教室から全国へ 子どもたちのアンケート大作戦【島総②#16】/vol3 アワビいっぱい編/離島の総合的な学習②
2003年冬。
アワビを育て、見つめ続けてきた前回。
そこから子どもたちの学びは、教室の中にとどまらず、外の世界へと広がり始めます。
前回の話 離島の総合的学習の時間②#15👇
本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)
これまでの実践してきた総合的な学習の時間の記録です。
今回は、県内で唯一の離島にある小学校に赴任して2年目、2003年度(平成15年度)に行った総合的な学習の時間の実践記録です。
交通も通信も限られた島で、子どもたちにどんな力を身に付けさせたいのかを考えながら、地域と関わる学びやICTを活用した取組を進めてきました。
1年目には、島の海の魚介類を調べてまとめた「おさかな天国 海辺のデジタル図鑑」に取り組み、マイタウンマップ・コンクールで農林水産大臣賞をいただきました。 ▶ おさかな天国(離島の総合的な学習の時間①)** **
この「アワビいっぱい編」では、年度後半のアワビの中間育成・放流の実践を軸にしながら、そこへ至るまでの前半の学びとして、他地域との交流、ICTスキルの定着、発信に向けた準備段階も含めて、2年目の1年間を通した取組を記録しています。
単元そのものではなく、「学びが絡み合う時間」を描いています。
※本文中の地名・学校名・人名等は仮名を使用しています。
1.「育てるだけ」で終わらせないために
2003年度の総合的な学習の時間では、「アワビいっぱい大作戦」としてアワビの中間育成に取り組んでいました。
しかし、毎日の世話や成長記録を積み重ねるだけでは、学びとしての広がりや深まりが十分とは言えないのではないかという思いが、次第に強くなっていきました。
この活動を本物の学びへと押し上げるためには、もう一手、外へと開いていく仕掛けが必要です。
そこで目を向けたのが、この年に力を入れてきた交流活動と、子どもたちが身に付け始めていたキーボードやコンピュータのスキルでした。
島の中に閉じない視野の広がりと、身に付けた力の活用、その両方を同時に実現できる方法はないかと考え続けました。
そのとき、ふと一つのアイデアが浮かびました。
全国の小学生に向けて、アンケート調査を行うというものです。
2.全国へ問いかけるという挑戦
アワビを育てている自分たちにとって当たり前の存在である「貝」が、他の地域の子どもたちにとってはどのように見えているのか。
その感覚の違いに触れることができれば、学びは一気に広がるはずです。
そこで、各都道府県からホームページをよく更新している小学校を10校から20校ずつ選び、メールでアンケート協力の依頼を送ることにしました。
インターネットを通して全国とつながるという発想自体が、当時の子どもたちにとっては新しい挑戦でもありました。
アンケートを実施するためには、質問項目を考え、結果を集計し、そこから考察を導き出す必要があります。
この一連の過程そのものが、相手意識を育てる学びへとつながっていきます。
どんな質問なら相手は答えやすいか、どんな内容なら意味のある結果が得られるのか、子どもたちは話し合いを重ねながら、少しずつ形にしていきました。

完成したアンケートは、貝への好みや食べる頻度、印象に残る種類、さらにはアワビを見たことや食べた経験までを尋ねる内容となりました。
単なる思いつきではなく、「知りたいこと」と「調べる意味」が丁寧に編み込まれた設計になっていきます。
そして、依頼文もまた子どもたち自身の言葉で作られました。
その書き出しには、こんな一文が並びます。
「こんにちは,初めまして。 私たちは○○県南浦市青波小学校(仮名)の3年生・6年生です。 今,総合的な学習の時間でアワビを育てています。」
さらに質問項目の中には、次のような問いも含まれていました。
「あなたは,貝が好きですか?」
「あなたは,貝をどのくらい食べますか?」
「アワビを見たことがありますか? 食べたことがありますか?」
身近な生活感覚から食経験、さらには認知や価値判断にまで踏み込んだ問いは、子どもたちなりに「何を知りたいか」を突き詰めた結果でした。
自分たちの活動を伝え、協力をお願いし、その結果を共有するという一連の流れが、一つの「社会への発信」として形を成し始めていました。
3.見えない相手とつながる準備
しかし、アイデアが生まれたからといって、すぐに実行できるわけではありませんでした。
全国の学校にメールを送るためには、まず連絡先を調べる必要があります。
島にいる間は、インターネット接続が19時で切れてしまいます。
その制約の中で、私は授業の合間を見て、木曜、金曜と作業を進めましたが、思うようにははかどりませんでした。
画面の向こうに広がるはずの全国とのつながりが、時間という壁に遮られているような感覚でした。
結局、作業は土曜日に持ち越され、自宅で一気に進めることになります。
各地の学校を一つ一つ調べ、メールアドレスを拾い上げていく地道な作業は、想像以上に時間のかかるものでした。
それでも、ようやく目標としていた数の学校をリストアップすることができました。
集めた情報はエクセルにまとめていましたが、実際に送信するためにはアドレス帳として整備し直さなければなりません。
この作業もまた、細かな確認の連続で、思った以上に時間を要しました。
4.タイムリミットの中で
タイムリミットは、その日の5校時。
子どもたちが実際にメールを送信する時間が、刻一刻と迫ってきていました。
間に合うのかという焦りの中で、ひたすら入力と確認を繰り返します。
単純作業のようでいて、一つでも間違えれば相手に届かないという緊張感がありました。
見えない相手とつながるための準備は、決して軽いものではありませんでした。
それでも、どうにかその時間までにアドレス帳は完成します。
ようやく、子どもたちが自分たちの言葉で全国へ問いかける準備が整いました。
島や教室の中で始まったアワビの飼育は、この瞬間、確かに島の外へと広がり始めていたのです。
次回に続く・・・👇
総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇
総合実践のvol2、おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)👇👇👇
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