我が家にご滞在の猫たち もも様のためならば
――ひざまずき、頭を垂れよ。
そうおっしゃったので従った。
あたかく、しめった柔らかいものが、床にすりつけた私の頭皮をなぞりだした。
きちんとご命令にお応えすることができたので、私はうれしくなった。
――実際に聞こえた音声は
「ニャッ」
だったのだが。
我が家の現・女王様
2023年現在、我が家にご滞在なさっている2にゃんず。
うち一匹は三毛のお嬢さんである。

もう一匹のオス・宗次郎とともに我が家にやってきた。
祖母・父・母の3人で子猫を探して愛護センターに向かった際、ケージの中でもっとも活発な動きを見せて祖母のハートを射止めたのが、三毛のちびちゃんだった。
同じような体格だったので、宗次郎はセットでうちに連れてこられた。
宗次郎が我が家でぬくぬくしているのは、この三毛猫のおかげなのである。
さて、我が家にて「もも」と名づけられたこのお嬢様、いやお姫様。
右も左もわからないけれども、自分が可愛いことだけはわかっていらした。

最初の1年は、朋輩の宗次郎くんと親密に過ごしていたが、
宗次郎の方が大きく重たくなり、また何かとしつこく絡むため、
ももは彼を邪険にあしらうようになった。
これからずっと、仲良く抱き合って眠る2匹の猫が見られると喜んでいたのだが……

ちなみに、身体能力は ももちゃんの方が高いかも(より高いところに上れる)


もも様はたいへん美しくご成長なされたが、
女王様気質も同時に高められた。
人を使うのがやたら上手なのである。
しかも、家族一人ひとりを使い分ける。
父にはエサをねだる。寝そべったら足元に落ち着く。
母には、椅子に座らせて抱っこを要求。二の腕をフミフミする(爪がささる)。
妹には台所で背中をなでさせる。(ノーごろんちょ)
そのほか、ご用命は多岐にわたる。
ももはそれぞれに仕事を割り振った。
ある場所に誘導し、鳴く。目で訴える。
必ずご命令に従うように、我々はしつけられてきた。

もも様へのご奉仕
私が拝命つかまつっている仕事の手順?を以下に記す。
もも様のアクションは以下の通り。
①台所へ茶ぶどうを誘導
②台所を1~5周して後をついて来させる
③ごろんちょ→マッサージさせる
④立ち上がる→ひざまずかせる
⑤茶ぶどうの頭をなめる
②は謎行動で、なぜか台所の一定のポイントにマーキングをしながら(頭をすりつける)、行ったり来たりを繰り返す。満足したら、ごろんちょ。
満足するまで、下手すると7周とかする。「台所中引き回しの刑」である。
④・⑤はこの1年くらいで加わった新たなステップであり、
それを最初に私に「わからせた」ときの話が、冒頭である。
ある日、もも様はいつものマッサージから立ち上がると、「ニャッ」とおっしゃった。
「ひざまずけ」。
私にはなぜか、わかった。わからされた。
「ひざまずき、頭を垂れ、わらわにそちの頭をなめさせよ」。
おお、もも様、御心のままに……!
もともと髪の毛や頭皮をなめるのが好きだった(そういう猫は多い)。
しかし、マッサージとセットになったか。
一度目で茶ぶどうが理解したと見てか、その後は無言で立ち上がられるようになった。
私は自動的にひざまずく。おでこを床につける。なめられる。
これが、毎日のご奉仕である。
なお、「面をあげい。行ってよし」の合図はない。
なんとなく終わったかな、と思ってそろそろと顔をあげると、ご本猫は既に「顔洗い」に入っている。
ももちゃん、終わったんなら「終わった」って言ってくれ。

もも様、弥栄!
10歳をすぎて初老に入ったためか、近頃は「甘えん坊」度が上がり
(猫は高齢になるにつれ甘えん坊になるらしい)、
家族への要求は頻度を増してきた気がする。
「さっきやったでしょ」と言っても通用しない。もも様だから。
最近、私の頭をなめる際、髪の毛の根本にかみついて引っ張るようになった。
もも様、なんたるご狼藉を……!
しかし、仕方がない。
もも様の、世にもやわらかな玉体をおもみする栄誉に浴しているのだから、このくらいのことは。
もも様の体や毛は、やわらかい。
宗次郎もやわらかいが、ももの方がふんわりしている。
不思議なもので、猫はそれぞれ毛皮の感触が違うのだ。
床にごろんちょしたももの体をマッサージする。
ふわふわのおなかに耳をつける。ゴロゴロ、聞こえてくる。
――苦しゅうない。
もも様、今日もご満足いただけていますでしょうか。

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