AI時代に、ホテリエはどうなるのか
チェックインも、コンシェルジュ業務も、予約管理も。ホテルの業務の多くはテクノロジーで代替できるようになり、無人ホテルも増えています。
AI時代に接客はどうなるか。AI時代にホテリエの価値はどうなるのか。そして、UDS HOTELSはその問いにどう向き合っていくのか。テクノロジーが進化するほど、人の在り方が問われていく時代の、一つの答えを探ります。
接客の価値は上がる
──AI会社のレポート(※1)で、調理・接客業はAIによる代替が起きづらいというデータが示されていました。AIの時代に、接客の価値はどうなると思いますか。
価値は上がると思います。
コーチングやカウンセリングはすでにAIで代替できていますよね。同じように映像を映し出すことでAIによる接客もできなくはない。でも、会って話した方がよくないですかね。

中瀬勝之 ホテル事業部 上席執行役員
IT会社、ホテル運営会社を経て、2021年にUDS入社。UDS HOTELS ホテル開発プロジェクトにおいて、企画から開業準備、開業後の運営統括を担当。UDS HOTELSマーケティング、人事、営業企画全般を統括。ホテルで働く人がどうしたらもっと自分らしく・ワクワクして働けるかを探求している。
好きなホテルはザ ノマド 八ヶ岳。
感覚的な話になるけど、メールやチャットよりも電話、電話よりも対面であった方が相手のことよく知れる。なぜなら、情報量が違うから。
電話で「ありがとうございます」と言う時も、ただ言うのと、頭を下げながら言うのとで伝わり方が違うって話がありますよね。会うと、さらに表情が見えて、目の動きが見えて、たくさんの情報がある。そうした情報量の多さから、熱量が伝わる。熱量が伝わった先に、人と人とがつながれるという価値があると思っています。
──熱量とはなんですか。
AIはなにかしらのアクションをもらって反応を起こすけど、そもそも「こうしたい」みたいな行動の主体はどこまで行っても人間なのかなと思います。
赤ちゃんの学習方法ってまず行動らしいんですよ。立とうとしたらこけるというインプットがあって、立ち方を覚えていく。先に立ち方を勉強させるわけじゃない。人間の、立とうとするとか、この人を喜ばせたいっていう主体性に熱量が帯びる。

──人の主体性が、人と人とをつなげ、それが価値になる?
そう、要は気持ちです。同じ表情をしていても、感じ方ってその瞬間や状況で変わりますよね。スーツケースを運ぶみたいな気遣いは別だけれど、「この人のことが知りたい」っていう、その状況においてその人に対して沸き起こる感情って、連続した感情ではなく、思考がジャンプしておきている判断な気がします。
現状では、AIの処理がそこまでできるのかわからない。人と人の間でしか成立し得ない感情や価値があると思っています。
──ゲスト側からしても、主体性に対して報いたいって気持ちもあるのかなと思います。ホテルのメンバーに話を聞くと、仲良くなってゲストからお土産をもらえるとよく聞きます。つながった結果、感情やものを受け取れる価値がある。逆にそれが出来ないと、なんだか満たされない感情になるのでしょうか。
全員が満たされないとは限らない。AIと結婚した人もいますからね。受け手側がAIを信じる限りは代替されるかもしれないし、でもやっぱり人がいいねって思う人がいる限りは必要になると思います。
例えば、ファミレスみたいな日常の接客はなくなったとしても、ホテルや旅という非日常の中での接客はある程度必要になる。旅に出ることは不安なことだから、人とのコミュニケーションとか、安心感を求める層は一定いると思っています。
「このホテルに、あのひとがいる」がブランドに
──ホテリエの価値が上がると仮定した時に、美容師やパーソナルトレーナーみたいな個人のブランド化が起きている中で、個人に価値がついていくのでしょうか。ただ、ホテリエの独立は、ホテルという箱がないと難しいですよね。
「このホテルに、こういう接客をするこんなひとがいる」となったらいいですね。
──個人で名前が売れ出したときに、他のメンバーと評価が同じですってなると、ちょっと違うのかなと思っていて。個人のブランド化に応じて価値が還元される仕組みは、ホテル側で必要になるのでしょうか。
投げ銭のような仕組みはつくりたいですね。チップみたいに、感謝の気持ちをたくさん集められるのには、それなりの理由があるから。
あとはメンバー同士も感謝をし合えたり、分配できるようにしたいと思っています。ありがとうって言われるのは純粋に嬉しいけど、ホテルで動いていると忙しくて言うのも難しいだろうから仕組みで解決したいですね。

──個人のブランド化に還元するために投げ銭が導入されるとしたら、そういう仕組みのあるホテルにひとが集まっていくんですかね。
仕組みもあるかもしれないけど、魅力的なひとたちが集まるのも、魅力的な環境や文化がないとできないと思います。だから結局は、ひとを育てられる組織があるかどうか。
──ホテリエがブランド化していくとなった時に、個人では何をすべきですか。接客力を高めるって話もあれば、例えばこのホテリエ経由だと人気の人や店を紹介できますみたいな、まちの編集者っていう切り口とかもあるのかなと。
みんな違っていいと思います。トップコンシェルジュになりたいひともいれば、漁師をしながら釣った魚をゲストに提供するホテリエもいていい。
新卒と話していると、そもそもホテルに就職するひとたちは「人に喜んでもらいたい」って気持ちが根底にあるんですよ。
でもオペレーションに入ることで十分にできなかったり、厳しい会社のルールで標準化されてできなくなっていく。でも、純粋にゲストに喜んでほしいっていうホテリエがたくさんいる環境にしたいですよね。
ひとの個性が、ホテルの強みになる時代
──次に、AI時代のホテル業界とUDS HOTELSの現在地について知りたいです。
無人ホテルが増えていて、オペレーション自体は無人でも出来るようになっていますよね。無人にした分の余白で、ひとを減らすのか、別の価値を生み出すのかの2軸があります。
無人化・省人化しているチェーンもあれば、高級ホテルは有人でさらに高級化していて、二極化していると思います。あとは、個人もしくは小さくてもコンセプトがあるホテルがいくつかありますね。

UDS HOTELSは別の価値を生み出していきたい。単に高級化するのとは違って、一人ひとりのメンバーの個性が価値につながればなと思っています。
例えばチェーンホテルのように「不公平が生まれちゃうからやってはいけない」ではなくて、ゲストにやってあげたいと心から思うことがあるのであれば、どんどんやってほしい。
──以前のnoteでメンバーが、「忘れ物で困っているお客様がいたら連絡先を聞いて、個別に対応しちゃう。ホテル側としてはリスクもあるので、そこまでやるべきじゃないかもしれませんが」と言っていました。
やっていいと思います。
そのためには、やっていいよって言えるチームが必要だし、失敗しても称賛されるカルチャーにしないといけない。結局はマネジメントの質が大切になっていきます。
あとは、ホテルのデザインやコンセプトで勝負している会社なので、コンセプトの理解と提供する価値とをつなぎ合わせられるかどうかですね。
──それがUDS HTOELSの言う“個性”だと思いますが、個性って具体的に何ですか。いわゆるスキルみたいなこととは違いますよね。
個性を因数分解すると、「強み・長所」と「強い興味・関心」と「性格」です。
他人よりうまくできることって必ずあるはずなので、その強みや長所を伸ばしてあげることが大切です。あとは心からやりたい想いがないと続かないので、強い興味や関心も大切。最後は、性格。例えばルーティンワークができないひとは、どう頑張ってもできないから。

──UDS HOTELSが個性を発揮する組織を目指すのはなぜですか。
一つは、UDSはもともと企画の事業から始まった会社なので、会社をどう使って自分の個性を伸ばすか、自分のやりたいことを実現するかの視点を大事にしてきました。さらにチームアップという考え方もあって、短所を直すよりもプロフェッショナル同士の強みを掛け算して成果を大きくしています。
もう一つに、個性を発揮できたら他にはない強みになると思っています。そのひとならではの個性が、これからの時代に求められる。でも、ひとによって違う複雑な個性をどうやって活かすかとなると、ひとの組み合わせを綿密に考えないといけないし、それってかなり面倒くさい。だからこそ、やるべき。
先ほどの落とし物の話でも、例えば配送費を負担してあげた場合に、みんなが同じようにやりだしたらどうなるか考えると、リスクだからやめとこうって話になるんです。
必要なのはスキルではなくマネジメント力だし、知識ではなくスタンス。組織として本気で取り組んでいきたいと思っています。
無人化の先に、ひとは何をするのか。
──個性を発揮するうえで、マネジメント以外の障壁はなにかありますか。
突き詰めればマネジメントです。
「何でもやっていいよ」って言ったらみんな何かをやりだすと思っていたけれど、現場に初めて入った時に分かったのはそうじゃないってこと。面倒くさいとか、やっていいかわからないって理由でみんなやらないんです。
まずは、やりたい想いがある方を採用できるかどうか。そして、想いを育まないといけないです。想いがあるひとを採用しても、マネジメント次第で変わってしまうことがあるから。
──SOKI KANAZAWAでも、メンバーが「今まではやることだけやってきたけど、UDSに入社してから、どうしたらもっと仲間が楽になるか考えるようになった。」と言っていました。
支配人がメンバーの思いを育んでくれた結果だと思います。話の聞き方から、成功のサポートまで含めて素晴らしいマネジメントですよね。
──社内のAI活用でも、マネジメントの質をあげていますよね。
1on1や会議に対するフィードバックをAIにしてもらっています。コミュニケーションのフィードバックって、感情が入るから難しいし、受け手も素直になりづらい。録画データをAIに読み込ませて、客観的にフィードバックしてもらうと受け取りやすいです。
コミュニケーションには量と質のレベルがあって、話す量が偏っていないかと、質は未来の話をちゃんとできているか。話の中で現在と未来の割合には理想の値があるので、数値で可視化して、フィードバックをかけています。それがエンゲージメントに直結するし、個性を生かした働き方をする上で必要になってくると思っています。

──最後に、事業として誰のどんな課題を解決していくのか。ホテルは「泊まる」という価値を提供していますが、無人のホテルでもできる中で、UDS HOTELSはどんな付加価値を出していきますか。
ホテルの仕事は事務作業が多く、予約の管理からコンシェルジュ業務までAI含めたテクノロジーで代替されていきます。空いた余白でどんな価値を生み出せるのかを、会社として探求していかないといけない。
旅先の知らない土地に降りたときに、ゲストの最初の味方になれるのがホテリエだと思っています。私たちにとっては日常でも、ゲストにとっては特別な日であるということを忘れずに、ひとがいることによる「安心・安全」の価値は、変わらず大切にしていきます。
あとはビジョンである「ワクワクするまちづくり」から、まちの体温を上げたり、ゲストを巻き込んだり、過去からヒントを得てかたちにしていきます。ただ泊まるだけじゃなくて、プラスの価値を提供して、ここに来てよかったなって思ってもらいたいですね。
──どんな価値をイメージしていますか。
ホテルが無人でも稼働するようになった時代に、ホテルのひとは何をするのか。例えば、アンテルームであればアートや作家さんの素晴らしさを伝えるのもいいし、その土地のカルチャーの伝承もいいと思います。
UDSは企画・設計施工・運営を三位一体でやっているから、コンセプトは尖らせてくれている。コンセプトとひとの個性とを掛け合わせて、サービスに落とし込んでいきたいです。
UDS HOTELSでは一緒に働くメンバーを募集しています。
興味はあるけどポジションがわからないという方は、まずはこちらから。
出典
※1:Labor market impacts of AI: A new measure and early evidence
