目に見えないものを手がかりにして
続く向こう側にある場所に
ゆっくりと時間が流れていく。切り取られた空間に
足跡が浮かんでは消える。過ごした時間。この先に
ある時間。その場所に流れ続けては、繰り返される
日々。現在から過去へと視点を移ろわせるように。

道沿いの黒い焼杉板の民家の

中庭へと足を踏み入れる

白砂の足跡は

繰り返し浮かんでは消える

いつか訪れた古民家の中の空間に

過去から現在にゆるやかにつながる時間と

ささやかな時間

かつてカフェとしてにぎわっていた空間も

今は静かに

時を重ねている

空間には往来がほのかに浮かぶ

不在の存在という名の作品の

もう一つの空間には

鏡と鏡のように見えるもの
移ろう視点は錯覚を起こし

不在と実在が入り混じる
ずれては、ねじれるような空間に

流れていた時間を思い返す

古民家は空の下で
繰り返し何度も

日々を重ねている

いつかのIARAという名のレストランを

訪れたことも懐かしく

焼杉板の壁は黒く

過去から現在へと時をつないでいる
確かに、そこにあったささやかな時間。懐かしい
旅路をたどる。民家の中庭は、まだ存在していた。
繰り返し浮かぶ足跡。目の前の時間が過ぎていく。
ざわめき。話し声。カチャカチャと鳴るスプーン
の音。鏡に映る自分。鏡の向こうの空間。目に見え
ないものを手がかりに、沈む時間を引き寄せる。
