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家を「現金一括」で購入してわかった本当のメリット・デメリット

2015年、私は自宅を「現金一括」で購入しました。

なぜ多くの方が利用する住宅ローンを使わなかったのか。
理由は非常にシンプルで、「長期間にわたる借金を背負うプレッシャーから逃れ、精神的な安定を得たかったから」です。
毎月の返済に追われるよりも、手元の資金で支払いを済ませて、晴れて「自分の家」として安心して暮らすことを最優先しました。

また、駅近で平地、静穏な住環境という、絶対に譲れない条件を満たす理想的な物件に出会えたことも、一括購入の決断を後押ししました。

あれから約10年。世の中の経済状況は劇的に変わり、私自身も資産形成の知識を深めました。

今の視点で冷静に振り返ると、当時は最良と信じた決断にも「手痛い機会損失」という影の部分があったことに気づきます。
一方で、負債がないことによる「圧倒的な精神的余裕」が、私の人生にもたらした光も確実に存在します。

本記事では、家を現金一括で購入して10年暮らしたからこそわかる、リアルな光と影(メリットとデメリット)について率直にお伝えしたいと思います。


1. 【デメリット】手痛い「機会損失」と税制優遇の取りこぼし

今の私がタイムマシンに乗って2015年の自分に会えるなら、「絶対にやめておけ。フルローンを組め」と説教するでしょう。

現金一括購入によるデメリットは、一言で言えば「お金の最適化が全くできていなかった」ことに尽きます。具体的には、次の2つの大きな損失を生んでしまいました。

① 住宅ローン控除という「ボーナス」を逃した

私が家を購入した2015年当時、住宅ローンの変動金利はすでに1%を大きく割り込んでいました。
歴史的な超低金利時代の真っ只中です。

そして、それ以上に大きかったのが「住宅ローン控除」の存在です。
当時の制度では、年末のローン残高の1%(最大40万円程度)が所得税や住民税から10年間にわたって控除されるという、非常に手厚い優遇がありました。

つまり、「1%未満の金利で借金をしているのに、国から1%分の税金が戻ってくる」という逆転現象が起きていたのです。
ローンを借りている方が実質的に得をする、いわばボーナスステージです。

私は「借金をしたくない」という一心で現金一括払いを選びましたが、結果として、本来なら受け取れていたはずの数百万円規模の税制メリットを自ら放棄してしまったことになります。

② まとまった資金を拘束された「最大の機会損失」

税制優遇を逃したことも痛いですが、それ以上に重い事実が「投資への機会損失」です。
今振り返って最も後悔しているのはこの点です。

家を現金一括で買うということは、数千万円という莫大なキャッシュを一気に「流動性の低い不動産」に変換することを意味します。
ポンと支払った瞬間、手元からまとまった資金が消え去りました。

もしあの時、超低金利で住宅ローンを組み、手元に残った数千万円をS&P500や全世界株式(オルカン)などのインデックス・ファンドに投資していたら、一体どうなっていたでしょうか。

ご存知の通り、2015年から現在に至るまでの約10年間、世界の株式市場はコロナショック等の下落を乗り越え、力強く成長しました。近年の円安効果も相まって、当時の数千万円は、複利の力で1.5倍から2倍近くに膨れ上がっていた可能性が極めて高いのです。

住宅ローンの低い利息(年0.5〜1%程度)を払いながらでも、投資の期待リターン(年5〜7%程度)がそれをはるかに上回るため、その差額(イールドギャップ)だけでローン残高以上の資産を築けていたかもしれません。

「借金ゼロ」という安心感を優先した代償として、私は「お金に働いてもらって資産を最大化する」という、最大のチャンスを逃してしまったのです。
経済的合理性だけで評価すれば、この現金一括購入は「悪手」だったと言わざるを得ません。

2. 【メリット】何物にも代えがたい「圧倒的な精神的余裕」

前章では「投資の機会損失」という厳しい現実を語りました。エクセルに数字を打ち込んで計算すれば、私の決断は明らかに「失敗」です。

しかし、人生の幸福度は資産額の多寡だけで決まるものではありません。
現金一括購入がもたらしてくれた、数字では決して測れない最大のメリット、それが「圧倒的な精神的余裕」です。

① 「固定費の呪縛」からの完全な解放

毎月、口座から何万円、何十万円という住宅ローンが自動的に引き落とされていく。
もし病気で働けなくなったら? 会社の業績が悪化して給料が下がったら?
……ローンを抱えるということは、そうした見えないプレッシャーと数十年にわたって付き合い続けるということです。

私には現在、そのプレッシャーが一切ありません。

毎月の住居費としてかかっているのは、年間の固定資産税と、将来の修繕(メンテナンス)に備えた積み立てくらいです。
一般的な賃貸やローン返済に比べれば、毎月の絶対的な生活コスト(固定費)は劇的に低く抑えられています。

この「最悪、今の収入が途絶えても、雨風をしのぐ家と当面の生活費はある」という絶対的な安心感は、何物にも代えがたい防具となりました。

「住宅ローンのために、嫌な仕事でも理不尽に耐えて働き続けなければならない」という呪縛がないため、キャリアの選択肢が広がり、結果的に「自分らしい働き方」や「サイドFIRE(セミリタイア)」といった生き方を現実的に考えられるようになったのです。

② 好立地がもたらす「静穏な生活」の価値

また、現金一括で購入する際、妥協せずに「駅近」「平地」という好立地を選んだことも、今の生活の質(QOL)を極めて高く保ってくれています。

日々の買い物や移動にストレスがかからない「平地の駅近」でありながら、一歩家に入れば静穏な空間が広がっている。この環境を手に入れられたのは大きかったです。

もしギリギリのローンを組んで日々の生活に余裕がなければ、せっかくの良い家であっても心からくつろぐことはできなかったかもしれません。
しかし、借金がない状態だからこそ、この静穏な環境を100%味わい尽くすことができています。

朝、コーヒーを淹れて静かな部屋で過ごす時間。
休日に近所を散歩して感じる穏やかな空気。
こうしたストレスのない住環境は、私の心身の健康を保ち、結果的に日々の作業や創作活動へのモチベーションにも大きくプラスに働いています。

数千万円の機会損失。
それは確かに痛い事実です。
しかし、それは裏を返せば「圧倒的な心の平穏と、自由な人生の選択肢をキャッシュで買った」とも言えます。
この10年間の穏やかな日々を思えば、あながち間違った買い物ではなかったと、今なら胸を張って言えるのです。

3. 【10年後の答え合わせ】結果論としての資産価値上昇

現金一括購入による「機会損失」と「精神的余裕」。
この2つで私の振り返りは終わるはずでした。
しかし、ここ数年の急激な社会情勢の変化が、想定外の「3つ目の結果」をもたらしました。

それが、自宅の資産価値の上昇です。

私が家を買った2015年頃から現在に至るまでの約10年間で、日本の住宅市場は激変しました。
ウッドショックや世界的なインフレを背景とした建築費用の高騰、そして最近の金利上昇の動きなどにより、不動産価格はかつてない水準にまで押し上げられています。

私は「終の棲家」として購入したため、売却して利益を得る(キャピタルゲインを狙う)ような投資目的は一切ありませんでした。

しかし、いざ現在の相場で自宅の査定額を調べてみると、なんと10年前に購入した時の価格を上回っているのです。

この価格上昇を牽引したのは、間違いなく購入時にこだわった「駅近」「平地」という好立地の条件です。
どんなに建物が古くなっても、利便性の高い土地の価値は落ちにくいどころか、昨今の市況ではむしろプレミアムがつく状況になっています。

とはいえ、これは私の先見の明があったわけではありません。あくまで「たまたま時代がインフレに傾き、好立地の現物資産(不動産)を持っていたことがインフレヘッジになった」という完全な結果論です。

もし、価格の安さや広さだけを優先して、郊外の駅から遠い不便な場所を選んでいたら、今の資産価値は大きく目減りしていたでしょう。

「現金一括か、ローンか」という支払い方法の議論とは少しズレますが、この10年での答え合わせとして言えるのは、「不動産において『立地』はすべてを凌駕する」という基本原則の正しさです。

株式投資での複利効果(機会損失)は逃しましたが、結果的に「家」という現物資産が価値を保ち、むしろプラスを生み出してくれている。
この想定外の恩恵もまた、私の「精神的余裕」をさらに強固なものにしてくれています。

4. まとめ:結局「現金一括購入」は正解だったのか?

ここまで、私が家を現金一括で購入したことによる「光と影」、そして「結果論」について赤裸々に語ってきました。

では、総括として「現金一括購入は正解だったのか?」と問われれば、私の答えはこうなります。

経済的な合理性(数字)だけで見れば「不正解」。

しかし、私の人生トータルで見れば、間違いなく「大正解」だった。

Excelに数字を打ち込んで計算すれば、超低金利で住宅ローンを組み、手元資金をインデックス投資に回すのが圧倒的に「正解」です。
資産最大化を狙うなら、現金一括払いは絶対におすすめしません。

しかし、私たち人間は感情で生きる生き物です。
パーソナルファイナンス(個人の資産管理)において、「理論上の最適解」が、必ずしも「その人が一番幸せになれる選択」とは限らないのです。

私にとって一番価値があったのは、「資産を1円でも多く増やすこと」ではなく、「借金という見えない重圧から解放され、心安らかに毎日を生きること」でした。

ローンがないことで得られた絶対的な安心感は、私の仕事に対するスタンスを柔軟にし、ストレスフリーな生活をもたらしてくれました。
結果的に好立地のおかげで資産価値も保たれていますが、それはあくまでおまけに過ぎません。
あの時、数千万円というお金と引き換えに「何物にも代えがたい心の平穏」を買ったからこそ、今の豊かなライフスタイルがあるのだと確信しています。

これから家を買おうとしている方に、最後にお伝えしたいことがあります。

SNSやネット上には「家はローンで買うべき!」「現金一括なんて情弱だ!」というような、経済合理性に偏った声が溢れています。
確かに数字上はそうなのですが、それに振り回されすぎないでください。

「お金の効率」を最優先してローンと投資を組み合わせるのが心地よい人もいれば、私のように「借金ゼロ」という状態が一番パフォーマンスを発揮できる人もいます。

大切なのは、「自分はどちらのタイプなのか」という自身の価値観と深く向き合うことです。

どちらを選んでも、一長一短があります。だからこそ、周りの声や一般論ではなく、ご自身(そしてご家族)が「夜、ぐっすりと安心して眠れるのはどちらか」という基準で選んでみてください。

私のこの少し不器用な「現金一括購入」の体験談が、皆さんの悔いのない家づくりの、ひとつの参考になれば心から嬉しく思います。


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