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その白い空間は今でも心の中にある

朝の光に包まれる海を渡り

豊島の港へとたどり着いた。豊島も、かつて小さな
子供たちを連れてめぐった島。懐かしい思い出が
こみ上げる。広がる風景に当時の記憶が呼び起こ
される。私にとって豊島といえば、美術館もさる
ことながら、当時の旅の宿が今も記憶の中にある。



港後にして、豊島の旅を始める。自転車を借りた



ガソリンスタンドのすぐ近くに、焼杉板と



赤いガラスが反復する建物は



空へと伸びる円形の塔と



連続する壁で構成された



横尾忠則の作品を展示する豊島横尾館


開館にはまだ早く、外観だけに留め


芸術家の作品への思いを、たどった道を振り返る



連続する赤いガラスは



横尾忠則が若かりし頃の1970年の祝祭の中で


手がけた赤いパビリオンにつながるように



芸術は時を超えて記憶に定着し 


建物はそれを支えるうつわとなる


2013年に豊島横尾館を手がけた建築家は


2025年の万国博覧会で、空気を揺らし


記憶に語りかけるようなパビリオンを手掛けた



豊島横尾館に流れた12年の歳月の痕跡を過ぎ



当時のおぼろげな記憶をたどり



入り組んだ路地にたどる



確か、この辺にあったようなと



当時の写真で記憶をたどる。その路地は



野趣あふれる石積みは、確かにそこにあった



連続する屋根の瓦の光と影



屋根越しに見える真新しい円の塔



その先にあったやわらかな白で包まれた宿



玄関のガラス越しに見る路地の石積



それは2013年の旅の思い出。子供たちは、早速



開放的な空とつながる白いデッキテラスの上を



様々なものを興味深そうに



もちろん私も当時から、子供のように



まとった好奇心で、視線を宿の空間に沿わせていく



私にとっての豊島の記憶は、今もこの宿とつながっている


古民家を改修して作られた白い宿は、今は


その記憶を引き継ぎながら、新たな物語を紡ぐ


豊島横尾館の空へと伸びる円の形の塔を、以前の
旅でも見たことを思い出す。確かこの辺りに宿が
あったはずと、おぼろげな記憶をたよりに路地を
進む。そこにあるはずの宿が、なぜか見つからない。
以前に旅をしたのは12年前のこと。宿は、当時の
祝祭の中だけにあったものなのだろうか。調べて
みると、その宿は2023年にその営業を終えていた。

でも、その姿形を引き継いで、新たな宿として物語
を紡ぎ始めている。ふと記憶の中の風景をつなぐ。
やわらかな白に満ちた空間で、思い思いの時間を
過ごした時のこと。子供たちはもの珍しそうに、
空とつながる白い空間を、ぐるぐると動き回って
いた。懐かしくて、とても大切な記憶を思い出した。


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