GMOが「ヒューマノイド元年」を宣言した理由。AI時代の成長シナリオ
AIが人に代わって判断や手続きを行い、ヒューマノイドが空港や物流倉庫、製造現場、小売店舗のバックヤードなど、人手不足に悩む現場で活躍するかもしれない。そんな未来に向けて、企業はどんな準備を進めているのでしょうか。
今回は、クラウド、決済、セキュリティを軸に、AI時代の新たな需要を取り込もうとするGMOインターネットグループを取り上げ、どのような成長戦略を描いているのか、決算が読めるようになるノートさんに解説していただきました。

2026年5月15日、GMOインターネットグループ(以下、GMO)がFY26 Q1決算(2026年1月〜3月)を発表しました。
売上収益はYoY+13.3%の816億円、事業利益はYoY+32.0%の193億円。インフラ事業と金融事業がそろって四半期最高業績を更新し、連結業績を牽引しました。
注目すべきは、事業利益の伸び(+32%)が売上収益の伸び(+13%)を大きく上回っている点です。売上が1割強伸びる間に、利益は3割以上伸びている。
この利益率の改善がどこから来ているのか。
本記事では3つの決算ポイントに絞って、この構造を読み解いていきます。
今回の決算を見るうえでは、足元の業績を支えるインフラ事業、その中で存在感を高めるGPUクラウド、収益基盤の一つである金融事業、そして中長期の成長テーマであるセキュリティやAI・ロボティクスへの投資という軸で整理すると、GMOが描く成長戦略が見えやすくなります。
この記事は、決算に興味はあるが読み慣れていない方に向けて書いています。GMOはFY25よりIFRS(国際会計基準)へ移行しており、同社がKPIとする「事業利益」を中心に解説します。事業利益とは、IFRS上の営業利益をベースに、VC事業の時価変動など一時的・偶発的な影響を取り除いた利益指標で、事業の経常的な収益力を見るための数字です。
GMOインターネットグループとは?
GMOは1991年に設立された、日本を代表するインターネットインフラ企業です。
「すべての人にインターネット」を掲げ、ドメイン登録やレンタルサーバーを起点に事業を拡大してきました。
東証プライム上場(9449)。グループ会社は連結153社、うち12社が上場しており、時価総額の合計は約1兆3,069億円に達します(2026年5月14日時点)。
事業は大きく5つのセグメントに分かれています。
最大の「インフラ事業」はドメイン、レンタルサーバー、クラウド、EC支援、決済などを手がけ、売上の約58%を占めます。
2番目の「金融事業」はFXやCFDなどのネット証券事業で約18%。
「セキュリティ事業」はサイバーセキュリティや電子認証で約8%、「広告・メディア事業」が約11%、「暗号資産事業」が約2%という構成です。
GMOの特徴は「岩盤ストック収益」と呼ばれる収益構造にあります。
ドメイン登録、サーバー契約、決済手数料、セキュリティサービスなど、「無くならない、無くてはならない」継続課金型のサービスが連結売上高の60.9%を占めています。
一度契約すると長期にわたって利用され続ける商材の集合体が、安定した収益基盤を形成しています。
Q1 2026 決算ハイライト
GMOのQ1 2026決算の主要指標を整理します。

セグメント別に見ると、連結業績を牽引したのはインフラ事業と金融事業の2セグメントです。

インフラが前年比+24億円、金融が+29億円と、この2セグメントだけで計53億円の増益を生み出しています。
一方、暗号資産は市場の低迷で減収減益。セキュリティは売上こそ+8億円(YoY+15.5%)と伸びていますが、ブランドTLD(「.貴社名」のトップレベルドメイン)取得支援に向けた先行投資の影響で、利益は微減となっています。
【今回の決算ポイント #1】インフラ事業が5四半期連続の最高業績、GPUクラウドが利益貢献フェーズへ
インフラ事業の売上収益は477億円(+50億円)、事業利益は123億円(+24億円)でした。四半期の最高業績を更新するのは、これで5四半期連続です。
ここで注目したいのは、売上収益の伸び(YoY+11.8%)に対して事業利益の伸び(YoY+24.3%)が2倍以上あることです。
売上が1割伸びると利益は2割以上伸びる。このレバレッジの効いた構造がGMOの収益力を支えています。
◆決済事業とGPUクラウドが牽引
牽引役はGMOペイメントゲートウェイ(決済)とGMOインターネット(クラウド・ドメイン等)の2社です。

(出典:「GMOインターネットグループ Q1 2026 決算説明会資料」P97より)
決済事業の連結決済処理金額は、直近12カ月の合計で約23.2兆円に達しました(YoY+10.2%)。
特に対面決済が好調で、アクティブID数は45.7万ID(YoY+11.1%)、対面決済の処理件数はYoY+24.8%と伸びています。
キャッシュレス決済の普及が追い風となり、トランザクション型の収益が積み上がっています。
GPUクラウド事業も新たな利益貢献のフェーズに入りつつあります。
NVIDIA HGX B300を搭載したGPUサーバー25台が全台サービスを開始し、さらに42台への69億円の追加投資を決定しました。
Q4'26以降に順次提供予定です。
プライム上場維持基準の適合に向けた公募増資(新株発行3,000万株、約202億円の調達)の資金使途の一つがこのGPUクラウド投資であり、積極的な成長投資の姿勢が表れています。
GPUクラウドは、AI需要を背景にした中長期テーマであると同時に、利益貢献フェーズに入りつつある新たな成長ドライバーとして存在感を高めています。
◆岩盤ストック収益が生む「構造的な強さ」

(出典:「GMOインターネットグループ Q1 2026 決算説明会資料」P9より)
インフラ事業の安定成長を支えているのが、前述の「岩盤ストック収益」です。
インフラ事業の契約件数は1,951万件で、前年から521万件も増加しました。
ドメイン登録やサーバー契約は毎月・毎年の継続課金が基本です。
契約件数が積み上がれば、翌四半期以降の売上もそれに応じて底上げされます。
景気変動に左右されにくいこの構造が、5四半期連続の最高業績を可能にしている背景です。
そして、この岩盤ストック収益の構造は、AIの普及によってむしろ拡大する見通しがあります。
AIエージェントやヒューマノイドが普及すると、エージェント同士の常時接続によるデータ量・トランザクション量が増え、AI自身による決済・送金も発生します。
学習・推論データの処理にはGPUなどの計算リソースが必要であり、AIの計算インフラへの需要も拡大します。
つまり、GMOが長年かけて築いてきた「インフラ基盤」「金融基盤」「セキュリティ基盤」の3領域は、いずれもAI時代にそのまま成長の受け皿になる可能性があります。
同社が決算資料の中で示した「AIの普及がもたらす産業構造の変化」というフレームは、岩盤ストック収益というビジネスモデルの将来性を裏付ける文脈として読むことができます。
【今回の決算ポイント #2】金融事業が四半期最高、CFDがFXを上回る収益規模に成長

(出典:「GMOインターネットグループ Q1 2026 決算説明会資料」P40より)
金融事業の売上収益は143億円(YoY+37.1%)、事業利益は65億円(YoY+79.9%)でした。いずれも四半期として過去最高の水準です。
◆CFDがFXを逆転

(出典:「GMOインターネットグループ Q1 2026 決算説明会資料」P41より)
この四半期で最も目を引く変化は、CFD(差金決済取引)の売上がFXを上回ったことです。
CFDの売上収益は約64.5億円で、前年同期比で約255%の増加。
一方、FXの売上は約57億円(YoY-14.9%)でした。
長らくGMOの金融事業を支えてきたFXに代わり、CFDが最大の収益源になっています。
CFDとは「Contract for Difference」の略で、株式や金・銀・原油などの価格変動を利用する取引です。
実際にその商品を売買するのではなく、買値と売値の差額だけで損益を決済します。
少ない資金(証拠金)でレバレッジをかけて取引できるため、相場が動く局面で取引が活発になりやすい特徴があります。
Q1 2026にCFDが急伸した直接的な要因は、金・銀の価格高騰です。
地政学リスクやインフレヘッジの需要を背景に、商品市場が活況を呈しました。
GMOクリック証券は店頭CFD国内シェアNo.1の地位にあり、この市場環境をそのまま取り込んだ形です。
ただし、これは単に「相場が良かった」だけの話ではありません。
GMOフィナンシャルHDは、従来FXに偏っていた収益構造をCFDへ意図的に多角化してきました。
「第2の収益の柱」としてCFDを育成してきた戦略が、市場環境の追い風と重なり、一気に開花したと見ることができます。

(出典:「GMOインターネットグループ Q1 2026 決算説明会資料」P42より)
◆GMOあおぞらネット銀行の成長
金融事業ではGMOあおぞらネット銀行の成長も注目されます。
同行は持分法適用関連会社のため連結売上には含まれませんが、事業の成長は際立っています。
法人口座数はYoY+34.2%の約24.4万社に達しました。
BaaS(Banking as a Service)契約数もYoY+31.6%の1,088件。
預金残高は1.3兆円を突破し、メインバンク増加率は2年連続でNo.1を記録しています。
法人向けネット銀行として独自の地位を築きつつあり、トランザクション収益と資金収益の両方が成長しています。
【今回の決算ポイント #3】セキュリティとAI・ロボティクスへの戦略投資、「AIに選ばれる存在」を目指す
3つ目のポイントは、セキュリティとAI・ロボティクスへの先行投資です。
セキュリティは売上成長が続く中で、第一想起ブランドの確立に向けた投資フェーズにあります。
一方、AI・ロボティクスは、ヒューマノイドの社会実装を見据えた中長期の成長テーマです。
◆「ネットのセキュリティもGMO」プロジェクトの進捗

(出典:「GMOインターネットグループ Q1 2026 決算説明会資料」P36より)
セキュリティ事業の売上収益は62億円(YoY+15.5%)。
中でもサイバーセキュリティの売上が続伸しています。
事業利益は3億円(YoY-9.6%)と微減ですが、これはブランドTLD(「.貴社名」のトップレベルドメイン)取得支援に向けた戦略投資が影響しています。
4月30日から申請受付が開始され、TOPPANホールディングスなどが取得申請を決定しています。
GMOは2025年2月から「ネットのセキュリティもGMO」というプロジェクトを立ち上げ、1年余りで計13弾の施策を矢継ぎ早に展開してきました。
中でも大きいのが2つの合弁会社設立です。
1つ目は、三菱UFJ銀行との合弁(2026年1月設立)です。
同行の顧客基盤に向けてサイバーセキュリティソリューションを提供するもので、メガバンクの顧客ネットワークを通じて企業向けセキュリティ市場へのリーチを広げる狙いがあります。
2つ目は、Preferred Networks(PFN)との合弁(2026年3月設立)です。
ハードウェアからソフトウェアまでセキュリティが担保された国産AI環境を提供するという取り組みで、AI時代の安全な基盤づくりに直結します。
AI活用が進む中で、計算環境そのものの安全性をどう確保するかは、これからの産業にとって避けて通れない課題です。
このほか、GMO Flatt SecurityのリサーチャーがAnthropicの脆弱性発見・報奨金制度(バグバウンティプログラム)で世界No.1を獲得(2026年5月)するなど、技術力の裏付けとなる実績も出てきています。
報告された脆弱性は45件で、2位の15件を大きく引き離しています。

(出典:「GMOインターネットグループ Q1 2026 決算説明会資料」P18より)
GMOが目指しているのは、セキュリティにおける「第一想起」のブランドです。
「ネットのインフラといえばGMO」に加えて、「ネットのセキュリティもGMO」という認知を確立しようとしています。
売上・利益への貢献が本格化するのはこれからですが、メガバンクやAI研究トップとの提携による信頼獲得は、中長期の成長基盤の構築として見ておく必要があります。
◆「ヒューマノイド元年」を宣言、AI・ロボティクス領域に参入
GMOは2026年を「ヒューマノイド元年」と位置付けました。GMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)を通じて、ヒューマノイドの導入・活用をトータルサポートする派遣サービスを展開しています。
利用企業が高額なロボットを購入する必要はなく、初期投資・専門知識なしで導入できる仕組みです。多様な業界から引き合いが拡大しているとのことです。
2026年5月には、JALグランドサービスと羽田空港での地上業務の省人化に向けた実証実験を開始しました。
空港という安全性と正確性が求められる現場での実証は、ヒューマノイドの社会実装に向けた具体的な一歩です。
同年4月には日本初・日本最大級のフィジカルAI研究開発拠点も開設しています。
「GMOロボッツ」プロジェクトでは、駅伝日本一の走りをヒューマノイドに学習させる取り組みが始動し、物流や製造への産業応用を見据えています。
ここで重要なのは、ヒューマノイド事業が単独で成立するのではなく、既存事業と組み合わせて展開される構造にあることです。
ヒューマノイドの導入にはネットワークインフラが必要であり、物理空間で自律的に動くロボットにはセキュリティの確保も欠かせません。
GMOはヒューマノイドの派遣と同時に、自社のインフラ商材やセキュリティ商材を提供する「セット販売」のモデルを描いています。
新事業の開拓が既存の岩盤ストック収益の拡大につながる設計です。
◆「AIに選ばれる存在になる」という視点

(出典:「GMOインターネットグループ Q1 2026 決算説明会資料」P11より)
もう一つ、今回の決算資料で注目したいのが、「AIに選ばれる存在になる」という方向性です。
背景にあるのは、インターネットの主役が人間からAIへ移りつつあるという変化です。
HUMAN Securityの調査(2026年3月)によれば、AIエージェントのトラフィックは前年比80倍に拡大しています。
自動化トラフィックは人間のトラフィックの8倍の速度で成長しており、ネットの「利用者」の構成そのものが変わりつつあります。
この流れの中で、GMOはMCP(Model Context Protocol)対応とAPI対応を進めています。
MCPとは、AIエージェントが外部のツールやデータに接続するための標準プロトコルです。
AIが自律的に判断してサービスを呼び出す際の「窓口」にあたるものです。
グループ各社の対応が進んでいます。
GMOトラストログインがMCP対応を開始し、MCP構築プラットフォーマーであるGMO AIコネクト(旧ストラテジット)を連結化しました。
GMOペパボはAIエージェントクラウドやリモートMCPサーバーの提供を開始し、GMOサイバーセキュリティ byイエラエはAIエージェントを用いたペネトレーションテストの提供を始めています。
GPUクラウドのようなAI向け計算資源の提供にとどまらず、AIエージェントから「呼び出される」インフラになることを目指しているのです。
人間がサービスを選ぶ時代から、AIがサービスを選ぶ時代へ。
そのときに選ばれる側にいることが、長期的な競争力を左右するという読みがあります。
まとめ
GMOのQ1 2026決算を3つのポイントでまとめます。
売上収益はYoY+13.3%の816億円、事業利益はYoY+32.0%の193億円で増収増益。インフラ事業(5四半期連続最高)と金融事業(四半期最高)の2セグメントが連結全体の増益を支えた。事業利益率は23.8%と、前年から3.4ポイント改善しています。
インフラ事業では、既存の岩盤ストック収益に加え、GPUクラウドがAI向け計算資源需要を取り込む成長ドライバーとして、利益貢献フェーズに入りつつあります。
金融事業では、CFDの売上がFXを初めて逆転しました。金・銀の相場活況という市場環境の追い風もありますが、CFDを「第2の収益の柱」として育成してきた戦略が実を結んだ側面も見逃せません。
セキュリティ、AI・ロボティクスへの先行投資を加速しています。三菱UFJ銀行やPreferred Networksとの合弁設立、ヒューマノイド派遣サービスの展開、グループ横断でのMCP対応など、AI時代を見据えた布石が次々と打たれています。
GMOの強みは、ドメイン・サーバー・決済・セキュリティという「無くならない、無くてはならない」サービスを束ねた岩盤ストック収益の基盤にあります。
この基盤は、AIエージェントやヒューマノイドの普及によるデータ量・トランザクション量の拡大を受けて、むしろ構造的に成長が加速する位置にあります。
今期の数字は好調ですが、GPUクラウドの追加投資69億円やセキュリティの先行投資が利益に転化するタイミング、CFDのような市場環境に左右される収益の持続性、そしてヒューマノイド事業が本格的な収益貢献を果たせるかどうかが、今後の注目点になります。
(文)決算が読めるようになるノート

今回の決算からは、GMOが足元の成長だけでなく、未来を見据えてどこに投資し、どのような役割を担おうとしているのかが見えてきます。
インターネットインフラを支えてきた同社が、AI時代にどのように強みを広げていくのか、今後の展開にも注目です。

「断水のお知らせ」が来ると、その前日はちょっとした臨戦態勢になります。やっぱり数時間だけでも、生活インフラが使えなくなるのって心配ですよね。
そういえば、大学時代にも「断水」にまつわる忘れられない出来事がありました。
ある夜、一本の電話がかかってきました。
「今日の夜から、明日の朝まで断水になります」
え…?
慌てて、「明日のお弁当はあきらめよう。とにかく早く寝るしかない!」と決め、急いでお風呂に入り、寝る準備をして、そのまま就寝。
ところが翌朝、トイレに行ってみると、
あれ? 水が出る……。
後になって、それが先輩のいたずらだったと判明しました。
よく考えればわかることでも、いざ自分の生活に関わる話になると、つい信じてしまうものなんですよね。
しかも、水道というライフラインの話。
詳細はあまり覚えていなくても、ちょっと焦った感覚だけは、今でも残っています(笑)。
なんでも疑いすぎるのも良くないけれど、素直に信じすぎるのも少し怖い時代。
AIを使った詐欺やなりすましも増えているからこそ、改めて「何を信じるか」を考えるきっかけにしたいところです。
↑ みなさんの情報発信、ありがたいです。巧妙な手口で誰にでも近づいてくるけれど、まずは冷静に、落ち着いて対応していくのが大切ということですね。
↑ 当たり前のように使えていたものが使えなくなって焦った経験は同じくあります。そうなった時のことも想定して、上手に使いこなしていきたいです。
長文にもかかわらず、最後まで読んでいただきありがとうございました。

