見出し画像

レンガに染み込む時の流れに沿って

奈良への旅では、時の流れを感じながら

自転車に乗って街を北へと上る。目的地は奈良の地に
建つ赤レンガの建物。その建物は明治維新を経て、日本
が近代へ進む中、欧米諸国と肩を並べることのできる
法治的国家であることを示すため建てられたという。

自転車をこぎ、坂道上った先のコンクリートに続くレンガの壁
その中央には両脇に円筒を携え、装飾されたアーチ型の門
レンガはイギリス積みで、開口部の上部はアーチ状に

イギリス積みは日本の近代化を支えた炭鉱でもふれた

その積み方は、設計者の山下啓次郎がイギリス人の
建築家のコンドルに師事していたことが理由という

ロマネスク様式の表門はドーム型の屋根やわらかな表情で
御影石とレンガの装飾がリズミカルに連なって

レンガの建物に施される細部に思い出される教会建築

時の流れは建物の各部にも漂って
時代を感じさせる洋風の重厚な装飾格子の向こうには
改修されて新たな役割を待つ奈良監獄
壁面に建物館銘板。1946年からは奈良少年刑務所の

奈良監獄は、1908年に建った日本最古の刑務所建築

10万6千㎡という広大な敷地を囲むレンガの壁は
時が染み込み、かつての歴史を物語るように続いていく
自転車ならではの機動力で、その周囲をぐるりとめぐり
色あせてゆくレンガを背に、足元にひっそりと咲くノアザミに

同じく100年の時を越える無線塔の風景を思い出す

レンガの壁は世界を切り離すようにそびえ
奈良監獄を囲うレンガの壁の時の流れを感じつつ

構内に窯を築いて自給されたというレンガに触れながら

その素材に漂う時間の流れに心惹かれている

山下啓次郎は、ジャズピアニストの山下洋輔氏の祖父でもある
風景に落ちる印象的な影は、世界にリズムを与えるように

山下氏は自らのルーツをたどる旅をしている

奈良監獄は明治期に竣工した明治五大監獄の一つで

その姿を完全に留めているのは、奈良監獄のみとなる

監獄という名の近代的で、他に類を見ない建築遺産

その建物は圧倒的な広がりと、堆積された時間を持つ

ハビランド・システムという放射状の配置が特徴的で

その特徴的な形状は、新たな空間へと姿を変え

日本初の監獄ホテルとして2026年春の開業を待つ

建物の老朽化等から、2017年3月31日をもって刑務所
として役目を終えた奈良監獄。そして建物は、歴史的
建造物の保存・活用として、耐震改修工事もふくめ、
史料館、商業施設、宿泊施設へと、星野リゾートにより
再生される。世界でも旧オックスフォード刑務所や、
旧オタワ刑務所がホテルへと再生された事例もある。
奈良監獄のレンガに染み込む時の流れを見続けよう。


いいなと思ったら応援しよう!