オロナミンCと駐車場代──島の教務主任、秋の日常【島小#12】/離島の小学校編12
秋の運動会が終わり、島の学校にも静かな日常が戻ってきました。 今回は、そんな日々の中で私が担っていた教務主任としての仕事、そして島ならではの“暮らしの仕事”を少し振り返ってみたいと思います。 どれも、あの頃の教員生活を支えてくれた懐かしい風景ばかりです。
前回の話👇
離島で勤務することとなった1教師の奮闘記です。 今から約20年以上前の2002年(平成14年)度のお話です。
※注:本文中の一部地名や固有名詞等は仮名(かめい)にしています。
勤務したのはこんな島です。👇👇
1.教育委員会まで、片道ひと海。
運動会の代休を終え、つかの間の休みをゆっくり過ごしたあと、今週は水曜から三日間の勤務でした。 週明けの朝は、いつも机の上の文書整理から始まります。
特に先週は運動会準備などで誰も出張に出なかったため、この間に学校宛の文書が教育委員会の連絡箱にたまっていました。 この連絡箱は教育委員会の庁舎内にあり、島の教員が出張などで本土に出たときに立ち寄って持ち帰る仕組みです。 つまり、誰かが取りに行かない限り、箱の中で誰かを待ち続けることになります。 もちろん,文書等を提出する際はその逆になります。 ちなみに市内の学校では校務員さんが仕事として,文書の受け渡しをしてくださいます。
急ぎのものは郵送やFAXで届きますが、そうでない文書はまとめて保管されます。 実際に目にしたときは、締切間近ということもたまにありました。 校長、教頭を経て、最後に教務主任である私のところへ。 印を押し、各担当へ配布先を振り分け、出張案内や提出締切を行事予定に控えていきます。
前任校では教頭の仕事だった月行事予定の作成も、この学校では教務主任の役割でした。 少人数校だからこそ、誰もが“掛け持ち”です。 静かな職員室に、紙をめくる音だけが響いていました。
2.“島の暮らし係”、それが教務主任。
当時、教務主任の仕事のひとつに宿舎関係のお世話がありました。 小学校と中学校の教務主任が1年ごとに交代で担当する決まりになっており、その年は私の番でした。
風呂掃除の分担表づくり、灯油の補充当番の依頼、草刈りの準備、懇親会の計画──。 どれも小さなことですが、誰かがやらなければならない仕事です。
灯油は、残りが少なくなると漁協に頼んでモートラ(小型運搬車)でポリタンクを運んできてもらいました。 ただ、そのあとの補充は当番の教員の仕事です。 重たいタンクを抱えてボイラーに注ぐとき、秋の風が背中を通り抜けていったのを覚えています。 冬場はどうしても灯油の減りが早く、すぐに連絡を入れることもよくありました。 島の生活には、そんな“手で支える”場面がいくつもありました。
3.手渡しのぬくもり、毎月支払い日
もうひとつの仕事が、本土側の月極駐車場の料金集金と支払いでした。 宿舎維持費(電気・水道・灯油・ガス・消耗品など)は給料天引きでしたが、この駐車場代だけは別でした。 しかもオーナーの方が高齢なので、振り込みではなく現金手渡ししか受け付けていませんでした。
小中の教員のうち、当時9人がこの駐車場を利用しており、毎月末に3,000円ずつ集金。 27,000円を封筒にまとめ、月初に自宅に帰る際に本土のオーナー宅へお届けします。 玄関でお渡しすると、にこやかに「いつもありがとうねぇ」と声をかけてくださり,領収書代わりの封筒に受け取りの印をいただきました。 ときには「これ飲んで」とオロナミンCや栄養ドリンクなどを手渡してくださることもあり、その優しい笑顔はいまも印象に残っています。

4.昼の船便と、ほかほか弁当
この日は運動会の延期に備えて給食を止めていました。 市内の多くの学校では給食センターで調理して配送されますが、島の学校では専属の調理員さんが調理を担当していました。 もちろん島の方で、食材は本土から船で届きます。 冷凍保存したり、日持ちのするものを上手に使いながら、いつも温かい給食を用意してくださっていました。
加えて、校務員さんも島の方で、このお二人が学校の日常を大きく支えてくださいました。 子どもたちとも同様に同じ名字の方が多いので、みんな下の名前に「さん」をつけて呼んでいたのも島らしいところです。
全校児童数が少ないため、週1回水曜だけ給食は教員と子どもが同じランチルームで一緒に準備し、食卓を囲みます。 今日のように給食がない日は、子どもたちは全員家に帰って昼食をとります。 どの家も学校から徒歩1分ほどで、車もないので交通事故の心配もありません。
教員はというと、この日は朝のうちに本土の「ほかほか弁当」に電話で注文しておきました。 もちろん、それぞれが宿舎に食べに帰ってもよいのですが、たまにはこういったこともいいものです。 昼の船便で届けてもらった弁当を職員室で食べました。 あたたかいご飯の香りの向こうに、静かな校舎の空気が広がっていました。
5.地味な仕事が、学校を動かす
文書整理、宿舎の世話、駐車場代の支払い、給食の手配。 どれも小さな仕事ですが、どれが欠けても学校の暮らしは回りません。
小さな島の学校では、仕事と暮らしの境界があいまいになります。 その曖昧さの中に、教員としての日常が息づいていました。
▶離島の小学校編13へ続く👇👇
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