傾げる利子。

『利子ちゃんは、昔のアタシにそっくりで美人だから、すぐに美味しいひじき煮が作れるよ。』
通りかかったおばあちゃんが、ニコニコしながら通り過ぎていく。

『アンタたち!利子ちゃんに振り向いて欲しいんだったらぼーっとしてないで自分を磨きをしなしゃい!』
廊下でたむろしていた男子生徒を一喝して去っていくおばあちゃん。
どんどん元気になっていくようだ。



体育館では、ミスチェリのメンバーが揃って音合わせをしている。

最後まで課題だった音響については、急遽手伝いに来てくれた”トシさん”がいろいろと設定とか頑張ってくれて何とかなりそうだった。

音響担当として獅子奮迅の働きをしているトシさんを、不思議そうに保志田が眺めていた。

あのトシさんって先輩なのか後輩なのか、そもそもここの生徒なんか何なのかよくわかってない謎の人なんやけど、まあ細かい所はどーでもえーわなぁ・・・。

本番で失敗しても、トシさんの紹介で来ましたって言っといたら何でも許されるらしいしな。

さっき、ミスチェリ全員と顧問の茶保先生とで円陣を組んで気合をいれたばかりなのに、みんな緊張で震えている。

どういうわけか体育館の客席は満席で立ち見まで出ている・・・。

正直怖い、練習一杯してきたけど、こんな事になるなんて思ってなかった。
ただモテたかっただけなのに・・・。

でもこの本番前の舞台袖からの景色と緊張感、わしは大人になっても絶対忘れへんやろな。

両手に握ったドラムスティックが小刻みに震えている。

保志田は、自分の身体が緊張感に支配されてゆくにつれ、不思議なくらい心が落ち着いていくような感覚を自覚して驚いていた。



そのちょっと前の事。

一通り焼きそばやおにぎりを作り終えた、千代子と利子が一息ついていた。

売り場では、おおのさんと小室こむろさんが、一生懸命に出来たての焼きそばとおにぎりを売ってくれている。

あんなに声をだして頑張っているおおのさんは見たことがなかったので、二人は驚いていた。なんだか小室さんと息もあっていてすごく楽しそうだ。

おおのさん、あんな笑顔できるんだ。

千代子と利子は、おにぎりを頬張りながら目を合わせて、ニッコリ笑った。

おおのさんと小室さんが、犬みたいに鼻をクンクンさせながら前を横切ろうとした、くたびれたおじさんを引き留めて焼きそばとおにぎりを売りつけている。

「焼きそば一つ、くれる?」
「ありがとうございます!ご一緒におにぎりもどうですか?」
「いや、焼きそばだけでいいや」
「わかりました。少々お待ちください」



田中健一は、少女から焼きそばを受け取ってから、さっき立ち寄ったメイドカフェの事を思い出していた。

メニューの裏側に落書きみたいに筑前煮とかひじき煮、とか書いてあったのは、きっと何かの裏紙を使ったからだろう。

それよりもだ。
売り場の女子高生のメイドさんの後ろに見え隠れする腰の曲がった老婆みたいなメイドさんが居たような気もした・・・。
・・・いや、最近仕事が立て込んでいたから疲れて何か見間違えたんだろう・・・

なんて事を思いながら、焼きそばらしい焼きそばに感動しつつ舌鼓を打っていた。



ヨメンは、友達の初舞台が成功するよう、何か手伝いたかった。
しかし、いい案が思い浮かぶ事もなく当日になってしまって焦っていた。

ミスチェリのみんなは今日まで練習に明け暮れて頑張っていた。
何か自分にできる事はないだろうか・・・。

ヨメンは物思いに耽りながら狭い廊下の中をくるくる回っていた。

そこに、教室の売り場に千代子を迎えに行こうとしていた、壽賀美と風歌が通りかかる。

イケメンのヨメンが廊下をくるくる回りながら、時々オーマイガッ!とブツブツ言っているのを見かけた二人は、顔を合わせると思い切って二人でヨメンに声をかけた。

どうやらミスチェリのライブを成功させたいが、うまい案が思いつかないらしい。

壽賀美と風歌も、ちょうど体育館にミスチェリの出番を観に行こうとしていたので、そのことを伝えて一緒に観に行こう!と誘った。
その前に千代子を呼びにいくから。

三人が教室に着く頃には、千代子も利子もおにぎりを食べ終えて、さわこや哲子を手伝って、焼きそばやおにぎりを売っていた。

千代子!と声をかけた壽賀美が、一緒に売り子をしている利子や哲子、さわこを見かけてピンときた。

イケメン(ヨメン)
かるた部部長(千代子)
透き通った声(風歌)
宇利を虜にした笑顔(哲子)
三軍界専門委員会長(壽賀美)
おさげ髪のメガネっ子(さわこ)
読者モデル(利子)

そして、焼きそばとおにぎり!
そして何も知らずに通りかかった波都子(おしゃれ可愛い)!

これ、全方位カバーしてて弱点なくね?
ほくそ笑む壽賀美。

よし!
全員、焼きそばとおにぎり持って出陣よ!
ミスチェリを救うのよ!

急遽結成されたミスチェリライブ促進部隊が、校内全域で焼きそばやおにぎりを売りつけながらミスチェリライブを宣伝して回った効果があったのかなかったのか、ライブ直前には立ち見ができるほどの盛況ぶりとなっていた。



気が付いたら本番が始まった。

一曲目は『勝手にシンドバット』。

練習ではミスりまくっていた阿久のギターソロが完璧だった。

つなぎのMCでは、宇利と阿久のボケツッコミが延々と続いて会場を沸かせている。

二曲目は『キセキノホシ』。

吉田の完璧なベースと決めるときは決める宇利。
それぞれ研究と練習の成果を出し切った。

想像以上の歓声に感動する4人。
完全に俺たちモテたな!と確信する4人。

クラスのみんなも前に出て来てめっちゃ盛り上げてくれた。
おかげで会場中が大盛り上がりやったもんな。
ドラムをたたきながら全体をよく見ていた保志田は、クラスメイトの応援を目の当たりにして感無量だった。

あまりの盛り上がりで体育館が揺れたように感じたので、吉田なんてうわごとのように震度2だ、震度2だ・・・と繰り返していた。

用意した2曲をやりきって袖にはける4人。
宇利が舞い上がって観衆に向かって『センキュー!』なんて言っている。

舞台袖では、顧問の茶保先生と担任の油木先生、主役代行の垣野先生がめっちゃ褒めてくれた。
垣野先生なんて、たぶん宇利が今日も体調崩すとおもってギター持って来てたもんな。

客席の端っこには、この前選挙のサクラバイトしとった時に声掛けてくれたオッサンもめっちゃ拍手してくれとる。
確か垣野先生が、田中さんって呼んどったかな。
早戸先生や戸橋先生も息ピッタリで拍手してくれとるわ。

会場では、アンコールがかかっている。

小郷とヨメンにコール頼んでいたのだが、それが功を奏したのか、体育館全体がアンコールの大合唱になっていた。

先生たちが、行ってこい!
と舞台に送り出してくれる。

アンコールは、宇利が用意してくれていたあの曲だ。

『では聴いてください!「抱きしめたい」です!』

抱きしめたい〜溢れるほどに〜♪
君への想いが〜込みあげてく〜♪
どんな時も〜
君と肩をならべて〜♪
歩いてゆける〜
もしも君が〜さみしい時には〜♪
いつも僕が〜そばにいるから〜♪

宇利の熱唱。
バンド全員が出せる力を出し切って演奏しきった。

万雷の拍手の中、手を振りながら舞台袖にはける4人。

阿「ヤバイで!女子の視線1人占めしてしまった!」
吉「ナンデヤネン!俺やないか!ベースの魅力に女子はメロメロや」
保「悪いけど君たち!ドラムの魅力には勝てないよ!ナハハハ〜」
宇「アホか。どう考えてもボーカルの俺やないかい!彩子の潤んだ瞳見たやろ⁉️」
阿「はー?彩子は俺の方見てたやん!あの顔は完全に俺にほの字やがな」
宇「ほの字って古いねん。昭和か⁉️しかし、彩子も風歌も大門寺さんもみんな俺を見てたしどうしよ〜1人に絞れない」
保「千代子、ワシのドラムに釘付けやったなぁ〜」
吉「壽賀美も赤い顔で俺を見てたわ」
宇「おいおい、俺らってモテモテ男子ちゃうの?」
阿「まぁ、そうなるよね!波都子もメチャンコ俺に手を振ってたしモテる男はツライねぇ〜ワハハハ〜」

完全にモテた彼らは、もう無敵だった。



体育館の一番後ろの立ち見席で、つま先立ちになったりぴょんぴょん飛び跳ねながら何とかミスチェリの演奏を鑑賞できたさわこは、みんながキラキラしているのを見て嬉しくなっていた。

みんなで焼きそばやおにぎりを売り切ったので、店番をする必要がなくなったのだ。

会場全体が拍手に包まれていく中、どんどん近づいていたように思えていた、宇利くんや吉田くんとの距離が、一気に遠のいて手の届かない存在になったような、そんな気持ちになっていた。

悲しい気持ちもあるけれど、宇利くんも吉田くんも、ここを目指して頑張ってたんだもん・・・。
悲しくもあり嬉しくもあるさわこだった。

そう、この願いは叶わない。人型を無くしてしまったんだもん・・・。



後片付けなどを済ませたミスチェリの4人が体育館から出てくるのを、クラスメイトの何人かが表で待っていた。

さわこも少し遠くから4人が出てきたのを眺めていた。
文化祭で飾られていた、矢田さんの菊の隣に腰を下ろしている。

遠くからなのではっきりとは見えないが、阿久くんが波都子さんに駆け寄った。

阿久くんが波都子さんの肩に手を回そうとした時・・・いや、遠目でみていたさわこは一瞬の事だったが見逃さなかった、阿久くんの手が上がった瞬間から既に波都子さんはその動きを読んで拳を握っていた。

2人の人影が交差してすれ違って歩いていく。
阿久くんが数歩歩いた先でお腹を抱えて崩れ落ちた。

それを見て気圧されたようなミスチェリの3人だったが、うずくまる阿久くんを横切って歩いてきた圭子さんに、今度は宇利くんが近づいていく。

宇利くん、その間合いはちょっとあぶな・・・

そう思った時にはもう遅かった。

差し出した宇利くんの右手に重ねるように圭子さんの右手が動く。
一瞬の事だから気を抜いていたら見えなかっただろう。

遠目にみると二人は握手をしようとしたように見えたが、二人の手は触れる事なく宇利くんの身体が膝から崩れ落ちた。

圭子さんは、何事もなかったように波都子さんを追いかけていった。

さわこが遠目から見ても、明らかに怯えている保志田くんと吉田くん。
そこへ走り寄ってくる壽賀美さんと千代子さん。

吉田くんに壽賀美さんが何か声をかけたみたいだ。

2人が一言二言、仲良さそうにしゃべっていたように見えたのだが、突然壽賀美の白い美脚が宙を舞ったかと思うと、吉田くんがお腹と黒縁メガネをおさえて倒れてしまった。

よ・・・吉田くん、何か変な事でも言ったのかしら・・・

残された保志田くんが叫んでいる。

『何?この展開怖い!怖い!』

その怯え切った保志田くんに千代子さんが近寄っていくのが見える。

さっきまであんなに怯えていたのに、千代子さんが近づくと何故か胸を張って偉そうな感じなった保志田くん。

千代子さんは、なぜか両手にドラムスティックを持っている。

なんだろう、ドラムの保志田くんへのプレゼントなのかな?
・・・なんて思っていたら、千代子さんのスティックの連撃!

さわこでも何撃入ったのかわからないくらいの打撃が保志田くんを襲う。

保志田くんが、聞いた事もないような変な声で
『ウワ~!』
と叫んで倒れこんだ。

通り過ぎて、後ろを振り返りもせずに歩いていく壽賀美さんと千代子さん。

夕陽に照らされた少女4人の人影が地面に長く伸びていく。

地面に横たわるミスッタチェリヤネン4人組。

そこに三毛猫ファミリーにエサをあげに通りかかった茶保先生。

『アンタら、こんなとこで寝てたら風邪ひくで!早よ起きんかいな!』



私の名前は貝差彩子かいささいこ
田梨木高校に通う17才。
偏差値低いくせに、イキって「何が悪いの?!」って開き直ってる。

しっかし、さっきのミスチェリは良かったなぁ。
宇利の事、見直したわ。

吉田は、例の件で最近いろいろ話すようになったけど、意外とカッコよかったわ、なんやろ、あの眼鏡がズレたの直す仕草、ちょっと好きや。

阿久もいっつも冗談ばっかり言ってるけど、あんな真面目なカッコええ姿見せられたら惚れてしまいそうやったわ、ちょっと危なかったわ。

それにしてもや、こんな事ある?
保志田ってこんなカッコ良かったかな..…
ドラム叩いてるとこ、むっちゃカッコ良かった。
やだーーー!!
アタピ、恋しちゃったのかしら??

あーヤバイヤバイ!
ほんまに好きになってまいそうや。
保志田って、いっつも眠そうやけど、あれバイト頑張ってんねやろ?
なんかすごいわ、ちょっと尊敬やし、やっぱ惚れてまいそうや。

そんな浮ついた気分に浸っていたかった彩子だったが、視界の隅っこに見たくない物を見てしまった。

種尾 忍やないかぁ~~い!!!!!!
幼馴染の姿を見つけて思わず駆け寄ってしまった。

「忍!!こんなとこで何してんの?!」
「彩子!!見つかってしもた。ちょっとさぁ、さっきのドラムの人、めっちゃカッコよくない?」

やめて。
かぶってるやん。
あんた昔からそうやん。私が気になる人ばっかり好きになんねん。

あかん・・・疲れた。
忍のおかげでどっと疲れたわ・・・。

空気かえよ、ここにいたらあかんわ。



黒塗りの車の後部座席に座っている大門寺ナナコは、腕組みをして考えこんでいた。

昨日の劇で使った徳田新之助の衣装が気に入っていたので、今日もその衣装に身を包んでいる。
ナナコが和装をすると、家の者がみんな喜んでくれる。
不思議な気持ち・・・。

いや、そんな事よりも・・・だ。

ナナコには心に引っかかっている事があった。

さっきのミスチェリの演奏を聴いて、その想いは更に強くなっていた。

彼は、今年のクラス劇で、主人公に任じられていた。
最初は乗り気でなかったにせよ、長い時間かけて、セリフを覚え、動きを覚えて稽古した。
時には、夜遅くまでかけて何とか頭に入れたはずのセリフが、稽古では出てこず歯がゆい思いをしたり、また時にはそこまでして必死で覚えたセリフを、相手のミスで飛ばされたりもしたが、何とか、「必死のパッチ」で喰らいついていた。

不本意ながら衣装の赤いスカートも履いた。
衣装担当の子が、体格の良い彼のサイズに合わせて作ってくれた力作だった。
最初はいやいやだったのに、何度か履くうちにちょっと楽しくなってきて、皆が見ていない時クルッと回ってみた。
そこを相手役を務める彩子にしっかり見られていて、「きしょっ」と言われたりもした。でも、これは練習のためなんだ、クラスの皆で作る、一度きりの劇なんだと思って、頑張った。

そのうち、相手がセリフを飛ばしたら、アドリブで繋いだりなんかも出来るようになってきて、渋々だった練習が、気づいたら楽しくなっていた。

もしかしたら、俺、役者向いてるんとちがうか。今まで縁がなかっただけで、ほんとは俺、ずっとこの才能隠し持ってたんかも知れん。
この劇が終わったら、実はこっそりと客席に紛れ込んでた芸能事務所のマネージャーとかが、名刺を差し出しながら、いやー、君の演技すごかったよ、このまま埋もれさせるのはもったいない。えっと、名前は?宇利君って言うの?今度いつうちの事務所来れる?なんて、声かけられてしまうんとちゃうやろか。
そしたら俺、高校生活と芸能界の二足のわらじになってしまう!クラスの皆になんて言う?サインも練習しといた方がいいか?
気がついたらそんなことまで思い浮かべていた。

文化祭の本番その日まで、彼はクラスの稽古に加えてバンドの練習も並行していたこともあって、とにかく多忙で充実した日々を送っていた。
楽しくて、夢中で。自分の身体の疲労のことまで考える余地はなかった。

そんな彼が、本番を演じられなかったのだ。

このまま済ましておいてよいはずがない。

徳田新之助は、両目をきつく閉じたまま背筋をピンと伸ばして息を止めた。

・・・これは、私の正義を守る戦いだ・・・

大門寺ナナコがゆっくりと目を開く。
その両目には、確かに松平健が宿っていた。



爽と黒猫が、いつもの公園にいる。

2人にとって、長い旅だった。

ウーリー、もう一人で出かけちゃダメだよ。

爽がカリカリを手のひらに乗せて差し出しながら言う。

黒猫が喉を鳴らしながら少しずつカリカリを食べてゆく。

そんな黒猫の姿を見て、爽は安心した。

兄貴の晴れ舞台も凄かった。
我ながら誇らしいと思ったが、部屋に飾ってある失恋記念品の事を思い出すとゾッとしたので前言撤回した。やっぱり馬鹿兄貴だ。

あ、そうだ・・・。

田梨木高校の裏庭の隅っこに、小さな祠があって、そこにメモが置いてあったのを見つけて持って帰って来た事を思い出した。

祠を覆い隠すように草が生い茂っていたが、祠の周りだけは綺麗に整えられていて、水やお花が定期的に取り換えられているようだった。

少し気になったが、メモ紙に走り書きで何か書かれていて、飛ばないようにメモの上に石が置いてあった。

読むつもりはなかったのだが、ついつい目に入ってしまった。

【 たりき様、黒い万年筆を探してください 】
【 シルバーのクリップ、胴軸に象牙の意匠 】
【 校内で紛失、すずきけんいち 】

メモ紙は真新しい感じがした。

何のことかわからないけど、馬鹿兄貴に聞いてみるか。

黒猫を撫でながら、帰ったらそれとなく祠の事を聞いてみようと思う爽だった。




つづく

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今回は、以下の方に登場してもらいました。



▼ 宇利盛男役+黒猫役のうりもさん

▼ 橋田壽賀美役のららみぃたんさん

▼ 千代子役のチョコさん

▼ 油木肉子先生役のゆきママ@男の子4人育児さん

▼ 垣野先生役の書きのたね。ブルボンヌ。さん

▼ 茶保先生役のちゃぼはち@凸凹×不登校の想定外育児さん

▼ 宇利爽役のsou.さん

▼ 吉田吉夫役のよしよしさん

▼ 阿久佳祐役のアークンさん

▼ 貝差彩子役の彩夏さん

▼ 保志田役のほっしーさん

▼ 波都子役のloveheartさん

▼ 圭子役の西野圭果♡さん

▼ 小郷オーエン役の習慣応援家 shogoさん

▼ 千葉ヨメン役のばちょめんさん

▼ 八木風歌役の八風(やふー)さん

▼ トシさん役のトシさん

▼ 小室哲子役のT Kさん

▼ 田中健一役の香坂兼人さん

▼ 大門寺ナナコ役のだいなさん

▼ 早戸先生・戸橋先生役のパヤとバーシーさん

▼ 冨永利子役のkikiさん

▼ 矢田なぎこ役のやなぎだけいこさん

▼ 種尾忍役のpersiさん

▼ 三毛猫の三毛田さん役の三毛田さん


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