【ショートショート】身バレ鯛茶漬け
DNA解析技術の進歩は目覚ましい。
特殊な溶液に漬けるだけで、生物のありとあらゆる情報が分かるようになった。その溶液が、なぜか驚くほど旨い。最高級の玉露にも勝る香りと味わいだという。
鯛茶漬けにすると絶品だという噂を聞きつけた美食家の男。その目の前に、一杯の椀が置かれていた。男は椀に箸を伸ばした。
口の中に芳醇な香りが広がる。上品な甘み、深いコク、ほのかな磯と玉露の香り。だが次の瞬間、何かが静かに流れ込んできた。
広大な海を無数の兄弟たちと泳ぎ回る。光の筋を追いかけて、深く、浅く、また深く。やがて群れの数は減り、一匹の雄と出会う。岩礁の影で寄り添い、共に泳ぎ、卵を産む。小さな命たちは海へと散っていく。
よろよろと海底を泳ぐ。岩陰の赤い海老に目を留めると、素早くかぶりつく。口内に鋭い痛みが走る。岩陰に逃げようともがくが、勢いよく引き上げられる。眩しい光。苦しい呼吸。キラリと光る金属。そして、暗転。
男はゆっくりと箸を置いた。湯気だけが、静かに立ち上っていた。
終
活造りより食べ辛いですね。
身バレじゃないような気もするけど……そこは華麗にスルーしてください。
田原にかさまの毎週ショートショート【身バレ鯛茶漬け】に参加させて頂きました。
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