見出し画像

島を出て、はじめて更新できた学校ホームページ【島ICT#19】/離島のデジタルデバイド編② 2年目の記録

前回、島内イントラネットが完成し、その取組は取材を通して地元新聞で島の外へと伝えられた。
それに加え、前年の受賞をきっかけに、市教委から学校ホームページ用のプロバイダ契約も年度末から用意してもらえることになった。
しかし、島の学校では、プロバイダを通してホームページを更新することはできない。
それは単なる「置き場所」であり、島からは送れないホームページだった。
デジタルデバイド解消への次の一歩は、学校ホームページの開設だった。

前回のデジタルデバイド編👇

本シリーズの背景(初めて読まれる方へ)
今から20年以上前の2002年4月。 連絡船が頼りの離島の小学校に、一人の教師が赴任した。
島では、家庭でも学校でも、インターネットは日常的に使えるものではなかった。

本土でADSLが普及し始める一方、島内のデジタルデバイドは広がっていた。
小学校では、隣の中学校から分岐した衛星回線を使い、インターネットとメールが可能になっていたが、利用には多くの制約があった。
👉 つながらない島から始まった挑戦/離島のデジタルデバイド編

そうした環境の中で、教師は総合的な学習の時間を通して、学びを島の外へ、そして島の人たちへ届けようとした。
ICTは目的ではなく、あくまで手段だった。

1年目には、島の魚を紹介するデジタル図鑑を制作し、その成果を島の人たちにも届けるため、連絡船の待合室にPCを設置した。
その後、学校の通信環境を支えてきた衛星通信システムが、残り1年で終了することが分かる。

これは、島での2年目。
システム終了へのカウントダウンが進む2003年度の記録である。


1 形だけでも始めるしかなかった学校ホームページ

島での新学期が始まり、1週間の最後の日になった。
ほかにも仕事はあったが、翌日には本土へ戻る予定だったので、その前に学校のホームページ作成を少しでも進めておこうと思った。

年度末に学校用のプロバイダを契約してもらったばかりで、ホームページはまだ仮の状態だった。
トップページも中身はほとんどなく、体裁を整えるだけで精一杯だったが、まずは形を作るところから始めるしかなかった。

連休中に一度アップロードするつもりで、内容を考えながらページを作っていった。
島では作成までにとどめ、実際のアップロードは本土に戻ってから行うつもりだった。
結局、そのときにサーバへアップロードできたのは、各ページにつながる入口としてのトップページだけだったが、あとは少しずつ作り足していくつもりでいた。


2 つながらないインターネットという日常

5月3日は祝日だったが、午後から耳鼻科検診があるため授業日になった。
離島では校医の都合で、こうした検診が休日に行われることが珍しくない。
給食もなく、ピザを作った日である。

その日は世間が休みだったせいで、学校のインターネットが使えなかった。
通信衛星のHUB局が動いておらず、こちらではどうすることもできない。
普段は情報源として当たり前に使っていたインターネットが切れると、調べものもメールの確認も一気に不便になる。

メールだけは携帯電話で時々確認していた。
インターネットがあることを前提に考えていた仕事が、不可能になり、
今でいうオフラインやアナログな方法ですることしかなかった。


3 送れる回線がある場所へ行くしかなかった

連休後半は本土の自宅で、ほとんど仕事をして過ごした。
学校ホームページの作成ができている分をFTPで送信し、月行事予定を設置するためである。

島の学校には衛星通信によるインターネットがあったが、これは閲覧が中心で、ホームページをFTPで更新できる回線ではなかった。
島では固定電話回線による通信も使えず、事実上、学校から直接ホームページを更新する方法は存在していなかった。

自宅の回線はADSLだったが、これは個人契約のプロバイダであり、学校用ホームページのプロバイダとは別だった。
学校ホームページは契約したプロバイダからの接続でなければFTPを受け付けない仕組みになっており、自宅のADSL回線からは更新できなかった。

そこで、ノートPCに学校用プロバイダの設定を入れ、P-inを使ってPHS接続を行った。
PHSも個人契約で、もともとはモバイル通信のために持っていたものだが、島では使い道がなく、契約をどうするか迷っていたところだった。
島では固定電話回線も使えず、PHSでの通信も現実的ではないため、P-inはほとんど出番のない機器になっていた。

それでも、島を出たときだけは事情が変わる。
自宅に帰ったときや出張で島を離れたときに限り、このP-inを使えば学校用プロバイダとして接続でき、FTPによる更新が可能だった。
学校用プロバイダを契約してからまだ2ヶ月ほどで、このやり方も試行錯誤の途中だったが、当面はこの方法に頼るしかなかった。

インターネットで更新するはずの学校ホームページは、回線と契約がそろう場所まで人が移動しなければ更新できなかった。
島を離れるたびにノートPCとP-inを持ち歩き、更新できる環境があるかどうかを考える。
そんな運用が、しばらくの間、続いていた。


4 見る手段と送る手段の食い違い

島に帰ってから、あらためて意識したことがあった。
学校用ホームページに行事予定を載せても、島の保護者はインターネットでは見ることができない。
それでも掲載したのは、最初からこの行事予定をiモード対応にしていたからだ。

島は狭いエリアだが携帯電話の電波は安定しており、漁に出ている漁師の多くが携帯電話を持っている。
そのため、iモード用のアドレスを文書などで知らせ、携帯から見てもらうことを考えた。

さらに、この行事予定はCGIで作られており、FTPが使えない学校からでも行事の登録や変更ができる仕組みだった。
設置自体は無事に終わったが、不具合を直そうとしているうちに20時を過ぎてしまった。

学校ホームページを見ている衛星通信は、接続できる時間が8時から20時までに制限されている。
その日は修正をあきらめ、また翌日に回すことにした。


次回に続く・・・

是非とも最初から読んでください。離島のデジタルデバイド編マガジン👇


いいなと思ったら応援しよう!

熱中探究教室 応援いただいたお気持ちは、子どもたちの学びを物語として発信し続ける力となり、教育の現場で役立つヒントへとつなげていきます。

この記事が参加している募集