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『東 京<reprise>』舞台脚本⑦

※作品詳細、Storyは「『東 京<reprise>』舞台脚本①」を参照ください。

※前回のお話

登場人物

遠野 三明(とうの みつあき)(25)
電車に乗ろうとしない男。元バンドマン、現会社員。5年前は大学生。

近野 美嘉(こんの みか)(26)
電車に乗ろうとしない女。

森下 陽子(もりした ようこ)(31)
インフォメーション窓口の職員。5年前も同職。

関 晴海(せき はるみ)(31)
忘れ物承り所の職員。5年前も同職。

吾妻 古都会(あずま ことえ)(27)
東京グランスタのカフェ「Drip Maria」の店長。5年前は同店のアルバイト。

内田 幸夫(うちだ ゆきお)(23)
東京駅勤務のJR職員。5年前は上京したての学生。

高良 マチ(たから まち)(25)
東京在住のOL。はじめに仕事を依頼する。5年前は大学生。

濱 はじめ(はま はじめ)(32)
謎の男。5年前は無職。

江藤ひかる(えとう ひかる)(33)
出版社勤務のライター。5年前は違う出版社に勤めていた。

新橋 京一(しんばし きょういち)(30)
旅行代理店の社員。プロジェクトチームのチーフ。5年前も同職。

荒川 優香(あらかわ ゆうか)(29)
旅行代理店の社員。京一の同期だが部下にあたる。5年前も同職。

月島 アキラ(つきしま あきら)(30)
役者志望の男。今回、夢を諦めることを決意。5年前も同職。

日比谷 周次(ひびや しゅうじ)(45)
タクシーの運転手。5年前は日本中を放浪する自由人。

【脚本⑦】

※この作品は2014年当時の環境や状況をもとに描かれています。

#17 タクシー 

日比谷 「わからないもんですよ」

   停車中のタクシーの中。

アキラ 「え?」

日比谷 「人生なんて」

アキラ 「・・・」

日比谷 「私もタクシーの運ちゃんになるなんて、思ってもなかったですから」

アキラ 「そうなんですか?」

日比谷 「20代30代は好き勝手やってたもんで」

アキラ 「好き勝手?」

日比谷 「ええ、日本中バイクで旅してみたり、外国に飛び出してみたり、わけもわからず放浪ばかりしてました」

アキラ 「どうして、タクシーの運転手に?」

日比谷 「5年ぐらい前、付き合ってた女性が・・・デキちゃいまして」

アキラ 「え?」

日比谷 「ちょうど40の時でしたから、まぁ色々なタイミングもあって、年貢の納め時ってやつです、お恥ずかしい」

アキラ 「そうなんですか」

日比谷 「ええ、それからずいぶん遅れをとった就職活動ですよ、いい歳ですから全く決まらなくて、なんとか引っかかれたのがこの仕事だったんです」

アキラ 「良かったんですか?」

日比谷 「え?」

アキラ 「それで」

日比谷 「んー良かったかはわかりません」

アキラ 「え?」

日比谷 「でもね、わからないことを不安に思ってもしょうがないというか、おなかの子供はどんどん大きくなっていくし、まずは働かないとって・・・少なくとも、自分のことしか考えてなかった昔よりは、今の方が充実してるかもしれません」

アキラ 「・・・」

日比谷 「そういえば、タクシー会社の面接受けた日にね」

アキラ 「はい」

日比谷 「知らない人たちに助けられたんです」

アキラ 「知らない人たち?」

日比谷 「はい、今でもその人たちに感謝してます、その助けがなければ、今でも仕事決まってなかったかもしれませんから」

アキラ 「そうなんですか?」

日比谷 「はい、きっと優しさっていうのはね、もらってるだけじゃダメなんですよ、ちゃと返さないといけない、別にまったく知らない人にでもいいんです、そうやって貰って返してっていうのを繰り返して生きていくしかないんです、結局人間は一人じゃ生きていけませんから」

アキラ 「・・・僕は、返せなかった・・・彼女に」

日比谷 「だったら他の人に優しくしてあげればいいんです、きっとその彼女、美嘉さんも、あなたにあげた分これから色々な人に優しくしてもらえますよ」

アキラ 「そうでしょうか」

日比谷 「きっとね」

アキラ 「・・・」

日比谷 「さぁ、そろそろ行きましょうか」

アキラ 「え?」

日比谷 「まだまだ残ってますよ、東京」

アキラ 「・・・ありがとうございます」

日比谷 「さて、次はどこに行きますかねぇ」

#18 ホーム 

幸夫  「どこって言われましても・・・」

   ホームで話している幸夫と三明。

三明  「駅員さん、朝ここにいましたよね?」

幸夫  「は、はい」

三明  「あの時もう一人いたじゃないですか」

幸夫  「ええ、それは覚えてますけど、その後どこに行ったかまでは・・・」

三明  「ここに戻ってきたりはしてないですか?」

幸夫  「・・・見てないですね、私もずっとこのホームにいたわけではないので」

三明  「・・・そうですか」

幸夫  「・・・というか」

三明  「はい?」

幸夫  「お客様は、なぜ電車に乗らなかったんですか?」

三明  「え?」

幸夫  「あの、失礼なことを言って申し訳ないのですが」

三明  「は、はい」

幸夫  「い、命は大事にしないと」

三明  「はい?」

幸夫  「あの、早まっちゃダメといいますか、それで電車が止まると何万人っていう人が足止め食らうんです、ですから」

三明  「あの」

幸夫  「はい?」

三明  「別に僕は、駅員さんが考えてるようなことするつもりはありませんよ」

幸夫  「え?」

三明  「僕はただ、乗りたくなかっただけっていうか」

幸夫  「どうしてですか?」

三明  「まぁとにかく、早まるとか、そういうことじゃないんで」

幸夫  「じゃあ、もう一人の方は・・・?」

三明  「それは・・・わからないですけど」

幸夫  「え、知り合いの方ではないんですか?」

三明  「とりあえず、ありがとうございました!すいません仕事中に」

幸夫  「ああ、いえ・・・」

   三明、幸夫とすれ違って先に進む。
   幸夫、釈然としない感じで立ち去る。

三明  「つーか・・・何やってんだ、俺」

   三明、立ち止まる。
   電車到着のメロディ。

はじめ 「・・・」

   はじめ、三明の背後から現れる。
   電車の近づく音。

はじめ 「・・・何してんだかね、俺も」

三明  「形は変わっても・・・中身は何も変わってねぇ・・・」

はじめ 「・・・不幸ってのはつまり」

   徐々に大きくなっていく。
   三明の真後ろに立つはじめ。
   片手を三明の背中に向ける。

はじめ 「こういうこと?」

   はじめ、三明の肩を押す。
   暗転。

   激しい音を立てながら、電車がホームに滑り込む。

   非常停止ボタンのベルの音。

アナウンス『ただいま、人命救助を行っております、白線より離れてお待ちください、ただいま・・・』

#19 ホーム(5年前)

   人で溢れかえっているホーム。
   人混みを避けながら、美嘉がホームに現れる。
   電話で話をしている。

美嘉  「・・・うん、すごい人だよ、アキラ、どこにいるの?え、良く聞こえない・・・え?今ホーム?」

   遅れて現れるアキラ。

アキラ 「ここだよここ」

美嘉  「え?どこ?」

アキラ 「後ろ後ろ」

美嘉  「え?」

   美嘉、振り向くとすぐ後ろにアキラ。

美嘉  「・・・びっくりした」

アキラ 「全然びっくりしてるように見えないけど?」

美嘉  「ていうか、どこに行ってたの?」

アキラ 「ああ、ごめんごめん、これ買っててさ」

美嘉  「え?」

   アキラの手にはラッピングされた女性物の傘。

アキラ 「はい」

美嘉  「何これ?」

アキラ 「誕生日プレゼント」

美嘉  「・・・私、誕生日じゃないけど?」

アキラ 「はは、わかってるよ、ほら、クリスマスもこの間の誕生日も、金なくて大したものあげられなかっただろ」

美嘉  「え、そうだけど」

アキラ 「ようやくこの間エキストラのギャラ入ってさ、で、いきなりの雨だろ?これはチャンスと思って」

美嘉  「チャンスって」

アキラ 「へへ」

美嘉  「でも、ありがとう、大切にする」

アキラ 「おう、てかさ、この人混みはなんなの?」

美嘉  「人身事故だって」

アキラ 「マジで?どこで?」

美嘉  「・・・今さっき、このホームで」

アキラ 「え、ウソ、本当に?」

美嘉  「本当」

アキラ 「え、何?自殺?」

美嘉  「わからないけど、今救助中だって」

アキラ 「ええ、マジか」

美嘉  「うん、マジ」

   そこに現れる日比谷。
   あたりを見回している。

日比谷 「・・・」

アキラ 「人身事故に出くわすなんて、俺初めてだわ」

美嘉  「私も」

アキラ 「てかこれ、絶対遅刻じゃん」

日比谷 「あの」

アキラ 「はい?」

日比谷 「これ今、どういう状況なんですか?」

アキラ 「ああ、人身事故だそうですよ、このホームで」

日比谷 「ええ・・・なんでこんな時に・・・」

アキラ 「どうかしました?」

日比谷 「あ、いえ、ちょっと、いや、かなり急いでて」

アキラ 「そうなんですか、これしばらくは動きませんよ」

日比谷 「最悪だ・・・」

美嘉  「どうする?乗り換える?」

アキラ 「んー、そうだな」

日比谷 「あの!」

アキラ 「はい」

日比谷 「ちょっとお願いしてもいいですか!?」

アキラ 「え?」

日比谷 「今日どうしても遅刻できない用事がありまして、自分これから相手先に電話かけるので、証人というか、この状況説明してもらっていいですか!?」

アキラ 「はい?」

日比谷 「お願いします!自分今日面接なんです!タクシー会社の!人生かかってるんです!!」


⑧へつづく。

※本作はフィクションです。登場する人物・場所・店名・出来事は実在のものとは関係ありません。

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