まなうらに映る風景へ
旅の形にふれるように、連なる景色を繰り返す
芸術祭で出会う日常と離れた風景に、いつかの
記憶はふわりと目の前に浮かび上がる。光は街の
様々なものを照らし、空と海の境界はつながる。
戸をくぐると満ちる闇の中で、靄は輝き連続する。

高見島に続く石垣をつたい

海へとつながる街を歩く

波打つようないぶし銀の連なりに

時を積み重ねる石垣

蔦に覆われる外壁や

繰り返す緑の重なりをくぐり

島に流れる時間を旅する

芸術祭をめぐる旅は思いもよらぬ

形から形へと繋ぎあわされるように

空間は時折、一変する。闇に浮かぶ

光を帯びる銀の線の重なりは
はかない靄のように空間を覆う

光は反射し、形を成して

まぶたの裏に風景を呼び起こす

展示されるのは、まなうらの風景という名の作品で

海に浮かぶ雲のように、闇に広がる光

まなうらに映るのは、かつて旅した海のゆらぎ

光は揺らめき、影は過去に寄り添うように
海をつないだ旅の風景

闇に浮かぶ光の溜まりに

張り巡らされた影の糸

光をまとうステンレス線の連続は

寄り集まっては実体をなくし

光る雲のように記憶を包み込む
暗闇にほのかに輝く作品と

外には、広がる海に浮かぶ雲

アートが移ろう空間を後にして、再び芸術祭の気配の中に

遠くに続く島々の眺めと
まなうらに映る風景へ
目を閉じる。潮騒が響く。穏やかな風が吹き抜け
ていく。旅を繰り返しては、日常にその景色を移し、
日々に潜んでいる旅の痕跡に目を留める。まなうら
に映る空は、海との境界線を曖昧にし、光は水面に
溶けていく。視野に広がる景色を求め、ささやかな
輝きを探しては、瞼に重ねる旅と日々。旅先の形
をたどり、記憶を呼び起こしては、思考につなぐ。
旅を通して日常を見れば、そこには思わぬ関係性
が見えてくる。旅は日常を広げる道標ともなる。
