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風に足止めされる島の時間【島小#30】/離島の小学校編 30

公式発表をはさむ頃、島の学校では、変わらず日々が続いていました。
前回は、船が止まり、予定が揺れ、音楽やICTの取り組みや、新一年生を迎える準備、島の行事が重なっていました。
島の冬は本当に風が強いです。
その風に翻弄されながら、島の時間は静かに前へと進んでいきました。

※前回の記事はこちら 👉「言えない時間が流れていた頃【島小#29】/離島の小学校編 29

◆本シリーズについて(初めて読んでいただく方へ)

今から約20年以上前、2002年(平成14年)4月、県で唯一の離島にある小学校に赴任しました。
車も信号もなく、連絡船は1日3往復が命綱の島でした。
海の荒れる日は、移動そのものが大きな出来事になります。
島の仕事や暮らしは、天候と船の都合に大きく左右されていました。

少ない職員で学校を回し、小中の宿舎で生活をともにする日々が続きました。
予定通りにいかないことが、特別ではなく日常です。
授業や行事だけでなく、島ならではの工夫や出来事、ここでしか味わえない体験の数々を、小さな学校と暮らしの記録として綴ってます。

現在は,総合的な学習の時間で島のおさかな図鑑を作り,それがコンクールで入賞したという知らせが届いた後の話になります。

【漏らすなと言われた夜、島で叫んだ【島総①#11】/vol2 お魚天国青波島編/離島の総合的な学習①】

※本文中の地名・固有名詞は一部仮名としています。


1 風が島を揺らした日

その日は、台風かと思うほどの大風が島を吹き抜けました。
校長先生の宿舎のあたりでは電線が切れたそうですが、この風では電力会社も島へ来ることができず、校長先生はその晩、学校に泊まることになりました。

一方、私たちの教員宿舎ではテレビが映らなくなりました。
学校のテレビは映っていたので、宿舎のアンテナの線が外れたのだろうと見当はつきましたが、結果的にその夜は、思いがけず静かな時間を過ごすことになりました。

ちょうどその日、文集の印刷と製本作業も終わり、あとは製本所に持っていくだけという段階まで進んでいました。
風に揺さぶられながらも、年度末の仕事は、少しずつ確実に積み重なっていきます。


2 風のあとに分かったこと

後日、あの夜の出来事が少しずつつながってきました。
大風の日、一部地域で停電があり、その影響で共同アンテナのブースターに電気が来なくなっていたそうです。

子どもたちに聞いてみると、停電した家はそれほど多くなかったものの、テレビが映らなかった家は同じように多かったようでした。
ただ、多くの家庭では衛星アンテナを付けているため、BSやCSを見ていたという話も聞きました。

その晩、停電で宿舎にいられなかった校長先生が学校におられたので、私も少し顔を出しました。
家族のことや、これまでの経験のことなど、普段はなかなかできない話をゆっくりとする時間になりました。

こうした語らいが生まれるのも、島での泊まり勤務ならではだなと感じました。


3 風に足を止められながら

島に帰るある日曜、三便の船に乗っていると、同じ船に乗り合わせた島の方が「おめでとうございます」と声をかけてくださいました。
前日に地元新聞に受賞の件が大きく取り上げられていたこともあり、島の方々が一緒に喜んでくださっているのだと実感しました。
素直に嬉しいと同時にこれからの挑戦への意欲が更に湧いてきました。

島に着くと、そのまま学校へ向かいました。
この先は行事も重なり忙しくなりそうだったので、少しでも仕事を進めておこうと思ったのです。

本当は、プロジェクトIのアンテナ設置にも手を付けたかったのですが、連日続く風のため、屋外作業は見送らざるを得ませんでした。
島では、やる気や準備だけでは進めない仕事が、いくつもあります。

時間のかかるプロジェクトI用のパソコン設定にも取りかかる予定でしたが、そこまでは手が回りませんでした。
東京行きのチケットの会計処理、朝会の表彰名簿づくり、地教委へ提出するプロバイダ加入用紙の記入と、細かな仕事が続きました。
翌朝すぐにファックスできるよう準備を整え、宿舎へ戻った頃には、空腹と疲れをはっきりと感じていました。


4 行事も風次第

月末には、朝から行事が続く一日がありました。
まずは六年生を送る会です。
五年生にとっては児童会として初めての運営でしたが、思っていた以上にしっかりとした会になっていました。

その後は野外活動の予定でしたが、連絡船が止まるほどの強風のため、急きょ調理実習に切り替えることになりました。
本来はカレーを学校で作り、海辺で飯ごう炊さんをして食べる計画でしたが、家庭科室で全校一緒に調理したカレーライスを食べることになりました。 

校長先生がBBQコンロで飯ごう炊さんをすることを提案(笑)

午後からは、予定どおり海辺の清掃活動に出かけました。
六年生にとっては、小学校生活最後の行事として、心に残る一日になったようでした。


5 風の夜の学び 

その日の夜、隣の中学校の特別活動室で町人権勉強会が行われました。
町民を対象に、市の人権教育課の方を講師として招いて行う勉強会です。

講師の先生は最終便の船で島に来られましたが、 この日も風が強く、船はかなり揺れたそうです。
到着されたときには、少し疲れた様子が見て取れました。

勉強会の終了後、宿泊先の旅館で懇親会があり、私も参加しました。
外では風の音が続いていましたが、部屋の中ではゆっくりと話が進みます。

アワビ、サザエ、トコブシ、グレ、ウツボ、ナマコといった島ならではの魚介類を味わいながら、 それぞれの立場での経験や思いを聞く時間になりました。
昼の慌ただしさとは違う、風の夜ならではの静かな語らいが、そこにありました。

風に翻弄される毎日でしたが、少しずつ着実に春の足音は近づいていると感じる日々でした。


※ 次回に続く👇👇

これまでの「離島の小学校編(生活・暮らし・学校)マガジン」👇👇👇


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