冬の静けさに、思いがけない日々を。【島小#26】/離島の小学校編 26
冬の島は静かなようでいて、ときどき思いがけない表情を見せます。
持久走大会の準備に追われていた頃、気づけばその合間に、小さな“冬の出来事”が次々とやって来ました。
前回の話👇
離島で勤務することとなった1教師の奮闘記です。
今から約20年以上前の2003年(平成15年)頃のお話です。
※注:本文中の一部地名や固有名詞等は仮名(かめい)にしています。
【こんな島です。島を結ぶ1日3往復の連絡船(これが冬場よく止まる・・・)👇👇
【目次挿入】
■ 1 明日の教室を守るために、最終便へ。
木曜の午後から、市内の先生方が全員参加する生徒指導研究集会がありました。
もちろん、島の学校からも小学校の全教員が参加します。
2便の船で本土へ向かうため、子どもたちは少し早めに放課。
日中の留守番は用務員さんにお願いしていました。
連絡船の時間の関係で,給食を食べられなかった我々は,本土に着いて会場の学校へ向かう前、市内で一緒に昼食を取りました。
私は「上学年・集団不適応」の分科会に参加しました。
複数担任制で立て直したクラスの実践報告は、以前その学級を研究授業で見せてもらったことのある私には、とても胸に響く内容でした。
二人の担任が完全に“同じ立場”で一年間を走り抜くという挑戦。
短い時間ながら、そこに至るまでの苦労と手だてが、ひしひしと伝わってきました。
ところが・・・。
会の途中、私は席を立つことになります。
校長先生と教頭先生、そしてもう一人の先生の3人が助言者や司会,記録者などの役を引き受けており、私まで残ってしまうと、翌朝の島の学校に先生が“誰もいなくなってしまう”のです。
後ろ髪を引かれながら会場をひとり後にしました。
冬の夕暮れ、16時発の連絡船が待つ港へ向かう足は自然と速くなりました。
最終便に滑り込み、シートに腰を下ろした頃には、海風で体の芯まで冷えていましたが、「これで明日も子どもたちを迎えられる」 その安心が、毛布のようにじんわり広がっていきました。
■ 2 冬の夕方、職員室に文化祭前夜がやってきた。
その次の週、学校ではホームページ作成研修を実施しました。
子どもたちも「おさかな図鑑づくり」で使ったホームページビルダーを使い、校長先生のページ、養護教諭のページ、そして学年のページをそれぞれつくってもらうことにしました。 (この日は教頭先生が出張で不在でした。)
本校の職員のスキルは高いほうだと思います。
全員がパソコンを一通り扱え、ネットワークやフォルダ構造も理解しています。
研修前、私はこう尋ねました。
「ホームページ、作ったことありますか?」
全員、一斉に首を横に振る様子が漫画のようで少し可笑しかったです。

校長先生は「最初はワープロ専用機しか触れんかったよ」 と笑っておられましたが──
いざ始めてみると、校長先生がいちばん楽しそうでした。
「お、色が変わった!」
「写真も入るんか!」
クリック音が増えるたび、横顔がどんどん前のめりになります。
少人数なので、分からないところはすぐそばで直接教えることができます。
ホームページづくりは、凝り始めるとそれだけで楽しくなります。
その楽しさが先生方にも伝わったようで、何だかうれしくなりました。
保存場所はネットワーク上の共有フォルダにし、作成後は互いに見合えるようにしました。
気づけば,職員室のあちこちで「面白いね!」「その内容いいやん」「そんな仕組みができるのか」などという声が上がり、 冬の静かな夕方が、ちょっとした文化祭前夜のようになっていました。
■ 3 南の島に、白い景色が降りてきた
数日後。
朝のニュースで本土が真っ白になっていく映像を眺めながら、「島は降らないだろう」と高をくくっていました。
しかし授業が始まる頃には、雪が舞い始め、気づけば昼前には本気の吹雪になっていました。
窓の向こうは、まるで白いスリガラスのようです。
風が強いので積もらないだろうと思っていたところ、あっという間に雪景色。
何年かぶりの積雪だそうです。
南の島では、めったに積もることはないのですが…。
前日の出張から1便で戻ってきた教頭先生は、開口一番こう言いました。
「途中からな、海が雪で見えんかったよ。少し遅れたし。」
海が見えない海とは・・・。
その言葉を聞いた瞬間、寒さとは違う震えが背中を走りました。
案の定、2便は欠航。3便も20分ほど遅れて到着。
さらに低温注意報も出ていたらしく、その夜の宿舎では水道が凍らないか心配していました。
■ 4 大漁旗のひみつを聞いた日。
ある日,メーリングリストでお世話になっている山形の先生から、「大漁旗はありませんか?」 と問い合わせがありました。

島の方に尋ねると、貸せる旗があるとのこと。
発送準備の合間、その旗の由来を教えてくれました。
「大漁旗はな、新しい船を造ったときのお祝いや。進水式とか、正月とか……ほんまに特別なときだけじゃ。」
そういえば、島で大漁旗をほとんど見た記憶がありません。
理由を聞いて、ようやく納得しました。
めったに飾られないのではなく、飾るほどの“ハレの日”が限られているのだということ。
鮮やかな布を静かに畳みながら、 この旗が遠く冬の山形へ向かうことを想像すると、 少しだけ胸があたたかくなりました。
冬の島の日々は静かですが、その静けさのすき間にふと訪れる小さな出来事は、いつも新たな驚きと、どこかあたたかな気持ちをそっと運んでくれます。
次回に続く・・・👇👇
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