塩の記憶が満ちる場所で
たどりついた宇多津の街は、塩の記憶が
満ちる場所。瀬戸内海からの海水は煮詰められて
結晶となる。宇多津は塩の産地として歴史を刻む。
場所を結ぶ芸術祭。時が沈むような米倉に浮かぶ
塩の結晶は、遠く離れた塩の記憶をつなぐもの。

米倉は新たな時間を重ねるように
栄えた宇多津の街を物語る

鬼瓦は時代の波を越え
建物を守っては、次の世代へつないでいく

そっと置かれた黒電話とともに

白御影石の枠に囲まれた重厚な扉には

親しみを感じる柔らかなピクトサイン
デザインは建物と人との距離を縮めるものとなる

ここに展示される作品のCapacityというタイトルは

世界には限りがあることを指し示す

がらんとした大きな空間に展示された

湖に沈むドレスを包み込むのは

光を帯びる塩の結晶

収縮していく湖でほのかに輝く白が

時代を照らした白のドレスとふと重なる
拡大される世界の裏側には、縮小する風景がある

静かな倉庫の空間に浮かぶ白い結晶は

実際に遠く離れた湖からここに運ばれたもの

網の浦の名が残る宇多津の地に

死海の塩の結晶で覆われた漁網が吊るされる

芸術祭の下で、混じり合う塩と海の記憶

補強されては、今を包み込む蔵の内部には

白い輝きを帯びたものが並ぶ

封じ込められた音の記憶は
静かに音楽が展示されていた場所をつなぐ

連続する荷摺木に守られた空間に

そっと置かれた白い結晶は

遠く離れた場所の記憶をこの地に運ぶ

それは輝きながらも、はかなくも

収縮する湖を現状を伝えるもので
宇多津の地へと導かれるように
遠く離れた場所の今を語る
Capacity。世界は飽和しては不足する。限りのない
豊かさと、緊迫した状況。白く輝く結晶の記憶が、
宇多津の地で重なりあう。消えゆく塩田と、縮小を
続ける塩の湖。世界の容量には限りがあり、何か
が生じれば、何かは失われることになる。時間は
世界を進ませては、後退させるものでもある。塩
の記憶が満ちる場所で、それでも結晶は白く輝く。
