ロールモデルなんてないし、いらない。大企業ワーママが気付いた「M字カーブ=悪」の刷り込み
私は新卒で、古き良き日本の大企業(今はあまり言わなくなりましたが、いわゆるSIer)に就職しました。
職種は、一応営業職。当時でいうソリューション営業やコンサル営業で、基本的に飛び込み営業のようなものはなく、特定の顧客と伴走するシステム営業です。
配属は中央官庁をはじめとする、政府系・半官半民のお客様、一丁目一番地をメインに担当する事業部でした。
入社2〜3年目のころ、その事業部にはプロパー社員だけで500〜600人はいたでしょうか。
営業もSEもスタッフもいる大所帯でしたが、そのなかで現場の第一線で営業を続けているママさんは、本当に数えるほどしかいませんでした。
■ 社会が提示する「働く女性のロールモデル」に対する諦め
あるとき、事業部の人材開発・教育担当の発案で、若手女性営業とママさん営業社員の交流会が開かれました。
当時の課題は「女性、特にママや管理職のロールモデルが営業にいないこと」だったからです。(他の事業部に比べても少なかったそう。)
その当時、社内サイトで「ロールモデル」として紹介されている女性陣は、独身か子どものいない方がほとんどでした。
たまに育児中の方がいたとしても、身を粉にして働くいわゆる「超・超・超バリキャリ」タイプばかり。
私の会社だけに留まらず、至るところでそのようなバリバリ働く女性たちが「ロールモデル」としてクローズアップされていたように思います。
もちろん、自分なりに成長したいし、仕事を通じて自分が何かを成し遂げたと思えることはしたい。
けれど、バリバリに仕事をして偉い地位に就きたいわけではないし、結婚や子どもを諦めたり犠牲にしたりしてまで、華々しく目立つ仕事に携わりたいではない――。
同世代 の女性社員たちは「そんなに超バリキャリは自分には無理」「あそこまでなりたいわけじゃない」と話していましたし、私も同じような思いでした。
こういった人しか仕事で「輝く女性」と言われないのであれば、やはり女性には見えないガラスの天井があり、仕事か家庭かをある程度、選択しなくてはいけないということなんだろうか。
私はそんな風に、どこか引いた目で、そしてどこか諦めの気持ちで現実を見ていました。
■ 「ロールモデルなんてない」
その交流会で、お子さんが2人いて営業を続けている女性社員の方の話を聴く機会がありました。
その方は入社3年目のころに事業部を異動し私と同じ部署に来られて、さらに、お互いに事業部内異動を経て今も同じ部署で働いています。
当時は、その方が入社10数年目くらいだったでしょうか。
たぶん、今の私と同じくらいの年齢だったと思います。
彼女が語ったことは、目から鱗のようで、実は当たり前のことでした。
「ロールモデルなんてないよ」
え? と思った私たちに、彼女はさらに続けました。
「ロールモデルなんて、いらないよ」
キョトンとする当時の私たち若手女性社員をおいて、彼女はサバサバとした口調で、その理由を教えてくれました。
一人ひとり、価値観や考え方が違う。その人のルーツも違う。
旦那さんだって、人それぞれ違う。 子どもの個性だって違って当たり前。
住んでいる地域だって、保育園の事情だって、実家や義父母の状況だって全然違う。
そう、考え方、価値観、取り巻く家族の環境が、
バックグラウンドが、フィールドが、みんな違う。
「この人を目指せばいい」というロールモデルなんてたぶん見つからないし、いなくていい。
「自分なりに」「自分らしく」やっていけばいいんだから。
なんて逞しく、頼もしい人なんだろう、と思いました。
とはいえ、「自分なりに自分らしく」働くこと、生きることは、そう簡単ではありません。
けれど、誰かを真似るとか人と比べるのではなく、私は私のやり方で、私と家族のやり方で、これからを地道に紡いでいけばいいのだと、当たり前であるはずのその言葉がストンと腑に落ちたのを覚えています。
■ 雲の中を歩いてきた先輩の背中
その先輩はそれから数年後に課長職に昇格し、今年度は部長級の役職に就かれました。
その間、2人のお子さんは中高一貫校の中学受験で見事第一志望に合格。
会社では部下の女性をしっかりと管理職に引き上げ、ご主人もその間に外資系企業へ転職をして、活躍されているそうです。
母になった今、改めてその方の凄さを実感しています。
私からしてみれば、結果的にめちゃくちゃスーパーウーマンです。
私には絶対に、同じようにはできないし、なれません。
ただ、最近もいろいろと両立や今後のキャリアに関するモヤモヤを会話させてもらったとき、彼女は「すごくわかる!」「同じだった!」と深く共感してくれました。
確かな道をまっすぐ突き進んでいるように見える人でも、同じようなことで悩み、そうやって雲の中を一生懸命歩いてきたのだな、と改めて思いました。
このような頼もしい先輩が身近にいてくれる巡り合わせに、感謝です。
ちなみに。
そんな凄い先輩ですが「週2で夕食はマックだよ」と笑っていたり、医者に健康改善を言われても「無理だからとりあえず薬をちょうだいって言っちゃう」なんてチャーミングなことも言っています笑。
(それはそれで真似できません…)
■ 「M字カーブ」は悪いことじゃないんじゃない?
今は共働きも当たり前と言われる世の中となりました。
女性がキャリアを追うこともどこかでは賞賛され、「一度辞めるなんてもったいない」「正社員を続けること一択だ」なんて声もある時代です。
私が小中学生のとき、社会科や現代社会の授業で「日本は他の先進国に比べて、結婚や出産を機に仕事をやめる人が多い(M字カーブ)」という話を習いました。
当時の私は、なんとなく「M字カーブ=悪」のように捉えていました。
国の「女性が輝く社会」という方針に、どこかで影響(もはや洗脳?!)されていたのかもしれません。
でも、今になって思います。
M字カーブって、そんなに悪いことだったんだろうか? と。
確かに、古い制度や環境、社会的な風潮や親世代などの圧力のせいで「辞めざるを得ない」のは大きな問題です。
けれど、子どもと寄り添うために、自ら選択してキャリアブレイクするという決断は、決して悪いことではありません。
むしろ、自分の意思でそのような選択をできるのは、とても素晴らしいことだと思います。
そういった選択ができる思いだったり、勇気だったり、覚悟だったり、ときに自信だったり……心から尊敬します。
私はなんだかんだで、キャリアにしがみつくことを選んでいる側だから。
■ 心の声に「本当?」と耳を傾ける
働く母になった今、これから結婚や出産を控えている世代にはこう伝えたいです。
「今の時代、正社員(総合職)で働き続けるのは当たり前」
「他の人は仕事も育児もできているのに、自分だけできないなんて」
もしそんな風に自分を追い立てる心の声が聞こえたら、一度立ち止まって「それ、本当に自分の声なの?」としっかり胸に手を当てて考えてみてほしい、と。
価値観や考え方は人それぞれです。
周りの意見や、時代の風潮に無理に流される必要はありません。
自分を卑下する必要もありません。
自分の大事にしたいものは何か、優先したいものは何かを考えて、自分らしく、自分なりに、自信をもって選択していっていいのだと思います。
私は後輩たちに、何か立派な姿を見せられるような人間ではありません。
でも、あの日の先輩が私を救ってくれたように、「ロールモデルなんていらないよ」と笑いながら、自分と家族にとって心地いい歩幅で地道に歩く不格好な背中くらいは、そっと見せていけたらいいなと思っています。
ちょっとだけ。強いて言うのであれば。
本心に背いて、以下のような働きかたをするのはやめましょう!
⚫︎子どもを寝かしつけたあと、「仕事しなきゃ」と夜な夜なPCを開くこと。
⚫︎子どもの体調不良で休んでいるときにさえ、「この電話と資料作成だけ」と無理をすること。
⚫︎せっかくの休日に焦って、「溜まったタスクを月曜までに片付けよう」とサービス残業をすること。
現役のみなさんも、無理はしないようにしましょうね。
心身の健康が第一です。
みなさん今日も本当におつかれさまです。
