「お魚天国」宛ての少し不思議な手紙【島総②#03】/vol3 アワビいっぱい編/離島の総合的な学習②
前回は、具体的な単元が見えない中でも、島の子どもたちにどんな力を付けたいのかを起点にして、いくつかの活動を動かし始めていた時期のことを書きました。
交流やタイピング、地域に根ざした実践など、前年までの経験を手がかりにしながら、学びを外へ開いていこうとしていた頃です。
そんな流れの中で、教室の外から、思いがけない形で一通の手紙が届きました。
前回の話 離島の総合的学習の時間②#02👇
本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)
本シリーズは、県内で唯一の離島にある小学校に赴任して2年目、2003年度(平成15年度)に行った総合的な学習の時間の実践記録です。
交通も通信も限られた島で、子どもたちにどんな力を身に付けさせたいのかを考えながら、地域と関わる学びやICTを活用した取組を進めてきました。
1年目には、島の海の魚介類を調べてまとめた「おさかな天国 海辺のデジタル図鑑」に取り組み、マイタウンマップ・コンクールで農林水産大臣賞をいただきました。
▶ おさかな天国(離島の総合的な学習の時間①)
本シリーズ「アワビいっぱい編」では、年度後半のアワビの中間育成・放流の実践を軸にしながら、そこへ至るまでの前半の学びとして、他地域との交流、ICTスキルの定着、発信に向けた準備段階も含めて、2年目の1年間を通した取組を記録しています。
単元単位ではなく、「学びが形になるまでの時間」そのものを描いています。
※本文中の地名・学校名・人名等は仮名を使用しています。
1. 神戸の少年から届いた一通の手紙
学校に届く郵便物というのは、たいてい用件がはっきりしています。
ところが、その封筒は、開ける前から少しだけ様子が違っていました。
宛名に書かれていたのは、「お魚天国デジタル図鑑制作スタッフ様」という、見慣れない言葉でした。
開封してみると、子どもの字でびっしりと書かれた便せんが2枚と、いくつかの同封物が入っていました。
手紙を読んでみると、どうやら釣り好きの小学校4年生の少年が送ってくれたようでした。
内容は、自分がとても釣りが好きなこと、以前にこの島に来て釣りをして釣れた魚のこと、「お魚天国デジタル図鑑」のHPを見た感想、さらには、自分が現在研究している釣りの仕掛けのこと。
とにかく、丁寧に、そして熱心に書き連ねていました。
読んでいるうちに、この子がどれほど一生懸命この手紙を書いたのか、その気持ちが伝わってくるようでした。
2. 便せんの奥にあった「本気」
同封されていたのは、その少年が自分で作った釣りの仕掛け1セットでした。
「この仕掛けを使って釣ってみてください。そして、その釣果を教えてください」
とのお願いが、その手紙には書かれていました。
仕掛けは手作りなのですが、包装はまるで市販品のようで、検査印まで押してありました。
しかもその印は、自分の苗字を使ったものです。
一目見ただけで、相当な時間と手間をかけて作ったことが分かる丁寧さでした。

さらに、こちらが「作ってほしい仕掛け」を記入して送り返せる用紙まで同封されていました。
送り返してくれたら作ります、という一文に、この少年の本気と、誰かとつながりたいという思いがにじんでいました。
3. 子どもたちへ、そして隣の中学校へ
これはぜひ子どもたちに見せたいと思い、さっそく6年生に紹介しました。 同時に、隣にある中学校へインターホンで連絡し、昼休みに中学1年生、つまり昨年の6年生にも来るように伝えてもらいました。
こういうときに中学校が隣にあるのは本当に便利です。(笑)
今の6年生も釣りはしますが、昨年の6年生の中には、島でも一番と言っていいほど釣りの上手な子がいます。

ただ、その日の午後はNHKのディレクターさんが学校に来られ、打合せがあってその対応に追われてしまい、子どもたちとじっくり話す時間は取れませんでした。
それでも、この手紙を書いてくれた相手の気持ちを、きちんと受け止めてほしいという思いは強く残りました。
月曜日に改めて、これからどうするか、子どもたちとじっくり話してみようと思っています。
4. 目の前の子どもたちへ、返ってくる問い
私自身は、こうしてわざわざ手紙を書いて送ってくるということ自体が、やはりすばらしいことだと思いました。
その当時、総合的な学習の時間では「自ら課題を見つけ…」とよく言われますが、この神戸の少年は、学校の授業でなくとも、自分から進んで行動を起こしていました。
釣りが好きで、調べて、考えて、試して、形にして、誰かに届ける。
そこには、やらされている感じは一切なく、自分の関心から自然につながっていく主体的で探究的な学びがあったと今でも思います。
そして、だからこそその時思いました。
この少年のような力を、今、目の前にいる島の子どもたちにも、ぜひつけてやりたい。
今回の手紙は、そんな当たり前で、いちばん大切なことを、あらためて突きつけてきた出来事でした。
次回に続く・・・
総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇
総合実践のvol2、おさかな天国(マガジン離島の総合的な学習の時間①)👇👇👇
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