なぜ、人が足りないなら、人を減らすべきなのか?┃日本企業の利益率が低い本当の理由
人が足りない? だったら思い切って人を減らしましょう。
突然ですが、日本企業の利益率をご存知でしょうか?
日本政府のデータを見ると、日本の全産業における営業利益率は、4〜6%前後で推移しています。
比較的高いとされる情報通信業でも10〜15%前後、「余裕がある」と言える水準ではありません。
一方で、Fortune Global 500に名を連ねるような外資系企業を見ると、営業利益率30%超という企業も珍しくありません。同じグローバル市場で戦っているにもかかわらず、です。
この差はどこから生まれるのでしょうか。
このnoteでは、「人が足りない」と言いながら、利益率の低い日本企業特有の構造的な課題と、その処方箋について書いています。
そして、なぜ人を減らす方がいいのか、種明かしをします。
経営者の方、人事や組織づくりに携わる方に読んでいただきたい内容です。
1. 外資系企業で徹底されていた「Do More with Less」
私は、日本企業から外資系企業に移りました。移籍してから、大きな気付きを受けた言葉があります。
それが「Do More with Less」です。どんな意味を持つのでしょうか?
意味はシンプルで、
「今より多くの成果を出せ。だが、だからといって、そこに使うリソースは簡単には増やすな、むしろ減らせ」
という、なかなか鬼のような指令です(笑)。
どのような会社でも、売上や利益を伸ばすこと自体は歓迎されます。
しかし、それに比例して人員を増していいのか? については常に疑え、
ということなのです。
具体的に言うと、
・本当に人を増やす必要があるのか
・今の仕事は高付加価値なのか
・削れる仕事はないのか
・もっと効率化できないのか
これらを徹底的に問い続けろ、ということです。むしろ、「高付加価値な仕事に集中しろ。その結果、人数は減らせるなら、それでいいぐらいだ」と言われることすらあります。
そうすると、中にいる人員は嫌でもスキルアップ、ビジネス戦闘力を上げていかざるを得なくなります。以前、「外資で生き抜いていくために意識したいこと」という記事で、外資系企業の人員数管理が日本企業の比ではないほど厳格だと書きましたが、その厳格さの根っこにあるのが、まさにこの「Do More with Less」という発想なのです。
2. 日本に根付く「社格=規模」という感覚
日本企業出身の私には、この考え方は非常に新鮮でした。
日本企業では、どこかに売上高が大きくて、人員規模が大きい会社 = 社格が高い立派な会社という空気感があるように思います。
しかし、売上は伸びても、人も増えていくと、その結果どうなるか。
人件費も固定費も膨らみますから、利益は思ったほど残らない。
そして、冒頭に見たような悲しいほど低い利益率という結果になって現れてきます。
3. 日本は「仕事の断捨離」がとにかく苦手
日本社会全体を見て私が日々感じるのは、仕事の断捨離がとても苦手だということです。背景には、
・モッタイナイ精神
・今ある仕事が存在し続ける前提での「改善」
・オモテナシに象徴される顧客への過剰なサービス
といった日本特有の美徳があると思っています。
日本の組織では、「今の仕事をどう改善するか」「顧客にどう合わせていくか」を考えることは非常に得意です。
しかし、改善はしても、根本的にはずっと同じ仕事をしている。そして、「その仕事自体、本当に付加価値があるのか?」という問いには、なかなか踏み込んでいないように思います。
その結果、仕事はどんどん独自化し、人に仕事が紐づき、属人化していきます。引き継げない仕事が増え、「あの人がいないと回らない」という状態が常態化します。そして、ある時、その人が退職し、組織が崩壊する。
こんな状況、あなたの会社でも起こっていないでしょうか?
属人化は決して珍しい現象ではありません。ある調査では、(建設業の事例ですが)管理職の74.1%が「業務の属人化」を実感していると回答結果がありました。属人化した仕事は、そのまま組織の脆さにも直結してしまいます。
4. その仕事、本当に残す価値がありますか?
根本的な問題は、「その仕事自体の付加価値は何なのか?」という問いを発する人が少ないことです。
業務として、これまでやってきたから、今日も明日も、そしてきっと来年も続く仕事。その常識に挑戦をしていないような気がします。
日本の一部大企業では、ジョブ型への移行とともに、「組織やチームにとって、本当に必要なジョブは何か」を定義し直す動きが進んでいます。
しかし、ジョブ型への移行が進む大企業と言えど、「ポジションが果たすべき仕事の中に入れるべき本当に必要な仕事は何か?」を定義することは難しいのです。
なぜか? 今必要な仕事だけではなく、会社としての方向性に応じて、これから必要になる仕事は何か?をも定義しないといけないからです。
これ、日本企業のほとんどを占める中小企業ではなおさら大変です。
まだまだ、「昔からある仕事」、「誰かがずっとやってきた仕事」が、疑われることなく残り続けています。私自身、中小企業の支援をしていますが、この感覚はかなり実態に近いと思います。
さらに、家族経営も多く存在する中小企業。古参社員、身内、長年会社を支えてきた人たちへの「情」が、組織を支配する場面も少なくありません。私自身、実家が自営業だったので、痛いほど分かります。
人と人の結びつき自体は悪いことではありません。むしろ必要です。ただし、この「情」が、仕事の断捨離をさらに難しくしているのも事実です。
断捨離できない仕事の存在は、こうした変化そのものを妨げる要因にもなっていると感じています。
5. 人を増やす前に、枠を決めるという発想
このように、仕事の断捨離は簡単ではありません。
だから、新しいことに挑戦しようとすれば、それは追加の仕事になります。すると、すぐに「人が足りない」という声が上がります。
そこで安易に採用を進めると、断捨離されない仕事の上に人が積み上がり、利益はさらに圧迫されます。
私が有効だと思っているのは、目標とする売上高・利益率を決めてしまい、そこから逆算して、人員数に枠をはめてしまうことです。
・今年はこの売上、この利益率を目指す
・そのために抱えられる人員数はここまで
・採用は簡単に認めない。採用は「投資」。投資判断を慎重にする。
と、はっきりと決めてしまうのです。
そうすると、現場では強制的に、どの仕事をやめるか、どの仕事に集中するか、どこに貴重な採用枠を使うかを考えざるを得なくなります。その過程で、担当する仕事が変わる人、新しいスキルを身につけないといけない人、視野が広げて仕事をしないといけない人が必ず出てきます。この「枠を決める」アプローチは、社員の効果的なリスキリングとも繋げられるはずです。
もちろん、こうした変化を起こしていくと、短期的には摩擦もあります。抵抗する人も出てくるでしょう。しかし、中長期的には、それこそが組織の新陳代謝を生み、変革を進ませ、会社を強くします。
6. もっと徹底的に仕事の断捨離をやるなら、思い切って人を減らすという決断をすべし
このように、今とこれから必要となってくる仕事を定義することは結構大変です。
また、中小企業では、売上高や利益率の目標を決めたことすらない、という会社も多いと思います。ですから、いきなり利益率の目標や抱えられる人員数の枠の目安を決めるのも、難しいでしょう。
しかし、仕事の断捨離をしなければ、永遠に人は増え続けます。
ではどうすればいいか?
一つの方法は、「人が足りない」という状況になった時であっても、思い切って人を減らすということに舵をきって、断行するということです。
あるいは、人を増やさず、退職者が出た場合も補充を入れない、という形でもいいのです。
これをすることで、強制的に仕事の量を減らさざるを得ない、という状況を作るのです。これにより、残ったチームはアウトプットを出すために成長をせざるを得なくなりますし、ついてこれない人を淘汰できるようになります。
もちろん、ちゃんとついてきて、変革できる人に対しては、給与や賞与を上げて報いていけばよいのです。これが本当の意味でのリテンション退職になるわけです。また、これにより、人員減によって得た利益率を、再び下げるのを防ぐことができるのです。
7. まとめ:「人が足りない」の前に、問うべきこと
今回のポイントを整理すると、
日本企業の営業利益率は平均4〜6%前後。外資系企業とは、同じグローバル市場にいながら大きな差がある
その差を生んでいるのが「Do More with Less」の発想の有無。成果は求めるが、リソースの増加は常に疑うべし、という発想
日本には「社格=規模」という感覚が根強いこともあり、人員が増えるほど利益が圧迫される構造
さらに、モッタイナイ精神やおもてなし文化が、仕事の断捨離を苦手にさせている。そうやって属人化が進んでいく
目標利益率から逆算して人員数に枠をはめることが、断捨離を強制的に進める有効な手段になる
それでも仕事が減らせないなら、思い切って人を減らす、あるいは欠員を補充しないという決断そのものが、組織の新陳代謝を生む最後の一手になる
利益率を上げることは、単なる数字の話ではありません。
「何をやらないか」
「今と未来にとって本当に必要な仕事は何か」
を決める。なんなら、人の数を減らすことから入ってみる。
これは、会社の変革を進ませるための経営の覚悟の話だと思っています。そして、それを手助けするのが、人事のビジネスパートナーの仕事だと思っています。
あわせて読みたい
企業の人事担当者様・経営層の方向けの、組織設計・生産性向上に関する研修・講演のご依頼も随時受けております。ご興味があればお気軽にお問い合わせください。
