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【島小#10】綱を引き、笑い合う──島がひとつになる日/離島の小学校編 10

前回は、連絡船の欠航で始業式が遅れるという“海しだい”の洗礼を受けた二学期の幕開けをお伝えしました。 そんな波乱のスタートの翌週には、島の一大行事「全町運動会」が控えていました。 保育所から中学生、地域の人々までが一堂に会する島ぐるみのイベント。初めての島での運動会は、思っていた以上に「暮らし」と「つながり」が凝縮された時間となりました。

前回の話👇

離島で勤務することとなった1教師の奮闘記です。 今から約20年以上前の2002年(平成14年)9月初めのお話です。

※注:本文中の一部地名や固有名詞等は仮名(かめい)にしています。

こんな島です。👇👇


1.「そりゃそうか」と笑った朝──暮らしのリズムの中で

運動会を前に、まだ薄暗い朝6時から運動場の草抜きが始まりました。 老人会や婦人会の方々、小中学校の教職員が集まり、1時間ほど汗を流します。ふと見渡すと、教員以外は全員女性。「そりゃそうか」と思わず笑ってしまいました。島の男性たちは、この時間すでに漁に出ているのです。島の暮らしのリズムがここにも表れていました。

夜は体育館でフォークダンスの練習です。PTAや子どもたち、教職員らが集まり、「オクラホマミキサー」と「コロブチカ」に挑戦しました。私も中学生以来のダンスで、最初はぎこちなくても体が少しずつ思い出していくのが不思議でした。 朝から晩まで、島中が運動会へ向けて動いている――そんな一日でした。


2.中学生ってこんなに頼もしい!予行で見えた力

平日の午後には、保育所・小学校・中学校が合同で予行演習を行いました。 この日はとにかく暑く、子どもたちは休む間もなく次々と競技をこなします。

準備段階から中学生と一緒に動くのは初めてでしたが、その頼もしさに驚かされました。小学生だけでは心もとないテント設営も、中学生が加わるとあっという間。体力も判断力もぐんと大人に近づいていて、「おお、もうこんなに戦力になるのか」と感心しきりでした。 予行後の保・小・中の合同反省会では全体の流れを確認し、島での初めての運動会のイメージがはっきり見えてきました。


3.幟が揺れ、海が休む──祭りとともに運動会がやってくる

同じ時期、島では年に一度のお祭りが始まりました。幟や提灯が島を彩り、集会所には模擬店がずらり。夜にはカラオケ大会も開かれ、島全体がにぎやかな空気に包まれます。 この時期は漁もお休みで、島の人々が陸に集まるため、運動会が「全町あげての行事」として開かれるのです。祭りが終わると伊勢エビ漁が解禁になると聞き、海とともにある暮らしを改めて感じました。

まもなく始まる伊勢エビ漁

勤務後に模擬店をのぞくと、普段あまり見かけないお年寄りの姿も。婦人会の方からおにぎりとおでんをいただき、この日は旅館に夕食をお願いしていたので、翌朝の朝食にありがたくいただくことにしました。 夜の食事はお祭り仕様で、鯵のにぎり寿司や太刀魚の刺身、ゆで海老まで並び、5人の教員でイカ釣り談義に花を咲かせながら味わいました。


4.放送が流れたら、みんな集合!前日準備も島総出

運動会前日の午後には、前日準備が行われました。 テント設営、歓迎門や入場門の設置、万国旗の掲揚と、やるべきことは多岐にわたります。中学生と小学生、教職員で協力し、作業は滞りなく進みました。

夕方になると、漁協から「手の空いている人は学校へ」という放送が流れ、地域の大人たちも集まってきました。観客席用の大型テントは、学校備品のテントとは比べものにならない頑丈な骨組みで、1時間ほどで組み上がっていきます。 いよいよ明日は本番。島全体が運動会に向けて動いていることを、肌で感じる時間でした。


5.赤と青に分かれて、島が本気になる日

そして本番当日。少し風はあるものの、暑すぎずちょうどよい天気です。来賓を乗せた連絡船が港に着く10時、入場行進曲「お魚天国」とともに開会しました。

競技は保育所、小学校、中学校、一般、婦人会、老人会と続き、まさに“全町”が参加します。 小学生はわずか9人。紅白に分かれ、工夫を凝らした競技や親子種目、一輪車の演技などを披露します。中学生の競技には、帰省してきた高校生や友人たちも飛び入り参加し、会場はさらににぎやかになりました。

そして大人の番になると、これがまた本気です。島の人たちは全員が赤組と青組に分かれて出場します。もちろん教員も例外ではなく、私も赤組の一員としていくつかの種目に参加しました。

中でも圧巻だったのが「全町綱引き」です。名前のとおり、老いも若きも町じゅうの人が赤と青に分かれて、ひとつの綱を全力で引き合います。これだけの人数が一堂に会して綱を引くというのは、なかなか見られない光景です。ちなみに当時の全町民は200人と聞いていました。もちろんすべての人が参加していたわけではないでしょうが 、それでもほとんどです。引き合う声、笑い声、応援の拍手が運動場いっぱいに響き、「ああ、島中のみんなで一緒にやっているんだ」と肌で感じる瞬間でした。

全町民での綱引き

さらに最後のリレーにも出場することになりましたが、気持ちは前へ進んでいるのに足がついてこない……。走り終えても息が整わず、「いやはや、年齢には勝てないなあ」と苦笑い。でも、赤も青も関係なく笑い合い、たたえ合うアットホームな空気の中で、心地よい疲労感が残りました。

競技終了後も、運動場には自然と人が集まりました。 小中学生、帰省してきた高校生や若者たちが輪になって話し込んだり、一輪車で遊んだり、陣取りを始めたりと、行事の余韻がいつまでも続きます。 上は20代前半から下は小学1年生までが一緒になって笑い合う光景は、まさに島ならではのものです。こうした“つながり”こそが、子どもたちの心を豊かにし、島の未来を支えていくのだと感じました。

帰省した社会人の若者たちも、日々の仕事に追われながらも、この島に戻ってきて心を癒しているのでしょう。 私自身も、この島での運動会が単なる行事ではなく、「島の暮らし」と「人と人との結びつき」が凝縮された時間なのだと深く実感した一日でした。


▶【島小#11】へ続く👇👇

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