海とキーボードから始まる総合 【島総②#06】/vol3 アワビいっぱい編/離島の総合的な学習②
前回は、本年度の総合的な学習の構想が固まり、教材研究と下準備のために研究所を訪れました。
今回は、その構想をもとに、1年の学びの方向が定まっていく過程を記します。
前回の話 離島の総合的学習の時間②#05👇
本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)
本シリーズは、県内で唯一の離島にある小学校に赴任して2年目、2003年度(平成15年度)に行った総合的な学習の時間の実践記録です。
交通も通信も限られた島で、子どもたちにどんな力を身に付けさせたいのかを考えながら、地域と関わる学びやICTを活用した取組を進めてきました。
1年目には、島の海の魚介類を調べてまとめた「おさかな天国 海辺のデジタル図鑑」に取り組み、マイタウンマップ・コンクールで農林水産大臣賞をいただきました。 ▶ おさかな天国(離島の総合的な学習の時間①)
Vol3.「アワビいっぱい編」では、年度後半のアワビの中間育成・放流の実践を軸にしながら、そこへ至るまでの前半の学びとして、他地域との交流、ICTスキルの定着、発信に向けた準備段階も含めて、2年目の1年間を通した取組を記録しています。
単元単位ではなく、「学びが形になるまでの時間」そのものを描いています。
※本文中の地名・学校名・人名等は仮名を使用しています。
1 本年度の構想が動き出した
本年度の総合的な学習の時間について構想が固まり、実践研究助成に応募しました。
結果として無事に申請が通り、助成を受けて実践を進めることになりましたが、これがゴールではなく、ここからが本当のスタートでした。
今回の実践で軸に据えたのは、「この島の条件だからこそできる学びは何か」という問いでした。
多くの学校で行われている栽培活動をそのまま真似るのではなく、離島であり、潜水漁業が主産業である地域の現実に目を向ける必要がありました。
このことは、島の保護者の方や漁師さんと話す中で思いついたことなのです。
そこで着目したのが、島の特産であるアワビです。
近年、水揚げ量の減少が課題となる中で、稚貝から中間育成を行い、放流するまでを子どもたち自身の手で取り組む実践を構想しました。
生命を育てる過程を通して、命の重みや環境との関わりを実感的に学ぶことも目指したのです。
2 なぜアワビだったのか
アワビの放流活動自体は、漁協などの取り組みとして体験的に行われることがあります。
しかし、小学生が稚貝から育成方法を調べ、工夫しながら中間育成を行い、放流までを一貫して担う例はほとんどありませんでした。
頼まれて体験的に協力するのではなく、あくまで主体的に子どもたちの側から実施することに意義があります。
子どもたちは、これから育成方法について調べ、観察を重ねながら、自分たちなりのやり方を探っていくことになります。
思うようにいかない場面に出会うこともあるでしょうが、その都度話し合い、方法を見直しながら進めていくことを大切にしたいと考えました。

また、この実践は校内で完結させるのではなく、県内の交流校とも共有していく計画としました。
県最東端の離島にある本校と、県最西端の山間僻地校をテレビ会議やホームページで結び、活動の様子を定期的に発信していく予定です。
育てる過程そのものを伝えていく中で、子どもたちの意識がどのように変化していくのかも、大切に見取っていきたいと考えていました。
3 もう1つの挑戦、キーボード入力
同じ時期、学校ではもう1つの取り組みが進んでいました。
それが、全国小学生キーボード検定のモニター校としての参加です。
6年生3人は、4月から休み時間などを使い、繰り返しキーボード練習に取り組んできました。

キーボード入力は、ひらがなや九九、なわとびと同じように、身体で覚える学びです。
一度身につけば忘れにくく、その後の学習や表現活動を大きく支える力になりますが、小学校では十分な時間を確保することが難しいのが現状です。
モニター校として参加する中で、テストや報告を重ねる一方、システムの不具合にも直面しました。
結果が表示されないトラブルが発生し、原因を調べていくと、キャッシュがうまくクリアされないことが関係している可能性が見えてきました。
衛星回線という離島特有の通信環境も影響していると考えられ、すぐに解決できないもどかしさもありました。
4 2つの学びが重なっていく
アワビの中間育成とキーボード検定。
一見すると性質の異なる2つの取り組みですが、どちらも「島の条件」と正面から向き合った実践でした。
海に囲まれた環境だからこそ生まれた学びと、全国につながる情報環境の中で挑戦する学びが、同時に進んでいたのです。
地域の主産業に関わる取り組みは、地域の方々の理解や励ましにつながり、それが子どもたちの自信になっていきました。
また、全国規模のプロジェクトに関わる経験は、「自分たちの学びは島の中だけにとどまらない」という実感を子どもたちにもたらしました。
本年度の総合的な学習の時間は、島の制約を乗り越えるというよりも、島の条件をそのまま学びの力に変えていく実践だったと言えます。
2つの挑戦は別々に始まりましたが、確かに同じ流れの中で、子どもたちの学びを支えていました。
次回に続く・・・👇
総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇
総合実践のvol2、おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)👇👇👇
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