【プラトン中期対話篇】まとめ
――プラトンが「本当に語りたかったこと」
プラトン哲学は、
一般に3つの時期に分けられます。
* 初期対話篇
* 中期対話篇
* 後期対話篇
このうち、
中期対話篇は、
最も有名で、
最も「プラトンらしい」時期です。
なぜならここで、
* イデア論
* 魂論
* 愛の哲学
* 知識論
* 哲人政治
など、
後世に巨大な影響を与える思想が、
一気に展開されるからです。
もし初期対話篇が、
「人は本当に知っているのか」
を問い続ける時代だったなら、
中期対話篇は、
「では、本当に存在するものとは何か」
を語り始める時代でした。

⓪初期対話篇から中期対話篇へ
初期対話篇のソクラテスは、
ひたすら問い続けます。
「勇気とは何か」
「正義とは何か」
「徳とは何か」
けれど、
議論は何度も行き詰まる。
最後には、
「よくわからない」
(「行き詰まり」アポリアと呼ばれる状態)
となることも多い。
しかしプラトンは、
次第に考え始めます。
もし世の中の意見が、
全部バラバラなら。
そもそも、
「正しさ」そのものは、
どこにあるのか。
ここで登場するのが、
有名なイデア論です。
①プラトン全集第9巻『メノン』
「人は徳を教えられるのか」
という問いから始まる作品です。
ここでは、
有名な「想起説」が登場します。
人間は、
完全にゼロから学ぶのではない。
魂は、
もともと真理を知っていて、
学ぶとは、
それを思い出すことだ。
という考えです。
中期対話篇は、
ここから一気に
「見えない世界」へ踏み込み始めます。
②プラトン全集第1巻『パイドン』
ソクラテス最期の日を描く作品。
魂の不死が中心テーマです。
ここでソクラテスは、
「哲学とは死の練習である」
と語ります。
人間は、
欲望や感覚に引っ張られる。
しかし哲学者は、
そこから離れ、
真理へ近づこうとする。
つまり哲学とは、
「見える世界」から、
「本当にあるもの」へ向かう営みなのです。
③プラトン全集第5巻『饗宴』
愛について語る作品。
ただし、
単なる恋愛論ではありません。
最初は、
美しい人を愛する。
しかしそこから、
* 美しい身体
* 美しい魂
* 美しい知
* 美そのもの
へと上昇していく。
愛とは、
人間をより高い世界へ導く力だ、
とプラトンは考えました。
④プラトン全集第5巻『パイドロス』
かなり異色の作品です。
恋愛、
魂、
狂気、
修辞学、
そして「言葉」が語られる。
特に有名なのが、
文字批判です。
プラトンは、
「文字は知恵を与えない。
“知っている気”にさせるだけだ」
と警告します。
2500年前とは思えないほど、
現代SNS時代に刺さる話です。
⑤プラトン全集第2巻『テアイテトス』
「知識とは何か」
を徹底的に問い続ける作品。
知識とは感覚なのか。
正しい判断なのか。
説明できることなのか。
現代哲学にもつながる、
非常に重要な作品です。
ただし、
かなり難しい。
読むと、
頭がぐるぐるします。
⑥プラトン全集第2巻『クラテュロス』
「言葉は、
本当に“真実”を表しているのか」
をテーマにした作品です。
名前と言葉について、
延々と議論する、
かなり独特な対話篇。
たとえば、
「“勇気”という言葉は、
本当に勇気の本質を表しているのか」
という問題が扱われます。
言葉は、
自然に正しい名前になるのか。
それとも、
人間が勝手に決めているだけなのか。
プラトンはここで、
単なる“言葉遊び”をしているわけではありません。
なぜなら、
もし言葉が曖昧なら、
人間は、
真理そのものを、
正しく捉えられなくなるからです。
つまり『クラテュロス』は、
* 言葉
* 真理
* 認識
の関係を探る作品なのです。
後の『テアイテトス』や、
さらに現代哲学の
「言語哲学」にもつながる重要作です。
⑦プラトン全集第6巻『アルキビアデスⅠ』
「人は、
まず自分自身を知らなければならない」
というテーマの作品。
若き政治家アルキビアデスに対し、
ソクラテスが問い続けます。
「君は、
国家を導こうとしている。
では、
そもそも“自分”を知っているのか」
ここで重要になるのが、
有名な
「汝自身を知れ」
の思想です。
しかしソクラテスは、
単なる自己分析の話はしません。
本当の“自分”とは、
身体なのか。
地位なのか。
名声なのか。
それとも、
“魂”なのか。
ソクラテスは、
人間の本質は魂にある、
と考えます。
だから、
政治を行う前に、
まず魂を正しく整えなければならない。
ここには、
後の『国家』につながる思想が、
すでに現れています。
つまり『アルキビアデスⅠ』は、
* 自己認識
* 魂
* 政治
* 哲学者教育
の入口になる作品なのです。
⑥プラトン全集第4巻『パルメニデス』
おそらく、
中期最大の難所。
若いソクラテスが、
哲学界のラスボス、
パルメニデスに詰められる作品です。
しかもここで、
プラトン自身が、
イデア論の弱点を攻撃し始める。
つまりプラトンは、
自分の思想を、
自分で疑い始めるのです。
そして『国家』へ
ここまでの中期対話篇で、
プラトンは、
* 知識
* 魂
* 愛
* 真理
* イデア
を語ってきました。
では、
もし本当に
「善そのもの」を知る人間がいるなら。
その人間は、
どう社会を導くべきなのか。
ここで、
中期対話篇最大の作品、
『国家』が登場します。

⑦プラトン全集第11巻『国家』
『国家』は、
単なる政治論ではありません。
プラトン哲学の総決算です。
ここで有名なのが、
「哲学者が王になるべきだ」
という思想。
なぜなら、
普通の人は、
感情や利益に流される。
しかし哲学者は、
「善そのもの」を見ようとするから。
ここで登場するのが、
有名な洞窟の比喩です。
人々は、
壁に映る影を現実だと思い込んでいる。
しかし、
外には太陽がある。
真実を見た者は、
再び洞窟へ戻り、
人々を導かなければならない。
これは単なる政治論ではありません。
「人はどう生きるべきか」
という問いそのものです。
❶正義とは何か 第1巻
❷理想国家はなぜ必要か 第2巻前半
❸国家と魂 第2巻後半〜第4巻
❹哲人王 第5巻
❺洞窟の比喩 第6〜7巻
❻国家はどう壊れるか 第8〜9巻
❼なぜ詩人は追放されたのか 第10巻
【おわりに】
初期対話篇で、
ソクラテスは問い続けました。
中期対話篇で、
プラトンは、
ついに「答え」を語り始めます。
そして『国家』で、
その思想は、
国家そのものを設計するところまで進んだ。
だから2500年経った今でも、
人類はまだ、
プラトンと議論を続けています。
「本当に正しいものは存在するのか」
その問いは、
まだ終わっていないのかもしれません。

