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複合施設は、誰のためか。| HAERA内覧会【まち事007】

複合施設は正しい。たぶん正しい。でも歩き終えた私は、なぜか消化不良だった。


明日6月11日の商業施設HAERA開業を前に、関係者向けプレオープンへ。ザ・ランドマーク名古屋栄。ホテル、オフィス、商業、シネコンで構成される複合施設が、栄に開業する。


南西交差点からの全景

◻️建物概要
正式名称:ザ・ランドマーク名古屋栄
所在地:名古屋市中区錦3丁目
交通:地下鉄東山線・名城線「栄」駅直結
敷地面積:4,866.40㎡
延床面積:約109,700㎡
階数・高さ:地上41階、地下4階、塔屋1階・高さ約211m
構造:鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造
用途:商業(HAERA/地下2階〜4階)、シネコン(TOHOシネマズ名古屋栄/5〜9階)、オフィス(12〜30階)、ホテル(コンラッド名古屋/31〜41階)
事業者:三菱地所、J.フロント都市開発、日本郵政不動産、明治安田生命、中日新聞社
設計:三菱地所設計、竹中工務店
施工:竹中工務店
竣工:2026年3月


『タテ』という一貫したデザイン言語

建物全体には「タテ」というデザイン言語が一貫している。小さな吹き抜けも、ライン照明の垂直配置によって実際以上に高く感じられる。エスカレーター周りの柱は各階でタイル、木、金属と素材を変えながら、同じデザインが繰り返される。大手設計事務所らしい、統制の取れた空間だった。

タテラインてデザインされたEVホール
LEDのライン照明がフロアを繋ぐ
基壇部の外壁もタテライン

建築の質は、トイレに現れる

各階でプラン、デザイン、素材が異なる。ジェンダーレスを意識した完全個室化のフロア、男性トイレには珍しいパウダーコーナー、木の幹を用いた現代アートを中心に構成されたフロア。トイレをここまで丁寧に作り込む施設は、名古屋圏では珍しい。余白のある商業施設として、アートの配置も随所に見られる。詰めすぎない構成は、設計側の意志を感じる。

男女のトイレの間に設けられたアートスペース
壁面のアート

違和感という正直な感想

ハイブランド。アウトドア。スナック。どれも嫌いではない。むしろ好きだ。昨今の建築費高騰や街中の求心力が低下している中、これだけの施設をまとめ上げたのはさすが大手デベロッパー。関係者の苦労は容易に想像できるし、リスペクトの気持ちしかない。

でも並べられると、急に輪郭がぼやける。

この施設は誰のためにあるのだろう。

ハイブランドテナント
アウトドア系テナントエリア

地下1階の軽飲食ゾーンが、ルイ・ヴィトンと狭い通路を挟んで共存している。どちらにとっても、中途半端だ。

地下2階のスナックには正直、驚いた。
その名も「スナック・ピラーズ」。カウンターとカラオケステージを備え、施設のオープンから昼も営業するという。共用通路から視線を切りつつ、音で賑わいを感じさせる区画設計は考え抜かれている。ピラーズ(柱)という店名が、縦強調というこの建物のデザイン言語と妙に呼応している。一度ぜひ行ってみたい。

もっとも、この消化不良の感覚は、日頃郊外のショッピングセンターに慣れてしまったせいかもしれない。複合施設をハシゴするのは、縦の移動と街を歩く移動を組み合わせると、おじさんには距離が長すぎる。郊外SCの水平回遊に慣れた身体には、複合施設の縦動線は思った以上に疲れる。

ドラゴンズ関係者からの祝花

複合施設の宿命

デベロッパー側の論理は分かる。事業性を確保するために、低層は賃料の取れる商業、高層はホテルやオフィスでバランスをとる。これは複合開発の定石だ。でも「事業者側も分かる」自分が、利用者として歩いてみて感じた。この商業ボリュームでは、消化不良だ。

最近の都市開発は、何でも入れたがる。商業、ホテル、オフィス、映画館。もちろん事業としては正しい。でも利用者として振り返ると、強烈に記憶に残る場所は意外と単純だ。

本だけの図書館。
映画だけのミニシアター。
市場だけの商店街。

味の濃い場所は、用途が少ない。単一用途でしっかり味の濃いものを作った方が、街は面白いかもしれない。自分の仕事への反省、気づきにもなった。

複合施設は事業性の答えかもしれない。でも利用者の答えとは限らない。向かいの三越栄店とメルサ・スカイルが、この開業を契機に魅力的な場所へと変わっていくことを期待したい。


あなたの街に、「味の濃い」場所はありますか?


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