ついに裁判開始! 北京の最強弁護士、棗荘降臨!〜中国の大学を訴えた日本語教師、シゴデキ弁護士萌えと10年分の逆転劇〜
日本語科閉鎖に伴い雇い止め。まもなく中国を去る時に、経済補償請求の権利があることを知った私。
大学がのらりくらりと逃げるので、北京の最強弁護士に依頼。
この弁護士がシゴデキすぎて萌えまくる。
もはや裁判というより、弁護士萌えだったこの数日。
いよいよご本人とご対面!……いや、裁判当日を迎えた。
村の会合な開廷
裁判は13日の午前九時開始。
八時ちょうどに弁護士さんから連絡が来る。
「到着しました。あなたは予定通り来てください。急がずに」
私はあわてて家を出た。雨なのでタクシー。
そして30分前に到着。
実際会った弁護士さんはチャットより気さくな感じ。
まず資料の確認、私の持ち物確認、必要なところにサイン、打ち合わせなどをしていよいよ9時に法廷へ。
事前に弁護士さんが確認した時は二階と言われたらしいが、二階ではなく一階だった。
しかも鍵がかかってて入れない。
もう9時なのに誰も来ない。さすが棗荘、棗時間。
そしてぞろぞろ人が来て、中に入るが、ワイシャツに革靴でビシッとしてる私の弁護士さんとちがい、なんだか全員村の会合な感じ。
私は弁護士さんの隣に座る。



私の向かい側になんか寝起きのおっさんみたいのがいて、聞けば大学の弁護士らしい。
大学側は弁護士一人。
傍聴席に大学側の女性がいたが、何のためにいるかは不明。今さら様子見もないだろう。
そして裁判が始まった。
私は入室した時に弁護士さんに携帯の音を消すよう言われていたが、記録係の着信音がピコンピコンうるさい。
しかも、弁護士さんの話す言葉のスピードについていけないのと漢字がすぐ打てないようで、「ちょっと待って」と何度も言う。
労働仲裁申請書は、私が最初に出したものと、弁護士さんが作り変えたものが二つあるのだが、なぜか大学の弁護士は最初のしか知らなかった。
弁護士さんが作り変える前のものには「労働関係を認める」という請求がない。しかし弁護士さんはここが争点になると言って第一項に加えた。そしてその証拠となる材料もすべて集めている。私は原本を全部持っていたわけではないが、約束通り弁護士さんはうまくカバーしてくれた。
なんかもう、気の毒なぐらいに大学側の弁護士が困っている。あんなに弁護士ってため息つくもんなのかってぐらいため息つくし、私の弁護士と比べると見た目でもう全然ちがう。

私の弁護士さんが事実関係や証拠を提出するのに対して、大学側は反論もできない。でも基本的に大学は「お金は支払いたくない」らしい。
しかし、法律の観点からみて有利なのはこちら。
結局9月4日に二審。
大学側の弁護士はほとんど手ぶらで「なぜ来たの?」って感じだったし、準備も何もしてなさそう。
でも二審になったのは弁護士さん曰く、こちらに圧倒的有利とのこと。
大学側としては私がいなくなるまで引き延ばすだったのかもしれないけど、私がいなくても弁護士さんが一人で来る。
弁護士権限も大学側の弁護士が「一般代理」なのに対して、私のほうは「超特権代理」。哀れなことに大学は、私ではなくこのハイパー弁護士と闘うことになる。
弁護士さん曰く、大学にとっては和解に応じるのが一番最善で、相手の弁護士がそれをしなかったのは完全に落ち度らしい。
もうなんか哀れなぐらいに大学の弁護士が太刀打ちできない感じ。
例えて言うなら、何の準備もしてこない素人と日々鍛錬を積んでいる選手がレスリングの試合をするとして、もう負けは決定なのに相手がくらいつくから、どんどんポイント加算されてる感じ。
結局大学は、今初めて事の重大さに気づいたって感じ。まあこれまでこんなことは起こらなかったのだから仕方ない。
裁判が終わると、弁護士さんがその場にいた全員と雑談。
なんかもう単なる労働裁判の枠を超えて、話がアメリカやヨーロッパとワールドワイドな内容になっていく。
なんかもう大学側の人たちは話についてこれない感じで、とっとと退場。
裁判官と弁護士さんだけその場に残ってまだ話す。
普段、私とのチャットのやりとりでは、「可以(よろしい),好的(はい),收到(受け取りました)」と無駄なことは言わず、そのくせ時折さらっと優しさを見せるシゴデキ&クールさに萌えていたが、まちがいなく話し好き棗荘人。だがしかし、訛ってない。大学も北京と言ってたから、もう20年は北京で暮らしているからかもしれない。
とはいえ、話が難しくてわからん。そもそも法律のこととか難しい用語は日本語でもよくわからない。
なので、今近くにいる私の通訳男子(卒業生)を召喚。
菜煎饼と質実剛健弁護士さん
通訳男子がくるが、結局私が話した方が早かった。
裁判官も気さくな人で、「加微信吧」と連絡先を交換。
「ようこそ中国へ! これまで日中友好文化交流に貢献してくれて感謝!」とメッセージ。
弁護士さんに感化されたのか私に対して好意的。
そう考えると、単に話し好きってだけじゃなく、裁判後の雑談も弁護士さんの戦略な気がしてきた。大学関係の人がとっとと帰ったのも分が悪くなったからかもしれない。
通訳男子は大人の話にはついていけないし、もともとでしゃばる性格でもない。
本来この男子と私で裁判に臨むつもりだったけど、私らじゃのらりくらりとやり過ごされて完全に負けただろう。ほんと弁護士さんに依頼して大正解と今さらながら思う。
お昼になったので、私は弁護士さんになじみの日本料理店で御馳走したいと申し出る。
しかし、「いえ、簡単な食事でいいです」と言われ、近くで軽く食べようと言うことに。
私は近くてもすぐタクシー使うけど、この弁護士さんすぐ歩く。だから痩せてるのかもしれない。腹が出てない。シュッとしてる。さすが元軍人。
そして私と通訳男子と弁護士さんは900m歩き出す。
なんかもうほんと歩く姿が東京人。リュックを前にするところとか、けっこうな距離でもスタスタ歩くところとか、いや、東京人ってより、有能サラリーマンって感じ? なんか駐在員さん思い出した。
北京の弁護士が棗荘を歩く姿は、合成画像みたいに変な感じがした。もともとは棗荘出身といっても、完全に都会人であり、THE棗荘なおっちゃんたちとは明らかにちがう洗練された雰囲気。
春節でも実家にはそもそも帰らないとかで、子どもらも田舎のじっちゃんばっちゃんの方言はわからないから交流もほとんどないとか。
ちなみにそんな話を聞くと、「あまりそういうプライベートな質問は普通しないものですよね?」とめずらしがられる。日本人なのに! すっかり私も棗荘に慣れてしまった。なにせ初対面でも「給料いくら?」があいさつ代わりの棗荘である。
気まずかったが「いやー先生も棗荘人だからいいかなって思って」と言ってごまかした。
そして私たちは菜煎饼のお店へ。

豆乳つけて三人で35元(840円)。
しかも弁護士さんは少食で、余ったのは「持って行きなさい」と通訳男子にあげていた。
そしてさらにここで聞いた話にびっくり。
普段は中国三大航空会社の案件を引き受けている弁護士さんらしい。
日本でいうとJALとか。
なので2万元や3万元でも本来安いらしいのだが、なんと私は1万元(仮に負けたら5000元)で出張代も750元。高鉄は普段も2等しか乗らないらしい。質実剛健。傘とか靴とか筆記用具とか一つ一つこだわりのいいものを使っているけれど、無駄な浪費はしないらしい。
私の案件を引き受けたのは、私の卒業生の紹介だからと、私の10年の中国への貢献に敬意を表してと言っていた。なんか私の発信したものも見てくれてて、私に対する人物評価が高い。裁判官にも私のモーメンツを見せて、「この人はこういう人柄です」と言っていた。
だから、この際、できるだけ多くの金額を勝ち取りたいと。
なんかもう、中国という国家から私への謝礼ぐらいの壮大な話になっている。
私は心底うれしかった。この学歴重視の中国で、博士でもない私は給料も低く、他の外教より格下だ。持ってる武器は人間力と経験値、そして人という財産だ。でもそれをこの弁護士さんは最大評価してくれている。学歴よりも私がこの10年真摯に学生と向き合ってきたことを理解してくれている。
大学はその辺何もわかってなかったけどな!わかる人にはわかるんじゃ!
しかし、ただでさえ有能な北京の弁護士が自分の信念のもとにさらに本気になってるのだから、なんかもう大学側の弁護士が哀れに思えて仕方ない。
そして弁護士さんの追撃はこれに留まらなかった。
「投诉しましょう」
そもそも大学は私に保険をつけていない。そのせいで私は授業中怪我をしたにも関わらず、自費で治療のはめになった。
病院の人たちが絶対に保険はおりると言って、領収書とか全部そろえてくれたのに、それが無駄になった悔しさは今も忘れない。
その件についても、弁護士さんが「投诉しましょう」と提案。
10年保険もつけてもらえなかったことを政府に直訴するのである。
そして労働仲裁の人に投诉の場所を聞いてタクシーで行くが無駄足。

「ここじゃないよ」と言われ、またも労働仲裁に戻る。
私は「適当なこと言いやがって」と労働仲裁ネキに腹立ったが、弁護士さんは気にせず颯爽と戻る。

そして戻ったらさっきのおねえさん。
謝るどころか、投诉に関して何だかキーキー言っている。
「ケンカ?」と隣にいる通訳男子に聞くけど、そうではないらしい。
まあ喧嘩腰に聞こえるのは棗荘人の特徴で、弁護士さんも慣れてるのか冷静に対応している。
ほんとこの人地元が棗荘でよかったと思うのが、方言やわけのわからなさにも対応できるところである。
結局この棗荘ネキが言うのが、大学が引き延ばしてるせいで、まだ労働関係の確定がされてないから、保険問題は受け付けられないと。
しかし弁護士さんが私が国内にいるうちに受付だけでもしてほしいと言っている。そもそも棗荘はどこもかしこも仕事や処理が遅すぎる。
弁護士さんに聞いたところ、毎年契約のサインをしっかりしていないなら、逆に長期雇用が認められるとのこと。つまりどう転んでも私に有利。
それでも労働仲裁は応じず、後日また弁護士さんは来ることに。郵便で書類を送ることを提案したが、受け付けてもらえなかったらしい。
なので郵便料金で済むところが結局また交通費がかかるので私は支払う。
今回750元、次回750元、三回目は縁起担いで888元にしておいた。
普段帰らない息子(弁護士さん)が短期間にこんな頻繁に帰省するのはめずらしいことで親御さんも喜ぶだろう。
学生たちの想いと共に
大学は法律のことあまりわかってないようで、ドス(弁護士さんを紹介してくれた私の教え子)が言うように、法律違反が多すぎた。
今それがこの弁護士さんによっていろいろ表に出てきている。
そのことに喜んでいるのは卒業生たちだ。
もともとドスは優秀な学生であったにも関わらず、日本語科だからか、自分だけ研究生合格者を称える何とかで表彰されなかったという。
その恨みもあったのか、彼への評価が高かった私への感謝からか、今回かなり法律的アドバイスをしてくれたし、最強弁護士も紹介してくれた。
言語の面でサポートしてくれて労働仲裁にも直接電話してくれた女子も、優秀な学生だったのに大学は留学のサポートもろくにしなかった。
その彼女もこのように言っている。

学校は事務が権力を握っている。学生が理不尽な目にあってきたのを私は何度も見ているし、常に私は学生側で、留学生の手助けもよくした。彼女もそうだ。
学校は学生のためにあるはずなのに、事務の奴らは学生のことなんて何も考えちゃいない。授業をする先生たちは高学歴で優秀な人も多いが、権力があるのはなぜか事務。バカに権力持たせるとろくなことにならないと私はいつも思ってきた。
しかし学生たちも無力だが、私も相手にされてこなかった、博士でもない日本語科外教(外国人講師)。
しかし、弁護士さんが言うには、大学側の弁護士は今プレッシャーすごいし、大学も動揺する事態。まさに窮鼠猫をかむ? しかも虎(弁護士さん)まで連れて来た笑
別に私は自分の権利を守るだけのつもりだったが、裁判官との雑談で、大学がこれまでいかに日本語科の学生や私に肩身の狭い思いをさせてきたのかも言った。
学生たちが私の味方をするのは当然で、今回の裁判でも私が勝つことを期待している。

まさに舌切り雀のじいさんとばあさんのちがい。学生が雀みたいなもん。
雀をかわいがったじいさんの立場の私は小判を持ち帰るだろうが、舌を切ったばあさんの立場である学校は……。
とりあえず昨日はどっと疲れた。
今回色々助けてくれた学生たちに報告をして寝落ち。
裁判結果はまだ出てないけど、弁護士さんには勝つ前提でこの先もかかるだろう交通費も含めて全部支払った。

そんなわけで裁判はまだ続く。
なんか今まで大学という村の中で平和ボケの村人が、急に織田信長に攻め入られている状況。まあ信長は弁護士さんで、私は百姓一揆みたいな立場だけどもw
大学側にしてみたら、とんでもない外教かもしれないけど、私はこれまで泣き寝入りしてきた先生たちとはちがうだけ。
あと私の味方になる人が多かったってだけ。一人では絶対無理だった。
だから学生たちや弁護士さんに本当に感謝している。
それに、こうなったのは時代の流れで、たまりにたまった膿はいずれ出てくる。たまたま私が引き金になったというだけだ。
とにかく私はもうやるだけのことはやった。
あとは果報は寝て待てで、弁護士さんにお任せだ。
