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北海道の旅#29|清里から層雲峡キャンプ場で車中泊ワーケーション

2024年7月5日。

清里オートキャンプ場で目が覚めたのは、朝の3時40分だった。

早い。いくらなんでも早い。

けれど北海道の夏は、こちらの都合などおかまいなしに朝が来る。
外はすでに明るく、鳥の声がして、空気はひんやりしている。

前回の話はこちらです。

このシリーズのまとめ記事はこちらになります。
関西から北海道へ通い、車中泊で北海道ワーケーションを実践中の記録。
北海道の旅日記2024



朝のさくらの滝で、サクラマスの本気を見る

大阪なら、まだ夜の延長戦みたいな時間である。
しかしここは北海道。
朝の開始ボタンが、少しフライング気味に押される。

この日は、清里から北見を経由し、層雲峡まで向かう一日。

車中泊旅のいいところは、だいたいの予定で動けることだ。
寄りたければ寄る。疲れたら休む。
お腹が空いたらセイコーマートを探す。

北海道の旅での、この「ゆるい機動力」をとても大事にしている。

6時15分、清里オートキャンプ場を出発した。

まず向かったのは、さくらの滝
ここでは、サクラマスが滝を越えようとジャンプする姿を見ることができる。

サクラマスの滝登りが見れる。

到着したのは6時50分ごろ。
早朝だから一番乗りかと思っていたら、すでに観光客が何組かいた。

みんな早い。
北海道の朝に鍛えられているのかもしれない。

滝そのものは大きすぎるわけではない。
けれど、そこを何度も何度も魚が飛び越えようとする姿には、妙な迫力がある。

水の流れに押し戻されても、また跳ぶ。
届かなくても、また跳ぶ。

サクラマスにとっては、ただの本能なのかもしれない。
でも人間は勝手な生き物なので、そこに人生を重ねてしまう。

届かないかもしれない。
でも跳ぶ。また跳ぶ。

朝から、ずいぶん濃いものを見てしまった。

しかも、このあたりは電波が入りにくい。スマホが沈黙する。

普段なら少し不安になるところだが、この場所ではそれがむしろよかった。
ただ水の音と、魚が跳ねる気配だけがある。

ノマドワークをしていると、どこでもつながることが便利だと思いがちだ。
でも、ときどきは「つながらない場所」に連れて行かれることも、旅の大事な仕事なのかもしれない。

神の子池の青は、少し現実離れしていた

次に向かったのは、神の子池

名前からして、すでに強い。
普通の池ではない感じが、駐車場に着く前から漂っている。

実際に歩いて池の前に立つと、想像以上だった。

水が青い。
しかも、ただの青ではない。

角度によって表情が変わる。

絵の具を落としたような青でもなく、観光ポスター用に盛った青でもない。
静かで、深くて、底まで見えているのに、どこか現実感がない青。

池の底には倒木が沈んでいる。
水は澄み切っていて、その木の一本一本が見える。

風景として美しいのはもちろんだが、それ以上に「ここは何かが違う」と感じる場所だった。

朝の光が差し込み、水面が静かに光る。
周囲には人の気配が少なく、鳥の声と木々のざわめきだけがある。

しばらく池の前に立っていると、日常の細かいことが少し遠くなる。

仕事のことや、予定のこと。そして、大阪に戻ってからのあれこれ。

そういうものが、青い水の中に一度沈んでいくような感覚があった。

道の駅とセコマで、旅の現実に戻る

神秘の池を出たあとは、現実に戻る。

つまり、トイレと朝食である。

小清水町のセブンイレブンに立ち寄り、少し食べる。
その後、網走方面で給油。
軽バンの旅では、燃料の残り具合も立派な旅のテーマになる。

北海道は広い。
「次のガソリンスタンドでいいか」と思っていると、その次がなかなか来ないことがある。

軽バンで車中泊しながら旅をしていると、こういう小さな判断の積み重ねが大事になる。

派手ではない。
けれど、こういうことこそ旅の土台だ。

その後、道の駅ノンキーランドひがしもことへ。

ここでは、生どら焼きや地元のお菓子などを見て回った。
北海道の道の駅は、油断するとすぐ買いたいものが増える。

「これは旅の思い出だから」
「これは地元の味だから」
「これは今しか買えないかもしれないから」

自然と手が伸びる。

そうやって、自分に対する説得材料が次々と生まれる。
旅先の財布は、やや判断力が落ちる。

北見でラグビー合宿の気配に触れる

昼ごろには、北見モイワスポーツワールドに到着した。

ここはラグビーやサッカーなどの合宿でも使われる施設で、広い芝生のグラウンドがある。

北海道の合宿地というだけで、どこか特別な感じがする。
本州の夏の暑さから離れ、広い空の下で練習する。

学生時代にラグビーに関わっていたこともあり、こういう場所に来ると少し気持ちが戻る。

広い芝のグランド。

施設内には、同志社大学や立命館大学のラグビー部のペナントも飾られていた。

こういうものを見ると、ただの観光地とは違う温度がある。
ここで汗を流した人たちがいて、声を出して、走って、食べて、寝て、また練習したのだろう。

グラウンドは静かだったが、その静けさの奥に、夏合宿の残像みたいなものがあった。

昼食は施設内の食堂で中華飯とアイスコーヒー。

旅先で食べる中華飯というのは、妙に頼もしい。
観光グルメというより、午後も移動するための燃料である。

北海道の自然に感動しながらも、体はしっかり炭水化物を求めている。
人間は神秘だけでは走れない。

温根湯で、巨大な鳩時計と山の水族館を見る

北見を出て、道の駅おんねゆ温泉へ向かった。

ここには、世界一の鳩時計がある。

世界一の鳩時計。
文字だけで、もう少し面白い。

世界一の鳩時計。

実際に見ると、かなり大きい。
鳩時計というより、もはや建造物である。

家の壁にかかっているかわいい時計を想像していると、スケール感で裏切られる。
鳩もここまで大きく扱われると、なかなかの出世である。

鳩時計の内部

その隣には、山の水族館がある。

海の水族館ではなく、山の水族館。
北海道の川や淡水魚をテーマにした、コンパクトだけど面白い施設だった。

展示は派手すぎないが、工夫されている。
水の流れや冬の川の様子など、北海道の自然を小さな空間で感じられる。

こういう場所は、車旅と相性がいい。

大きな観光地を目指して行くというより、移動の途中で見つけて立ち寄る。
そして思ったよりよかった、となる。

北海道の旅には、この「思ったよりよかった」が多い。

塩別つるつる温泉で、体も気持ちもほどける

次に立ち寄ったのは、塩別つるつる温泉

名前がいい。
もう効能を説明している。

つるつる温泉。
これでお湯がギシギシしていたら、かなり問題だが、ちゃんと名前通りだった。

湯に入ると、肌がすべすべする。
長距離運転で固まった体が、じわっとほどけていく。

露天風呂では、木々の緑と空気の涼しさを感じながら、しばらく何も考えずに過ごした。

石北峠を越えて、層雲峡へ

温泉のあとは、石北峠を越えて層雲峡へ向かう。

途中、水芭蕉の群落地にも立ち寄った。
予定していたというより、看板を見つけて少し寄ってみた感じだ。

水芭蕉

こういう寄り道ができるのも、車旅のよさである。

石北峠に向かう道は、だんだん山深くなっていく。
標高が上がり、空気が変わる。
窓の外には森が続き、北海道の大きさをまた思い知らされる。

石北峠

帯広を拠点にして北海道を旅するようになってから、道東や大雪山系の距離感が少しずつ体に入ってきた。

地図で見る北海道と、実際に軽バンで走る北海道は違う。

地図では線でつながっている。
でも実際には、峠があり、森があり、ガソリンの残量があり、トイレのタイミングがある。

旅は、線ではなく、身体で進むものなのだと思う。

層雲峡の大函と、流星の滝、銀河の滝

15時半ごろ、層雲峡の大函に到着した。

ここは、石狩川が長い年月をかけて削り出した峡谷で、切り立った岩肌が迫力を持って迫ってくる。

層雲峡の大函

神の子池の静かな青とは、またまったく違う自然の顔だ。

朝は水の透明さに見とれ、午後は岩の荒々しさに圧倒される。
同じ北海道でも、場所によって表情がまるで違う。

その後、流星の滝と銀河の滝へ。

流星の滝は、力強くまっすぐ落ちる。
銀河の滝は、細く繊細に流れる。

並んでいるのに、性格が違う。
夫婦滝と呼ばれるのも、なんとなくわかる。

層雲峡オートキャンプ場で、シンプル車中泊

夕方、層雲峡オートキャンプ場に到着した。

この日の寝床は、白いハイゼットカーゴ。
北海道で購入した、車中泊旅の相棒である。

受付を済ませ、車を停め、寝る準備をする。

この日は翌朝も早く動く予定だったので、食事はシンプルにした。
ノンアルコールビール、蒸し鶏春雨サラダ、つぶ貝、叉焼、おにぎり。

片付けが楽で、すぐ寝られる。
これが車中泊旅ではかなり大事だ。

ただ、近くではソロキャンプの人たちが、タープやテントをきれいに設営し、BBQを楽しんでいた。

いい匂いがする。
かなりいい匂いがする。

こちらはおにぎりと惣菜。
あちらは炭火の香り。

少しだけ、負けた気がした。

「コンロと網焼きセットくらい持ってきてもよかったかな」

そう思ったが、翌朝の撤収を考えると、やはり今回はこれでよかったのだろう。

旅には、豪華にする日と、軽く済ませる日がある。この日は後者だった。

でも、山に囲まれたキャンプ場で、車の中から外の空気を感じながら食べる夕食は、それだけで十分に旅の味がした。

旅は、目的地よりも途中で育つ

この日は、清里から層雲峡まで移動した。

さくらの滝でサクラマスの跳躍を見て、神の子池の青に黙り、道の駅で現実に戻り、北見でラグビー合宿の気配に触れ、温泉で体をほどき、石北峠を越え、層雲峡の滝に圧倒された。

一日を振り返ると、ずいぶん移動した。
でも、不思議と「移動ばかりだった」という感じはしない。

むしろ、移動の途中にこそ、旅の実感があった。

この日の北海道は、よく走り、よく寄り道し、そして少し仕事をした一日だった。

そして最後は、層雲峡の山の中で車中泊。

明日の朝も、きっと早い。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

次回の話はこちらです。

書いている人はこちらです。
関西から北海道へ通いながら、車中泊で北海道ワーケーションを実践しています。


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