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一律ベースアップの落とし穴|優秀な社員ほど辞めていく理由

日本企業がやってる一律昇給で、おたくの優秀人材が辞めちゃいますよ。

でも、一方で、

「うちは、今年一律で賃上げできた。社員も喜んでいるはず」

そう思っている経営者・人事も多いと思います。

このnoteでは、私自身の体験を交えながら、一石を投じます。 一律昇給が、実はハイパフォーマーの離職を招きかねないという構造と、その処方箋について書いています。

経営者・人事の方、そして、ご自身の評価や給与制度に納得感を持てずにいる方に読んでいただきたい内容です。


1. 「平等という幻想」が崩れた日

さて、かくいう私も、ベースアップをしていた日本企業で働いていました。その後、キャリアのことを考えて、外資系企業へ移りました。

ある時、社内の同僚(外資畑出身の人)から、衝撃的な言葉を耳にしました。

「日本の一律ベアって、不平等だよね」

この一言に、私はショックを受けました。かつての私はこう思っていました。日本企業はみんな家族である。全員で頑張って、全員で豊かになる。それが「平等」で「正解」だと。

確かに日本企業にも差はつきます。賞与額や昇格のスピードには、一定程度は個人差が出ます。しかし、等級ごとの給与のテーブルも一斉に変わります。これが一律ベースアップの仕組みです。

成果を出している人も、成果が出ていない人も、会社のテーブル改定で給与が上がります。一見、社員思いの、とても優しい仕組みに見えます。

2. ハイパフォーマーの冷めた視線。平等であっても、フェアじゃない

しかし、視点を変えてみましょう。

あなたは、X社の社員のAさん。社会人10年目でチームの貴重な戦力です。残業も厭わず、バリバリと成果を出しています。必死に成果を出すハイパフォーマーで、部課長からも大いに頼りにされています。そのチームの屋台骨といっても過言ではありません。

そして、こんなニュースを目にします。

「X社の賃上げ 満額回答 平均3500円アップ!」

あなたはどう感じますか。

私がAさんの立場なら、正直、3500円って、それだけ? って感じます。(もちろん給与テーブルの平均なので、実際、優秀層はもうちょい上がるのですが)なんなら基本給、2万くらい上げてよ〜 と思っちゃうかもしれません。さすがに日本企業ではそんなドラスティックなことは、まぁ起こらないでしょう。

そして、

「仕事をあまりしていないあの人も自動的に上がるの? その原資を私に回してよ」

くらいのことを思ってしまうかもしれません。

一律ベースアップは「平等」かもしれません。しかし、決して「フェア」ではない。私はそう思うのです。特に、成果を出そうと頑張ってきた人にとっては。

かつて日本企業にいた一人のサラリーマンとして、私はそう思うのです。同僚が言った「日本の一律ベアって、不平等だよね」とは、フェアではない、というニュアンスなのだと思いました。

そして、この状態が続くと、ハイパフォーマーと呼ばれる人達は、報われる所に移っていきます。あるいは、社内にとどまる人たちは、「静かな離職」に陥っていく。昇進や過剰な貢献を避け、契約上必要最低限の業務のみを行う働き方です。それでいて、一律ベースアップで給与が上がる。

実際、マイナビキャリアリサーチLabの2026年調査(2025年実績)によれば、20〜50代正社員の46.7%が「静かな退職」をしていると回答しており、前年から2.2ポイント増加しています。年代別では20代が50.5%と最も高く、静かな退職をしている人の73.7%が「今後も続けたい」と回答している点も見逃せません。一時的な流行ではなく、働き方の選択肢として定着しつつあるのです。

3. 外資系企業は徹底した個別化対応

外資系企業に「一律ベア」はありません。給与は「職務(Job)」で決まります。そして「成果」に対して賞与や昇給率が決まります。個別対応です。

外資での給与改定は主に3つです。

  1. 個別の年次改定 → 個人の評価に基づき数%昇給。成果を出すと上がり幅が大きい。

  2. マーケット調整 → 自社の給与水準が市場より低いと判断された場合、職種毎などで会社としてベース給の基準が修正。ただし、それでもって自動的に上がるとは限らない。

  3. 昇進に伴う大幅昇給 → 個人の持つ役割が広がれば一気にアップ。

ですので、20代で年収1000万円超も珍しくありません。年齢や年数は関係ありません。その役割が果たせ、成果が出せるならば。以前、「外資転職で年収は上がらない?現役人事が明かす『給与レンジ』の罠」という記事で、外資の給与はポジションという「箱」のレンジで決まる仕組みだと書きましたが、そのレンジの中でどれだけ上げられるかを決めるのが、まさにこの個別対応なのです。

結果、同じ年齢や社会人年数であっても、大きな差がつき得ます。日本企業の比じゃない程度に。

成果を出していくことができれば報われやすい。そのためのスキルアップにも余念がありません。どんどん成長していきます。そうしないと成果が出せないから。

もちろん、ローパフォーマーは給与があまり上がりませんし、会社に残れない可能性もあります。対岸から見てみると、給与テーブルを一律ベアする日本企業は、ハイパフォーマーに厳しく、ローパフォーマーに優しいのかもしれません。

4. 最上位層の若者が選ぶ「戦場」:実力や成果が報われる組織

若い世代の中の優秀層もこれに気づいているように思います。

大学新卒全体という括りで見ると、就職人気ランキングでは日本の伝統的大企業は健在。なんだかんだ安定してますからね。ただ、東大・京大・早慶レベルの最上位層における就職人気ランキングは様相が異なります。

2000年時点では、トップ20にランクインする外資系企業はほぼゼロ、あっても1〜2社程度。四半世紀たった2025年版では、トップ20のうち約4割を外資系や外資系出自の企業が占めています。

もちろん、最近は、日本企業でもジョブ型を導入したり、成果主義の比率を高めている会社も増えています。ユニクロを展開するファーストリテイリングなどが好例でしょう。

いずれにしても、「頑張っても差がつかない場所」を、優秀層は本能的に避けているように私は見ています。

5. 「賃上げのジレンマ」「人手不足で倒産」という現実

さて、今、多くの経営者が悩んでいると思います。

・物価高への対応で賃上げは必須。
・しかし、原資には限りがある。
・無理をすれば、会社の利益が削られる。
給与を上げなければ、社員が辞めていく。

まさにジレンマです。

また、帝国データバンクの最近の調査があります。2025年、従業員退職型倒産は過去最多。そして、人手不足倒産の約3割が幹部や現場の核となる人の離職。それが、会社を倒産へと追い込んでいるのです。

6. 納得感こそが最大の離職防止策

自分が頑張って成果を出せば昇給や賞与は多い。とても嬉しい。反対に、頑張れなかったら昇給や賞与は少ない。悲しい。致し方ない。

でも、従業員の納得性は高いと思うのです。事象がクリアだから。それが理由で昇給や賞与が少ないなら、それだけで辞めるなんてことにはならないんじゃないかと。

給与が少ないこと自体よりも、「なぜ、あの人と自分が同じなのか」その不透明さが不満の火種になります。「成果を出せば、給与は増える」、「成果がなければ、給与は増えない」このシンプルな仕組みこそ重要だと思うのです。

本当に社内にとどめたい人は誰か。本当に報いるべき人は誰か。いまこそ、「個別化」が必要です。中小企業であれば、ただでさえ、離職率は高い。だからこそ、貴重な原資の使い道を変えましょう。

7. まとめ:一律の優しさより、フェアな「個別化」を

今回のポイントを整理すると、

  • 一律ベースアップは「平等」に見えても、成果を出す人にとっては「フェア」ではない

  • 静かな退職(20〜50代正社員の46.7%が該当)は、こうした「フェアではなさ」の受け皿になっている可能性がある

  • 外資系企業は職務と成果に応じた個別対応で、報われる人には大きく報いる仕組みを持つ

  • 最上位層の優秀な若者ほど、「頑張っても差がつかない場所」を本能的に避け始めている

  • 給与そのものの多寡よりも、「なぜあの人と自分が同じなのか」という不透明さが不満の火種になる

  • 納得感を生む「個別化」こそが、限られた原資で離職を防ぐ最大の武器

一律の優しさは、時に組織を壊します。強い組織を作るための「選別」。その勇気を持つ時が来ていると思うのです。

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