定着される空間の記憶
ものとものの間を伝い
芸術祭に重ねられた空間をたどる。ピンクの旗を
目印にし、街の隙間に引き寄せられる。赤と黒の
線を帯びる看板の、先に引かれた線の奥へと、街
を形作り続ける、時を重ねたビルの通路の先へ。

街の中に散りばめられた境界の印を

たよりに視点をつなぎ

描かれた線をたどる

スタッコ調の壁に引かれた赤い線が
ぐらりと記憶を手繰り寄せる

光を帯びるフロアタイルと、ツートンカラーの壁に沿い

時を経たビルに

重ねられたアートの時空間

赤い光に示された

沈む空間に

流れる作品。暗闇と

赤い光の下をくぐる

半透明のドレープに

拡散された光が部屋を満たす

コンクリートは露わとなり

空間に光は吸い込まれる

赤いフェルトをまとう部屋で

転じる視点に

線を重ね
振り返すアートの気配に

焦点をずらせては

空間の質そのものに引き込まれる

空間は光に動きを与えられ

連続する窓に動的になる

都市の連続の中に

佇む黒いピアノから

響く静かな音が

自動で生成され続ける

空間を震わせるシルエットに
風を奏でる姿の記憶をつないでは

存在を欠いたピアノの前に立つ

芸術家は、空間に触発され

海を隔てたこの地で、自らの手を離れた

壁に描かれた線が色あせる。塗装ははがれ、時間と
ともに変質する。暗闇を降りては上る。光を拡散
させるドレープと、区切っては浮かび上がらせる
窓の連続。静かに音は、むきだしのコンクリートの
壁に反射して、赤い床のフェルトに吸い込まれる。
手触り、残響、陰影、連続する視点に定着される
空間の記憶を、繰り返す旅の線上に置いていく。
