【ギリシア哲学】『ゴルギアス』
〖はじめに〗
前回の記事では
ソフィストの代表
プロタゴラス
を紹介しました。
彼はこう言いました。
「人間は万物の尺度である」
つまり
・真理は人によって変わる
・判断の基準は人間
という思想です。
この考えは
自然の哲学 → 人間の哲学
という
哲学の大きな転換を生みました。
しかしソフィストの思想は
ここで終わりません。
この考えを
さらに極端に押し進めた人物がいます。
それが
『ゴルギアス』
です。
彼は次のように主張しました。
・何も存在しない
・存在しても知ることはできない
・知っても伝えることはできない
非常に過激な議論ですが、
彼が示そうとしたのは
「言葉の力」
でした。

① ゴルギアスとは誰か
ゴルギアスは
シチリア島レオンティノイ出身の
ソフィストです。
当時のアテネでは
・政治
・裁判
の多くが
言葉による議論で決まっていました。
そのため
人を説得する技術が重要でした。
ゴルギアスは
その弁論術で有名になりました。
また彼は、
聴衆の質問に即興で答えるという
パフォーマンスで聴衆の心を掴みました。

②言葉の美しさ
③説得力
芸術のような演説だったと言われています。
② 三つの虚無命題
ゴルギアスの有名な主張は
次の三つです。
① 何も存在しない
② 存在しても
人間はそれを知ることができない
③ 知っても
他人に伝えることはできない
この三命題は
・世界
・人間の理解
・言葉
の間には
大きなズレがある
ことを示しています。
つまり私たちは
言葉を通してしか世界を理解できない
という問題です。
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③ 言葉の力
ゴルギアスが強調したのは
「言葉の力」でした。
彼はこう言います。
「言葉は魂を動かす」
言葉は
・喜びを生む
・恐怖を生む
・人を説得する
つまり
人の心を動かす力を
持っているのです。
これは現代の広告や政治演説にも見られる
言葉の影響力に近いものです。

④ 『ヘレネ讃』
ゴルギアスの有名な作品に
『ヘレネ讃』があります。
ヘレネは
スパルタ王メネラオスの妻でしたが、
トロイア王子パリスと共にトロイアへ行ったことで
トロイア戦争の原因となった女性とされています。
そのため彼女は
戦争を引き起こした人物として
非難されてきました。
しかしゴルギアスは
彼女を弁護します。
ヘレネがトロイアへ行った理由として
次の4つの可能性を挙げました。
・神の意思
・力による誘拐
・愛
・言葉による説得
特に重要なのが
言葉による説得です。
もし言葉によって
人の心が強く動かされたなら、
その行動の原因は言葉にある。

言葉は人の魂を動かす力を持つ
ことを示そうとしたのです。
⑤ ソクラテスとの対立
ソフィストの思想は
後に ソクラテス によって批判されます。
両者の違いは次の通りです。
ソフィスト
・説得の技術
ソクラテス
・真理の探求
ソクラテスは
「説得ではなく
真理を探求すべき」
と考えました。
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■ プラトンの対話篇
この対立は
プラトンの対話篇
『ゴルギアス』 に描かれています。
そこでソクラテスは
弁論術をこう批判しました。
「弁論術は真理を教える技術ではなく
人を気持ちよくさせる技術にすぎない」
つまり弁論術は
知識ではなく説得の技術
だという批判です。
この議論は
哲学と弁論の対立を示すものとして
哲学史で有名です。
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⑥ 哲学史の意味
ゴルギアスは
「言葉は世界をどこまで表せるのか」
という問題を提示しました。
この問題は後の
言語哲学へとつながっていきます。

