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ビラ配リスト入門 第3章 ビラ配りの当日

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前回:第2章 ビラ配りの準備【後編】


一般的なビラ配りの流れ

いよいよ、一般的なビラ配りの当日の流れを見ていきます。
一般的なビラ配りってなんぞや、という感じですが、とりあえず派遣会社や所属企業などからの依頼を受けて配るケースの想定で進めさせてください。

以下の内容は、以前一度「無人島だと思っていた島で人間と出会ったような喜びを込めて、ビラを配る」と題してnoteにまとめたことと、そこそこ重複しています。「無人島~」の強化版としてお読みください。

配布場所は「駅前のこのあたり」「店舗の敷地内」などと大まかに指定されていることが多く、そのなかからもっとも配りやすい場所を見極めて陣取るところから始まります。
一連の流れをまとめると、このようになります。

〈準備〉
①ビラを適量手に取る。
②通行人の邪魔にならないがビラを渡しやすい場所に陣取る。
〈通行人が自分の前を通る5歩前〉
③通行人と目を合わせて微笑む。
〈お客様が自分の前を通る4〜2歩前〉
④ビラを一枚取って渡すモーションに入る。
〈お客様が自分の前を通る2〜1歩前〉
⑤作品を一言で紹介する。
〈お客様が自分の前を通過する瞬間〉
⑥ビラを手渡す。

その後、③~⑥を繰り返す。


ここから流れを一つひとつ解説していきましょう。まずは、準備から。

〈準備〉

①ビラを適量手に取る。

この適量は、配布物の性質や紙質によります。落としそうになったり滑りそうになったりしない、自分が安心して片手で持てる量を持ちましょう。
ビラの場合は、たわむことなくピンとした状態を保てる枚数がちょうどいいです。
お客様がストレスなくビラを読めるよう、上下、左右、裏表の向きも確認します。

②通行人の邪魔にならないけれど、ビラを渡しやすい場所に陣取る。

第2章前編で書いた環境を踏まえて、通行の邪魔にならない、でも渡しやすい場所を探して陣取ります。
なるべく人が流れてくる上流を見渡せる場所に陣取りたいものです。
こちらにとって人の流れを見渡せる場所とは、すなわち通行人からもよく見える位置です。こちらの存在を通行人に意識してもらえることはビラの渡しやすさに密接にかかわってくるので、場所選びはかなり重要です。

回転寿司でひとつ前のテーブルに差し掛かったあたりから「その皿は私のだ!」と鋭くガンを飛ばすあの感覚(各々好きな寿司ネタを思い浮かべてください)を思い出して、そこそこ遠くまで目が配れるポジションを確保しましょう。
とはいえ回転寿司並みにガンを飛ばしてしまうと、通行人が近寄れなくなってしまうので注意。定位置を決めたら、ひっそりと観葉植物のように佇みます。

〈通行人がブースを通る5歩前〉

③通行人と目を合わせて微笑む。

この瞬間、通行人がビラをもらってくれるかどうかがわかります。
こちらに向かって歩いてくる通行人と目を合わせて、微笑みましょう。
てっきり無人島だと思っていたけど……人、いたんだ!!!」というレベルの、最大級の喜びを込めて。

たった一人で島に漂着してしまったと思いこんで悲嘆に暮れていたら、唐突に人間に出くわした。しかも、言葉も通じそう。
そんな弾けんばかりの喜びを目尻に込めたら、相手の反応を窺います。
マスクをして配る機会が増えて以降は、この目の表情がより一層大事になったように思われます。

大抵の場合、通行人はビラ配リストを目に留めて、もらうか断るかを判断します。
断固お断りの人はポケットに手を入れて視線を外し、「場合によっちゃもらってやるのもやぶさかではない」という人はそのまま、あるいは速度を少し緩めて歩いてきます。目を合わせて「そのビラ、私にくれるつもりなんだね」と心づもりをしてくれる人もいます。
そのサインにどれだけ気づけるかが、ビラ配りの成否を分けます。

そのサインさえ見誤らなければ、ビラ配りはほぼ終わったも同然です。
この段階で2〜3人にスルーされるようになったら、集中力が切れてきた証。
「わあ、人がいる! 無人島じゃなくてよかった!」と心のなかで唱え直しましょう。

〈お客様が自分の前を通る4〜2歩前〉

④ビラを一枚取って渡すモーションに入る。

受け取る意思を示してくれたお客様へ、ビラを差し出す準備に入ります。
何よりも大事なのはタイミングです。再び回転寿司を思い浮かべてください。
玉子、海老、マグロがあなたに向かって流れてきています。あなたが食べたいのは、海老だとします。

ときどき、玉子に差し掛かったタイミングで手を伸ばしてしまう人がいます。
目の前に手を伸ばしておきながら玉子をスルーすると、玉子側としてはおもしろくありません。
選ばれるのかと思いきや選ばれなかった悲しみと屈辱を抱えたままレーンを流れていく玉子は、5分くらい不快な思いをくすぶらせているかもしれません。

そのような切ない玉子を増やさないために、お客様に働きかけるのは前を歩く通行人の視線が外れてからにしましょう。
たかが5分、されど5分。
私がビラ配りの当日に一番気をつけているのは、「とにかく相手を不快にさせないこと」です。自分がその道における異物であることを忘れずに、邪魔にならず、不快にさせず、さりげなくビラを配りましょう。

そのためこの所作は、可能な限り淀みなくなめらかに行いたいものです。
渡そうとしたビラが丸まってしまったり、うまく一枚取ることができずにもたついて遅くなってしまうと、受け取る意思を見せてくれたお客様とのタイミングがズレて一度足を止めてもらわなくてはならなくなってしまったり、「やっぱりいいです」と立ち去られてしまったりします。

ビラを一枚だけスムーズに取るのが難しい素材の場合は、指サックがあると便利です。
お断りのメッセージを発してきた人に対しては、あまり期待せずにビラを見せましょう(あるいは渡すふり)。
そのビラの魅力がその人に刺さって、「やっぱりほしいかも」と立ち止まってくれることもあります。

〈お客様が自分の前を通る2〜1歩前〉

⑤作品を一言で紹介する。

なんのビラを配っているのかを一言で、なるべく短く簡潔に紹介します。
お酒と豆料理が楽しめる古書店がオープンしました
街ブラ系ノベルゲームのご紹介です
及川光博似の夫と結婚するまでのエッセイです
などなど。

そのフレーズに引っかかって立ち止まってくれたお客様が話を聞いてくれる態勢になったら、通行の流れに引っ掛からない場所に誘導し、事前に準備したビラの情報とお客様との共通点を探します(詳細は第2章後編)。

その際の話し方は、尊敬する先輩に話しかけるくらいの敬語の度合いで十分です。
ときどき不自然なほど過剰に敬語をてんこ盛りにするビラ配リストがいますが、使い慣れない言葉を使うとそちらに意識が持っていかれて肝心の商品紹介が滑りやすくなってしまうので、私は最低限の敬語さえ使えばそれでいいんじゃないかなぁと思っています。

声量は普段の会話の1.2倍くらい、速度は0.8倍くらいを意識して話すとちょうどいいように思います。
あまり大きな声で話すと、その人宛ての言葉ではなく不特定多数に向けての言葉のようになってしまうからです。アイコンタクトを交わした人にだけ、しっかり届けばばっちり。

〈お客様が自分の前を通過する瞬間〉

⑥ビラを手渡す。

もらう意思を見せてくれているお客様にビラを手渡します。
その人の手元まではスピード感をもって、ビラが手に渡る瞬間はその人が手を切らないよう花を渡すような気持ちでふわっと渡します。

渡しながらその人が興味を持ってくれたか、早く立ち去りたそうかなどの状況を観察します。
もしも興味を持ってくれた様子であれば、通行の流れを妨げない場所に誘導してビラや商品とお客様の共通点探しに移ります。

ビラを渡す瞬間は商品に興味を持ってもらえるかどうかがかかっている、一番緊張する瞬間です。
振られてしまったビラは、よほど人の流れが急でない限りは、その都度手元に戻します。

以上の流れをビラがなくなるまで、あるいは指定の時間いっぱいまで繰り返します。

※距離があるとき

ビラを受け取ってくれそうな人と距離があるとき、あるいは人波などに隔てられているとき、はたまた興味はありそうだけど受け取るか迷っていそうな人に対しては、ビラの「令和おじさん持ち」がおすすめです。
令和おじさんとは、言わずと知れた菅義偉元総理大臣。
額縁の下端を両手で掲げる、あのポーズでビラを見せましょう。
あの額縁の国民的持ち方は、かなり重宝します。商品写真やイベントタイトルなどがでかでかと使われているビラとは特に相性がいいです。

その日のビラ配りを振り返る

その日のビラ配りを終えたら、自分の声かけやタイミング、通行人の量や全体的なお客様への渡しやすさなどを振り返ります。
同じ現場で配っていた人がいる場合はその人と反省会をすると、一人で反省するのとはまた違った学びがあります。

個人的には、ビジネス書でよく紹介されているKTP法を意識すると振り返りやすいように思います。
Keep……今後も続けたほうがいいこと
Problem……改善したほうがいいこと
Try……次回、似た現場や似たビラを配る際にやってみたいこと

宣伝する商品や出会う人や場所もその都度異なるビラ配り。
まったく同じ仕事は二度とありませんが、人の流れ方や観光客と地元の人の割合などの通行人の属性、立地などの環境や、似た商品を宣伝する場など、次の仕事に生かせる反省ポイントはたくさんあります。

ほかの人と反省していてよく反省に上がるのが、「思ったより配れなかった」です。
量を配るのが目的の現場であれば悔しい失敗ですが、そのビラの目的に立ち返って考えると必ずしも「たくさん配る=成功」ではない場合もあります。

第2章前編で見たように、ビラ配りの真の目的は多岐にわたります。
「とにかくたくさん配りたい」という目的ではなく、地元のお客様に積極的に渡したいとか、商品に関心を持ってくれている人に渡したいなどといった場合、数は少なくても来店・購入に繋がるお客様を確実にキャッチできたときのほうが依頼主は嬉しいかもしれません。

もう一つ多い反省点としては、「差し出したものを断られると、すごく傷ついて自信を失う」「一度へこむと、そのあと歩いてきた人になかなか渡せなくなってしまう」などの人間としての自信喪失系です。

でも、よく考えてみてください。
ビラ配りの人の顔や動作って、私のようにビラ配りによほど関心がある人間じゃない限り、そうそう覚えていないと思うのです。

たかがビラを振られたくらいで、あなたが傷つく必要はありません。
通行人がビラをもらってくれなかったのは、単純に渡すタイミングが合わなかったか、そもそもその人が「もらわない人」だったからにすぎないので、ここでくよくよするのは非常にもったいないです。

ここまで書いてきた通り、ビラを手渡す前にビラ配りはほぼ完了しています。
もらってもらえないことが続いたら、見直すべきは自身の自信ではなく、立ち位置や渡すタイミング、アイコンタクトが取れているかどうかなのです。
どうかしっかりと振り返って、次回のビラ配りに向けて態勢を整えてください。

次回:第4章 さまざまなビラ配り