見出し画像

ビラ配リスト入門 第4章 さまざまなビラ配り

はじめから読む方はこちら
前回:第3章 ビラ配りの当日


さてここからは、さまざまなビラ配りの仕事の流れ、特徴、コツを見ていきます。
私が携わったことのある、ティッシュ配り予備校紹介即売会イベント試食販売ちんどん屋を扱います。
いずれもあくまで私個人がアルバイトやサークル活動、趣味で経験したことをもとに書いているため、その道のプロの見解とは異なる場合があります。
より詳しいことが知りたい方は、その道のプロにお尋ねください。


ティッシュ配り

仕事の流れ:
派遣会社や所属企業からの依頼を受けて、配布物を受け取り、指定の場所で配布します。

特徴:
何かを購入するなどの行動を求めるというよりは、知ってもらうことが目的の場合が多く、とにかくたくさん配ることが求められています。
ビラに比べて情報も絞られているため、声かけは「◯◯社です、ティッシュをお配りしています」くらいでも十分。
配りやすさといい声かけのハードルといい、ビラ配り初心者に非常に向いている仕事といえます。

コツ:
ポケットティッシュの裏面に情報が書かれたミニチラシなどが入っている場合は、チラシ面が目に入るように表にして渡します。
ポケットティッシュは滑りやすいので、利き手ではないほうの手に少量を掴み、利き手で一つずつ渡すのがおすすめです。
在庫のティッシュは深すぎない紙袋かトートバッグに入れて利き手ではないほうの腕に下げておくと、すばやく補充できて便利です。

予備校紹介

仕事の流れ:
多くの場合、その予備校で事務やチューターなどのアルバイトをしている人が集められます。
提示された配布日に予備校で配布物を預かってから配布する学校に向かい、駅前や校門前などのポジションについて配布します。

特徴:
ティッシュ配りと同様に、知名度を上げたり身近に感じてもらうことを目的に配布することが多いように感じます。
蛍光ペンや消しゴムなどのノベルティが入っているタイプと、ビラのみのタイプがあります。
その場で申し込みや購入といった行動には結びつかず、自宅などに持ち帰って検討してもらうため、可能な限りビラを持ち帰ってもらうための工夫が必要です。
といっても、私が学生だったときは学校のゴミ箱に捨ててしまっていたんですけど……。
清潔感(髪の長い人は結わえるように)や服装(スーツ)など、予備校アルバイトとしての規定がある場合があります。

コツ:
ノベルティの有無によってアピールが異なります

ビラだけの場合は、ビラに書かれている「有名講師の講義を無料で受けられる」などという期間限定のお知らせや、「〇〇大学に〇人合格!」などの実績をアピールします。
有名講師といっても林修先生のような全国区の人でない限りは名前を言っても「誰それ?」で終わってしまうため、もしその予備校の先生の講義を受けたことがあるのであれば「厳しいけれどこの先生についていったら偏差値がかなり上がったんです」「英文法の授業がとにかくわかりやすいんです」などの自分の体験を話すのも手です。

消しゴムや蛍光ペンなどのノベルティがついている場合は、配りやすさは格段に上がります。
グループで歩いてくる学生さんに「今日は蛍光ペンをお配りしています。色の希望はありますか?」などと話しかけて、足を止めてもらえばしめたもの。
「ところでみなさん、文系ですか理系ですか?」「英語得意ですか?」などと答えやすい質問を投げかけましょう。

ポイントは一つずつ、答えやすい質問をすること
「みんな塾行ってる? 何年生? 大学受ける?」などと矢継ぎ早に聞いてしまうと、相手は焦ってしまいます。
何ラリーか会話を続けたところで、「別の塾に行っている人でもOKなので、お友だちとみんなで受けても楽しいかも」とビラを渡します。
ノベルティだけ受け取ってビラは学校のゴミ箱に捨てられてしまうことがないように、ビラ自体にも価値を持たせたいものです。

即売会イベント(文学フリマ、ゲームダンジョンなど)

仕事の流れ:
依頼をもらって依頼主のビラを配布する場合と、自分の作品を知ってもらうためにビラを配布する場合があります。
依頼をもらって依頼主の販売のお手伝いとして配る場合は、事前準備として打ち合わせをすることがあります。

依頼主の作品のジャンルや主要なターゲット層、優先的に配ってほしい年齢層や属性の有無、配布目標数(印刷枚数、次回のイベントでも使えるビラか、残部をなるべく持ち帰りたくないなど)、などを聞いておくとよいです。
当日は依頼主と待ち合わせ(あるいは現地集合)、ブースを設営し、ブースの前を通る人にビラを配ります。

自分の作品を売るために自分でビラを配る場合は、事前にビラを作り印刷しておきます。
協力者がいる場合は前述した作品ジャンルやターゲット層、配布目標数などを共有しておきます。
イベント当日はブースを設営し、自分のブースの前を通る人にビラを配ります。

特徴:
これまで私がビラを配ったことがあるのは、文学フリマ(書籍販売)、ZINEフェス(書籍販売)、ゲームダンジョン(ゲーム展示)という即売会イベントです。
いずれも長机の半分、あるいは長机一つを自分のブースとして与えられ、そこに作品を並べて販売しつつ前を通る人にビラを配るスタイルでした。
自分のブースからはみ出ると周りのブースに迷惑をかけてしまうので、ポジションは絶対に固定。

イベントや出店者によって目的がやや異なります。
私は自分のエッセイ本を売るために出店しているので、主なビラの配布目的はお客さんの足止めです。
一方友人のゲーム制作者のイベントでビラを配る際には、彼女の目的はリリース前のゲームの知名度アップのこともあれば、とにかく試遊回数を重ねてフィードバックをもらい、ゲームの制作に生かしたいという場合もあります。
それぞれの目的を頭に入れたうえで、適切なふるまいを心がけましょう。

コツ:
ビラから得られる情報を、いかに目の前のお客様にすり合わせられるかがポイントです。
商品が複数ある場合は、お客様の目線の先をよく見極めること。
気になっている商品を的確に紹介できるように努めましょう。

よほどの自信がないかぎり、押し売りはNG。
引き際と感じたらすぐ「もしあとで気になったら、そのビラにネットショップのQRコードも入っているので」とビラだけ渡してそれ以上は押さないこと。
ゲームも本も、趣味に合っているかどうかを判断するのにはどうしても時間がかかるので、その日に販売に結びつかなくても気を落としすぎずに。
毎年、あるいは数か月に一度の恒例イベントであれば、出店回数を重ねるごとに目に留めてくれる人は増えていきます。
商品自体の力とお客さんとの相性、そして回数を重ねる根気が大切です。

注意点:
個人や団体から、ブースでビラを配ってくれないかと打診されることがあります。
その方のことを心から応援している場合や、その方のビラを配ることでこちらにもメリットがある場合はよいものの、そうではない場合は今一度自分が出店する理由に立ち返って検討する必要があります。
ブースは、あなたが作品を販売(あるいは展示)するためにお金を出して借りているスペースなのです。

悲しいことに、イベントに出店したり、SNS上での交流が活発になればなるほど、「厚意へのタダ乗り」が起きやすくなるように思います。
親しき仲にも礼儀あり。
自分が同様の依頼をする際にも、ブース代の一部負担やビラ配布料を払う、あるいは自分の出店するイベントで相手のビラを配る等、相手の労力とスペースを借りることを踏まえた提案をおこない、ビラのサイズや配りやすさなどにも配慮したうえで打診するように心がけたいものです。
持続可能なイベント出店のためには、搾取しない、させない姿勢はとても大切だと私は思います。


試食販売

仕事の流れ:
登録先の派遣会社に出向いて依頼を確認、日程や距離、日給などの条件が合った仕事を選びます。
当日までに試食販売物を食したり調べたりなどの準備をおこない、エプロン、白シャツなどを用意。
当日は店舗に直行し、派遣会社に電話で勤務開始報告。
店舗の方に挨拶し、試食販売場所を案内してもらったら、試食の準備に取りかかります。

特徴:
派遣会社、メーカー、店舗、それぞれの顔を使い分ける必要がある仕事です。
当日、お客様からは店舗の人として見られることが多いので、食品コーナーのざっくりした位置やトイレの場所は店舗に着いたら早めに把握しておいた方がいいでしょう。
基本的に商品棚の近くが定位置なので、外気以上に寒い場所に立つこともあります。
あたたかい日でも生地のしっかりしたシャツを着るなど、万全の対策を。

派遣会社に試食販売員を募集している販売物やスーパーの場所、日時が複数提示されているので、自分に合ったものを選べるのも特徴です。
私が試食販売をしていたころは実家住まいで自炊をほとんどしていなかったので、ウインナーやすき焼きなどのコンロ調理が必要なものではなく、新商品のお菓子やお茶、ヨーグルトなどの加熱がいらないものを選んでいました。

コツ:
普段買い物をするとき、目当てのものをかごに入れながら、「何かいいものないかな?」と店内をぶらぶらすることってありますよね。
試食販売で積極的に狙いたいのは、そういう足取りのお客様です。
直線的に歩いてくる人ではなく、ふわふわといろんな棚に目線が飛んでいる人に声をかけます。

メーカーさんからのメモに「お客様の感触が知りたい」と書かれている場合は、やや積極的に「新商品のお味はいかがですか?」「普段はどこのメーカーの商品を召し上がっているんですか?」「この商品をいつも買っていただいている理由って……」などと尋ねます。

メーカーの方がこれを読んでいたら本当に申し訳ないのですが、たいていの新商品は既存の商品と大きくは変わりません。
いままで塩味しかなかった商品に激辛ハバネロ味が加わればそれは新鮮な変化ですが、そうでない場合、よほどの食通でないかぎりは「言われてみれば、食感や風味が少し違うかも……?」という程度にしか既存品との違いは感じられないことが多いです。
残念ながら少なくとも私が配っている際に、「いままで食べたものと全ッ然違うわ!」と驚かれたことはありません。

そのため、お客様が味わう味覚情報以上に、既存の商品との違いや食べ方のひと工夫、環境への配慮などの企業努力といった味覚以外の情報を伝える必要があります。
その際には、「普段この手の商品は食べているか、食べているのであればどこのメーカーの商品を食べているか」「その商品を選ぶ理由は何か」をじっくりと聞き、その理由に共感する形で新商品を推していき、「もしよかったら一度お試しいただけませんか?」と購入を促します。

もし試食販売に興味を持たれたら、小川洋子の短編小説『いつも彼らはどこかに』(新潮社)の「帯同馬」をぜひお読みください。仕事内容も常連のお客様の空気感も、そこからちょっとしたドラマが起きそうな感じも、とても丁寧にすくいあげられています。

注意点:
私の登録していた派遣会社では、アレルギーを引き起こす可能性があるため一人歩きのお子さんには試食はさせないというルールがありました。
人命にかかわるものなので、おそらく多くの会社でそう定められているのではないかと思います。

一人歩きのお子さんが試食に近づいてきたら「保護者の方ときてくださいね」と断るのが一般的な対応なのですが、大人ほどは我慢がきかない年齢のため、騒ぎに発展してしまうこともあります。
うまく断らないと大声で泣く、不平等だと責める、こちらを睨みつけながら座り込む、などの実力行使に出られてしまうことがあります。
それくらいなら、まだいいほうかもしれません。

「あなたが病院に運ばれないために、保護者の方に確認してからでないと渡せないのです」
何度も試食の前に立っていた子にそう説明して引き下がってくれたと安心していたら、全然知らないおじさんを口説いて保護者として連れてきたことがありました。
そのコミュ力はもっと違うところで発揮してほしい……!

ともあれ、お子さんの身の安全が第一です。
決して意地悪で断っているわけではないことを丁寧に説明し、たとえわかっていただけなくても心を鬼にして絶対に試食品を提供しないようにしましょう。


ちんどん屋

仕事の流れ:
依頼主(商店街、お祭り委員、老人ホームなど)からの連絡を受け、イベントの概要や時間帯、控室の有無、出演料などを聞いて出演可能なメンバーを調整。
当日はそれぞれ楽器や衣装を持って(控室がない場合は着替えた状態で)集合し、開始時間になったら練り歩き始めます。

特徴:
配布場所に制限がある他のビラ配りと比べて、行動範囲の広さが特徴です。
お客様のところに歩いていける強みを存分に生かして、積極的にビラを配りましょう。また格好や化粧も派手なため、お客様に気がついてもらえないこともほぼ皆無です。

トイレや買い物に行くときなどの休憩中も、化粧や着物はそのままのことが多いです。人目があるときには背を丸めたり、だらしなく座ったりしないように心がけましょう。
控室は自分たちだけの場合もあれば、フラダンスやマジシャン、大道芸など他の演者さんと共用の場合もあります。鏡や洗面台などの共用スペースは綺麗に素早く使い、荷物はなるべくコンパクトにまとめましょう。

コツ:
他のビラ配りともっとも異なる点は「イベント感」です。衣装や化粧だけでも十分イベント感は醸せますが、やはり本人のテンションも重要です。
楽士が吹いている曲に合わせて揺れる、大きな動作でビラを配る、声のトーンをやや高めにするとよいでしょう。
子どもと大人が並んで歩いていたら、まずは子どもにかがんで渡します。

初めて行く場所や複雑な作りの会場では、迷子にならないように要注意。
私は初めての商店街でビラとバルーンを担当した際に、お客様が集まりすぎて仲間に置いていかれて迷子になり、半泣きで商店街を小走りで駆け回ったことがあります。

ちんどんステージなどの時間の決まった予定がある状況でお客様との話が盛り上がってしまい、切り上げるのが難しい場合は、「これから◯◯広場で私たちのステージがあるので、お時間があればご一緒に行きませんか?」と一緒に移動してしまうのもありです。

次回:第5章 私とビラ配り(最終回)


この記事が参加している募集