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第3回 一歩踏み出す勇気 ~調査はドラマだった~

ついに子どもたちが、教室の外へ動き出した。
アンケートを手に、見知らぬ大人に話しかけ、和菓子屋に飛び込み取材をする——。調べるためじゃない。「知りたいから」「本当に作りたいから」。小学生たちの探究心が、雨の街を、ほんの少しだけ熱くしていました。
今から約25年前の2001年(平成13年)度の実践です。第1回はこちら。

今回の舞台裏(解説編)はこちら👇


1. チームを組んで動き出す

和菓子職人さんからのアドバイスを受け、自分たちのやるべきことが明確になった子どもたちは、さっそく市場調査に乗り出しました。 市場調査では、多くの人々や多方面からの情報を集める必要があります。そこで、アンケート調査班、地元和菓子屋聞き取り班、インターネット調査班の3つに分かれ、さらに記録用にアンケート・和菓子屋班に同行してビデオ撮影を行う「情報記録班」を設けました。クラス内の4種類の班で役割を分担し、必要な情報を効率的に集める体制を整えました。

作戦会議

今回の「和菓子プロジェクト」では、チームワークの良し悪しが成果に大きく影響すると考えました。そこで、最低限の方針だけをリーダーに伝え、あとは子どもたち自身の自主性に任せることにしたのです。 子どもたちに任せることに不安がなかったわけではありません。しかし、プロジェクトの本質に触れるには、実際に「社会に出る」経験が不可欠だと感じていました。準備は整いました。いよいよ“外の世界”に飛び出す時が来たのです。


2. 問いをつくる・聞き方を学ぶ


まず取り組んだのは、アンケートの質問づくりです。それぞれが「調べたいこと」や「聞いてみたいこと」を一人5つ以上付箋に書き出し、各班で50〜80枚ほど集まりました。それらをKJ法で分類しながら、質問項目を整理していきました。ある程度まとまったところで、「本当に必要な問いかどうか」という視点で再検討も行い、プロジェクトアドバイザーの和菓子職人さんの助言をもとに、最終的なアンケートや質問内容を完成させました。

お店調査班は和菓子屋に電話でアポイントを取り、インターネット班は調査項目を具体化するなど、それぞれ着々と準備を進めていきました。

完成したアンケートには、こんな問いが並びました:
・「和菓子って、洋菓子より好き?」 ・「まんじゅうの中身、何が好き?」 ・「週に何個くらい食べてる?」 ・「和菓子と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは?」 ・「○○市の特産物を使った和菓子、あったら買ってみたい?」
▼全21項目はこちらからご覧いただけます👇
和菓子🍡に関するアンケート調査

調査の前日、アンケート班の子どもたちから「うまくできるか不安。練習させてほしい」と申し出がありました。まったくの初体験なのですから、当然の反応です。実は、共同実践者の後輩院生とこのことも想定し、職員室でロールプレイを依頼していました。子どもたちから申し出があったとき,私と院生は顔を見合わせてほくそ笑みました。そして,職員室の先生方も、丁寧に、時におどけながら「お客さん役」を引き受けてくれました。

答えたくなさそうな人、意地悪な質問を返す人、忙しそうな人…。実際の現場にいるようなさまざまな“お客さん”とやり取りするうちに、子どもたちの表情や声のトーンが少しずつ変わっていきました。

「ああ、聞くってこういうことか」

そんな実感が、確かに芽生えていたように感じました。


3. 雨の調査日、動き出す探究心

調査当日。あいにくの雨模様でしたが、子どもたちは事前に立てた行動計画に従って、それぞれの調査場所へと向かいました。アンケート班は市内の量販店3店舗で買い物客を対象に調査を実施。お店班は7つの和菓子店にインタビューを行い、インターネット班は校内のパソコン室で情報収集に取り組みました。行動は子どもたちに任せましたが、大学生4名と保護者2名が安全面のサポートに同行しました。

雨にも負けずに調査へ

アンケート班では、当初男子が声をかけられず戸惑っていました。ところが、ある男子が少しずつ調査に挑戦し始め、「もう5人に声をかけたよ」と誇らしげに報告すると、女子たちにも火がつきました。最初は断られて落ち込む姿もありましたが、すぐに次のお客さんへ再チャレンジ。アンケートが成功したときの満面の笑みが印象的でした。

別の店舗では、忙しそうに商品を袋に詰めている方や、眼鏡がないと文字が見えにくいという高齢者に対して、子どもたちは質問を読み上げて対応していました。アンケートの形にとらわれず、相手に応じて柔軟に行動する姿に驚かされました。

初めは戸惑っていた子どもたちが、次第に自分の言葉で話し、試行錯誤しながら動き出していく。誰かに指示されたからではなく、「もっと知りたい」という気持ちが自然と背中を押していたのです。


4. 宝の山との出会い、そして次へ

この市場調査を通じて、子どもたちは人との関わりの中で“本当の情報”を手に入れる経験をしました。これは、机上の学習では得がたい、まさに「生きた学び」でした。 集まった情報は膨大です。しかし、それらを集めただけでは意味がありません。次に待っているのは、「情報をどう読み取り、どう生かすか」という、新たな挑戦です。

情報の山

初めての街頭調査。緊張、失敗、笑顔、そして「自分の言葉で聞く」実感。
情報の山は手に入った。でも、それをどう読み解くか?
次回はいよいよ、子どもたちが“商品企画”という未知の領域へと踏み出します。


▶︎ 第4話に続く

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