八重山諸島の旅#4|小浜島観光 電動自転車で巡る展望台と絶景ビーチ
2025年5月13日
旅の最終日は、朝から少し浮かれていた。
石垣島のホテルで目が覚めたのは6時半。前日までの流れを思えば、そろそろ帰りを意識しはじめる時間帯である。
だが、この日はまだ終わらない。最終日の午前は、小浜島へ渡る予定にしていた。スムージーを作り、前日に仕込んでおいた玉子スパムおにぎりで朝食を済ませる。さらにもう一杯スムージーを飲む。
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最終日だからという理由で、朝から泡盛の白百合を炭酸で少しだけ割って飲んでいる。ほんの少しだけである。そういう小さな景気づけも、旅の終盤には許される気がする。
8時すぎにチェックアウトし、フェリー乗り場へ向かった。

小浜島往復の切符を買い、荷物を預け、玉子スパムおにぎりとさんぴん茶を調達する。8時45分の船に乗るころには、空はすっかり快晴であった。旅のあいだ、天気はずっと完璧だったわけではない。
だからこそ、この日の青空には気分を持ち上げる力があった。空が晴れるだけで、同じ海でも色がまるで違って見える。南の島では、その変化がとくに大きい。
9時半すぎ、小浜島に到着した。

島に着くと、まずレンタサイクル店「結ぶ」で電動自転車を借りた。3時間で2台。こういう島は、車ではなく自転車くらいの速度がちょうどよい。
風や匂いを感じられて、止まりたい場所でふっと止まれる。小浜島のような景色の島では、速く移動しすぎないこと自体が観光のコツなのかもしれない。

最初に向かったのは、大岳展望台である。
10時すぎに到着し、250段の階段を上る。数字で見るとそれほどでもない気がするが、実際に上るとそこそこ効く。

だが、その先の景色はやはりよい。展望台では、3人で来ていた家族と写真を撮り合った。
こういう、ほんの少しの交流が旅の記憶に残る。名前も知らないまま別れるのだが、その場ではちゃんと同じ景色を共有している。その軽さがよい。

そこからニシノハマへ向かった。
10時25分に着くと、海の色が見事であった。天気もよく、膝まで海につかって、しばらく何も言わずに過ごす。

旅の中には、感想を言わない時間というのがある。むしろ、言葉にしないほうがよい景色もある。ニシノハマは、そういう場所であった。
小浜島観光といえば展望台やドラマのロケ地も有名だが、この海の前では、そうした情報がいったん全部引っ込む。ただ青さだけが残る。

そのあとは、牛の放牧を眺め、マングローブの見えるカトゥーレー展望台へ向かった。ヤギもいた。牛もいた。
北海道で見る放牧とはまた少し違う空気である。同じ「牛がいる風景」でも、空の明るさや植物の密度が違うだけで、ずいぶん別のものに見える。
土地が変わると、同じものの印象まで変わる。その違いを身体で受け取れるのが旅の面白さである。

11時すぎには、「こはぐら荘」へ立ち寄った。

いわゆる『ちゅらさん』のロケ地である。こういう場所は、作品に強い思い入れがなくても、そこに立つだけで少し楽しい。
旅先には、風景として美しい場所と、物語がくっついている場所がある。ロケ地というのは後者である。
景色だけではなく、誰かの記憶の入口にもなっている。そういう重なり方が、観光地としての厚みになるのだと思う。

さらに細崎ビーチまで足をのばすと、さきほど展望台で会った家族が海水浴をしていた。またご挨拶する。
小さな島では、こういう再会が自然に起きるのがよい。都会ならすれ違って終わるだけの関係が、島では少しだけ輪を持つ。といっても深く関わるわけではない。その軽い再会が心地よい。
11時50分ごろ、海人公園のテラスでオリオンビールを買ってひと休みした。

BGMは70年代のカバー。空と風と音楽の相性が妙によく、そこでようやく「リゾートに来た」という感じが出てきた。
これまでの八重山の旅は、どちらかといえば歩き、見て、食べて、話を聞く旅であった。だが、小浜島のこの時間は、もう少し単純に、ただ景色の中に身を置く時間である。旅の中にこういう緩い時間があると、全体の印象がやわらかくなる。
そのあと一度、妻とはぐれた。
トイレに行っている間に姿が見えなくなったのである。LINEで「レンタサイクル屋で集合」と送っておいたところ、なんと12時40分ごろ、『ちゅらさん』の家の前あたりでばったり再会した。
ほんまにマイペースである。こういう小さなハプニングも、振り返れば旅の味になる。予定通りにきれいに進む旅より、少しだけズレたり探したりする旅のほうが、あとで話になることが多い。
昼ごはんは「てぃーだ食堂」で、もずく丼を食べた。

もずく丼という名前だけ聞くと、少し地味に思うかもしれない。だが、これがやさしい味でなかなかよかった。B級グルメと呼ばれているようだが、だしが効いていて、島の昼ごはんとしてちょうどよい。妻はタコライスを注文し、こちらはかなりボリュームがあった。
観光地の昼食というのは、名物だから食べるというより、その土地のテンポに合うものを食べるのがいちばん満足度が高い気がする。小浜島の昼には、もずく丼くらいがちょうどよかった。
食後は延長した自転車でトゥマールビーチへ向かった。
ところが、着いてみると干潮で、かなり干潟っぽい景色になっていた。少し期待はずれと言えば期待はずれである。

だが、それもまた自然である。絶景というものは、いつ行っても同じ顔をしているわけではない。思っていたのと違う景色に出会うことも含めて旅なのだと思えば、それはそれでおもしろい。
快晴の小浜島で、最後に少しだけ肩すかしを食らう。その感じまで含めて、どこか愛嬌のある午前であった。
13時55分に自転車を返却し、14時10分の船で石垣島へ戻った。
小浜島の数時間は短い。だが、短いからこそ印象が濃く残るのかもしれない。電動自転車で展望台とビーチを巡り、途中で牛やヤギを見て、ロケ地をのぞき、ビールを飲み、もずく丼を食べる。
予定だけ見れば観光らしい観光なのだが、実際に残るのは、青い海の前でしばらく黙っていた時間や、同じ家族と二度会ったことや、少しはぐれてまた会ったことのほうである。
小浜島は、景色だけで終わらない島であった。風景の中に、小さな出来事がちゃんと残る島である。最終日の午前をここにしてよかった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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