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卑小な自己が打ち砕かれて ~京極派スペース抄~

「心のままにことばの匂ひゆく」ように歌を詠む――鎌倉・南北朝時代の和歌文脈において異色であったこの歌論を、京極派という和歌グループは選択しました。
そんな京極派について、X(旧Twitter)にて毎週お話しています。

この記事は、そんな京極派スペースの音声を読み物として整えた京極派スペーステキスト版の一部を抜粋したものです。



2026年2月14日放送スペース「立春直後の京極派和歌(風雅集)」、2月25日テキスト化した「春を見ていなかった天子様」より。

立春直後を詠んだ『風雅集』の京極派和歌をご紹介しながら、伏見院の春の歌の変化についてお話したあたりを、今回テキスト版から抜粋しご紹介します。


全文を読みたい方はこちら(テキスト版)
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卑小な自己が打ち砕かれて ~京極派スペース抄~

伏見院は元々春がお好きだったし、自然を愛していらした方ですけど、
政変よりも前の春の歌というのは、とても観念的で、春というものをふんわりざっくり捉えて、春の気分に寄りかかってなんとなく心を表したという感じ。

別にそれが悪いわけじゃないんだけど、やっぱり大掴みだなって思うんですよ。

私たちは京極派の完成形を知っているので、その目で見ると、政変前の伏見院の春の歌はとても大づかみで、
春を見ているようで、実際そんなに春を見ていないんだな、この人は」
という感じなんですね。

恋愛でよくあるやつです。
「〇〇ちゃんは俺のことが好きなんじゃなくて、〇〇ちゃんのことを好いている俺のことが好きなんだ」みたいなやつ。

これは確か漫画の『NANA』にありましたね。
「奈々は俺じゃなくて、奈々を好いている俺のことが好きなんだ」みたいなことを章司というキャラクターが言っていましたけど、それを連想させる歌の詠み方です。

とても綺麗な心の人で、春を好いていて、自然を好いていて、
「慈愛に満ちた目線で自然を見ている自認なんだろうな。でも実はとても雑にしか見ていない」
という部分が、政変より前の伏見院の春の歌には見えます。

悪くはないんだけどね。もうちょっと前の時代の人の歌と比べたら、よっぽど整っているほうだと思うし。
でもやっぱりもう中世で、南北朝時代の手前ですよね。鎌倉時代の終わりの、色々と世相も騒がしい時期の歌として読むと、「それにしては悠長だな」という気持ちにはやっぱりなる。
そういう歌をいくつか詠んでいました。


その人が政変で、一旦奈落の底に突き落とされて。
傍から見たら奈落の底じゃないですけど、気持ちの上では奈落の底に突き落とされて、そして世界を見直す。

おそらく、元々自分が春を、自然をどのように見ていたか、ということに気づいたんですよね。
「あ、私は見たいように見ていただけだ」
「本当のこの春の姿、春の美しさを、何も見ていなかった。何も見えていなかった」
ということに気づいた。

政変を経て、卑小な自己が打ち砕かれて、
「それでも私は生きている。それでも生きている私の目が春を捉えた時、その春はどのように見えたか? 」
どちらの皇統の天皇が在位していようが関係なく、つつがなく運行されるこの春の尊さ、愛おしさ、ということにその段階で初めて気づいたんだろうな、
と正安の政変後の歌から想像されるわけです。


「京極派スペース抄」は以上です。ありがとうございました。


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京極派スペース抄


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この記事を書いた人

photo by ミカアンドロイド

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