“島の魚”を探せ!──図鑑づくり、再始動 【島総①#08】/vol2 お魚天国青波島編/離島の総合的な学習①
公開授業が終わり、教室には再び静けさが戻ってきました。
緊張と拍手の余韻がまだ残る中、子どもたちは次の一歩へと動き出します。
「伝えたあとに、また始まる」──それが、この総合的な学習の時間の面白さでした。
前回の話 👇
私が赴任したのは,こんな島です 👇👇
離島勤務1年目総合的な学習の時間の実践記録です。 今から約20年以上前の2002年(平成14年)度のことです。
※注:本文中の一部地名や固有名詞・氏名等は仮名(かめい)にしています。
1.枠を決めて、世界が広がる
公開授業の翌週、子どもたちは再び総合的な学習の時間に集まりました。
前回の試作ページづくりで決まった“ひな形”をもとに、次はその内容をどう充実させていくかを話し合う段階です。
「どの魚を載せる?まだ必要だな。」
「写真はどれを選ぶ? 何枚にする?」
「名前、特徴、おいしい食べ方……ほかに必要な情報はある?」
意見が飛び交う中、ノートには次々とメモが書き込まれていきます。
ページの構成を考える作業は、単なる整理ではなく、ひとつひとつの魚の“背景”を調べ直す過程へとつながっていきました。
「どうやって獲るのか」「どんな料理が多いのか」「島だけの呼び名はあるのか」── 話し合う中で、魚を通して島の暮らしや人々の営みに自然と目が向くようになっていきました。
作業を進めるうちに、子どもたちは気づいていきました。
ひな形づくりは終わりではなく、そこから本当の探究が始まるのだということに。
2.図鑑をデザインする──見せ方を考えよう
次に議論の焦点となったのは、図鑑全体の設計でした。
「魚ごとのページだけじゃなく、全体の見せ方も考えよう」 そんな提案から、子どもたちは“分類”という新しい課題に取り組み始めます。
アナログの図鑑とは違い、デジタルならハイパーリンクで自由にページを行き来できます。
「島でよく獲れる魚」「種類ごとに分ける」など、テーマごとに分類する案も出ました。
さらに「島の紹介」や「制作者紹介」を設けることで、読者が青波島を理解しながら楽しめる構成を目指すことになりました。
教師としても、子どもたちの発想の広がりを整理する必要があります。
この日は、私の構想と子どもたちの意見を照らし合わせながら、活動の見通しを立てました。
最終的に、「島の人が選ぶ“島の魚”コーナーを作ろう」という方向に決まりました。
3.聞いて、数えて、見えてきた“島の魚”
次の授業では、そのためのアンケート計画づくりに挑戦です。
島の子どもたちにとって、アンケート調査は初めての経験でした。
「誰に聞けばいいんだろう?」
「同じ人に何回も聞かないようにするには?」
「どうやって集計する?」
狭い島だからこそ、対象が重ならないように慎重な調整が必要です。
質問はシンプルに、「あなたが思う“島の代表”の魚介類を教えてください」。
ただし、回答が少ないことを想定し、1人につき5位まで順位をつけてもらう方式を採用しました。
1位=5点、2位=4点……とポイント化して集計する仕組みです。
結果が黒板に書き出され、数字が埋まっていくたびに教室の空気が少しずつ熱を帯びていきました。
結果が出たときの教室は、まるで選挙速報を見守るような熱気に包まれました。

「ふーん、これが1位かあ。」
「これは,納得だな。」
子どもたちは、島の人たちの感覚と自分たちの思いが微妙に違うことに驚きながらも、“人の考えを知る”ことの面白さを感じていました。
中には、思っていた順位と違って首をかしげる子もいれば、「そうくると思った!」と得意げにうなずく子もいました。
どの魚介類も、子どもたちにとってはなじみ深い存在です。
だからこそ、その順位の違いに教室中がざわめき、「人によって感じ方がちがうんだね」と話しながら、結果を興味深そうに見つめていました。
振り返ってみても、あの時間は本当に面白かったと思います。
今見返しても「なるほどなあ」とうなずける結果が並んでいました。
ちなみに、私たちがよく釣りに行っていたアオリイカは第5位。
あのときの子どもたちの笑顔と、静かな達成感は今も鮮明に覚えています。(※ランキングの詳細は、後日公開予定の「解説編8」で紹介予定です。)
4.図鑑づくりに、アイデアが泳ぎ出す
集計後、私から一つの提案をしました。
「Webページでは、ランキングの1位〜5位を“???”にして、読者が予想できるようにしてみようか。」
子どもたちはすぐに反応しました。
「クリックしたら答えが出るようにしたら面白い!」
「ゲームみたいにできるね!」
こうして、図鑑は単なる“読むもの”から“参加できるもの”へと進化を始めました。
クリックすれば魚介類のページへジャンプする仕掛け── それは、子どもたちが“Webという表現の可能性”に気づいた瞬間でもありました。
5.進みは遅くても、確かな手応え
授業のペースは、私の当初の構想よりも少し遅れています。
しかし、この「問題解決に時間をかける」プロセスこそが、総合的な学習の本質だと感じます。
島の子どもたちが自分たちで考え、試し、失敗し、また立ち上がる── その一歩一歩が、島の未来を少しずつ形にしているのです。
そうして積み重ねた時間の中で行ったアンケートの結果には、島の人たちの暮らしが自然に映し出されていました。
子どもたちは数字を見比べながら、「なるほど、こういう考え方もあるんだね」とうなずき合います。
話し合いは、魚介類そのものから“伝え方”へと少しずつ視点を移しながら、次の学びへ静かに進み始めていました。
今回の解説編08👇
▶離島の総合的な学習の時間編09へ続く👇👇
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